続・功夫電影専科 -90ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「フィスト・オブ・フューリー 復活!ドラゴン怒りの鉄拳」
「復活 ドラゴン怒りの鉄拳」
原題:重振精武門
英題:Return of Dragon
製作:1998年

●さて、今回のレビューをもって当ブログは今年最後の更新と致しますが、最後の最後でこんなクソ映画を紹介してしまうことになってしまい、本当に申し訳ありません(爆
かつて2年前の5日前(12月24日)、私はクリスマスだというのに1本の酷い映画を紹介した。それが石天龍(ドラゴン・セキ)主演作『復活!死亡遊戯』である。当初は方々で「酷い映画だ」と言われていた中身を確認するために視聴していたのだが、そのあまりの悪質さ&杜撰さに私は目眩を覚え、石天龍に拒否反応を示すまでになってしまった。
香港映画のスターなら巨龍(ドラゴン・リー)でも呂小龍(ブルース・リ)でも普通に見ている私が、初めて心の底から嫌いになってしまったスターが石天龍であったのだ。
 なら、「何故そんな奴の映画をまた見るのか」と皆さん思うでしょうが、石天龍の映画には共通した難点が存在します。というのも、彼の出演した作品には必ず「特別ゲスト」が登場するのです。
前述の『復活!死亡遊戯』では周比利(ビリー・チョウ)が、『霍元甲之精武真英雄』では劉家輝(リュウ・チャーフィ)が、『武生情未了』では黄家達(カーター・ウォン)が…といった具合に、共演者を豪華スターで固める事により、石天龍は自分目当てでない観客まで引きこもうとしているのですよ。
で、本作は石天龍の映画初主演作ということで、楊麗青(シンシア・カーン)に午馬(ウー・マ)に高雄(エディ・コー)に林威(デビッド・ラム)に徐忠信(アラン・ツィ)まで呼んでいます。近年の作品でこのメンバーが一堂に会するなんて滅多に無い事ですし、見ない訳にはいかないじゃないですか!(血涙
ちくしょう石天龍め……。

 ということで本作の話に移るが、やっぱり今回も酷いです。一応は『ドラゴン怒りの鉄拳』の続編という事になっているものの、陳真が銃弾で撃たれていなかったという超捏造設定で始まり、田舎に隠居していた陳真がセコい悪事を企む日本人に楊麗青を殺され、怒りの鉄拳アチョーになるという、70年代に飽きるほど見たストーリーにはもはや笑うしかありません(怒
動作設計が洪家班の曹榮ということで殺陣の質は高いものの、反転した映像を何度も繰り返すという珍妙なカット割りのため、アクションのテンポは完全に崩壊。やけに暗がりのシーンが多く、ところによっては功夫アクションが見づらいカットも多々あるなど、とても近年の作品とは思えないような低レベルの内容になっていました。
 ラストでは裏切り者の張来京・石天龍を追う徐忠信・その上司である師範の高桐林と闘うのだが、ここで戦う順番も間違っている。作中、張来京は楊麗青に横恋慕していたという設定が語られ、徐忠信に楊麗青が殺されたところでは戸惑うカットがあった。なので最後は石天龍を守って死んでいくのかと思いきや、結局は最後の最後まで悪党のまま退治されてしまうのだ。
また、橋本力の弟という設定の徐忠信は本来なら最後に戦うべき相手であるはずが、何故か一番最初に呆気なく倒されてしまう。と、このように本作のラストバトルは伏線や設定を全て無視した戦いが繰り広げられるのだが…こんなメチャクチャな物語にどうやって感情移入しろっていうんだ!?(混乱
 作品としては『復活!死亡遊戯』より見ていられるが、クズ中のクズであることに変わりはない。ちなみに石天龍の主演作はもうひとつ『復活 ドラゴン危機一発(戦龍2)』が日本でソフト化されているが、こちらには特に大物ゲストは出てないようなので、恐らく私は絶対に見ないかと思います。

………え~、それではみなさん良いお年を!(逃げた)


「香港カラテVS赤い手裏剣の女」
「香港カラテVS赤い手裏剣の女」PART2
製作:1981年

▼みなさんメリー・クリスマス!…と言いたいところですが、今回も「香港カラテシリーズ」の紹介です。「そろそろGメンは飽きた」という声も上がりそうですが、これにて特集はラストなのでご勘弁下さい(苦笑
さて、本エピソードは『Gメン75』にとっても最後の香港ロケということで期待が高まるところだが、今回は中国残留孤児をテーマにした重苦しい作品となっている。「香港カラテシリーズ」といえば、普段の『Gメン』には無い勧善懲悪(全てがそうという訳ではないが)と功夫アクションが醍醐味であったはずだが、本作はそれらを一切そぎ落として本来の作風に立ち返っているのだ。
また、今回香港側の助っ人として登場するのは孟秋(キティ・メン…女性功夫スターで『タイガー&タイガー/猛虎激突』が発売中)だけで、メインを張れるような功夫スターが不在であり、楊斯の降板など不安要素が多い。個人的な見解だが、幕引きとしては少々ボリューム不足だったのでは…と思ってしまうところである。

■現在もなお残る中国残留孤児問題。Gメンの江波杏子は中国で生き別れた3人の姉を探していたが、大きな成果も得られず帰路についていた。
その頃、香港では中国人・月丘千秋(『マカオの殺し屋』の彼女とは別人)が日本の政府高官・田中明夫を見て、異様な殺意を抱いていた。この田中という男は香港マフィアの江島と通じており、20億円の覚醒剤を密輸しようと企んでいる。江波は帰国のために香港へ立ち寄ったが、そこで彼女は田中が月丘に刺されるという衝撃的な場面へ出くわした。
成り行きから月丘を追うことになった江波は、香港警察の杉江廣太郎と協力して捜査に乗り出していくが、果たして彼女は何者なのだろうか?
 江波は単独で張り込みを続けた末に月丘の姿を見つけたが、孟秋と林崇正(本作ではベンジャミン・ラム名義)に行く手を阻まれてしまった。事情を知った孟秋に介抱された江波は、月丘が母の歌っていた童謡を口にしていたことから、まさかと思い彼女に問いかける。…そう、月丘は江波の生き別れた姉であり、残留孤児だったのだ。
涙の再会を果たした姉妹だが、月丘は田中が戦時中に人身売買に加担した外道であることと、そのために他の姉たちが死んだことを涙ながらに語った。日本に帰ろうと励ます江波だが、警察に追われる身である月丘は帰国できないと言う。江波は田中に直談判し、月丘を許さないのなら過去の悪事を暴いてやると奴に恫喝した。
 だが田中は臆するどころか、江島たちに依頼して月丘を抹殺しようと動き出した。しかも香港警察の杉江も敵の仲間であり、非情の包囲網は彼女たちに迫りつつあった。時を同じくして、香港マフィアは覚醒剤の密輸を目論み、遺骨収集団に化けた運び屋を日本に向かわせていた。だが、Gメンは敵の動きをいち早く察知し、ニセ収集団と60億円の覚醒剤はあっけなく押収されてしまう。
 怒り心頭の香港マフィアは江波も標的として目を付け、彼女もまた手傷を追った。その様子を見かねた月丘は「自分は貴女の姉ではなく、日本に帰りたくて身分を偽った…3人の姉はみんな死んでいる!」と思いも余らぬ事実を告げた。それでも江波は彼女を姉と呼んだが、とうとう田中によって月丘は殺害されてしまった。
江波と孟秋は、無念の死を遂げた月丘のために仇討ちを決意する。本当は姉が袖を通すはずだった黒い和服に身を包み、匕首片手に香港マフィアの根城へと突入する江波。孟秋もこれに加勢し、外道たちを討つために女たちの怒りが燃え上がる!

▲残留孤児にまつわる悲哀を描いた、実に優れたストーリーだ。
孤児たちの声にならない叫びを感じさせる内容で、これまで幾度か触れてきた難民というキーワードが大きく扱われているのがポイント。終盤で江波が討ち入るシーンはえもいわれぬ情念が漂っており、作品としては佳作と言えるだろう。それに、これまで人質と身代金というルーティンな話から脱却し、新たな「香港カラテシリーズ」の形を打ち出したという点でも、本作は注目されるべきエピソードである。
だが、それでも本作に対して私は思うのだ。「何かが違う」と…。
 中国と言う土地ならではの物語を構築した本作だが、革新的な内容ゆえに不満な点も多々ある。まずラストの展開についてだが、個人的にはどうもココが納得できないのだ。この場面で江波がやっていることは単なる仇討ちであり、その時点で田中や江島の罪は公に暴かれてはいない。それに、杉江がマフィアに加担していた事を江波は知らないままなのだ(ラストで江島たちと一緒に登場するが、マフィアの傘下だったことについては一切触れていないし、杉江自身は孟秋に始末されている)。
これまでの「香港カラテシリーズ」では倉田保昭や香港の助っ人が悪人を殺すというシーンはあったが、どれもこれも公儀に悪事が発覚した上での決着であった。しかし本作で江波がやっていることは、私怨による殺人でしかない。物語の勢いに任せてこのような結果になったのだろうが、いくらなんでもあんまりな決着である。
 次に気がかりなのは、アクションシーンと香港側の出演者についてだ。本作で香港に降り立つのは江波ただ1人で、他のGメンは日本で行動している。せめて千葉裕あたりを寄越してくれたなら、もう少しアクションに華が添えられたはずだ。また、孟秋は赤い手裏剣を駆使して華麗な活躍を見せてくれたが、いかんせんメインを張るにはインパクトが薄い。ここは主演級の大物が出てくれれば良かったのだが、おかげで全体的にアクションが尻すぼみになっているのだ。
ちなみに、本作で楊斯の代わりとして筋肉マン担当となるのは李春華である。『酔拳』で食い逃げを働こうとするジャッキーを叩きのめしたブッチャー…といえば知っている方も多いだろう。しかし、本作における李春華はそれほど大きく扱われておらず、蕭錦やジョン・ラダルスキーといった猛者たちも存在感が薄い(江波VS江島に至っては結末もかなり腰砕け)。一体、どうしてこんな中途半端なものになってしまったのだろうか?
もし本作のアクションがより高度な物であったら、悲劇的なストーリーと見事な功夫シーンが組み合わさった傑作が生まれていたかもしれず、それだけにこのような出来になってしまったのは残念だったと言うしかありません。

 そんな訳で長いこと『Gメン75』と「香港カラテシリーズ」を追いかけてみましたが、如何だったでしょうか?私としては多種多様な作品造りと方向性にチャレンジし続けた同シリーズがますます好きになってしまいましたが、特集は終わっても「香港カラテシリーズ」は終わりません。
なにしろ来月(2010年1月)はCSファミリー劇場において、『Gメン82』の香港編が引き続き放送されるのです。今回の特集で取り上げなかったエピソードも含め、この『Gメン82』の香港編もいつかレビューしようと思いますので、その時までしばしのご猶予と「熱い心に強い意志を包んだ人間たち」の活躍にご期待下さい!


「香港カラテ対北京原人」
「香港カラテ対北京原人」PART2
製作:1981年

▼梁小龍(ブルース・リャン)が2度目の出演を果たした本エピソードは、大風呂敷を広げすぎた前回の反省からか、北京原人の化石を巡る争奪戦に重点を置いている。また、マンネリに陥らないように偉豪(本作ではレイモンド・タング名義)というニューフェイスを用意し、悪役には李海生(リー・ホイサン…本作では前編のみ季海生名義)を迎えるという快挙を成し遂げている。
李海生については説明不要だが、ここでは偉豪について触れたい。偉豪はショウブラ出身の功夫スターで、張徹(チャン・ツェ)作品の端役などでスクリーンに登場。孫仲(スン・チェン)監督による武侠片『七殺(殺の字は旧字体)』で主演の座を射止めているが、残念ながら天映娯樂のリマスター版は発売されていない。梁小龍や倉田と直接的な関わりの無い偉豪だが、恐らくは同じショウブラ関係の縁で本作への出演に至ったのだと思われる。
 また、この前後編は「香港カラテシリーズ」を長年支えてきた楊斯(ヤン・スェ)にとって、図らずも最後の出演となったエピソードでもある(のちに『Gメン82』の香港編で復帰)。
今回の楊斯は佛掌拳&金剛拳なる技を駆使しているが、これは劇中の描写を見るに神打の可能性が高い。神打は『マジック・クンフー神打拳』や『龍の忍者』などでその一端が描かれており、香港映画では比較的ポピュラーな黒魔術として扱われている。また、ラストで李海生も鐵布杉(功夫片でお馴染みの防御術)のような技を使用しているが、こうして見てみると本作の演出は今までで最も香港映画的であったと言えるだろう。

■かつて第二次大戦で消えた北京原人の化石が発見され、香港ギャングがその獲得に乗り出した。
ところが、輸送のトラブルで北京原人が下塚誠(Gメンの1人・范文雀の弟)の手に渡り、あらぬ疑いで警察に拘束されてしまう。彼は香港警察の強引な取調べでムショにぶち込まれたが、香港ギャングは「化石の行方は下塚が知っているに違いない」と思い、獄中の彼に刺客を差し向けんと企んだ。一方、Gメンは下塚を救出するために千葉裕・セーラ・范文雀を派遣するも、香港警察の河合絃司は非協力的だった。
そのころ刑務所では、下塚の前に奇妙な男・偉豪が姿を見せていた。彼は下塚を狙う殺し屋(『少林寺VS忍者』の角友司郎!)を迎え撃つなど、悪い男ではないようだが…。
 刑務所で下塚と面会した范文雀は、彼の証言から事件に北京原人の化石が絡んでいることを知る。だが、香港ギャングと組んだ偉豪によって下塚が捕らえられ、范文雀たちの元に「北京原人をよこせ」と連絡が入る。范文雀たちは化石を持たずに取引現場へ向かうが、丹波哲郎の依頼を受けた梁小龍の参入によって、事なきを得た。
時を同じくして、若林豪も香港へ到着。ところが偉豪は梁小龍に接触を図ったり、下塚を逃がしたりと不可解な行動を取り始める。実は偉豪、北京原人の化石を追って中国本土から香港へ潜入した広東省の特別捜査官だったのだ。彼によって下塚の無実は証明されたが、その身柄は再び香港ギャングの手に落ちた。偉豪は下塚を利用して香港ギャングに近づいた事を范文雀に詫び、必ず彼を救い出すと誓った。そんな中、香港ギャングはまたも北京原人の化石を要求してきたが、北京原人の化石が忽然と消え失せてしまう。
 香港入りした丹波は、化石消失が河合の仕業である事を見抜いた。この北京原人の化石には多額の懸賞金がかけられており、大家族を養う河合は金欲しさに犯行へ至ってしまったのだ。若林の説得によって河合は改心し、無事に化石も戻ってきた。改めて協力体制を敷いたGメンは、偉豪と共に香港ギャングをおびき寄せる作戦に出た。案の定、香港ギャングは偉豪をアジトに幽閉し、梁小龍がこれを追いかける。
こうして、2人の龍虎はカラテ使いの殺し屋たちを相手取り、怒りの鉄拳を炸裂させるのだった…!

▲本作は『香港の女カラテ対Gメン』で見られた難点がいくつか解消されている。
前回はゴチャゴチャになったストーリーも方向性が一本化され、不甲斐ない有様だったGメンにも活躍の場が与えられている。また、今回も梁小龍は本筋に絡んでこない役柄ではあったものの、楊斯や李海生で見せた激しい功夫アクションなどで、大いに作品を盛り上げている。また、梁小龍に代わって本筋を受け持った偉豪も、敵か味方か解らないという、かつての何宗道を思わせる役柄を演じ、なかなかの存在感を発揮していた。
 とまぁ、ご覧のようにストーリーやアクションは格段に進歩しており、前回のバージョンアップとして正しく進化したエピソードとなっている。だがその一方で、香港警察が悪役化してしまうという事態を招いている。この「香港カラテシリーズ」において、香港警察はGメンの障害となる存在として一貫されてきた。時に縄張り意識を誇示し、時にGメンの捜査を掻き乱すなど、香港という特殊な環境の閉鎖性を感じさせる汚れ役であったが、彼らの言い分にも一理あることが多かった。
しかし本作での乱暴な態度や、あまつさえ国宝級の化石を売ろうとする行為など、その行動は完全に悪そのものだ。香港警察に不祥事が多かったことは事実だが、単純悪と位置づけてしまうのは安易ではないだろうか?次回でもその傾向が見られるが、これについてはまた次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、いよいよシリーズ最終作『香港カラテVS赤い手裏剣の女』前後編をお送りします。


「香港の女カラテ対Gメン」
「香港の女カラテ対GメンPART2」
「香港の女カラテ対GメンPART3」
製作:1981年

▼前回の『香港カラテ殺人旅行』は単発エピソードだったが、今回紹介するストーリーは3話にも渡る長編作品である。これは「香港カラテシリーズ」にとっても唯一の事例であり、この頃が同シリーズの最盛期であったことを伺わせている。
もちろん三部作という大イベントであるからして、香港側の助っ人は生半可な者では勤まらない。そこで今回白羽の矢が立ったのは、香港映画界最強の男として名高い梁小龍(ブルース・リャン)であった。過去にも主演作が日本公開され、『闘え!ドラゴン』でも客演を果たしている彼の登場は、全国のちびっ子たちに喝采の嵐を浴びたに違いない。
この時期の梁小龍は不摂生から肥満体型になり、往年の精鋭さが欠けている。しかし超人的な技の数々は健在で、この大長編に大きな花を添えているのだ。

■英国人ジャクソン率いる香港コネクションは、世界各国の麻薬Gメンが香港で麻薬撲滅会議を開くと聞き、激怒していた。香港コネクションの恐ろしさを知らしめるため、配下の廖安麗(アニー・リウ)、楊斯(ヤン・スェ)、黄薇薇(オー・メイメイ)は、会議のために集まった要人を次々と血祭りに上げていく。そんな中、日本からは警視庁の鈴木瑞穂が来ていた。香港コネクションに属する日本人・辻蔓長は、この鈴木に煮え湯を飲まされた経験を持ち、並々ならぬ恨みを抱いていたが…。
鈴木はGメンの宮内洋と中島はるみを連れ立って現地入りしていた。多数の要人の死により麻薬撲滅会議は延期となったが、香港警察は香港コネクションの摘発に全力を注ぐつもりのようだ。空いた時間を利用して、中島は難民街に住むチャン姉弟(姉役の中島めぐみは中島はるみの実妹。弟役の吹替えは声優の田中真弓が担当)と再会していた。このチャン姉弟、生活苦からヘロインの運び屋として日本に渡り、補導されたところを中島と鈴木に助けられた過去を持つ。そして、このヘロインを密輸させようとした男こそ、元刑事の辻蔓長だったのだ。
 チャン姉弟との再会を喜ぶ中島だが、廖安麗の姿を追って追跡を開始する。しかし逆に香港コネクションの手に落ち、ヘロイン奪還を狙う敵の人質となってしまった。そのころ、麻薬の売人を殺して刑務所入りしていた元警官の兄・梁小龍が、チャン姉弟の元に帰ってきていた。中島の危機を知ったチャン姉弟は梁小龍に助けを請うが、梁小龍はヌンチャクの封印を解こうとしない。一方、香港コネクションは鈴木に接触し、押収されたヘロインと1億5千万円の身代金をよこせと要求してきた。
Gメンの窮地を知った丹波哲郎はこの要求を仕方なく承諾。香港では動こうとしない梁小龍を見かねたチャン少年が、コネクションの様子を探ろうとして捕まってしまう。事ここに至り、梁小龍はついにヌンチャクの封印を解き放った!さっそく暗黒街の売人たちを相手取り、大立ち回りを演じる梁小龍(ちなみに、この戦闘シーンで背後の広告に狄龍(ティ・ロン)が映っている)。一時は彼も香港コネクションに捕縛されるが、隙を見て脱出に成功した。
 Gメンは総出で香港に向かうも、意見の違いで香港警察と対立。人質の確保まであと一歩というところで、香港警察の横槍によって全てがご破算となってしまう。ところが、逮捕された辻蔓長の口から、思いもよらぬ情報が飛び込んできた。奴が言うには、鈴木の生き別れた娘が香港で生きているというのだ。実は廖安麗は残留孤児の日本人であり、鈴木は彼女が自分の娘であると確信する。
辻蔓長に「廖安麗を連れて帰りたいならヘロインと身代金を渡せ」と促された鈴木は、奴の言葉に従った…が、その見返りはコネクションによる死の制裁であった。鈴木の死を知り、涙を流す廖安麗。父親の無念を感じ取った彼女は、中島とチャン少年を助け出して組織に牙をむいた。しかし強大な組織の前には廖安麗も倒れ、絶体絶命の窮地に陥る。そこへ、ドラゴン梁小龍が颯爽と現れる!

▲都合3話に渡って作られた本エピソードだが、どうにも冗長さを感じる話だ。ストーリーとしては梁小龍の活躍に麻薬がらみの事件を足し、更に残留孤児ネタまで詰め込んでいるが、この詰め込みすぎた構成がまとまりの無さを生んでいる。
特にPART3では、唐突に「実は鈴木の娘が残留孤児だった」という話が出てきたため、梁小龍が本筋から取り残されると言う憂き目に遭っている。どうせなら今まで通りに前後編でコンパクトに話を片付けて、香港コネクションとの攻防戦に徹してしまえばよかったのだが、なまじ三部作にしたことが方向性に迷走を生じさせてしまったと言えるだろう。
 また、本作における不満点はもうひとつある。それは、作中でのGメンの活躍ぶりだ。あくまで本作は『Gメン75』という刑事ドラマであり、刑事たちの活躍が作品の主軸となるべきである。だが今回のGメンは中島を人質に取られ、成すすべも無くコネクションの要求に従い、オコボレを貰うような形で辻蔓長を逮捕しただけ…前回までの何宗道(ホー・チョンドー)と共闘していた頃と比べると、あまりにも活躍に差がありすぎるのだ。
恐らく、これらの難点は製作スケジュールの都合が原因だったのではないだろうか。日本の出演者を大勢香港に向かわせ、慣れない功夫アクションをさせるのは時間の浪費も伴ったはずだ。しかし香港側の助っ人と少数の出演者を主軸にしてしまえば、ある程度の問題が軽減されると踏んだのだろう。その最初の試みこそ、この三部作だったのだと考えられる(なお、中途半端な結果となった残留孤児ネタは、後に『香港カラテVS赤い手裏剣の女』で仕切り直されることとなる)。
 さて肝心の梁小龍だが、作中では『帰ってきたドラゴン』でも見せた切り返しの早い蹴りの連打・壁上り・足技を次々と披露。Gメンたちと直接の顔合わせこそ無かったが、楊斯と黄薇薇の両者と闘ったラストの乱闘はなかなかの名バウトだ。廖安麗も役柄としては印象的だったが、こちらは特にこれといった功夫アクションは無し。組織を裏切った後の戦闘シーンもすぐ終わってしまったが、もう少し活躍しても良かったのでは?
そして次回は、いよいよあの香港映画屈指の名悪役が登場!ショウブラスターまで巻き込んだ梁小龍の第2ラウンドが幕を開けるが、まずは次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『香港カラテ対北京原人』前後編をお送りします。


「香港カラテ殺人旅行」
製作:1980年

▼今回特集で取り上げる作品の中では、最も小規模なエピソードである。これは「香港カラテシリーズ」全体を見渡しても稀なことで、単発エピソードの回は極端に少ないのだ。ちなみにこの回は何宗道(ブルース・ライ)の再登場だけではなく、準レギュラーとして出演していた遠藤真理子・鳥居恵子ら水上姉妹の降板回なのだが、特にこれといって降板を匂わせる話ではない。
もっとも、『Gメン』という作品自体が降板などのエピソードをドライな捉え方をしているので、感傷的な要素は含もうとしなかったのだろう。だが、単発エピソードのためにわざわざ香港ロケを敢行したのは、彼女ら2人に対する別れの餞別のような意味合いも含まれていたのではないだろうか。

■遠藤真理子と鳥居恵子の2人は、3泊4日の香港旅行を楽しくエンジョイしていた。日本人の観光客らしくパシャパシャと写真を取っていたが、この行動が2人を事件に巻き込んでしまう。
難民街の付近で撮影をしていた遠藤は、知らぬ間に1人の男をファインダーに写していた。男は自分をカメラに撮った遠藤らを手下に襲わせるが、そこへ颯爽と"情報屋のドラゴン"こと何宗道が助けに入った。その後、写真を現像していて眺めていた2人は、数日前に千葉裕たちGメンが追っていた銀行強盗がカメラに収められていた事に気付く。
 この強盗・佐藤仁哉は、かつて千葉が交通機動隊に所属していた頃の同僚であり、千葉にとっても因縁深き男であった。2人の連絡で香港に飛んだ千葉と中島はるみだったが、既に何者かの手によって写真とネガは破棄されていた。とりあえず調査に乗り出した千葉は、難民街で佐藤の姿を見つけ出した。
しかしこの男、決して外道に堕ちたわけではなかった。佐藤は自身が退職するきっかけとなった交通事故で、顔に傷を負った吉岡ひとみを整形手術で元通りにすべく、資金繰りに奔走していたのだ。佐藤は現在、石橋雅史率いる香港シンジケートの傘下に入っており、あっという間に千葉は捕らえられてしまう。良心の呵責に苛まれる佐藤だが…。
 一方、千葉が行方不明になったことでGメンが本格的に動き出し、中島は遠藤・鳥居の2人と共に難民街へと潜入する。千葉は吉岡の手によって敵地から抜け出し、中島や駆けつけた何宗道と共に敵を蹴散らした。吉岡はこれ以上罪を重ねて欲しくないと、必死に佐藤へ懇願する。
石橋の元から去ろうとした佐藤だが、石橋は自分の組織をかき回した佐藤を放っておくはずが無かった。そのころ、遠藤と鳥居は残された時間を観光に活用していたが、佐藤が石橋によって撃ち殺される現場を目撃し、遠藤が捕まってしまう。
 敵のアジトに向かった千葉は冷たくなった吉岡と遭遇、銀行で強奪された金も発見された。香港シンジケートは遠藤を人質に佐藤が強盗で奪った金を引き渡せと言ってきた。Gメンの仲間や何宗道と合流した千葉は、旧友の命を奪った石橋らに対決を挑む!

▲人質と身代金の受け渡しというネタは、既に『Gメン対世界最強の香港カラテ』でやっているので二番煎じの感が強く、何宗道もアクションシーンのみの出演(『大福星』のジャッキーのような役柄が近いか)で、殺陣も技と技の繋ぎが荒々しく、精彩に欠けている。
しかしそれでも見ていられるのは、やはり個々の功夫アクションが決まっている点が大きいと思われる。本作の唯一にして最大の山場は、ラストにおける何宗道VS石橋雅史という異色のビッグマッチだろう。
 何宗道は様々な相手と戦ってきたが、一方の石橋は対戦相手に幅の無い男であった。彼が本格的にアクションスターとして歩み出したのは、『激突!殺人拳』における琉球空手の使い手・志堅原が最初であった。鋭い眼光と切り裂くような拳は、石橋を一気に空手映画の名悪役としてのし上げたが、これが彼自身の首を絞めてしまうことになる。
幾多の空手映画で猛威を振るい続けた石橋だったが、その素質の割りに対戦相手はいつもJACの関係者ばかり。千葉真一や志穂美悦子と飽きるほど戦った石橋だが、対戦した人数はそう多くなかったのだ。
 石橋がこうもJACの悪役としてもてはやされたのには理由がある。第1に、凄味のある悪役で空手のできる役者が彼以外にいなかった事。第2に、石橋の後進を成す悪役を輩出すべき立場のJACから、これといって大物の悪役が出てこなかった事が挙げられる(これらの理由によって、他のJACスターも同じ顔ぶれと闘わざるを得ない状況を生んでおり、JAC作品のマンネリ化を押し進める一因ともなった)。
そして、やっと石橋が部外の相手と拳を交わすようになったのは、Vシネ時代の到来した90年代に入ってからであり、ようやく阿部寛や清水宏次朗といった真新しい顔と出会えるようになっていった。が、既に石橋の全盛期はとうに過ぎ去っていた。
 そんな石橋に「香港カラテシリーズ」参戦の話が舞い込むが、最初の参加作品である『Gメン対香港の人喰い虎』では『女必殺拳』で共演済みの宮内洋の相手をしただけで、これといって印象に残る役ではなかった。そして遂に、今回やっと石橋は念願の対戦相手と邂逅を果たしたのだ、これが興奮せずにはいられるものだろうか(感涙)!結局、出来自体はそれほどでも無かった何宗道VS石橋雅史というこの対戦。しかし、この一戦に込められた思いは、決して軽いものではないのだ。
と、そんなこんなで何宗道の出番はこれまで。続いてはいよいよ"香港映画界最強の男"が、Gメンの世界へヌンチャクを携えて登場するのだが、続きは次回の講釈で…!

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『香港の女カラテ対Gメン』三部作をお送りします。