「狭い、ですけど・・・」
開かれたドア。暗い壁に触れたミニョの指先からパチンと音がして、部屋の中が明るくなった。
「本当に、狭いな・・・」
ワンルーム・・・といえば聞こえはいいが、布団を敷いたらそれだけで部屋の大部分を占めてしまいそうな空間は、思わず言葉を失うほど。合宿所のぬいぐるみ部屋の方が、よほど広く感じられた。
「やっぱりテギョンさんはホテルの方が・・・」
「夜中だぞ、今から俺にまた車を走らせろと言うのか?何分かかると思ってる。それとも近くに立派なホテルでもあるのか?」
「・・・ありません・・・」
「だったら俺はここに泊まる」
困り顔のミニョを尻目に、俺は中へ入った。
「ふうっ・・・疲れたな・・・」
今日はいろんなことがあった一日だった。ありすぎだろう!というくらい。
俺は大きく息を吐くと、壁を背もたれにして、床に腰を下ろした。
『芸能界をやめる』
勢いで出た言葉だったが後悔はしていない。将来的には独立することを考えていたが、そこへ向かう道は一つじゃないことに気がついたから。
しかし事務所を辞めるのは、今日明日というのは無理だろう。契約も、リーダーとしての責任もある。
これからどう動くか・・・
考えることは山ほどある。でも今は、少し離れたところから不安げな表情で俺を見ているミニョの温もりを感じたかった。
何も言わずに手を伸ばした。
おずおずと俺の手を取ったミニョを引っ張れば、バランスを崩した身体が倒れかかってくる。俺はそれを抱きとめると前を向かせ、脚の間に座らせた。
後ろから包み込み、肩にあごをのせる。
「ちょっ、ちょっと、テギョンさん!?」
もがくミニョを押さえこむように前に回した手に力を込めた。
「俺は眠い、暴れるな」
「だったらすぐにお布団敷きます、使ってください」
「一緒に寝ようと誘ってるのか?」
「ち、違います!私は床でもどこでも寝れるんで、お布団はテギョンさんが使ってください」
「どこでも寝れるなら、布団で俺とでも寝れるな」
「へ!?あ、あの、それは・・・」
「ぷっ・・・くっくっ・・・」
きっとミニョの顔は真っ赤になっているんだろう。頬に伝わる熱で判る。
裏返った声。
甘い香り。
やっと手に入れた宝物。
わたわたと慌てる姿が楽しくて、俺は捕獲したテジトッキが逃げないように、腕の檻に閉じ込めていた。
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