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料理の記憶 24 「焼鳥編」 新体制

焼き場の練習で一番重要なのは「塩ふり」である。

肉に対してどれほど均等に塩を振れるのか?例えば家庭のバーベキューコンロで10本くらいの焼き鳥を焼いたとすると塩コショーが一緒になった調味料をパパっと適当に振りかければ済む。

 

しかしここは焼き鳥専門店である。

鶏肉、豚肉、つくね、牛肉、野菜など様々な種類の焼き鳥があり、焼き台1台に60~70本ほどの串が並ぶ。

その一つ一つの味付けは異なり、両面塩コショー、片面塩コショー、両面塩のみ、片面塩のみ、塩コショーなし、塩きつめ、コショーきつめ、など様々なバリエーションがある。

それを一串、一串に味を入れていくには、一串対して塩が均等にかからなければいけない。

となりの串に余分な味付けがついてはいけないのだ。

 

私のいた店では塩と胡椒が別々に分かれており、塩缶、コショー缶と言ってアルミで出来た缶にそれぞれが入っていた。

それを均等に振れるようになる為、自販機で買ったなっちゃんオレンジの缶を炉の上でひたすら振らされる。

同じ場所でなっちゃんオレンジを振り続けると、手が焼けそうになるくらい熱い。

しかしこれも慣れてくると、不思議なもので熱さが平気になるのだ。

さらに熟練ともなれば手を炭にかざして、温度を測ることもできるようになる。180㎝の炉に敷き詰められた炭を手で測りながら、ここが強い、弱い、と感じ炭を組みなおしたり、わざと強弱をつけてネタによって置く場所を変えたりする。

焼き鳥店のオープン直前には必ず焼き手は手をかざしているといっても過言ではない。

本人たちは無意識の状態でかざしているため、自分でも気が付いていない人も多い。

 

 

とは言っても私にとってはまだまだ先の話で、私はひたすらになっちゃんオレンジを振り続けるのである。

 

そんな中で私はついに運命の日を迎えた。

社員合格発表である。

5人の中から2人社員になれると言われて、私はその1人に選ばれたのだ。

嬉しい!やった~!!

なんか凄い嬉しかった。

あんまり普段から感情を表に出さないタイプだが、この時は凄い嬉しくて飛び上がったのを覚えている。

 

ついに明日から私は社員になる。

この一の店のメンバーとして働くことになる。

店長はちょっと変な人だし、主任は両方とも厳しいし、先輩社員もそれぞれ威圧的だし、アルバイトにしたってほとんどが大学生で、私よりも年上だったが、とにかく私はこのお店に受け入れられたのだ。

頑張るしかないっしょ!って感じだ。

 

こうして、当時9店舗のチェーン店(現在45店舗)だった焼き鳥店のなかで19歳だった私は最年少社員となった。

 

それと同時に一の店では新体制が組まれたのだ。

まずは店長の交代。ツチテンさんはマネージャーに昇格となり数店舗を見る立場になった。

よって新しく別のところから「課長」と呼ばれる人が店長としてやってきたのだ。

 

そして主任の移動。ガミさんが別の店舗の店長へと昇格。

もう一人のタックハーシーさんが1人主任として残る。

 

先輩社員のテーラーさんも移動になった。

私の2つ上で私は何かと面倒を見てもらっていたが、ほかの社員オカさん、サイさん、ヤマさんなどに今でいうパワハラ。むちゃくちゃな扱いを受けていたため、正直言ってテーラーさんにとっては良かったと思う。実際にこの後テーラーさんはこの時代に受けた仕打ちを倍にして返してやる!絶対あいつらを見返してやる!と口癖のように言っていた。

 

少し時期をずらしてこの後サイさんも移動になるため、新体制は以下の通りになる。

 

店長 課長

主任 タックハーシーさん

社員 オカさん、ヤマさん、私(コンドウ)、ドイちゃん

 

最後のドイちゃんは私と一緒に採用試験を受けた1人であったが、残念ながら選ばれなかった。

その後アルバイトとして一の店に残ることになり、なんとそれから数か月もしないうちに選ばれたもう一人の社員が辞めてしまった為に、ドイちゃんが急遽社員に昇格となったのだ。

 

私はその後ドイちゃんと仲良くなり、一の店がとても楽しい職場となった。

今ではあり得ないことも沢山あったが、それはまた次回にしよう。

 

つづく