令和5年度助成金のゆくえ(下) | 新労社 おりおりの記

令和5年度助成金のゆくえ(下)

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令和5年度助成金のゆくえ(上)の続きです。新設・好転・後退・廃止と述べてきましたので、この回は横ばいです。ほとんど変わらないのなら書かなくてもいいのですが、ちょっと後退してちょっと好転してプラマイゼロ、という助成金がこの改正では多いのです。生産性廃止が原因です。コロナ後の国際競争力強化と賃上げのために生産性を上げなくてはならない、予算をつぎ込むべきなのになぜ廃止か?いや、予算は効果的に使うべきで、やり方を変えたのだ、ともいえると思います。私個人が見た独断と偏見とはいえ、ちょっと難しい判断です。

 

 

◎令和5年度横ばいの助成金・・・プラスマイナスゼロも含みます。

 

・産業雇用安定助成金 雇用維持支援コース 

在籍型出向で、出向元と出向先の双方の事業主に対し賃金助成するこれまでのものです。 昨年12月に新しく名前が付きました。生産量要件・雇用量要件とも昨年12月以来そのままです。

 

・スキルアップ支援コース

労働者の「スキルアップのための」在籍型出向実施の助成です。 労働者のスキルアップを在籍型出向により行うとともに、当該出向から復帰した際の賃金を出向前と比して5%以上上昇させた事業主(出向元)に対し、当該事業主が負担した出向中の賃金の一部を助成するものです。12月にできた時と変わりません。

 

・人材開発支援助成金 人への投資促進コース 

賃上げに係る要件が設定されている訓練について、賃上げ要件を満たしていなくても、就業規則等に定めるところにより、人への投資促進コースの訓練を受けた労働者の賃金を増額した事業主に対し、経費助成率、経費助成額及び賃金助成額を加算する仕組みを新設します。そのために生産性要件を廃止し、雇用する労働者に係る賃金を一定の割合以上で増額した事業主または、助成金対象の訓練を受けた労働者に対し、賃金を増額した事業主には、助成率又は助成額を上げます。

 

・事業展開等リスキリング支援コース

昨年12月登場した新たな事業展開等に伴う訓練実施の助成。企業内における新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、事業主が新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、高率助成を行います。最大75%、賃金助成最大960円、限度額1億円。登場時と変わりません。

 

・障害者職業能力開発コース:障害者の能力を訓練するための助成金です。変わりません。

 

・特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース

生涯現役コースを併合します、65 歳以上の者を対象労働者に追加します。助成金の対象者によっては、引き続き 65 歳未満の求職者対象のものと、引き続き 45 歳以上 65 歳未満の求職者を対象とするものもあります。

・生活保護受給者等雇用開発コース : 変わりません。

 

・職場適応訓練費:委託訓練を行う事業所向けの助成金。障害者の方にいい場合があります。

 

・労働移動支援助成金 再就職支援コース

不況時に従業員を円滑に再就職させます。再就職支援のため労働者を「出す」ための助成金です。変わりません。

 

・トライアル雇用助成金 障害者トライアルコース

障害者が就職して3~6か月で正社員にステップアップするための助成。テレワーク特例もそのままです。

 

・キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース : 昨年12月の改正以来変わりません。

 ・短時間労働者の労働時間延長コース:これも変わらない予定です。

 ・障害者正社員化コース : これも変わらない予定です。

 

・中途採用等支援助成金 中途採用拡大コース : 中途採用者の雇用管理制度整備、採用拡大の助成金です。昨年12月の見直し(情報公開等の縮小)以来、変わりません。  

 ・UIJターンコース : 地方で首都圏の方を採用する助成金です。

 

 

・エイジフレンドリー補助金 : 60歳以上の社員への設備投資や安衛教育に助成されます。5年度も置かれる予定です。

 

・地域雇用開発助成金 地域雇用開発コース :地域で雇用機会を創出し、雇用を維持する事業主に対して助成。  

 ・沖縄若年者雇用促進コース : 沖縄県で、35歳未満の若年求職者を雇い入れる事業主に助成されます。 

 

・通年雇用助成金 : 季節的業務に就く方を通年雇用した場合の助成金です。 

 

・働き方改革推進支援助成金 団体推進コース : 3社以上の企業団体の時間外労働の上限規制対応に対するものです。 


・団体経由産業保健活動推進助成金 : 昨年秋ようやく労働者健康安全機構の8個の助成金廃止の代償として、これ1個だけ出てきました。変わりません。

 

・高度安全機械等導入支援補助金 : 古い機械から新しい機械に変えた場合の助成金。競争的に交付します。 ただ出たのは昨年秋。5年度は早く出ることを願いたいものです。

 

・フィットテスト測定機器購入補助金 : 溶接作業でのフィットテストの機器導入の助成金。あまり出ず、5年度も変わらず出てきます。

 

・人材確保等支援助成金 中小企業団体助成コース : 協同組合の傘下事業所への雇用管理のための助成金です。

・外国人労働者就労環境整備助成コース : ほとんど変わりません。

 

 

令和5年度の雇用関係助成金は全体に当局にとって以下のような特徴があります。

 

・とにかく削りに削れ。ムダをなくせ。政策目的に忠実に執行せよ=要件をくまなくチェックして出せ。

・しかし採用→訓練→正社員化→労働移動の政策目的助成金については使えなくてもバラエティに富むように。

・政策目的助成金(政治家指示)以外は当局(厚労省・財務省)の意のままにせよ。

 

だからコロナ対策の「オイシイ」助成金は払底し、非常時の助成金(コロナ対策、失業対策)に代わる、前向きな助成金(起業、スキルアップなど)に重きを置くようになるのです。

 

そんな中で助成金と付き合うにはどうしたらいいか?「助成金本来の姿」に立ち戻る必要があります。

 

 

つまり「労務の制度福利を入れる→助成金が付いてくる」というスタンスです。「おカネが出るから→労務福利を入れる」というスタンスとは正反対。

 

おカネそのものだけでなく、いろいろな「労務商品」(DX化も含む)の一部でも全部でも助成金がその中で一角を占める、という状況であれば、おカネを出してくださる渋い顔の当局もホワイト企業やホワイト社労士に対していい顔をしてくれると思うのです。