はつかぐさ 18
0 0 1 284 1621 photophotostudio 13 3 1902 14.0 Normal 0 10 pt 0 2 false false false EN-US JA X-NONE $([\{£¥‘“〈《「『【〔$([{「£¥ !%),.:;?]}¢°’”‰′″℃、。々〉》」』】〕゛゜ゝゞ・ヽヾ!%),.:;?]}。」、・゙゚¢ /* Style Definitions */table.MsoNormalTable {mso-style-name:標準の表; mso-tstyle-rowband-size:0; mso-tstyle-colband-size:0; mso-style-noshow:yes; mso-style-priority:99; mso-style-parent:""; mso-padding-alt:0mm 5.4pt 0mm 5.4pt; mso-para-margin:0mm; mso-para-margin-bottom:.0001pt; mso-pagination:widow-orphan; font-size:12.0pt; font-family:Century; mso-ascii-font-family:Century; mso-ascii-theme-font:minor-latin; mso-hansi-font-family:Century; mso-hansi-theme-font:minor-latin; mso-font-kerning:1.0pt;}一つ前の17.5話は 読まずに進めてもお話はつながります***出かける約束が明日となった日。慶喜さんが待ち合わせに指定した木のある池のほとりを呼里さんと共に散策していた。待ち合わせの場所を目にして期待に胸がふくらむ。「どうされました?」呼里さんが歩みをとめた私に声をかける。私は何でもないと首を振った。約束をした夜。慶喜さんが来たときに持ってきた物…その中には、落ち着いた色合いの小袖が入っていた。一見無地に見えるけれど手に取ると細かい模様が同色で織り込まれている。お屋敷に来たときに用意してくれた華やかな着物に比べると随分味気ないといえば味気ない。『町娘に化けて来てね』『………?』慶喜さんは、自分の口の前に指を立てる仕草をする。『この事は秘密』着物を手にして慣れてます?と問う私の視線に慶喜さんは悪戯な笑顔で答えた。明日は、二人きりのお忍び。そう思うと更にワクワクしてしまう。そもそもの出会いも、慶喜さんがお屋敷を抜け出していた間のことだった。思い出すと、ほんの数日前の事なのにずいぶんと前のことのような気がした。「………?」物思いにふける私を呼里さんが不思議そうに見ていた。「なんでもないの」私は微笑んでもう一度その紅葉の途上にある木を見上げる。『朝一番に、あの木の下で待ち合わせ』慶喜さんの声が脳裏によみがえる。「………た?」慶喜さんの事を考えていたら、慶喜さんの声が聞こえた気がして一瞬。空耳かと思う。その声を追って首をめぐらせた。絶妙な配置で植えられた木々の向うに秋でも青い竹林が見える。あるようでない露地の小路の先には茶室があるはずだ。そう遠い距離ではないけれど、隠された世界はここからは見えない。「いまさらっ!」そこに男の激高した声が辺りに響く。木々の隙間に髷を結った頭と、その向こうに見慣れた慶喜さんの頭が見えた。二人は歩きつつ話をしているのか、その姿が次第にあらわれる。それにつれて声もはっきりと聞こえるようになった。「そもそも。私はそんな約束はした覚えはないんだけれど」慶喜さんの相手を見る瞳も、発する緩やかな声も感情をあらわにしないものだった。普段の優し気だったり悪戯好きな姿からかけはなれた威厳ある姿。「けれど、この話を断るというのはっ。貴方様の…」慶喜さんに訴える男の人は反対に熱く苛立った様子だった。覗き見るつもりはなかったのに、その様子に目をそらせなくなってしまう。「揚羽様」「ごめんなさい。なんだか、雰囲気が悪かったものだから、心配になって…」呼里さんに小さく呼びかけられて、不躾な視線を送ってしまっていたことに気づいた。だけど、私が視線をそらすまえに、慶喜さんは気が付いてしまった。うんざりした様子だったのが私を見て少し明るくきらめく。慶喜さんと話していた男の人は目敏く表情の変化に気づき、その視線を追って私に目を止めた。その私を睨む男の人の表情は恨みをこめたように険しく、私は二人に会釈をして、その場から逃げるように去った。***朝露に濡れた草木が庭に昼や夜とは違う風情を与えていた。辺りは煙霞がかかって、太陽がぼんやりと輪郭を失って見える。待ち合わせた池の際に植えられた枝ぶりの美しい赤、黄、緑と錦の楓の木。昨日よりも赤みが増した様に感じるのは、気のせいかどうかはどちらでもよかった。まだ早いはずなのに、その楓の下に浮き上がる明るい人影がある。柔らかく回り込む朝の光に溶け込む色素の薄い、いつも一つに結い上げられている髪は、今日は緩く後ろで結われているだけで動きに合わせてさらりとなびく。着ている着物もいつもと違う袴をはいていない。いつもの凛々しい姿も見とれていまいそうに思うけれど、楽そうに気を張らない余裕がうかがえる姿に、いつもよりも大人びて見えるのが不思議だった。「おはよう」「おはようございます」私を見つけた慶喜さんと挨拶を交わす。「揚羽?その色。良く似合うね」「ありがとうございます。なんだかすごく着心地がいいです。慶喜さんの着物とも…」よく馴染んでいる気がする。と思った私は頬を染める。偶然だろうことまで、こじつけてしまいそうになる自分が恥ずかしかった。「よく映える」袖同士を合わせて比べる仕草に、偶然ではなかったことを知ってうれしくなる。「慶喜さんが選んでくださったんですよね………ありがとうございます」「うん、さぁ行こう」靄に太陽の光をまとわせて微笑む慶喜さんが手を差し伸べてくれた。***