はつかぐさ6
0 0 1 325 1858 photophotostudio 15 4 2179 14.0 Normal 0 10 pt 0 2 false false false EN-US JA X-NONE $([\{£¥‘“〈《「『【〔$([{「£¥ !%),.:;?]}¢°’”‰′″℃、。々〉》」』】〕゛゜ゝゞ・ヽヾ!%),.:;?]}。」、・゙゚¢ /* Style Definitions */table.MsoNormalTable {mso-style-name:標準の表; mso-tstyle-rowband-size:0; mso-tstyle-colband-size:0; mso-style-noshow:yes; mso-style-priority:99; mso-style-parent:""; mso-padding-alt:0mm 5.4pt 0mm 5.4pt; mso-para-margin:0mm; mso-para-margin-bottom:.0001pt; mso-pagination:widow-orphan; font-size:12.0pt; font-family:Century; mso-ascii-font-family:Century; mso-ascii-theme-font:minor-latin; mso-hansi-font-family:Century; mso-hansi-theme-font:minor-latin; mso-font-kerning:1.0pt;}***家に戻る道中。私は恐怖の混じった焦りを感じていた。進めば進むだけ、記憶と差異のある景色が目にはいる。あるはずの田畑が無かったり、知っている家の形が違ったり。自然と早足になって家にたどりつく…家に辿りついてみて、その違和感は違和感で済ませられないものになった。庭に竜胆が咲いている。竜胆の花の側に親子の姿。俯いて顔は見えない。私の全身がドクドク音をたてていた。家から少し離れた場所から縫い付けられたように動くことができない。女の子の隣に座る、女性。「揚羽」遠くで名前を呼ばれて、涙が出そうになった。「そろそろ中へ戻りましょう。お父様が帰って来るわよ」懐かしい、亡くなったはずの母の私を呼ぶ凜とした声。その声は私の名前を呼んで、私を呼んではいなかった。「はぁい」声をかけて顔を上げた女の子。幼い私。手に摘んだ花をもって、母と子は室内へと姿を消していく。ここはどこ?これはなに?これはいつのこと?夢を見ているのかと思う。体がふわふわ浮いたみたいで足が地につかず、夢だと言われたら納得しそうだった。けれど、立ち尽くしたままの私はいつまでたっても夢から目覚めることはなく。陽がずいぶん傾き、金に色を変えていく。***旅籠の近くまで戻って来て、私は海岸にいた。陽は更に傾き、空の片側は金から橙に色を変えていた。時間の流れが狂ってる。たぶん、私だけ。思い当たるのはあのカメラの光。父が誰かにいただいたと言ってもってきた、異国のあやしい機械。あれを壊そうとしたから呪いを受けたんだろうか?カメラはこの海に来た時に私の近くについてきていた。その怪異を思い出すと、背中に寒気が走った。あれを、また壊せば帰れるだろうか?確信はないけれど、そう考える。カメラは、旅籠に置いてきてしまった。確認するためには、もう一度あそこに行かなければいけない。だけど、足がすくんで中に入れなかった。戻れなかったらどうしよう。戻れなかったら………私はどうしたらいいんだろう。不安が胸を押しつぶしそうだった。私が居るべき場所が見つからない。居場所………不意に、先ほど頭を撫でてくれた慶喜さんの手を思い出す。私が存在してる証拠みたいに思えた。(………こんなに逃げてるなんて私らしくない)そう、ため息を落としたところで、背後から声をかけられた。「大丈夫だろうか」振り向くと、馬を2頭牽いた細身の男の人が立っていた。夕陽を浴びた、端整すぎる顔に目を奪われる。誰かに似ている。「あ、いえ………」見惚れてしまって、返事があやふやになった。私を見て彼が少し息を詰めた。彼は懐から藍色の手ぬぐいを出して竹筒の水で濡らして私に差し出した。「どうぞ」理由がわからなくて受け取ろうとしない私に、彼は自分の目を指差してから、また手ぬぐいを差し出した。私は、目尻で乾いた涙で突っ張っている事に気付いてそれを受け取る。「すいません。ありがとうございます」「いえ………この辺りで、身なりの良い若い男を見なかったでしょうか」彼はそのことにはそれ以上触れず疲れたように尋ねてきた。いくつかの特徴をあげられて、浮かんだのは慶喜さんの顔。私は慶喜さんのことで思い巡っていたのを思い出して、視線を落とした。「何かご迷惑をかけただろうか」「いえ、っ。そういうわけじゃないです」その想像があっていたとして、慶喜さんが悪いことをして追われているとは思えないけど、やっぱり勝手に話してしまっていいのかわからない。「あの、すいません。お役にたてそうにありません」彼はゆっくりあたりを見回してから、ありがとうと去って行った。気付けば、手には彼の貸してくれた手ぬぐいが残っていた。「あ………」広げてみれば端に家紋が刺繍されている。だいたいの人は知っているだろう家紋。一つ一つの所作がきれいだったことを思い出して、なんとなく納得した。そんな事をしている間に、いよいよ夕日は海の中に消えてしまいそうになっていた。「はぁっ」またひとつため息を吐いて肩の力を抜くと、予想以上に体が疲れていたのか、くらりと目眩がしてそのまま前のめりに倒れそうになる。堪えようとしたのに、体はうまく動かなかった。崩れ落ちて砂に倒れこむ直前、私の体を後ろから誰かが支えた。誰かの長い髪か私の顔にかかった気がして………そのまま、意識が闇に飲まれた。***揚羽が部屋を出て、俺はしばらくその場から動かずにいた。動かないでいたあいだ、頭から離れないのはひとつのこと。眼裏に揚羽と会ってからの短い間に見た色々な表情が浮かぶ。窓の外を見やると、陽が傾いて夕焼けの色になっていた。迷い迷い重い腰を上げる。(いなければいい)そう思いながらも、どこか頭のすみには期待がくすぶりながら旅籠を出た。宛ては無く辺りを見回すと海に夕日が海に消え行くところだった。昼間よりも満ちた潮の波打ち際に人影が一つ。その人影がグラリと傾いで倒れそうになったのを夢中で駆け寄って抱きとめた。***