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ぼんやりとした意識の中、ときどき目が覚める。
発熱して光りそうなくらい熱くて。額にひんやりした物が触れたのを感じて。そっと手をにぎる安心感を感じて。
いつも、目が覚めるとそこには慶喜さんがいた。
とてもとても心配そうな。不安な子供みたいな目をした慶喜さん。
私が目を開けたのを感じると「大丈夫だよ」と優しく微笑んで言ってくれる。
それで私は安心して、また目を閉じる。
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旅籠に連れ帰った揚羽は、やはり発熱していて寝込んでしまった。
布につつまれていない温石のように、握る手が熱い。
医者は、薬を飲ませて熱が下がれば大丈夫だと言ったが、目覚めないので飲ませる事が出来ず、どうしようかと思案した。
額に乗せた濡らした手ぬぐいはすぐに温くなる。
それを取り替えようとしたら、揚羽がうっすらと目を開いた。
定まらない熱に浮かされた潤んだ目で俺をみあげ、漏らす吐息も、熱い。
「大丈夫だよ。薬を飲んだら楽になるから。飲める?」
尋ねると、かすかに頷いた。
背に手を差し入れて、水に薬を溶いた茶碗を口元に持って行くと、苦そうにしながらもゆっくりとそれを飲んだ。
「よく飲めたね。大丈夫だから、ゆっくりお休み」
布団に寝かし直してやると、力を抜いたようにふんわりと微笑んで揚羽は安心したような顔で、また眠りに落ちた。
閉じた瞳の上を指先でかすかに撫でる。
触れた熱は現実の物だと実感させる。
手放したものが、手の届くところにもどってきてしまった。
そうしたら離したくなくなる。
そんなものだ…運命だとか、なんとでも、名前をつけても。
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