◆「内定への一言」バックナンバー編

「兵ハ送ルナリ」(孫子)





こんばんは。今日は強風と雨の中、業界ゼミ「広告編」に8人も集まってくれ、満たされた気持ちで帰ってきた小島です。

終わった後は、「世の中はみんな広告でできている!」みたいな声も聞こえて、金融編を終えた昨日までは「世の中はカネだ!」と言っていたのに、学生さんの吸収力には驚きます。

相変わらず、「第一志望だから」という理由で来る方より、「いろんな仕事を知りたい」という理由の参加者の方が多いですが、やる気がある学生さんと学ぶのは至福のひと時で、「記者経験のこれほど素晴らしい使い道があるだろうか」と僕自身も感謝しています。


毎回の業界ゼミでは、「会計的視点」にとことんこだわっています。業界のあらゆる商品、業務内容を毎回「貸借対照表」の中の言葉に置き換え、この業種はどこの資産や負債をどう扱うのか、を見つめていきます。

理由は、会計が分からない人にまともな仕事は不可能だから。会計を知らずに仕事で喜びを得ることは不可能であり、仕事で成功してお金持ちになることもまた、それ以上に不可能です。

しかし、大学で教えている簿記論や財務諸表論は、経営の現場から見れば現実離れした「計算技術」に過ぎず、簿記を知らない人の志望動機は「消費者そのもの」で、毎年驚きを隠せません。


ということで、今年はどの学部、どの学年の学生さんでも、簿記検定2級に受かるくらいの基礎的知識が身に付くようなプログラムを組みながら、全ての業種を「会計的視点」から学べる『仕事事典』を作ろうと決意したわけです。

ということで、昨日の追加分を含め、現在、120講義のうち20講義が終了しました。


その中で「職種編」のうち、「企画」について扱った時に紹介した言葉が、「兵ハ送ルナリ」という中国の兵法家・孫子の言葉でした。

これは「戦争とは輸送である」という意味です。

では、一体何を言わんとしているかと言えば、これがまた2,500年前と思えないほど奥が深いのです。

古代から、というより今でもそうだと思いますが、多くの人は「戦争とは銃撃戦や爆撃、つまり軍事力が結果を決める」と思い込んでおり、「戦争」と聞けば「ドンパチ」ばかりやっていると考えます。

しかし驚くなかれ、なんと実際の戦争において「戦闘行為」が全体に占める時間は、「1,000分の1」もないのです。

ということは、「残りの99.9%」とは何なのか?

それは、「輸送・待機・移動」です。

戦争においては、確かに「ドンパチ」のニュースは大きく報道され、それが戦況に少なからぬ影響を与えることも事実です。

ですがそれは、「0.1%」でしかない、と孫子は指摘しています。

実際、戦争では大量の物資輸送を必要とし、激しい消耗が行われるため、交戦国では資源産業や軍需産業が莫大な収益を生み出します。


これは『孫子の読み方』(山本七平/日経ビジネス人文庫)に詳しく書いてあることですが、例えば「戦車の輸送」のためにも「船の燃料」が必要です。

そして、戦車は不整地(舗装されていない道路)向けの大型車両であり、港湾からそのまま走らせては燃料がもったいないので、その戦車を輸送するためにも、「輸送車両の燃料」が必要です。

それからやっと前線に行けば、そこからは「戦車の燃料」が必要です。もちろん、ここまでの経路で使用された全ての「燃料=石油」には、きっちりコストがかかっています。

ということで、一台の戦車がその本来の用途である「砲撃」をする前の段階で、既に莫大な消耗が発生しているわけです。

もちろん、本当の戦争が戦車一台で行えるわけはなく、このような海上輸送、陸上輸送が広域にわたって数百隻、数千台、数万人の規模で、さらに数年の期間にわたって行われれば、その国は戦う前に負担に耐え切れず、潰れてしまうでしょう。

孫子の時代は燃料などなく、人力や馬力に頼って戦争をしていた時代なのに、2,500年も前に「戦争とは、つまるところ輸送である」と喝破しているのは、実に恐ろしい見識と言わねばなりません。

だからこそ孫子は、「戦わずして勝つ」と言ったのでしょう。戦争は「しないのが上策」、次いで「やるなら短期間で終わらせるのが良い策」、それもできなければ「局地戦で勝つのが良い策」ということです。

なのに、当時から多くの将軍や軍人は「軍事力」だけに目を奪われ、戦闘能力を高めて武器を近代化することだけが「戦争に勝つ方法」だと思い込んでいました。

戦前のわが国では、「経済力が軍事力に転化する」と言った政治家が笑われたと『孫子の読み方』には書いてありますが、「戦争とは輸送だ」の定義に従えば、これは正論です。

全行程の中で「0.1%」の作業を基準にするか、それとも「99.9%」の作業を基準にするかは、行動と結果に信じられないほどの格差をもたらすでしょう。

ということで、言葉が珍しいだけに少々説明が長くなりましたが、なぜこれを「業界ゼミ」で引用したのか。

それは、学生さんの業界・企業研究もまた、「兵ハ送ルナリ」の言葉が当てはまるほど、「目に見えるもの」だけしか見ていないからです。

例えば、「企画」という仕事は、営業のマイナスイメージの反動からか、とかく「カッコいい」、「先進的」、「おしゃれ」などという偏見が持たれています。


「どうしてかっこいいの?」と聞くと…

「だって、自分が考えた新商品がヒットしたら嬉しいじゃないっすか」
「社員の反対を押し切って企画を成功させたなんて、感動します」
「人にモノを売る自信はないけど、新しいモノを考えるのはしてみたい」

などといった答え。まさしく、「企画の0.1%」しか見ていない答えで、そんな仕事は社会には存在しません。



「新しい商品を考える」。

なるほど、それは「企画に似た仕事」ではあります。そして、「考える」だけなら、その辺でボーッとしている中学生にだってできます。

考えるだけなんて、簡単すぎて仕事にもなりません。



「新しい商品」を一つ考えるには、最低でも…

その商品の製造過程をクリアするための技術的課題、提携先の要望、資金調達策、部門別の協力体制、市場環境、競合他社の動向、失敗時の撤退策、職務分掌規定、責任と権限の決定…

などを知り尽くし、それを踏まえて合理的な説得ができなければなりません。

そして、その企画は「企画だけ」で行える仕事ではなく、社内のいくらかの資金と人材を動員して行うわけですから、失敗した時は責任を取らねばなりません。

「新商品」はコンビニにでも行けば、いくらでも売っています。あるいは、テレビでも見れば、年がら年中CMが流れています。

そういうのは、「企画の0.1%」に過ぎない、ということです。

本当の企画とは、地道な研究と観察を何年も繰り返し、営業の現場でお客さんに叱り飛ばされて、原価計算とシミュレーションを繰り返し、損益分岐点を何度も引き直し、関わる業者さんと何度も綿密な打ち合わせを繰り返す…

といった、戦争で言うところの「輸送」に相当する仕事が大半を占めています。


「新商品」というのは、協力体制や販売体制、価格戦略、債権回収手段、損切り策、代替策など、全てを含めて「新商品」と呼ぶのが常識です。

現実的な具体例や数値計算に裏付けられない「新しいアイデア」など、小学生が夢見る「お菓子のおうち」と変わらず、そういうのは「企画」とは呼ばないのです。

ドラマなどでやっている「企画」は、現実には存在しない脚色と演出の成果に過ぎず、「サラリーマン金太郎」は面白いかもしれませんが、実際にあんなトラブルを呼び込み、ピンチばかり作る仕事をされちゃ、会社はたまりません。

ということで、「ドラマの仕事はウソばかり」だと知っておきましょう。

もちろん、見て楽しむには最適です。実際には存在しない世界を想像するなら、それはそれで楽しいものです。

ですが、ドラマになる仕事は、給料が安くて人が集まらず、イメージに反して人材の定着が悪い仕事ばかりだというのはよく知られた話ですから、テレビの憧れで就活をやるのは、くれぐれもやめた方がいいですよ。


他にも…

「銀行=窓口で預金などの手続をやる」
「証券=株とか買わせて怪しそう」
「先物=よく分からないけど危ないって聞く」
「リース=えっと…レンタカー?」
「メーカー=モノを作っている業界のこと」
「広告=先進的でかっこいい」
「マスコミ=有名人に会えて楽しそう」

など、ウソと虚飾で塗り固められた「虚構の仕事像」は多々あります。そういうイメージも、抱いている間は楽しいでしょう。しかし、会計的に仕事を理解すれば、そのようなイメージを含んでさらに超える「本当の楽しさ」が見えてくるのです。

例えば「運動部」の皆さんは、「試合での活躍」だけを見た観客から、例えば「ラクロスって楽しそうでいいね。誰でもできそうだし」などと言われたら、どんな気持ちになりますか?

「アイスホッケーって気持ち良さそう」、「演劇って誰にでもできる役がありそう」、「バスケって運動になりそう」、「サッカーって痩せそう」、「野球って目立てそう」…

このようなことを言われたら、そのスポーツをやっている人であれば、「褒めてくれるのは有り難いけど、オレたちのスポーツの99.9%は遊びや宴会の誘惑を振り切って続ける、地道で汗臭い練習ばかりだ」と答えたくなるでしょう。

まさに、「兵ハ送ルナリ」と答えずにはいられなくなる、というわけです。



とかく、人は「目に見えるもの」だけを見れば、その全体を知ったように錯覚しやすいものです。

しかし、「分かった」と思った時こそ、実は「何も分かっていない時」で、そもそも何かがすぐに理解できるなどということは、この世には存在しません。

こう考えてくれば、皆さんが「会社」や「仕事」を見る時はいかがでしょうか。自分がされたら「おいおい」と言いたくなるようなことを、案外就活の時になると忘れてしまい、「カッコ良さそう」、「楽しそう」などとは言っていないでしょうか。

確かに「直感的な魅力」を信じるのも大事です。それは、大濠公園のアヒルを見て、その優雅に泳ぐ姿を「かわいいなあ」と思っても、実は水面下ではすごい勢いで「水かき」が行われているのを見落とすのと同じです。

アヒルだって、優雅に泳ぐ姿を褒められれば悪い気はしないでしょうが、「水面下の努力」を認めてもらえれば、一層喜ぶでしょう。

そういう、あらゆる業種・職種で不可欠な「水面下の努力」を見抜く武器は、会計的視点をおいて他には存在しません。数字の仕組みと人の喜びがつながってこそ、初めて「兵ハ送ルナリ」と同様、「広告代理店の本質は棚卸資産の回転率を向上させることだ」と理解できるのです。

「クリエーター」とか「プランナー」というイメージは、そのような会計的視点を踏まえてこそ、初めて本当のカッコ良さが見える仕事です。


ということで、これから始まる合同説明会では、ぜひ一枚の「貸借対照表」を手に、いろんな会社の人に、「御社はどの部分をどうする仕事ですか?」と聞いてみるといいでしょう。

たった「0.1%」の氷山の一角に憧れるだけで働くなんて、もったいない。学生はもっともっと未来に対して欲張りになるべきです。そのためにも、会計的視点の学習は絶対不可欠です。

SPIがひと段落ついたら、ぜひ書店で会計の本を一冊買って、勉強してみてはいかがでしょうか。「難しそう」と思う方は、『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ/筑摩書店)などの簡単な本から始めてみてもよいでしょう。

◆「内定への一言」バックナンバー編

「自己PRとは、自己を主張することではなく、

相手の魅力を引き出すことだ」





こんばんは。今日は急いで家を出たために「ベルト」を着け忘れてしまい、一日中「ズボンがいきなり下がらないだろうか」という恐怖と戦って帰宅した小島です。

ふぅ~…。「このおれ様にも、世の中にこんなに恐ろしいことがあったのか」と思ってしまいましたよ、ほんと。「100円ショップでベルトを買うべきか?」と悩み続けること5秒。やはり節約して西南に向かうと…。

就活コースはよりによって、一番広い「9号室」が満員という大盛況ぢゃありませんか。さらに、9割は女子大生。なんとかごまかしながら講義を終えました。

今日スーツのボタンを閉めていたのは、実はこのような深い理由のためだったのです。



ちなみに昼、大月さんに「ズボンが下がって困る」と言ったら、日頃どんなストレスがあったのか、爆笑してました。

さらには、帰りはいつも一緒に途中まで地下鉄で帰っているのですが、階段を下りるのがやや速かったような…。「もう少しゆっくり」と言っても、無視されました。女の子には、日頃から優しくしないといけませんねぇ…。

まぁ、そういう「FUN初」の苦心と焦りを味わいながら、平常心で行った今日の合格ES講座③、終わってみれば多くの学生さんから「分かりやすかった」、「突破口が見えた」、「聞かなかったらやばかった」、「今日からすぐ使える」と言っていただき、頑張った甲斐がありました。

そんな中、後半に毎回行っている「グループディスカッション」も、今日で3回目になりました。最初は緊張して発言が少なかった人も徐々に慣れ、回数をこなすたびに基準が上がり、見ていて成長が嬉しい時間です。

ですが毎回、自分の発言が少ないことや話にまとまりがないこと、打開策となる意見が出せないことを悔やみ、もっと自己主張したい、と望む学生さんもおられるようです。

そこで今日は、「ディスカッション」からコミュニケーションの基本を考えてみましょう。

ディスカッションとは、複数の人で一つのテーマを扱い、解決策を具体例によって裏付けたり、客観性の持てる根拠で説得することで、共有可能な結論を導く行為です。

ということで、この中では大事な役割が三つあります。

①話す人
②聞く人(問う人)
③まとめる人(調整する人、要約する人)

の三者です。


この中で、一番目立つのは「話す人」ですが、一番強い立場にいるのは「まとめる人」です。さらに、軌道修正を行ったり、発言のバランスを取ったりするのは、「聞く人」です。

話す人が話せるのは、自分の意思によらない場合は「聞く人」から質問を受けたり、「まとめる人」から意見を求められたりした時で、発言量や発言時間は評価対象とはなりません。

つまり、「自己主張」がいいというわけではない、ということです。

今日の就活コースに参加した九大2年のM君が、グループディスカッションを終えて、

「自分の役割を忘れないことと、友達の役割を踏まえて応援すること。これが大事だと感じました」

と、とても素晴らしい発表をしてくれたのを覚えていますか?

もしかして、「筋トレ」の話のインパクトで忘れた人がいるかもしれませんが、本当に素晴らしい心がけです。



要点はまさにあの通りで、議論において大事なのは、①テーマを忘れないこと、②答えやすいように話すこと&問うこと、③話題を横に広げるのではなく、縦に深く掘ること、の三つです。

「多く発言する」のは、その人が積極的だからというより、思慮不足だったり、人の話をよく聞いていなかったりすることによる場合が多いもの。

人の評価は「答え方」ではなく「問い方」で決まるもので、どれだけある人が積極的なようにしゃべったとはいえ、テーマを忘れない人が「要するに、テーマとどう結びつくんですか?」と質問すれば、たったそれだけの発言でも、「聞く人」の方が評価されます。

それは当然です。グループディスカッションを「グループ」で行う目的は、「限られた時間の中、集団でどれだけ議論を発展させ、建設的な答えを導けるか」を
見極めることにあるのですから。

大事なのは「全体への貢献」、つまり自分の役割の自覚と、他人の役割への信頼を言動で示すこと。

ですから、そこに働く評価基準は、「いかに多くしゃべったか」ではなく、「いかに全体の議論を推し進める役割を発揮したか」にあるのは当然のことでしょう。


ということで、「自己PR=しゃべること」と考えている人は、思いのほか、GDで落とされたりするものです。それは、「グループディスカッション」なのに「大声の独り言」を披露したからです。

評価基準が「全体への貢献」である以上、テーマに集中し、その発展を尺度にして、必要があれば問う役割を担い、必要があれば他人に発言の機会を譲り、必要があれば調整役を引き受ける、そういう対応力の方が好まれるのは考えるまでもないことです。

ということで、「人前でしゃべるのが苦手」だとか、「自分は口数が少ないけど大丈夫だろうか」などと考えている人は、何の心配もいりませんよ。

もちろん、何も発言しなければ評価もできませんが、我々経営側の人間は、ただ「面白い」、「受けがいい」という自分の先入観だけでわめきちらし、他の人の活躍の場を奪ってまで余計な話をしたがる人を見たら、本人が「よっしゃ!アピールできてるぜ!」と思っていようが、まずそんな人から「×」とか「不採用」と記入します。

そういう人は「自己PR=自己主張」と思っているようで、昨今は「よくしゃべる」、「思っていることをはっきり言う」という性質の自己主張が歓迎されるようですが、人間の本質は時代が変わったくらいでは変わりません。

誰しも嬉しいのは「活躍の機会を与えてもらうこと」、「自分の言動を肯定的に評価されること」、「貢献を認めてもらった手応えを感じること」です。

よって、その人がそのグループに及ぼす貢献は、どれだけしゃべったかではなく、「どれだけ人を引き立てたか」、「どれだけチャンスを作ったか」、「どれだけ議論を前進させたか」によって測られるのです。

そうやって、自分の発言を必要最低限に控え、ただテーマとその解決に集中し、全体の議論の舵取りを「短い問い」や「タイミングの良い評価」によって行える人こそ、実は最も印象的な「自己PR」を行っているのです。

ですから、「自己PR」なんて変な言葉ですが、もし「自己主張」という言葉を正しく解釈したいなら、それは「どれだけ自分を伝えるか」ではなく、「どれだけ相手や他人の魅力を引き出せるか」であると言えましょう。

要するに、「最も自分を抑えて他人を生かす人が、最も認められる」ということです。それが本当の「自己主張」です。

コミュニケーションにおいては、多くしゃべる方ではなく、問い、評価する側の方が決定的な主導権を握るものです。いくら声がでかくてよくしゃべろうが、空気が読めず、全体の前進を阻害する人は邪魔者でしかありません。

面接で落ち続ける人は、相手の会社と関係ない「自分の魅力」ばかり語りますが、受かり続ける人は、「相手の魅力」をどんどん語ります。

「自分で自分をどう思っているか」以上に、「相手をどう捉えているか」が自分だからです。

ですから、GDを恐れる必要はありません。

他者が発言の多さを求めるなら、あなたは問いの深さを求めましょう。


他者が自己主張を狙うなら、あなたは他人の魅力を引き出しましょう。

他者が浅い展開を試みるなら、あなたは一つの議論を掘り下げましょう。

大抵の人は「自己主張とは、自分を伝えることだ」と思っているので、控え目でも議論の推移を注意深く見守り、ピンポイントで質問を発する役割に徹する人は、それだけで評価が高まります。

つまり、他人が「間違った努力」に力を入れれば入れるほど、あなたの「静かで正当な努力」が勝手に光り出すわけです。

別に対抗心を燃やす必要はなく、あなたはただ、与えられた時間内で、与えられた役割に徹し、不動の姿勢で全体の軌道を作っていけばいいのです。そのために、発言量や時間などは、大した意味を持ちません。

ということで、「合格ES講座」は来週で終わり、2月からはいよいよ「面接塾」です。これは「スピーチ塾」をコンパクトにしたものですが、例年非常に人気のある講座で、ここから生まれたエピソードや伝説は数知れないほどあります。

2月から始まる「言葉のマジック」の習得を、ぜひ楽しみにしておいて下さいね。人事担当者の心の内が、手に取るように分かるでしょう。そして、毎回毎回、面接が楽しみでたまらなくなるでしょう。

就活では、自分の魅力探しばかりやる人がいますが、それは間違っています。社会のチャンスや企業の魅力、仕事の可能性を知ってこそ、初めて内から燃えることができるのです。その順序をお間違えのないように。

以上、今日発見した「チャンス」のお知らせでした。

◆「内定への一言」バックナンバー編

「悪い黒字あれば、良い赤字あり」





こんばんは。自称『ブックオフ大濠店(非実在)・店長』の小島です。業界ゼミのレジュメ作成で各業種の名著を100冊要約し、残るは約80冊になりました。

内定なんてレベルの低い目標は目指さず、「期待の新卒即戦力」を実現できる会計的視点から全業種・職種を見ていくので、今後も楽しみにしておいて下さいね。

毎年のことですが、僕は必ず、事前に宣言して結果を出してみせます。一人として見捨てず、最後の一人まで変わらぬ姿勢で応援する覚悟です。結果が出ない努力など、最初からやる意味もありません。



さて、僕は今でも毎日のように赤坂近辺を徘徊していますが、ベローチェに行くと、ここ最近は必ずと言っていいほど会うのが、春からメガバンクに入る福大4年・I君です。

福大で精力的に活躍しながらも、2年生の時からFUNの勉強会にはよく参加してくれており、I君ももう就職かと思うと時間の流れを感じずにはいられません。

そんなI君から昨日、「利益の仕組み」を詳しく知りたい、というご要望を頂きました。どの利益をどう考えるかは、銀行の与信業務に絶対不可欠な視点なので、今日は「利益の物語」についてご説明します。

企業財務や経営力を見るのに、①貸借対照表、②損益計算書、③キャッシュフロー計算書の3つの書類を組み合わせるのは、学生の方であれば、誰でも知っている常識でしょう。

というか、それくらい商業高校の高校生でも知ってますよね。

そのうち、貸借対照表が「経営活動によって築いた財産状況」を表すのに対し、損益計算書は「費用と収益の配分状態」を表します。

分かりやすく言えば、貸借対照表は「体型」を表し、損益計算書は「運動能力」を表すと考えればよく、両者は相互に補完しあって企業の姿を鮮明に映し出します。

損益計算書の役割は、主に「その会社の儲ける力」を知ることで、総売上から総費用を段階的に差し引き、属性別のいろいろな利益を確定させながら、費用と収益の配分を知ることができます。

その「色々な利益」とは、上から…

①売上高総利益(粗利)
②営業利益
③経常利益
④(間接的に)特別利益
⑤税引き前利益
⑥税引き後当期利益

となっています。


最も初歩の利益を「売上高総利益」と言うのは、この利益はそれ以降に算定される②~⑥の「全ての利益」を含んでいるので、「総」利益と呼んでいるわけです。

例えば、「ジョージアの缶コーヒー」は、コンビニでは「120円」で売られていますが、その「製造原価(豆、水など)」はたったの「4円」です。ちなみに、缶が「5円」。

缶コーヒーは、工場を旅立った瞬間は、実に「9円」の色が付いた水でしかないわけです。

ですから、この値段を売値の「120円」から差し引けば、「120-9=111円」となります。よって、缶コーヒーの「売上高総利益」は「111円」ということになります。

さてさて、「9円の商品を120円で売るなんて、ぼろ儲けじゃないか。いいなあ」と言う学生さんが過去実際にいたので、ここからが本番です。

「売上高総利益」というのは、前述のようにそれ以降の全ての利益を含んでいる、「粗っぽい利益」でしかありません。つまり、「おおよその利益」を掴む意味合いしかないのです。

この数字は、製造業であれば「製造原価」、サービス業であれば「仕入れ根」を引いただけの「唯物的な利益」に過ぎません。ただ、「モノ」として見た時の直接経費を差し引いたに過ぎないのです。


皆さんはなぜ、缶コーヒーの存在を知っているのでしょうか?

皆さんはなぜ、数あるコーヒーから「ジョージア」を選んだのでしょうか?

皆さんはなぜ、コンビニでコーヒーが買えるのでしょうか?

皆さんはなぜ、冷えたままのコーヒーが買えるのでしょうか?

それは、「広告」によって存在を知らされ、「商社」によって他社製品以上の魅力を発見され、「物流」によって製造地から販売地に移送され、「保存」によってすぐ飲める状態で準備されていたからですよね。

これらのプロセスには、全て「人件費」、「車両費」、「通信費」、「燃料費」、「倉庫代」、「代理店手数料」、「広告宣伝費」、「小売利益」などが含まれています。

このように、そのモノ自体の直接的な製造・仕入れに関わった「直接費」ではなく、輸送や保管など、販売までのプロセスで要した間接的な費用を「間接費」と呼んでいます。

よって、これらの「費用」は、関わった全ての業者さんにとっては「売上」なので、売値からそれだけの「間接費」を差し引かねばなりません。

例えば、「120円」から…

①製造原価の「9円」を引いて、残りは「111円」
②港の倉庫に輸送する送料「10円」を引いて、残りは「101円」
③倉庫に保管しておく「缶の家賃5円」を引いて、残りは「96円」
④芸能人を使った「広告宣伝費20円」を引いて、残りは「76円」
⑤販路を作る商社の「コンサル料10円」を引いて、残りは「66円」
⑥商社の倉庫からお店に輸送する「送料5円」を引いて、残りは「61円」
⑦コンビニの諸経費「30円」を引いて、残りは「31円」

だとすれば、②~⑦までの「間接費80円」を差し引いて残ったのは、⑦の段階の「31円」です。



この「31円から」…

①飲料メーカーの人件費「10円」を引いて、残りは「21円」
②飲料メーカーの家賃・光熱費「5円」を引いて、残りは「16円」
③飲料メーカーの研究開発費「3円」を引いて、残りは「13円」
④飲料メーカーの設備費「3円」を引いて、残りは「10円」

ということで、社内の間接費までを全て差し引いて残った「10円」が、この会社の「営業利益」です。

これは、会計的に見れば「120円の収益を回収するために、110円の費用を投資した」と言うことができます。

こうして、全ての段階でかかった「間接費」を差し引くことで、その会社の「純粋な営業活動」によって生まれる収益が分かるわけです。

営業利益は、後に続く「経常利益」と同等に重視される指標です。なぜなら、「本業の儲ける力」を表すから。投資家も銀行もこれを重視するのは、いくらお金を預けても、貸しても、この力が低ければ「運用力なし」という意味だからです。


そのように大事な「営業利益」ですが、これはあくまで「営業」によって生まれた利益を表すもので、さらに会社全体が行う「経営」という活動から見れば、営業は一つの「部分」に過ぎません。

この会社が仮に銀行から借入を行っていたり、あるいは余剰資金を資産運用に回していたりすれば、借入金の利息や運用資産の配当収益など、「本業とは別の場所」でいくらかのお金の動きがあるでしょう。

営業が「商材を提供して代価を回収する」という会社の中核的な役割を果たすなら、経営はそれを包含する形で「企業を存続・発展させる」というより大局的な視点から行う活動です。


「営業で成功しても、経営で成功する確率は1割程度」なのは、営業と経営では、考えることの視野も計画の長さも、深さも関連性も、段違いに経営の方が広く大きいからです。

営業マンは資金繰りや社員教育、商品開発、人事管理、税務対策、事業承継、決算対策など、何一つ考える必要なく「営業活動」に没頭しておけばそれでいいのですが、経営者はそうはいきません。

業界や社会、時代の流れや変化を広く、かつ深く見通し、数年後の計画のために「今」を過ごさねばならず、よって、決断の重要さもインパクトも営業マンとは比較になりません。


ですから、仮に「営業利益」が10円上がったとしても、それから「借入金の利息」の3円を差し引くことになれば、利益の額は「7円」になってしまいます。

つまり、営業利益が「営業活動の利益」なら、経常利益は「経営活動全般の利益」を意味するわけで、財産状態や資産活用状況が良ければ、営業利益を超えることもあるし、いくらヒット商品が生まれても、経営のツケが残っていれば、営業利益を下回ることもあるわけです。

その意味では、営業利益の観察も大事ですが、経常利益はより広く長期的な投資判断、融資判断をするために、欠かせない指標だと言えるでしょう。

さて、中には営業利益で「そこそこの利益」を出しても、経常利益で赤字に転落し、「これはやばい」と感じる社長さんもいます。

そこで、株式や債券などの保有資産を売却したり、あるいは社用地は会社名義の不動産物件を決算直前に売却して、「特別利益」という名の「臨時収入」を作ることがあります。

この利益、名前だけは「特別」とゴージャス感が漂っていますが、それは単に「営業や経営の本質とは関係ない」という意味であり、仮にそれを「利益」と呼んでいても、別にいつも良い意味を持っているわけではありません。

固定資産の評価額が下がったり、保有資産の額面価値が下がったりすれば、経常利益で黒字でも、「特別損失」によって赤字に転落することがあります。

ですから、本当に大事なのは「経常利益」までの利益です。仮に経常利益が赤字でも、直前の「資産売却」などのアクロバットに頼らず、「これがわが社の現状なんだ」と冷静に事実を受け止める会社もあります。

また、営業利益が赤字なのは嫌だと、資産売却や直前工作によって「黒字」を装う会社もあります。

学生さんも、「黒か赤か」を神経過敏ではないかと思うほど気にする割には、「悪い黒」と「良い赤」があるのを全く知らないようです。

よって、そういう人は極めて表面的な判断で、ただ知名度や業界内順位だけを見て会社を選ぶ傾向がありますが、これなどは「スーツはきれいで、下着は3日間同じ」という見かけに騙されるのと同じです。

ほんと、会計を知らない人は、ただ「感覚」で動いているだけで、自分の頭で物事を考えることができないんだなぁ、と毎年思わずにはいられません。ま、それは大半の社会人も同じですが。

入社した会社が入社1年目に倒産して、「ひどい」、「聞いてない」とか言う若者もいますが、それも自己責任のうちです。かわいそうですが、自分の不勉強を嘆くほかありません。

会社が倒産しても、本人が倒産しなければいいではありませんか。従業員には、何の経営責任もないんですから。

「資本金の額」とか、「売上高」だけを見て「いい会社」だとか言うのは、ほとんど常軌を逸した不可解な判断です。

そういう人は、「頼朝が鎌倉幕府を作ったのは何年?」といった性質の質問にはスマートに答えるのでしょうが、「頼朝はなぜ、あれほどの劣勢からたった20年で将軍になれたのか?」と聞かれれば、答えられないでしょう。

同様に、「この会社の売上高はいくらか?」には答えられても、「この会社が、1億円の資本金を5年で10億円にできたのはなぜか?」には答えられないでしょう。

見るのはただ、「図体のでかさ」とか「知名度」だけ。要するに「奴隷」ですね、これは。

この「特別利益」に関しては、既に去年の夏に開催し、現在『マネー塾』に次いで通販の注文が多い『ビジネス塾』でもお話したとおり、人間心理にも深く関わった性質を持っています。

ある学生が、試験の直前になってバタバタと勉強を始め、「いざという時の行動力は負けません!」などと言っていたとすれば、経営者には、それは「私はいざという時にならなければ行動しない愚か者です!どうか私を不採用にして下さい!」としか聞こえません。

会計を知る人と知らない人では、最初から「埋められない差」が存在しており、会計を知らない人は、どれだけ努力しても、数字を読める人には勝てません。

ですから、仮に試験の成績が「10教科中5教科がA。しかしギリギリ」という人よりは、「10教科中3教科がAだが、長期計画で毎学期向上中」という人の方が、長期的に見ては「買い注文」、つまり「採用!」のゴーサインが得られます。

ですから、「特別」などという響きの良い言葉に惑わされず、ビジネス塾でもお話したとおり、「数字が語る物語」の読み方を知って、冷静に判断せねばなりません。

さて、経常利益に特別利益、あるいは特別損失を加減すると、「税引き前利益」が算出されます。

この段階の利益からは、国や自治体などが、「法人税、事業税、住民税」の「法人三税」を課税し、その税率は自治体や事業規模によって若干差はあるものの、大体「4割」と思って差し支えありません。

つまり、コーヒーの会社が「100万円」の税引き前利益を残せば、「約40万円」が税金として差し引かれ、残りの「60万円」が「税引き後当期利益」となるわけです。

理屈の上では、ここから「役員報酬」、「配当」、「内部留保」を積み立てるわけですから、経営陣は良い経営をすればサラリーマンの数十倍儲けることもできるし、経営状態が悪化すれば責任を取らねばなりません。

また、配当が実現できねば株主から批判されることもあり、この状態を「無配」と呼んでいます。経営者が回避したい結果の一つです。

そこから株主に説明し、必死の努力で経営状態を改善して、再度配当が行えるようになることを「復配」といいます。創業者の伝記を読むと、「オイルショックの経営危機を脱し、復配にこぎつけた時は本当に安心した」などと書いてありますが、あのことです。

ということで、ざっと売上高総利益、営業利益、経常利益、特別利益、税引き前利益、税引き後当期利益について見てきましたが、皆さんはどの利益に興味を持ちましたか?

各段階の利益は、その算出過程と数字だけで十分な「物語」を持っており、前後の利益との関係や変動過程を見ることで、社長の苦悩や感動を想像することもできます。

単に、学科的知識で区分するのではなく、そこに人間性を介在させて想像し、「自分なら、この段階の利益をどう上げるか?」と当事者意識を持って考えるのが、本当の業界研究だと言えるでしょう。

以上、『ビジネス塾』でご説明した内容に比べれば、分量は100分の1にも及びませんが、利益の仕組みと性質を知るだけでも、随分就活は楽しくなることでしょう。

「内定」なんて、所詮「自分の課題」を解決するだけの作業に過ぎません。大事なのは「社会や会社の問題」を解決すること。

あなたが相手に興味を持てば持つほど、相手もあなたに興味を持つようになるでしょう。

そのために、会社が提供している重要情報である「利益」に着目し、それをメッセージツールとして分析して、今後の会社説明会での話題にするのも、また面白い試みです。