ある人が経営者に「御社のビジネスモデルは何でしょうか?」という質問を投げかけました。
その経営者は「世に存在感を認められる企業であり続けること」という答えをしました。
この会話、何かかみ合っていないですよね?
ではどちらに問題があるのか。
ちゃんと「ビジネスモデル」について答えていない経営者でしょうか?
そもそもビジネスモデル、って一体何でしょう?学術的には「コアコンピタンスである」とか「他社の真似できない事業の仕組みである」とか言いますが、通常経営者は「これがビジネスモデルだ」と明確に意識して日々を過ごしている訳ではありません。もしくは複数のコンピタンス(良点・強み)が絡み合うことで、全体で見た場合の「ビジネスモデル」になっている場合は、ひと言で答えようがないですね。
問題はふたつあります。
ひとつは「質問の仕方」。
「ビジネスモデルは何ですか?」という問いかけは余りに包括的で、結局答えも包括的・抽象的にならざるを得ません。良い質問は良い答えを導き出す、といいます。会話の名手は必ず「良い質問」をしています。逆に「甘い質問」は「甘い答え」しか引き出せません。
もうひとつは「大事なことは表に出にくい」ということ。
ビジネスモデルを探る、というのはあくまでアナリストや学者の考え方。他者が評価する類のものです。経営する側は「コアコンピタンス(絶対的な強み)を確立させたい」とは考えますが、それは「顧客に認めていただく価値の最大化」であったり「競争優位性の確立」であったり「儲かるための仕組みづくり」であったりし、決して「ビジネスモデルの確立」という教科書的な概念から発想はしません。そしてそれは企業や経営者にとって非常に大事なことで、よほどのことが無い限り「他者には言わない」ことだと考えるべきでしょう。
本当に大事なことは表には出てこない。
これはひとつの「真理」です。
質問を受けた方が「意図的に隠す」場合もありますが、そういう場合だけでもありません。当事者自身が「無意識に隠す」場合もあります。もっと言うと、当事者自身が「気付いていない」場合もあります。本当に大事なことは実は「見えにくいもの」なのです。
なぜでしょう?
「本当に大事なこと」とは言い換えると「物事の本質」です。「本質」とは「『事実』の中にある『真実』」です。表に出てくるのは『現実』です。「現実」は、必ずしも「理想どおり」には行きません。「真実」は『願望』や『夢』『理想像』を含みます。未実現の未来を含むものですから、表に出難いのです。代わりに「現実」が出ます。
それを客観的に見たものが「事実」です。
・・・非常に分かりにくい表現ですね。
簡単に言うと「事実の中に『真実』は潜む」ということです。
「現実」(当事者の主観論)ではなく、「事実」(客観論)をよくよく見ること。そうするとそのすぐ『横』や『裏側』に「真実」があります。
我々コンサルタントの最も重要な資質は、この「真実を見抜くチカラ」です。表に出難い「真実=問題の本質」を見抜くことができれば課題解決ができ、これが出来ないと課題はいつもでも解決できません。
最初の問答、いかがでしょうか?
経営者が言った言葉は「事実」ではありません。彼にとっての「現実」なのです。事実をしっかりつかんだ上で、最も適切な質問を投げかけなければ「真実」は見えてこないのです。