身寄りのない少年モンドが、とある町に流れ着いた。孤独な彼は行き交う人を眺め、ショーウィンドウを覗き、屋外で眠る。短いカットで町の群像を切り取った。
屈託のないモンドの笑顔が、町の人々に受け入れられていく。郵便配達人には「僕への手紙はない?」と会うたびに尋ねる。それはあるはずもなく、最初はただ「ないよ」と答えるだけ。次は鞄の中を調べて「今日はないな」。3回目には「今日はこれが来てる」と手紙を渡した。字が読めないモンドだが、自分宛に来た手紙に至福の喜びを感じた。船を持たない水夫は港で毎日釣りに興じている。砂利にアルファベットを刻んで、モンドに知識欲を促した。モンドの表情だけでなく町の顔も、序盤の暗さから中盤明るく変化した。
物乞いの老紳士や曲芸士とその家族、自らをユダヤの旅行者というベトナム生まれの未亡人など、モンドとの関わりでささやかな喜びを得る。モンドは分け与えてもらっても、ただ施しを受けるだけではなかった。しかし町に馴染んでも、それは長く続かない。公の人間が彼を疎む。
俗に言うジプシー、ロマ民族を題材とした作品を借りた。監督のトニー・ガトリフは自らのルーツであるロマにこだわって映画を作っている。野良犬に例えて、突きつけられる厳しい現実を説いた。しかし温もりも忘れない。
夜中に友人からの電話で起こされる。1年近く連絡が途絶えていてどうかしたのかと思ったら、男女間で悶着があったようで丑三つ時。恋愛沙汰に疎い僕に助言を求めることは間違っているのだが、眠さが功を奏して客観的な一般論を男の視点から展開できたようで、満足してまた眠りについた。起きたら次は僕の番だ。
このところハイペースで顔を合わせている女性と会う。打てば響く。髪の間に指を絡ませて、首根っこを掴んで引き寄せて、その唇を噛みたいという願望が強くなっている。メールや態度が好感触で「これはいけるかも知らん」というポジティブ・シンキングのもと勝負に出る。いくつかの偶然が重なって必然となるとは、誰の言葉だったか。その女性は僕の彼女になった。
中日は連敗を3で止め、今一度追撃体勢を整えた。アライバが攻守にわたって活躍すれば磐石な野球ができる。新人の中田が3ヶ月ぶりの先発し、5回2アウトからピンチを招くも、それは4月の同じく横浜戦のデジャブのようだが、そこを凌いで好投した。ローテーションのカンフル剤にもなってもらいたいところ。
2軍ではその中田と同級生の中里が先発、3年ぶりの実践登板だった。もう投げられないという話も出ていただけに、泣ける。投げる雄姿だけでなく、常時140キロ超えでMAX148キロのストレートを披露した。1軍の中日-横浜戦をTV観戦しながら、そのニュースを実況アナウンサーが読み上げた時、泣いた。
半世紀ぶりの夏の甲子園連覇が北海道勢とは。東北勢はじくじたる思いかもしれないが、近年は北の高校も強くなってきている。戦力差が縮まる。予想
を外して悔いなし、しかし先に挙げた3校のうち2校が2回戦で敗退と立つ瀬がない。
2年前の常総学院と同じく、京都外大西の三原監督は大会決勝を終えて勇退だったが、常総の木内監督同様に試合後のコメントで疑問が湧く。年をとると発言内容が危なっかしい。駒大苫小牧は林や松橋など、昨夏の優勝メンバー6人が引っ張った。
準決勝で散った2校も印象が強かった。宇部商の4番エース好永は地方大会から一人で投げ抜き、その細い体のどこからエネルギーが生成されているのだろうと、中学まではキャッチボールの相手もままならなかったという過疎の町が生んだスターを讃えたい。大阪桐蔭には化け物が3人。辻内の奪三振率は脅威で、精神的な脆さが顔を出すこともあったが、噂に違わぬ剛速球を見せた。平田の1試合3ホーマーには度肝を抜かれ、彼の胸板の厚さが脳裏に焼きついた。ドラフト候補はこの二人だけにあらず、1年生の中田も順調に行けば2年後に上位で指名されるだろう。高校生と大学・社会人を分けた現行ドラフト制度なら、3人とも1位で指名されるのではないか。
長崎代表の清峰が旋風を巻き起こした。愛工大名電と済美に作戦勝ち、金星を2つあげた。主戦の古川は侍然とした、それでいてゲルマン系のソルジャーのような面持ちで黙々と投げる。彼と彼らに殊勲賞と敢闘賞。
近所の青果店で馴染み客となった。快活な男子を装い、訪れる度に世間話を振られる。そこではいつもキュウリのぬか漬けを買っているのだが、野菜の高騰で5本200円が4本200円になってしまっていた。それでも僕 には1本おまけして、元の値段で売ってくれる。老女殺しはここでも健在。
その足でベーカリー
へ。その途中、センスの良い着こなしに帽子を被ったカップルとすれ違った。女性のほうは肌が白くて目力があり、背が低くても存在感がある。「あれはもしや」と振り返ると、男性のほうがこちらを向いていた。痩躯に特徴のある顔で、二人揃っていればおそらく間違いないだろう。気付かれたと思って僕を見たのか。YUKIとYO-KING、それは目立つ。握手はよしとした。
日焼けも治まって一ヶ月ぶりの銭湯は、もはや禁断症状が出るほど行きたくてたまらなかった。
明の海 上馬4-11-28
日にちが空いたせいか、いろいろと道具を忘れた。シャンプーに石鹸、髭剃りと歯ブラシもない。やりきれない。150円で「お風呂セット」を購入した。
環状7号線に面し、246号線と接する辺りの立地で車の往来が激しい。しかし暖簾さえくぐれば、そんな喧騒は関係ない。狭い面積の苦心が伝わる造りだ。日替わり風呂は酵素風呂で、どう効果があるのかは分からない。こういった類のものは効能云々ではなく、なるほど言われてみればと、思い込むことが大事である。
一時、男湯に僕だけという状況になって、それは至高の空間で、僕は歌う。女湯と繋がっていることに気づく頃には、向こうからカポーン、ザバーと音が響いていた。
衝撃的な低予算で制作された自伝エッセイ映画。監督のジョナサン・カウエットが、自身と母親のレニーを中心に、恋人や家族をカメラにおさめる。極めて赤裸々だった。11歳から撮り始めたというフィルムと写真を駆使してルーツを探る。
画面を分割したり、写真をコラージュのように使用したり、アバンギャルドな映像をインサートして、ジョナサンとレニーの生い立ちを綴る。レニーは幼い頃にその美貌でモデルを務め、町の有名人だった。しかし事故によって精神を患ったとされて、ショック療法を施される。それが原因で性格と容姿が一変する。美貌が崩れる様はショッキングで、ショック療法の壮絶さをうかがわせる。
病んだレニーは親権を奪われ、ジョナサンは里親に育てられることになる。父親は彼が生まれる前に家を去っていた。虐待を受けて彼は、ゲイというセクシャル・マイノリティもあり、バランスを失っていった。自由を求めて故郷を離れたジョナサンだったが、レニーがリチウム過剰摂取のよる中毒に陥った報せを聞いて帰郷する。
レニーが部屋の中で歌い、踊り、笑い続ける姿を延々と撮り続ける。彼女にはかぼちゃや人形がおかしくてたまらない。同じ言葉を繰り返して笑い転げている。カメラを横にずらすと、奥ではレニーの父でありジョナサンの祖父であるアドルフがテーブルに座って何かをしているが、はしゃぐ彼女に目を向けることはない。それがジョナサン・カウエットの家族の現状である。レニーもアドルフもカメラの前では過去を語ろうとしない。ジョナサンとはなかなか向き合わない。
今年2度目の人との鑑賞で、ドキュメンタリーを選ぶ僕のセンスはどうなのだろう。リアクションは微妙だった。
友人から以下の内容のメールを受信した。
24時間テレビの実験がスタートの為突然すみません!あのテレビ番組「鉄腕ダッシュ」でメールがどこまでつながるかをTOKIOが実験競争中だそうでスタートが沖縄県那覇市の新垣洋介さんから始まってとうとう回ってきました。これを9人に回してください。このチームは「城島チーム」です。この結果は8/24(日)7:00PMからの「鉄腕ダッシュ」で放送されます。お願い絶対に止めないで
律儀な僕は送ってきた当人にそっくりそのまま返信する。あと8人は送らない。そもそも8月24日は日曜日ではない。それはさておき、彼には別件でメールを送っていたのだが、その返事はいまだにない。近々一緒に旅をしようと、空いている日はいつかとの問いかけを投げかけたままである。
