なんどか宙にういたあと、サンバの体はどすんと地面に落ちて、ブランコのように同じ場所でゆらゆらゆれはじめました。次のころころぽよーんどすんがおとずれるのを覚悟していたサンバですが、やがて横向きに体がとまり、もうころころところがることはありませんでした。

どきどきしながら、サンバが目を開けると、たくさんの小さな黄色い花がありました。その花のしげみがクッションになって優しくサンバの体をうけとめてくれたようです。

「お花さんたち、助けてくれてありがとう」

お礼をいってサンバは起き上がろうとしました。

しかし、手足がなにかにしばられて、身動きがとれません。

サンバはそろそろと首を右にうごかすと、サンバのすぐ横に、赤い風船がみえました。

あのころころころがっていたときでも、サンバはひもをにぎってはなさなかったのです。しかし、宙にういていたはずの風船が、なぜ、サンバのすぐ横にあるのでしょう?

 

「だいじょうぶか?サンバ!!」

たくさんの風船を手にしたうさピィが、サンバのところまでやってきました。

風船をとりそこなってこけたうえ、みうごきがとれないサンバは、少し涙目になってしまいました。まったく、こんなことではりっぱなヒーローになれません。

サンバは、むりに笑顔をつくっていいました。

「体がうごかないんだよ。それに、風船をひとつとりそこねちゃったよ。」

すると、うさピィはふしぎそうな顔をしていいました。

「ふたつともちゃんとあるよ。ひとつはサンバの顔のそば、ひとつはサンバの足元に。」

サンバは首を動かして、じぶんの足元をみました。とりそこなった、あの青い風船がサンバの足元にぴったりとくっついていました。

「体がうごかないのは、風船のひもがからまっているからだよ」

うさピィのいうとおり、ほそい風船のひもがサンバの体にまきついていました。

ジャンプしたとき、風船をつかまえてころころころがり、そのときにひもがぐるぐると体にまきついてしまったようです。

「風船ってゆだんすると、どっかにとんでいくんだね」

グルグルまきのままサンバがいうと、

「ふふふ、それこそが風船だよ。」

うさピィは、風船博士のように得意げにそういいました。



 

サンバはつかまえた青い風船のひもを口にくわえると、赤い風船をつかまえることにしました。

赤い風船はゆっくりととんでいたので、すこし走るとすぐにおいつくことができました。落ち着いてしんちょうにひもにむかって手をのばし、ひょいとひっかけると、簡単につかまえることができました。

「やった!!」

うれしくて、サンバは叫びながらガッツポーズをしました。

そのとたん、口にくわえていたひもがするりとぬけ、青い風船はふわりとうかびとんでいきました。

 

サンバはあわてて、にげだした風船のひもに手をのばしました。

そのときです。ざわりととつぜん強い風がふきました。青い風船は風にのってスピードをあげ、空にむかってとんでいくではありませんか!!

このままでは、風船ににげられてしまいます。

赤い風船のひもを左手にぐるりとまきつけると、サンバは助走をつけ、とんでいく風船のひもにむかっておもいきりジャンプしました。それは、サンバがいままでとんできたジャンプの中で、一番高く、一番長い、大きなジャンプでした。

そして、青い風船のひもをつかまえようと右手をふりまわしたときでした。

「あっ」

サンバは空中でバランスをくずすと

どすん!!と地面にころがりおちてしまいました。

風船にまけないくらい、まんまるな頭とまんまるな体のサンバは、ころころころころころところがり、ぽよーーんと宙にうかんだとおもったら、

どすん、ころころぽよーん

地面におちてはころがって宙にうかび、地面におちてはころがって宙にうかび、、、。

「うわわああああああ」

原っぱを越えてどこまでころがっていくのかしら?空?海?

やがてそんな心配もできないほど、空と地面がぐるぐるまわって、どっちが上でどっちが下か、わからなくなってきました。

ついに、サンバは目をとじてしまいました。

 

どすん!ころころぽよーん

どすん!ころころぽよーん

どすん、ころころぽよーん



 

さて、サンバのお腹とうさピィのお腹によるデュエットがおちついたところで、

「えへん」

うさピィはひとつせきばらいをしました。

「サンバ。あれはね、あめだまではなく、風船だよ。」

「ふうせん?!」

「うん、食べ物じゃないよ。あの大きさからみると、きっと特別な風船だ。」

「ふうせん?とくべつ?」

「よし、つかまえにいこう!!」

うさピィはそうさけぶと、丸太からとびおり、ぷわぷわとうかぶ風船へむかって走りだしました。

風船も、特別もよくわかりませんが、サンバは丸太からそろそろとおりると、うさピィよりおくれて、風船にむかってはしりだしました。

 

かけっこのとくいなうさピィは、あっというまに風船のところへたどりつき、

ぴょん!ぴょん!ぴょーん!

得意なジャンプをきめて、風船をつかまえはじめました。

(ぼくがおいつくまでに、うさピィが風船を全部つかまえてしまうかしら?ぼくも、特別な風船を自分でつかまえてみたい。)

サンバがそうおもったときです。

うさピィがとりそこねた青い風船と赤い風船が、サンバのほうにとんでくるのがみえました。これはサンバには大チャンスです。

サンバはうさピィのように高くジャンプできないので、どうやって風船をつかまえようかとかんがえました。踏み台があればなんとかなるかもしれません。でも原っぱに都合よく踏み台がおいてあるはずもありません。丸太を踏み台のかわりにすればつかまえられますが、風船が丸太のところまでうまいぐあいにとんでくるとはかぎりません。

 

そのうちに、ふたつの風船がサンバの目の前にやってきました。風船をよくみると、風船の下のところにおへそみたいなむすびめがあって、そこから細いひもがたれさがっています。そのひもはサンバがジャンプしなくても、じゅうぶんつかまえることができる長さでした。

サンバはおちついて風船の動きを確認すると、ひょいと青い風船のひもをつかみました。ひもをたどって、サンバは両手で風船をつかまえました。

風船はサンバの頭よりも大きく、遠くからはあめだまのようにみえたのに、あめだまはもちろん、わたがしやマシュマロよりも軽い不思議なものでした。



  

「うさピィ、大きなあめだまがとんでいるよ!」

「大きなあめだま?」

うさピィはサンバの視線の先をおいました。

 

そうしている間にも、あめだまは原っぱのあちこちにぷわぷわふらふらしながらとんでいきます。

ちょうちょみたいに、宙にうかぶ大きなあめだまなんて、サンバは生まれて初めてみました。

(ああ、今までぼくが食べてきたあめだま全部よりも大きいよ。あんなに大きいのだから中にシュワシュワソーダがはいっているかも!甘くておいしいだろうな、、、今日だけで、食べきれないよ。明日も明後日もなめつづけないと!)

口の中に広がるあめだまの甘い味を想像していると

きゅるるる、、、

サンバのお腹がなりました。今度はうさピィに聞こえたかもしれません。

 

ぎゅるるるる、、、

すると、次にもっと大きくお腹がなりました。

 

小さく、きゅるるる

大きく、ぎゅるるるるる・・・

小さく、きゅるるる

大きく、ぎゅうううるるる

 

それどころか、お腹の中にかいじゅうがすみついたとしか考えられないくらい、お腹の音がなりやみません。

サンバがびっくりしていると

「えへへ、サンバがあめだまっていうから、ぼくにもあめだまにみえてきたよ。 お腹がぎゅるるるなっちゃった」

口元のよだれを手でぬぐいながら、うさピィがいいました。

とても大きなお腹の音は、うさピィのお腹がなる音だったようです。

(お腹にかいじゅうがすみついたわけではなかったんだ。)

サンバはほっとしました。

そして、ちょっぴり残念におもいました。だって、お腹の中にかいじゅうがいるなんて、かっこいいでしょう?


原っぱのおへそのあたりに横だおしになった大きな丸太があります。ふたりはそこまでもどって、なにかをさがすことにしました。―丸太のなかは空どうで、そこにお昼ごはんをおいているんですよ。―

うさピィは丸太にとびのって、さらに背伸びをして原っぱをみわたします。

サンバも、よいこらせ、と丸太の枝を利用してなんとか丸太によじのぼると、空をみあげました。

目の前に、ミルクシャーベットのように白いツインソウル山の、三角のちょうじょうがふたつみえます。おひさまの光にきらきらとひかって、まぶしいくらいです。

そのまま、空をみながらぐるりとまわると、ツインソウル山の反対の青空に、魚の形をした白い雲をみつけました。

「うさピィ。お魚の形をした、大きい雲がうかんでいるよ」

「サンバ、空にはおひさまと雲と鳥しかないよ。それじゃあ、変身ポーズにつかえないよ。原っぱの方をさがさなきゃ」

サンバは、うさピィのいうことはもっともだとおもいました。

だけど、もう一度だけ、空をみあげながらぐるりとまわりました

魚の形をした雲があまりにもおいしそうだったからです。

 

(あんなに大きなお魚をたべたら、ぼくも原っぱのすみからすみをみわたせるぐらい大

くなっちゃうよね。ふふふ、あの大きさの魚なら、一匹でいろいろな食べ方ができるよね。おさしみ、カルパッチョ、なんばんづけ、しおやき、、、ママのとくいなしおがまやきもいいな)



きゅるるるる、、、


サンバのお腹が小さくなりました。

よだれがたれているかもしれません。サンバはあわてて口元をぬぐいました。

そう、いまはさかな雲にむちゅうになっている場合じゃありません

サンバはうさピィにお腹の音が聞こえたかしら?と、ちらりとうさピィをみました。

なにかさがしにすっかり夢中で、うさピィはサンバの方をみていませんでした。お腹の音は気づかれていないようです。

ちょっぴり、よだれをたらしていましたが、それもうさピィにはないしょです。

ほっとしたサンバが、さがす場所を原っぱにかえようとおもったときです。

赤や青、黄色やピンクの、まん丸いものが原っぱのはしの方で、ぷわぷわと宙にうかんでいるのがみえました。

レモンの黄色、いちごの赤、メロンの緑、ぶどうの青。

サンバが大好きなあめだまにちがいありません。