令和6年度助成金のゆくえ(下) | 新労社 おりおりの記

令和6年度助成金のゆくえ(下)

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令和6年度助成金のゆくえ(上)の続きです。前回は新設とよくなる助成金でしたが、今回は悪くなる、廃止、横ばいだが特記アリの助成金です。隙あらば削ろう、あんまりカンタンに使われるヤツは削ろう、政策の方向に持って行けるように削ろうと、マイナスの理由はさまざまですが、そこに国が何を目指しているかが浮き彫りになります。

 

プンプン 悪くなる助成金

 

★雇用調整助成金 

経済的な不況時の、休業等に伴う手当補助の助成金です。支給日数が 30 日に達した判定基礎期間の後の判定基礎期間における教育訓練実施率が支給日数の1/10 未満の事業主については、休業手当等相当額の1/4(中小企業事業主は1/2)の助成率を適用することになります。教育訓練をやりましょう、ということです。またクーリング期間についても実質支給を受けた期間から起算するという微改正がありました。

 

また、それとは別に令和6年1月1日以来、能登半島地震の緩和特例(石川、富山、福井、新潟県)も行われています。特例は人確金 作業員宿舎等施設設置コース(石川県のみ)でも行われています。

 

★65歳超雇用推進助成金 高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上の非正規⇒正社員の昇格に助成されます。額が無期雇用労働者に転換した労働者1人あたり 48 万円(中小企業事業主以外は 38 万円)から無期雇用労働者に転換した労働者1人あたり 30 万円(中小企業事業主以外は 23 万円)に減ります。

 

★早期再就職支援等助成金 雇入れ支援コース

以前の労働移動支援助成金 早期雇入れ支援コース。再就職の労働者を「受け入れる」ための助成金です。昇給5%の他に、OJT実施助成が時給800円から定額20万円<大企業11万円>になります。OFF-JTの方は時給900円が960円になり、経費助成の上限30万円を訓練時間数に応じて10~30万円にします。

 

★両立支援等助成金 介護離職防止支援コース

コロナ加算(制度導入の措置)が正式に廃止になりました。なお、母性健康管理措置による休暇取得支援コースは昨年9月に廃止になっています。

 

★両立支援等助成金 出生時両立支援コース

代替要員加算は別の助成金に。70%を超えて増えた加算が廃止になりました。

 

★働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース 

建設、運輸、病院、鹿児島サトウキビ業の時短の助成金です。2024年4月1日以降、法改正で新しい残業基準で事業を行わねばならず、バスや電車等の減便などはニュースになっていますが、4月1日以降もそのためのこの助成金は適用猶予業種等対応コースから名前を変えて存続します。ただしもらえる最大限度額はさすがに半額以下になります。ただ加算項目(さらにやったら助成金もっと出しますよ)は増えます。

 

★業務改善助成金

特例事業者要件(オプション助成金) コロナ特例の「生産量要件」 が終了(賃金要件と物価高騰等要件は引き続き継続) また、経費の特例 「生産量要件」又は「物価高騰等要件」の事業者に認められてい た「関連する経費」が終了(車・PCなどの導入は引き続き実施) 申請回数は年1回までに、事業場内最低賃金の引上げは1回のみに少なくなります。

 

★人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース

細かいところが改正になります。総じて手数が増え、マイナスです。

・eラーニング・通信制による訓練の実施場所変更は、変更届の提出が必要。 

・公共施設などが実施する訓練の場合、修了確認できれば「8割以上の受講」とします。訓練で使用した教材の目次の写しの提出が不要。 

・OFF-JTをテレワークにより自宅等で実施の場合、企業としてテレワーク規程のある就業規則等の提出が必要。

・支給対象となる資格試験の受験料は、訓練課程の修了後6か月以内なことが必要。

・資格・試験は資格証明書類の発行費用や、 受験の前提として必須となる検査に係る経費も支給対象経費として申請可能になりました。

 

★ 人開金の共通要件見直し…下がるもの

・OFF-JT を在宅・サテライトオフィス等においてeラーニング、通信制又は同時双方向型の通信訓練により実施する場合、テレワーク勤務を制度として導入し、当該制度を労働協約、就業規則等に規定していることがわかる書類の提出が必要になります。 

・eラーニング・通信制による訓練について、実施場所を変更する場合は、当初計画していた訓練実施日又は変更後の訓練実施日のいずれか早い方の前日までに変更届の提出が必要となります。 

 

★早期再就職支援等助成金 雇入れ支援コース

 再就職援助計画対象者雇用の助成金です。名称は変わり、賃金上昇加算(離職前に払われていた賃金と、雇入れから支払われた賃金とを比較して5%以上上昇させた場合に支給対象者1人につき20万円が加算)がなくなります。

 

(業務改善はひさびさの後退)

えーん  廃止される助成金

これも、令和6年度予算要求以来の各種資料、特に行政レビューの中から取り上げましたが、どうも昨年秋と比べて春になってみると廃止の「舌鋒」が穏やかになったような気がします。廃止といってもほとんど代わりの助成金があります。

 

★産雇金 事業再構築支援コース 

後釜に「新設の」産業連携人材確保等支援コース、補助金をベースにしたポスト「基盤人材」助成金のはじまりですがそれを引き継ぎます。

 

★人確金 介護福祉機器助成コース

介護事業所が、機器の導入をして有効だった場合の助成。申請数も少なく、廃止確定です。今後は都道府県によって設備については助成されたりしなかったりします。

 

★キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長コース

週の労働時間の短い方の労働時間を、延長し、社会保険に入れた場合に助成します。昨年秋できた社会保険適用時処遇改善コースに役目を譲ります。

 

★働き方改革推進支援助成金 労働時間適正管理推進コース

勤怠管理等を自動化した統合システムに出ます。政策目的を達成したのでしょうか。昨年9月の予算要求では働き方改革推進支援助成金の中に名前がなく、後釜助成金もありません。

 

(介護の助成金の歴史も10数年)

 

ニコニコ その他

上記以外は「変わらない」助成金です。名称などが変わるものは特記します。

 

★障害者職業能力開発助成金

人開金から移ってきました。コースから「助成金」と名称は変わりますが、引き続きしくみは人開金時代と変えずに存置します。特定の企業の障害者の訓練のためですからね。

 

★早期再就職支援等助成金 中途採用拡大コース

 中途採用者の雇用管理制度整備、採用拡大の助成金です。名称は変わりますがほぼそのまま残ります。45歳以上の中途採用拡大(3年間で20ポイント以上)し賃金アップ5%以上すれば、100万円出ます。45歳以上の者が中途採用者の半数以上を占める要件も必要です。

 

★早期再就職支援等助成金 UIJターンコース

地方公共団体が実施する移住支援施策を利用したUIJターン者を採用した中小企業に対し採用活動に要した経費の一部を助成します。移住者自身にも移住支援金が出ます。

 

★人確金 外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人の雇用管理制度導入のための助成。昨年は1件でした。しかし外国人への措置でなくなっているにもかかわらず、廃止にはならないようです。外国人はケアもさることながら、賃金アップが不可欠になったからでしょうか。

 

★高年齢労働者処遇改善促進助成金

高年齢雇用継続給付金の削減の穴埋めをする助成金です。令和6年度いっぱいで廃止です。それに伴い令和7年4月に高年齢雇用継続給付金もなくなります。

 

(どうしても使わせたいキャリアアップ助成金「処遇改善コース」)

 

今回の改正は、変化は字数を費やす割には少ないです。しかしあまり変化させると、進む電子申請のためのシステムメンテが大変なのと、ある程度助成金も実務をパターン化する必要があるために、似たような助成金をまとめる傾向があるのです。ただ特に障害者関連など、種類も増えていますから、助成金審査の現場は大変でしょうね。それも電子化、パターン化に拍車を掛けます。

 

まずおとなしい改正と言えばおとなしいのですが、これまでスポットの当たってこなかった助成金がテコ入れしたということもあり、助成金の分布がてんでバラバラだったのが、徐々に用途別にまとまってきました。おカネが出るからやる、ということ以外に、特にムツカシイ採用・定着に活用できるなど、会社の困りごとを解決するコンサルに活用できる場面ができるような年になるかと思います。

 

また、業務改善助成金など、経産省系の補助金に押されている助成金もやや縮小傾向です。働き方改革推進支援助成金も、技術革新と当局の理屈が合わないことが多く、要件が多くなってきています。経産省の補助金で代替できるものについては、厚労省がだんだん「負けて」きたと言えるのではないでしょうか。

 

<令和6年度助成金のゆくえ:完>