【Gメン75in香港カラテ(終)】『香港カラテVS赤い手裏剣の女』前後編 | 続・功夫電影専科

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「香港カラテVS赤い手裏剣の女」
「香港カラテVS赤い手裏剣の女」PART2
製作:1981年

▼みなさんメリー・クリスマス!…と言いたいところですが、今回も「香港カラテシリーズ」の紹介です。「そろそろGメンは飽きた」という声も上がりそうですが、これにて特集はラストなのでご勘弁下さい(苦笑
さて、本エピソードは『Gメン75』にとっても最後の香港ロケということで期待が高まるところだが、今回は中国残留孤児をテーマにした重苦しい作品となっている。「香港カラテシリーズ」といえば、普段の『Gメン』には無い勧善懲悪(全てがそうという訳ではないが)と功夫アクションが醍醐味であったはずだが、本作はそれらを一切そぎ落として本来の作風に立ち返っているのだ。
また、今回香港側の助っ人として登場するのは孟秋(キティ・メン…女性功夫スターで『タイガー&タイガー/猛虎激突』が発売中)だけで、メインを張れるような功夫スターが不在であり、楊斯の降板など不安要素が多い。個人的な見解だが、幕引きとしては少々ボリューム不足だったのでは…と思ってしまうところである。

■現在もなお残る中国残留孤児問題。Gメンの江波杏子は中国で生き別れた3人の姉を探していたが、大きな成果も得られず帰路についていた。
その頃、香港では中国人・月丘千秋(『マカオの殺し屋』の彼女とは別人)が日本の政府高官・田中明夫を見て、異様な殺意を抱いていた。この田中という男は香港マフィアの江島と通じており、20億円の覚醒剤を密輸しようと企んでいる。江波は帰国のために香港へ立ち寄ったが、そこで彼女は田中が月丘に刺されるという衝撃的な場面へ出くわした。
成り行きから月丘を追うことになった江波は、香港警察の杉江廣太郎と協力して捜査に乗り出していくが、果たして彼女は何者なのだろうか?
 江波は単独で張り込みを続けた末に月丘の姿を見つけたが、孟秋と林崇正(本作ではベンジャミン・ラム名義)に行く手を阻まれてしまった。事情を知った孟秋に介抱された江波は、月丘が母の歌っていた童謡を口にしていたことから、まさかと思い彼女に問いかける。…そう、月丘は江波の生き別れた姉であり、残留孤児だったのだ。
涙の再会を果たした姉妹だが、月丘は田中が戦時中に人身売買に加担した外道であることと、そのために他の姉たちが死んだことを涙ながらに語った。日本に帰ろうと励ます江波だが、警察に追われる身である月丘は帰国できないと言う。江波は田中に直談判し、月丘を許さないのなら過去の悪事を暴いてやると奴に恫喝した。
 だが田中は臆するどころか、江島たちに依頼して月丘を抹殺しようと動き出した。しかも香港警察の杉江も敵の仲間であり、非情の包囲網は彼女たちに迫りつつあった。時を同じくして、香港マフィアは覚醒剤の密輸を目論み、遺骨収集団に化けた運び屋を日本に向かわせていた。だが、Gメンは敵の動きをいち早く察知し、ニセ収集団と60億円の覚醒剤はあっけなく押収されてしまう。
 怒り心頭の香港マフィアは江波も標的として目を付け、彼女もまた手傷を追った。その様子を見かねた月丘は「自分は貴女の姉ではなく、日本に帰りたくて身分を偽った…3人の姉はみんな死んでいる!」と思いも余らぬ事実を告げた。それでも江波は彼女を姉と呼んだが、とうとう田中によって月丘は殺害されてしまった。
江波と孟秋は、無念の死を遂げた月丘のために仇討ちを決意する。本当は姉が袖を通すはずだった黒い和服に身を包み、匕首片手に香港マフィアの根城へと突入する江波。孟秋もこれに加勢し、外道たちを討つために女たちの怒りが燃え上がる!

▲残留孤児にまつわる悲哀を描いた、実に優れたストーリーだ。
孤児たちの声にならない叫びを感じさせる内容で、これまで幾度か触れてきた難民というキーワードが大きく扱われているのがポイント。終盤で江波が討ち入るシーンはえもいわれぬ情念が漂っており、作品としては佳作と言えるだろう。それに、これまで人質と身代金というルーティンな話から脱却し、新たな「香港カラテシリーズ」の形を打ち出したという点でも、本作は注目されるべきエピソードである。
だが、それでも本作に対して私は思うのだ。「何かが違う」と…。
 中国と言う土地ならではの物語を構築した本作だが、革新的な内容ゆえに不満な点も多々ある。まずラストの展開についてだが、個人的にはどうもココが納得できないのだ。この場面で江波がやっていることは単なる仇討ちであり、その時点で田中や江島の罪は公に暴かれてはいない。それに、杉江がマフィアに加担していた事を江波は知らないままなのだ(ラストで江島たちと一緒に登場するが、マフィアの傘下だったことについては一切触れていないし、杉江自身は孟秋に始末されている)。
これまでの「香港カラテシリーズ」では倉田保昭や香港の助っ人が悪人を殺すというシーンはあったが、どれもこれも公儀に悪事が発覚した上での決着であった。しかし本作で江波がやっていることは、私怨による殺人でしかない。物語の勢いに任せてこのような結果になったのだろうが、いくらなんでもあんまりな決着である。
 次に気がかりなのは、アクションシーンと香港側の出演者についてだ。本作で香港に降り立つのは江波ただ1人で、他のGメンは日本で行動している。せめて千葉裕あたりを寄越してくれたなら、もう少しアクションに華が添えられたはずだ。また、孟秋は赤い手裏剣を駆使して華麗な活躍を見せてくれたが、いかんせんメインを張るにはインパクトが薄い。ここは主演級の大物が出てくれれば良かったのだが、おかげで全体的にアクションが尻すぼみになっているのだ。
ちなみに、本作で楊斯の代わりとして筋肉マン担当となるのは李春華である。『酔拳』で食い逃げを働こうとするジャッキーを叩きのめしたブッチャー…といえば知っている方も多いだろう。しかし、本作における李春華はそれほど大きく扱われておらず、蕭錦やジョン・ラダルスキーといった猛者たちも存在感が薄い(江波VS江島に至っては結末もかなり腰砕け)。一体、どうしてこんな中途半端なものになってしまったのだろうか?
もし本作のアクションがより高度な物であったら、悲劇的なストーリーと見事な功夫シーンが組み合わさった傑作が生まれていたかもしれず、それだけにこのような出来になってしまったのは残念だったと言うしかありません。

 そんな訳で長いこと『Gメン75』と「香港カラテシリーズ」を追いかけてみましたが、如何だったでしょうか?私としては多種多様な作品造りと方向性にチャレンジし続けた同シリーズがますます好きになってしまいましたが、特集は終わっても「香港カラテシリーズ」は終わりません。
なにしろ来月(2010年1月)はCSファミリー劇場において、『Gメン82』の香港編が引き続き放送されるのです。今回の特集で取り上げなかったエピソードも含め、この『Gメン82』の香港編もいつかレビューしようと思いますので、その時までしばしのご猶予と「熱い心に強い意志を包んだ人間たち」の活躍にご期待下さい!