
「Gメン対世界最強の香港カラテ」
「Gメン対世界最強の香港カラテPART2」
製作:1980年
▼新メンバー加入で新たな方向性を模索した「香港カラテシリーズ」だが、その狙いは不発に終わった。そこで次に取られた解決策は、なんとも斬新かつ合理的なものだった。Gメンサイドに達人がおらず、香港の敵を迎え撃つのが不安であるのなら、その香港から助っ人を招けばいいのだ。こうして「香港カラテシリーズ」に、また新たな1ページが加えられる事となった。
今回Gメンと共に闘う最初の仲間は、バッタもんスターとして知られる何宗道(ブルース・ライ)である。元々はバッタもんであることを良しとしなかった何宗道だが、本作における彼は飄々とした謎の男を好演しており、彼自身も楽しそうに演じている。
■香港ギャングの江島(チェン・タオ)は、力石考(『南シナ海の殺し屋』の役とは別人)と共謀し、香港在住の日本領事を誘拐して100万ドルの大金を稼ごうと企んだ。さっそくGメンは事件の解決に乗り出したが、実は日本でも同様の手口による誘拐事件が起きていた。事件そのものは誘拐犯の死という形で決着したが、首謀者とされる力石はそのまま逃亡。この男が今度は香港に現れたのだ。
ところが、Gメンの捜査を良しとしない者が現れた。香港警察の警部・高品格は縄張り意識バリバリで、「Gメンの出る幕は無い」と言ってはばからない。敵が身代金を要求してくる中、領事館に一本の不審な電話が掛かってきた。その男・何宗道は情報屋ドラゴンと名乗ってGメンに近付くが、謎が多く要領を得ない。果たして何宗道とは何者なのだろうか?
この何宗道、高品と繋がりを持つ男だったのだが、高品は身代金の100万ドルを横取りせんと画策していた。ところが香港ギャングの元にも何宗道は現れ、彼らに取り入ろうと動き出す。一方で高品は「身代金も含めて全部俺に任せろ」と言い出すも、Gメンは犯人との裏取引は断固として反対。ようやく犯人からの連絡で身代金の受け渡しと相成ったが、敵は大勢の手下を引き連れていた。
領事の娘とGメンの中島はるみは窮地に陥るも、敵の一味であるはずの何宗道が突然反旗を翻し、敵を一掃した…が、何宗道は身代金までも奪い去ってしまう。身代金を取り損ねた香港ギャングは、またも領事館に100万ドルを要求。しかし領事館の使用人が何宗道の妹であった事から、何宗道の目的と高品の秘密がGメンにも知れることとなる。実は高品、あくまで自分自身の手で香港ギャングを捕らえようと執念を燃やしており、自分が身代金受け渡しに向かうことで連中を現行犯逮捕しようとしていたのだ。
高品のバックアップに回る何宗道であったが、1人になった所を狙われて高品は殺されてしまう。難民だった何宗道とその妹は、かつて高品に救われた過去を持っていた。香港ギャングに怒りを燃やす何宗道は、領事の居場所を探るためにわざと敵の手に落ちると、すぐにGメンへ連絡を飛ばした。かくして、何宗道の八面六臂の活躍で領事の所在を知ったGメンは、何宗道と共に香港ギャングへ決戦を挑む!
▲ストーリー・功夫アクション・作品の規模など、バランス良く配された「香港カラテシリーズ」でも指よりの傑作エピソードである。
これ以降は香港の助っ人が前面に押し出され、Gメンの活躍が少なくなってしまう傾向になるが、本作ではGメンとゲストの両者がきちんと描かれており、良質の作品となっている。特色だったのは高品格演じる香港の刑事で、本作で強く印象に残った。最初は単なる小悪党かと思いきや、実は誰よりも犯人逮捕に情熱を傾ける男だったという後半の展開が面白く、クライマックスを盛り上げる事にも一役買ってくれている。
また、何宗道の演技もさることながら、本作中で立ちはだかる猛者たちとのバトルも、バッタもん作品とは違った魅力を見せていた。
今回敵となるのは江島&楊斯(ヤン・スェ)というシリーズお馴染みの顔で、さらに当時ショウブラに在籍していた狄威(ディック・ウェイ)が組織の幹部として顔を見せている(もちろん作中での表記は「屠龍」)。当然、作中では何度も何宗道VS狄威のバトルが繰り広げられ、ラストバトルでは伊吹剛・宮内洋・千葉裕のGメントリオとも立ちあっている。『プロジェクトA』『五福星』に先駆けること3~4年前、既に狄威が日本上陸を果たしていたとは感慨深い。
ラストの何宗道VS江島&楊斯の対決も面白く、この前後編は功夫映画ファンにも自信を持ってオススメできる話といえよう。なお、好評につき何宗道は再びGメンと手を組み、今度は意外な強敵に出くわす事になるのだが、こちらは次回の講釈で…。
ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、今回の特集で唯一の単発エピソードである『香港カラテ殺人旅行』をお送りします。

「Gメン対香港の人喰い虎」
「Gメン対香港の人喰い虎&PART2」
製作:1979年
▼『Gメン75』と香港の麻薬組織の戦いは、第175~176話『香港カラテ対Gメン』前後編で、より本格化していく。この前後編で楊斯(ボロ・ヤン)はついに最後の強敵へと昇格し、倉田保昭との激闘を繰り広げるのだ。ちなみに後編で楊斯の前に倉田と闘う2人組は、倉田の弟子である竜咲隼人と中村勇。竜咲はショウブラ作品の『少林寺VS忍者』で劉家輝(ゴードン・リュー)と戦い、中村勇は『激突!少林拳VS忍者』で忍者となって奮戦している。
だが、第201~202話『Gメン対香港カラテ軍団』前後編で、遂に倉田がGメンから去る日が来てしまう。『少林寺VS忍者』の水野結花が登場し、『香港カラテ対Gメン』の楊斯の弟・楊斯(ややっこしい・笑)が立ちはだかるなど、盛り上がりを見せたエピソードであったのだが、ここで倉田の後釜はどうすべきかという問題が浮上する。勿論、Gメンらしい配役である事が第一だが、「香港カラテシリーズ」を続行するのならアクションの出来る俳優が必要となってくる。果たして、日本でJAC以外にあそこまでの格闘シーンを演じ切れる俳優がいるのだろうか?
そこで白羽の矢が当たったのは、特撮俳優としても知られる宮内洋であった。空手三段・柔道初段という来歴、丹波哲郎との親交が深かった事と、大人気刑事ドラマ『キイハンター』への出演歴が宮内の起用という流れに繋がったのだろう。この『Gメン対香港の人喰い虎』前後編(第227~228話)は、Gメンデビューを果たした宮内をプッシュするために彼を中心として作られ、それに合わせて香港側のキャストもグレードアップしている。だが、本作を経た「香港カラテシリーズ」は再び方向転換せざるを得なくなってしまうのだ。
■黄金の三角地帯が打撃を受けて麻薬市場が高騰していた頃、香港では韓英傑(ハン・インチェ)率いる香港コネクションが動き出していた。
韓英傑は中崎康貴(『少林寺VS忍者』のサイ使い)に1億ドルの麻薬を日本へ密輸するよう指示するが、香港には麻薬捜査官の石田信之が潜入していた。すぐに運び屋の情報はGメンの知るところとなるが、監視役のジョニー大倉によって香港にスパイが潜んでいると気付かれてしまう。石田の仲介役だった2人の協力者は、組織の飼う猛虎シーザー(『武闘拳 猛虎激殺』で倉田保昭と対決した虎と恐らく同一人物)の牙に露と消えた。
程なくして石田も捕らえられ、石田の兄である宮内は警視・川津祐介の要請で香港へ発った。そのころ、Gメンがマークしていた運び屋はジョニーによって殺害されるも、1億ドルの麻薬はGメンの手に渡った。一方、宮内は石田の行方を追って香港コネクションに接近を図るが、闘いのさなかに中崎を死なせてしまい、当局に逮捕されてしまう。当然、組織の人間を殺した宮内も命を狙われる羽目になり、刺客の石橋雅史を倒して獄中を脱したが、韓英傑の部下である楊斯と蕭錦(『Mr.Boo!』の巨人)の拳に叩きのめされた。
川津は「宮内が殺人容疑で指名手配されている。これは香港コネクションの罠に違いない!」と、事の解決をGメンに依頼。伊吹剛・千葉裕・夏木マリの3人が、宮内と石田を追って香港にはせ参じた。恒例の香港警察門前払いを済ませ(ちなみに『マカオの殺し屋』と本作では香港警察が悪いような描かれ方をしているが、彼らの言い分にも一理ある)、宮内の行方を捜すGメンの3人。だが、当の石田は猛虎シーザーの恐怖に負け、組織の言いなりになって夏木を陥れてしまう。
復活した宮内は伊吹と千葉に出会うが、組織が「麻薬返せや!」と夏木を人質に要求してきた。そんな中、石田と恋仲だった女の口から彼の居場所が判明するが、石田の身柄を拘束していたジョニーが、実は宮内の弟であったことが明らかとなる(それにしてもムチャな三兄弟だ・苦笑)。ジョニーから「俺たちの仲間になれ」と囁かれ、心の揺れる宮内。辞表を書くところまで至ったが、川津の「君は刑事だ」の言葉に動かされ、一転してジョニーに反旗を翻した。
なんとか夏木を助け出した一行だが、彼女の口から出た猛虎シーザーの名に宮内はひどく動揺した。実は、シーザーはかつてベトナムに住んでいた宮内ら三兄弟の飼っていた虎であり、現在は血に飢えた死刑執行人と化していたのだ。石田とその恋人もシーザーに殺され、宮内を加えたGメンは敵のアジト(毎度おなじみタイガーパーム・ガーデン)に突入する。そこで宮内を待っていたのは、宮内と決別したジョニーとシーザーであった。
ジョニーはシーザーに宮内を殺せと差し向けるが、ベトナム時代を思い出したシーザーはジョニーに襲いかかる。シーザーの牙がジョニーを裂き、ジョニーのナイフがシーザーの腹を突き刺した。息絶えるシーザーとジョニー…2人の亡骸を後に牢から脱出した宮内は、Gメンたちと共に香港のカラテ使いたちと死闘を展開する!
▲「田口逃げろ!こいつらは俺たちが倒せる相手じゃない!」
↑は伊吹剛が後編の冒頭に発した言葉だが、これが本作の全てを物語っている。確かに本作での宮内の奮闘ぶりは眼の覚めるものであり、三兄弟の行く末などはグッとくるものがあった。が、功夫アクションはどうもしっくりこないのだ。宮内も十二分に頑張ってはいるが、どちらかというと格闘シーンは千葉裕の方が上手かった気がするし、香港側のキャストも立ち回りでは遠慮している感がある。やはり倉田が抜けた穴は大きく、達人不在という状況がこの結果を招いてしまったのだろう。
そのためか、ラストバトルの結末は非常に冴えないものとなった。蕭錦は台車に押し潰されて死に、楊斯はドアに挟まれて死に、韓英傑に至ってはそのへんに突き出ていた鉄串に刺さって死んでしまう。ここまでの豪華キャストを動員していて、この結末はさすがに腰砕けだ(余談だが、前編の予告ではタイガーパーム・ガーデンで宮内と韓英傑が闘っている映像があったが、作中に使用されていない)。
製作側もこれではインパクトが薄いと判断したのか、猛虎シーザーを呼んで作品の底上げを講じている。しかし今回はこれで乗り切る事が出来たものの、次からの「香港カラテシリーズ」で同じ事を繰り返すわけにはいかない。浮上する達人不在問題、迫られる方向転換。そしてシリーズは新たな局面へ向けて動き出すのだが、それはまた次回の講釈で…。
ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『Gメン対世界最強の香港カラテ』前後編をお送りします。

「南シナ海の殺し屋」
「マカオの殺し屋」
製作:1977年
▼今月、遂にCSのファミリー劇場で『Gメン82』の香港編が放映されます。それを記念しまして、今回は『Gメン75』に於ける「香港カラテシリーズ」を、香港映画的な視点から考察していきたいと思います。なお、最初にお断りしておきますが、この特集では「香港カラテシリーズ」の全てを紹介いたしません(というか出来ません)。私はCSで本作を視聴していますが何話か見逃した回がありまして(爆)、本来なら全部を総ざらいしたかったのですが、そのへんはご容赦を…。
全ての発端は第一次ドラゴンブームが巻き起こった1974年から始まる。
李小龍(ブルース・リー)を筆頭に様々なカンフー映画が日本全土を吹き荒れ、大きな影響を与えた事は当ブログでも何度か触れてきたが、その風に乗って1人の男が日本に凱旋を果たす。和製ドラゴン・倉田保昭その人である。香港で活躍していた日本人スターという事で脚光を浴びた倉田は、矢継ぎ早に東映のカラテ映画に参戦。『女必殺拳危機一発』や『必殺女拳士』に出演し、TVドラマ『闘え!ドラゴン』に主演したことで、彼はお茶の間にも知られる存在となった。
日本での人気も定着しつつあった倉田は、1975年にある刑事ドラマへ出演する…それが『Gメン75』だった。『Gメン』といえばシリアス&ハードな刑事ドラマとして有名だが、海外ロケや怪談モノといった多種多様なシリーズ構成も人気の一翼を担っていた。そんな『Gメン』とドラゴン・倉田の出会いが、この「香港カラテシリーズ」を作り上げたといっても過言ではない。
とはいえ、シリアスな世界観を持つ『Gメン』にいきなりカンフー映画の真似事をさせるのはあまりにも無謀だ。そこで最初の香港ロケとなった第105話『香港-マカオ警官ギャング』と第106話『女刑事殺人第一課』は、ドラマ重視のストーリー展開が行われ、功夫アクションはほんのオマケ程度に挿入された(なお、『女刑事殺人第一課』には刺客として江島(チェン・タオ)が登場する。のちに「香港カラテシリーズ」の顔となる楊斯(ヤン・スェ)に次ぐ出演数を誇る江島だが、楊斯よりも登場は早かったようだ)。
しかし、続く第126話『南シナ海の殺し屋』と第127話『マカオの殺し屋』では、いよいよ倉田のカラテアクションと香港側の大物ゲストが出演する。その後も何度となく死闘が繰り広げられる「香港カラテシリーズ」は、この2本から幕を開けたのだ。
■香港から来たヘロインの運び屋を捕らえたGメン一行。取引相手が誰なのか吐かせようとするが、マカオの香港コネクションは秘密裏に殺し屋・力石考を派遣し、運び屋と護衛の警官が殺害されてしまう。彼らの命を奪った銃弾は、かつて倉田が3年前の事件で撃たれた弾と同じ物であった。力石を捕らえるべく、倉田は丹波哲郎のひと声で香港へと向かった。
香港警察に協力を断られた倉田は、アバティーンや九龍地区を転々としながら証拠集めに奔走。最後にマカオへ辿り着いたが、そこでコネクションの刺客である楊斯と白彪(ジェイソン・パイ)に襲撃を受けた。その時、倉田は孤児院で3年前の事件でとばっちりを受けた女医に再会する。一方、日本では若林豪らが麻薬の取引相手であるボクシングのプロモーターを確保し、コネクションのボスが誰なのか取調べを続けていた。その際に運び屋が「麻薬の仲介人は九龍のダンスホールにいる歌手だ」と自白し、倉田を支援するために伊吹剛と森マリアが香港へ飛んだ。
そのころ香港では、くだんの歌手が白彪に叱咤を受けていた。この歌手と白彪は愛し合っていたのだが、伊吹たちと合流した倉田の目前で歌手は力石によって射殺されてしまう。捜査は振り出しに戻ったが、香港コネクションは倉田たちを消そうと着実に近付きつつあった。再び白彪たちとまみえた倉田は楊斯を倒すが、白彪は「貴様が彼女(歌手)を殺したんだ!」と憎悪を向ける。
白彪こそ取り逃がしたものの、倉田は女医から力石の人相書きを入手し、続いて奴がマカオに行ったことを知る。マカオで聞き込みをする倉田と女医…が、遂に力石の凶弾は女医の命をも奪った!同じ頃、伊吹と遭遇した白彪は自分が秘密捜査官である事を明かし、死んだ歌手を救いたかった無念を語った。共に大事な女性を失った倉田と白彪は、香港コネクション壊滅を心に誓った。
白彪でさえも組織の全容はわからなかったが、朗報は日本から入ってきた。若林の追及によってプロモーターが白状し、マカオに黒幕が潜んでいることを掴んだのだ。さっそく香港コネクションのボスを問い詰めるが、自身の罪状に関してはシラを切るばかり。だが、目下の目的はコイツではなく力石の逮捕だ。離島に力石が潜伏していると聞いた倉田は、たった1人で乗り込もうと決意する。
続いて白彪も突入するのだが、果物売りの月丘千秋(白彪の母)と力石の意外な関係が明かされるとは、このとき誰も予想だにしなかった…。
▲香港コネクションと麻薬、香港側の助っ人、アバティーン、九龍城、そして楊斯…この前後編は、その後の「香港カラテシリーズ」で欠かせぬ要素となる物が大量に登場し、以降のシリーズの雛形として作られている。
今回ゲストとなるのは白彪と楊斯で、『アムステルダム・コネクション』や『白馬黒七』などで付き合いのある両者が倉田と戦う構図になっている。後半では白彪が実は味方であったことが明かされるが、一方の楊斯はあまり目立っていない。これがシリーズ初登場である楊斯だが、作中では後編の冒頭であっけなく死んでしまうのだ。
しかし、楊斯が本領を発揮するのは本作以後であり、作中で壊滅することのなかった香港コネクション共々、何度と無くGメンに立ちはだかってくるのである。
本作とその後の「香港カラテシリーズ」で最も違うのは、ラストが功夫アクションで終わっていない点だろう。筋立ては殺し屋を追う追求劇であり、まだまだシリアスな作風が後を引いているため、その後のシリーズにあった爽快感はあまり感じられない。また、白彪の死や力石の出自など、少々唐突ともいえる展開が鼻に付くが、これらの反省点は以後のシリーズに生かされていくことになるが、それはまた次回の講釈で…。
ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『Gメン対香港の人喰い虎』前後編をお送りします。

「英雄列伝」
「英雄烈伝」
原題:嘩!英雄
英題:What A Hero!
製作:1992年
▼劉華(アンディ・ラウ)主演の警匪片だが、今回は『餓狼烈伝』や『仁義なき抗争』のような直球シリアス路線ではなく、喜劇要素が含まれた動作片だ。
功夫アクションやギャグパートも多く、加えてラブストーリーも平行して描かれるという無茶な構成だが、監督が『香港国際警察』を撮った陳木勝(ベニー・チャン)であるのなら納得の内容か。共演陣には黄秋生(アンソニー・ウォン)や陳惠敏(チャーリー・チャン)なども名を連ねているが、両者とも悪役ではない砕けたキャラを演じている。
■ランタオ島の小さな村で暮らしていた劉華は、腕っ節の強さから島民に慕われ、張曼玉(マギー・チャン)とも良好な関係を結んでいた。だが、張曼玉は親の決めた許婚と結婚することになっており、2人の様子はどうもぎこちない。そんな中、劉華が香港で刑事になることが決まり、母親の林建明(サモハン映画の悪女役で有名)らに見送られながら島を後にした。
劉華が着任したのは落ちこぼればかりが集う部署で、腑抜けたボスの陳惠敏や黄秋生などが在籍していた。エリート部署の張耀揚(ロイ・チョン)は彼らを見下していたが、新人の劉華が手柄を立てた事が張耀揚を苛立たせた。数々の嫌がらせをする張耀揚に対し、劉華は真っ向から決闘に挑むのだが、テコンドーの達人である張耀揚にはまったく歯が立たない。傷心の劉華は故郷に戻るが、そこでは張曼玉の許婚であるイヤミ男が威張り散らしていた。
迎えに来た黄秋生が林建明に惚れる(笑)という騒動を挟みつつ、香港に戻った劉華だったが、警察署長が小侯(!)率いる犯罪集団に重要書類を奪われるという事件が発生。劉華たちは決死の捜査で敵の尻尾を掴むが、全ての手柄は張耀揚によって奪われ、陳惠敏が負傷してしまった。己の無力さを痛感した劉華は、再び故郷に帰り…って、なんだか何度も故郷と香港を往復している気がするが、香港警察としてはこれでいいのか??
その後、落ち込んでいた劉華は張曼玉の励ましによって復活し、許婚のイヤミ男から彼女を無事に奪い返した。陳惠敏も復帰し、再び落ちこぼれ達の間に活気が戻って来たかに見えたが、脱獄を企てた小侯を鎮圧した手柄をまたも張耀揚に奪われた!『ドラゴン電光石火'98』や『復活!死亡遊戯』などで悪役を演じてきた張耀揚だが、本作の彼はそれ以上の悪党っぷりである。
奇しくも香港警察では、組織内で行われるテコンドー大会が開催される事となっていた。香港なのに何故テコンドー?という私の疑問もよそに、大会は華々しく幕を開く。決勝に残った劉華と張耀揚は壮絶な蹴りあいを展開するが、実力では張耀揚が抜きん出ている。果たして劉華は、卑怯者の張耀揚を地に這わせる事が出来るのか?
▲まず功夫アクションに関してだが、こちらは『餓狼烈伝』以上のボリュームで繰り広げられており、ラストの劉華VS張耀揚に至ってはワイヤーでビュンビュン飛び回ったりするのだ。
殺陣師が3人もいることから解るとおり、作中で劉華が見せるアクションは実に見栄えがあり、キレのいい足技で頑張っている。だが、本作で最も注視すべきは、犯罪集団のリーダーを演じた小候だろう。かつて劉家良(ラウ・カーリョン)作品の軽業師として『マッドクンフー・猿拳』『新・少林寺三十六房』に出ていた小候だが、本作でも猿のような身軽さを披露。劉華と張耀揚の2人に、先輩功夫スターとしての実力を見せ付けていました。
さてストーリーに関してだが、こちらは少々まとまりに欠けている。張曼玉との恋愛模様や張耀揚との確執など、個々として見る分にはどちらも面白いエピソードだったし、それぞれのテンポも良かった。しかし一本の作品として見た場合、どうも1つに合わさっているように見えないのだ。陳木勝は『ジェネックス・コップ』のようなアクション映画で本領を発揮するタイプの人なのだが、本作では劉華らしい爽やか恋愛路線も取り入れてみたものの、そのために路線そのものが有耶無耶になってしまった…ような印象を受ける。
功夫アクションもあるし、挫折を経験した劉華の演技や黄秋生の怪演なども目立つが、全体的には疑問符が拭えない作品。陳木勝の仕事としても劉華作品としても、とりあえずボチボチな方だろうか。

「ファイナルラウンド」
原題:Final Round/Human Target
製作:1993年
●ロレンツォ・ラマスが妻のキャスリーン・キンモントと出演した格闘映画で、ラマスの主演作としては平均的な出来の作品である。物語はよくある人間狩りモノで、ロケ地も暗い工場の中を右往左往しているだけだが、低予算な作りを上手く逆手に取って緊迫感のある作品に仕上がっている。これといって格闘アクションが多くないのが欠点だが、悪くない作品だ。
ラマスはシュートボクサー兼バイクの修理工だったが、あるときキャスリーンと出会ったことから事件に巻き込まれてしまう。ラマスとキャスリーンは、気が付くと奇妙な密室に閉じ込められていた。部屋にはラマスらと同じく誘拐されてきたクラーク・ジョンソン(子持ちという時点で既にアウトなキャラ・笑)がおり、彼らは人間狩りの標的として連れ去られてきたのだ。人間狩りの模様は衛星を通じて世界中の会員に中継され、賭博によって膨大な利益を上げている。この闇のビジネスの仕掛け人は、マフィアから独立した野心家のアンソニー・デ・ロンジスであった。彼は5人のハンターを飼っていて、今回も大儲けを企んでいたのだが…。
かつてのアンソニーの親分であるスティーブン・メンデルはラマスの腕を買い、標的の方に賭けるとアンソニーに連絡してきた。苦笑するアンソニーであったが、ラマスたちは衝突を繰り返しながらもハンターたちを返り討ちにしていく。これにより賭け率のレートが滅茶苦茶となり、怒り心頭のアンソニーは残りのハンターたちと共にラマスを殺害せんと企む。一方、クラークの死という代償を払いつつも、閉じ込められていた廃工場からの脱出に成功したラマスとキャスリーンだが、執拗にもハンターたちは彼らを狙い続ける!
ミニマムな作品ではあるが、キャラクター描写については良好だ。いつもは無個性なラマスも、本作ではクラークやキャスリーンとの絡みでは人間味のある顔を見せており、敵となるハンターたちも得物やファイトスタイルが違っていたりと、個性を尊重している点は評価できる。物語の性質上、ハンターとの対決は遭遇してすぐに決着してしまうので、出来ることならじっくりとハンターたちの実力を見てみたかった気もするが、ダレる事なく最後まで見ることが出来ました。
特に惹かれたのがラストの展開で、ラマスたちを追っていた最後のハンター2人が仲間割れ!と思ったら最後の敵っぽい方の白眼ナイフ使い(ビデオのジャケに出ているオッサン)があっという間に死亡!と思ったら実は死んでおらず、ラマスを襲っていたハンターを殺害!と思ったら白眼ナイフ使いはあっという間にラマスに火達磨にされて死亡!と思ったらアンソニーが現れてラストバトル!…と、こんな感じでクライマックスはどんでん返しの連続技を炸裂させているのだ。
個人的に、私は白眼ナイフ使いがボスだと面白くないと思っていた(パワータイプの大柄なボスキャラはもう勘弁)のだが、その白眼ナイフ使いがあっさりと死んでしまう展開には驚きました。で、肝心のラストバトルは意外にもアンソニーが担当。しかもこのアンソニー、この手の作品では珍しくマッチョなファイターなどではなく、見た目は普通の男だが強い&ムチ使いというキャラなのが珍しい。
格闘アクションあり、エロ&バイオレンスあり、ユーモア要素あり、無茶な展開あり。決して大層な作品ではないが、ラマス作品では見られる方かと。