令和5年度助成金のゆくえ(上) | 新労社 おりおりの記

令和5年度助成金のゆくえ(上)

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令和5年度の助成金は昨年夏の予算要求から始まって、令和4年第2次補正予算を経て、予算案成立を控えて今に至っています。4月からの助成金はどうなるでしょう?例年通り「新設・好転・後退・廃止・横ばい」の区分で見ます。 

 

今回は横断的な改正が多いのです。生産性要件の廃止と賃上げへの建て替えが行われ、ハローワーク以外の雇用関係助成金の対象のヒトを紹介できる民間職業紹介事業者のハードルがやや細かくなるのです。生産性要件の廃止等は盛り込み、民間職業紹介事業者についてはあまり変わらないので省きます。 

 

□新設される助成金 

 

・産業雇用安定助成金 事業再構築支援コース 

事業再構築の雇用を確保し必要なコア人材を雇用への助成。コロナの影響で生産量が減少しており、新しく起こす事業のための人材を採用(年収350万以上)すれば、半年ごとに140万ずつ支給されます。ただ経産省の事業再構築補助金受給が前提で、補助金の決定が出た後の、プラス助成金ということになります。 

 

・働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース 

1年後の「2024年問題」に備えて成果目標を達成するために設備投資等をした場合、その費用の一部を助成金として支給します。 令和6年4月には労働時間の上限規制の撤廃が予定されている建設、自動車運転、医業等において、就業規則等の作成・変更費用、研修費用(業務研修を含む)、外部専門家によるコンサルティング費用、労務管理用機器等の導入・更新費用、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用、人材確保等のための費用等 労働時間短縮や生産性向上に向けた取組に必要な経費の一部を助成します。

 

◇よくなる助成金・・・相対的によくなるものも含みます。

 

・両立支援等助成金 育児休業等支援コース 

生産性要件を廃止します。その代わり助成額を多少増額。育児休業の休業取得時、職場復帰時、職場復帰後支援に関する助成額を対象労働者1人当たり28.5万円から 30 万円にします。業務代替支援の新規雇用した場合の助成額を1人当たり47.5万が 50 万円、育休取得者が有期雇用者である場合の加算額を9.5万から 10 万円に。 

 

新型コロナ感染症特例は再設定。小学校休業助成金からシフトしてきます。1人当たり 10 万円で、1企業 10 人まで(上限 100 万円)に増えます。 また、育児休業等に関する情報公表加算が新設され、育休取得時・職場復帰時、業務代替支援、職場復帰後支援のいずれかの助成金を受給した事業主について、育児休業等の取得の状況を公表した場合、追加で2万円が支給されます。 

 

 ・介護離職防止支援コース 

生産性要件を廃止、新型コロナ感染症特例も廃止になりますが、その代わり助成額を変更。介護休業の休業取得時、職場復帰時、介護両立支援制度に関する助成額を対象労働者1人当たり28.5万円から 30 万円にします。業務代替支援加算及び個別周知・環境整備加算が新設されます。 

 

・不妊治療両立支援コース 

生産性要件を廃止します。その代わり助成額を多少増額。休暇の取得、長期休暇の加算を28.5万円から 30 万円にします。 

 

・働き方改革推進支援助成金 既存3コース 

実務上、行われていない「目標」があるため、書類や手順の増加など厳格化します。他の支給率や対象は変わりません。賃金を引き上げた事業主に対して助成額を加算する「賃上げ加算」をさらに増額します。

 

・求職者支援制度

 「デジタル訓練校」を始めるところには、認定職業訓練実施奨励金の上乗せができます。

 

・人材開発支援助成金 人材育成訓練コース  

教育、企業研修関連の助成金を集めています。 新設ですが、かつての特定訓練コースと一般訓練コース、特定訓練コースの併合です。枝コースがありましたが、これまでの枝コースも名前を変えて生き残ります(整理後は人材育成訓練、認定実習併用職業訓練、有期実習型訓練)単価は令和4年12月以降から横ばいですが、以前の一般訓練コースに当たるものは額が上がります。

 

「賃金要件」及び「資格等手当要件」により助成額の加算が生産性要件に代わって加わります。賃上げに係る要件が設定されている訓練について、賃上げ要件を満たしていなくても、就業規則等に定めて、人材育成支援コースの訓練を受けた労働者の賃金を増額した事業主に対し、経費助成率、経費助成額及び賃金助成額を加算する仕組みを新設します。そのカタとして生産性要件を廃止し、労働者に係る賃金を一定の割合以上で増額した事業主や就業規則等に定めるところにより、助成金対象の訓練を受けた労働者に対し、賃金を増額した場合、助成率又は助成額を上げます。

 

・業務改善助成金 : 賃金を上げるための設備投資の助成金です。 今年度特例コースがなくなりましたが、本体はそのまま存置です。30円以上賃上げの場合の限度額が一部上がり、助成対象経費が拡充します。 特例事業者のうち、②生産量要件または③物価高騰等要件に該当する場合、助成対象となる生産性向上に資する設備投資等として認められていないパソコン等や一部の自動車も助成対象となります(パソコ ン等は新規導入に限ります)。 また、生産性向上に資する設備投資などに「関連する経費」も、この設備投資等の額を上回らない範囲で助成対象となります。

 

 

 

 

◆後退する助成金・・・どちらかというとデメリットが多い、というものも含みます。

 

・雇用調整助成金

コロナ特例がなくなって、コロナ前の標準的ないろいろと要件の付いたものに戻ります。

 

65 歳超雇用推進助成金 既存3コース 

生産性要件を廃止します。

・65歳超継続雇用促進コース 

上限額は変わりませんが、1人や制度導入などの最低額が下がります。

 

・両立支援等助成金 出生時両立支援コース 

生産性要件を廃止します。第2種の追加助成金で2要件を追加します。第1種助成金の申請後3年度以内に男性被保険者で育児休業の取得割合が、2事業年度以上連続して 70%以上となったこと。第1種助成金の申請年度で、男性被保険者で配偶者が出産したものが5人未満であり、男性被保険者育児休業取得割合が 70%以上であること。また、育児休業等の情報公表加算が新設されます。定められた事項を厚生労働省のHP「両立支援のひろば」で公開した場合追加で2万円を支給します。

 

・新型コロナ母性健康管理措置による休暇取得支援コース 

対象事業主の要件として、就業規則等において勤務時間の変更、勤務の軽減、休業その他の措置を整備し、当該措置の内容を社内に周知することを追加します。また、令和5年9月 30 日までの時限措置で、支給額を、対象労働者1人当たり 28.5 万円から 20 万円に変更。 

 

・キャリアアップ助成金 正社員化コース 

生産性要件を廃止します。助成額には変化なし。なお、この4月からの支給申請は正社員要件、非正規社員要件等の就業規則への記載が必須になります。なお、人開金と組み合わせた訓練修了加算措置の対象となる訓練は、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースとします。加算金額などは変わりません。 

 

・賃金規定等共通化コース 

生産性要件を廃止します。その代わり助成額を見直し、57万円(大企業42万7,500円)を、1事業所当たり 60 万円(45 万円)とします。 

 

・賞与・退職金制度導入コース 

生産性要件を廃止します。賞与又は退職金を導入した場合 1事業所当たり 40 万円(30 万円)賞与及び退職金を導入した場合 1事業所当たり 56 万 8,000 円(42 万 6,000 円)となり、1~2万円増えます。 

 

・短時間労働者労働時間延長コース 

生産性要件を廃止します。その代わり1週間の所定労働時間を1時間以上2時間未満延長した場合 対象労働者1人当たり5万 8,000 円(4万 3000 円)等、2,000~12,000円ほど単価が上がります。

 

・人材確保等支援助成金 介護福祉機器助成コース 

 ・テレワークコース 

 ・外国人労働者就労環境整備コース 

 ・若年者及び助成に魅力ある職場づくり事業コース 

 ・作業員宿舎等設置助成コース 

 

・人材開発支援助成金 建設労働者認定訓練コース 

 ・ 建設労働者技能実習コース  

  建設キャリアアップシステム技能者情報登録者における賃金助成については、割増措置を継続します。 

 

上記人確金5つ、人開金2つは生産性要件を廃止して賃上げに建て替え、雇用する労働者に係る賃金を一定の割合以上で増額した事業主は助成率又は助成額が上がる、と改めます。 

 

 

・労働移動支援助成金 早期雇入れ支援コース 

新型コロナウイルス感染症の影響により離職した 45 歳以上の者を離職前と異なる業種の事業主が雇い入れた場合に 40 万円を加算することは廃止されます。昨年12月の改正でできた賃金上昇加算などは変わりません。 

 

・特定求職者雇用開発助成金 就職氷河期世代安定雇用実現コース 

対象となる方を昭和43年4月2日~63年4月1日生まれの方とし、「1年未満の正社員期間」に、正社員並みの能力を必要とする職業に就いていた期間を含むこととし、婚姻、妊娠、出産又は育児を理由とした離職により、過去5年間に通常の労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下となった者を除外します。 

 

・成長分野人材確保・育成コース

特開金の各コースで成長分野に再就職した割り増しです。就労経験のない職業に就くことを希望する就職困難者を雇い入れ、人材育成計画を策定し、人材育成を行ったうえで賃金引上げを行う事業主に対して、高額助成(通常コースの1.5倍)を行い、現行の成長分野以外の分野も対象に追加。ただし一定の訓練期間・時間数を満たす訓練を実施する場合に限ります。対象者は専門職限定になり、未経験者のみ対象です。

 

・トライアル雇用助成金 一般トライアルコース 

令和5年4月1日雇い入れ以降は、対象者を昭和 43 年4月2日以後に生まれた者とします。 

 

・高年齢労働者処遇改善促進助成金

昨年度よりも賃金増額要件が盛り込まれ、高年齢給付金の支給が減少する要件が数字ではなくなります。支給率が2/3,4/5(大企業)から1/2,2/3に減ります。 

 

 

■なくなる助成金・・・他の助成金に吸収されるものは含みません。

 

・雇用調整助成金 新型コロナウイルス感染症特例 : 特例の休業等に伴う手当補助。 

・緊急雇用安定助成金 : コロナ特例による雇用保険非加入者の、休業助成金。 

・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

 休業手当を支払えない事業所のための労働者あて「給付金」。 

・特開金 被災者雇用開発コース : 東日本大震災の被災者雇用の助成金です。役割を終えました。 

・トライアル雇用助成金 新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース

 コロナ縮小に伴い、廃止です。 

・新型コロナウイルス感染症 母性健康管理措置 休暇制度導入助成金 

 労災勘定で、休暇付与日数が5日でした。雇用勘定の方は9月まで。

 

特開金 生涯現役コース、小学校等休業助成金等は他の助成金に吸収されます。

 

(下)に続きます。