日蝕 57 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

 

疲れていたのは確かだ。

だけど少しも眠くない。

そしてついさっきまで感じていた疲れも、まるで魔法でも使ったかのように、きれいに消え去っていた。

理由は判っている。なぜかと考えるまでもない。

愛しい女を初めてこんな場所で抱きしめてるんだから、疲れなんて吹っ飛ぶだろう。

静寂で満たされた部屋に二人きり。

そのことを意識すると、途端に緊張感が俺を包み込んだ。


「テギョンさんの心臓の音がよく聞こえます」


「そ、そうか?田舎は静かだからな」


「ドクドクって・・・すごく速いような気が・・・それに何だか身体も熱いですよ、大丈夫ですか?」


「シャ、シャワーが熱かったんだ」


心配そうな顔で俺を見るミニョの瞳に吸い込まれそうだ。




『手は出さない』


『ファン・テギョンは有言実行の男だ』




どうしてあんなことを言ってしまったのか、と少し悔やんだ。


首元に鼻を近づける。

俺がいつも使っているボディーソープなのに、そこから香るのは少し甘さを含んだミニョの匂い。

腕、胸、脚・・・

触れているすべてが柔らかくて、気持ちよくて・・・



「あ、あの、テギョンさん?」


おとなしくなっていたミニョが、またごそごそと動き出した。


「こら、動くな」


「でも、あの・・・脚が・・・テギョンさんの脚が、動いてます」


指摘されて気づいた。いつの間にかミニョの脚を挟み、すりすりとその感触を楽しんでいることに。


「お、俺は手は出さないと言ったが、脚を出さないとは言ってない」


顔を上げたミニョと目が合い、俺は気まずくて視線を逸らした。


「ぷっ・・・くくっ・・・」


ミニョが笑いだす。その笑いはなかなか止まらなくて。

俺はそんなに可笑しなことを言ったんだろうか?

俺の胸で笑い続けるミニョ。

一応俺に気を遣ってるのか、笑うのを堪えようとして、でも堪えきれず、くすくすと身体を震わせ続ける。

その姿が可愛くて。

穏やかで幸せな時間。

俺がずっと求めていたもの。

ここはミニョの部屋で、ミニョの布団で・・・


あーもう、ダメだ!


俺はミニョに覆いかぶさり、そしてそのまま唇を塞いだ。


「んっ・・・テギョンさん、手は出さないって!」


「手は出してない、俺は口を出してるんだ」


「口を出すって・・・使い方、違ってませんか?」


「う、うるさい、嫌ならやめる、はっきり言ってくれ」


さっきのような笑いはミニョには起きていない。

俺を見つめる目。

恥ずかしげに少し流れた視線は、すぐに戻ってきた。


「いや・・・・・・じゃ、ない・・・です・・・」


カーッと真っ赤に染まる顔。

俺はゆっくりと顔を近づけ、深く深く、口づけた。





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