
「アンディ・ラウの餓狼烈伝」
「餓狼烈伝」
原題:同根生
英題:Bloody Brotherhood
製作:1989年
●大陸から来た不法移民の劉徳華(アンディ・ラウ)は、香港へ密入国する際に両親を失い、兄の林威(デビッド・ラム)と離れ離れになってしまう。彼は漁師の田青とその孫娘・温碧霞(アイリーン・ワン)に助けられるが、一方で林威は国境警備隊に逮捕されて強制労働に従事していた。
一方、劉徳華は黒社会の幹部・陳惠敏(チャーリー・チャン…余談だが、日本版DVDのストーリー解説では彼が劉徳華の兄だと表記されている。陳惠敏と林威じゃエラい違いだぞ・笑)と知り合う。
仁義を重んじる彼に惹かれ、舎弟となった劉徳華は着実に成り上がっていくが、同じ組織の幹部・沈威にとっては実に面白くない。やがて劉徳華は温碧霞と結ばれ、陳惠敏の計らいで盛大な挙式を催すが、沈威の嫌がらせは2人の結婚式にまで及んだ。
やくざに組する恋人の身を案じた温碧霞は、台湾にいる叔父・王侠の元へ行かないかと提案する。ところが沈威の差し金によって、陳惠敏が独房へと放り込まれてしまう。「俺には構うな」という兄貴分の言葉に従い、やむなく劉徳華は台湾へと去った。
裸一貫での再スタートを切った彼は、新天地で子宝に恵まれ、王侠からも信頼を得はじめていたが、運命は再び狂い始める。対抗馬がいなくなったことで完全に組織を牛耳った沈威が、タイから麻薬を密輸しようと画策。王侠の会社に協力するよう脅しを掛けてきたのだ。
当然それを突っぱねる劉徳華だが、卑劣な沈威は鉄砲玉として雇い入れた男に「劉徳華の娘を誘拐しろ」と命令する。実はその男こそが行方不明だった林威であり、何も知らない彼は任務遂行中に弟の娘を死なせてしまうのだった。
復讐を誓った劉徳華は香港に戻り、再起不能となった陳惠敏と再会。これを予期していた沈威は林威と狄威(ディック・ウェイ)を送り込み、陳惠敏は狄威の凶刃に倒れた。その時、雷光のなかに弟の姿を見た林威は、一転して狄威を殺害する。
かくして悲劇の兄弟は7年越しの再会を果たした。だが、台湾に残してきたはずの温碧霞が現れた事で、林威は弟の娘を殺してしまったことに気付く。己の罪を償うため、彼はひとりで沈威のところへ乗り込むが、温碧霞ともども捕まってしまう。
高らかに笑う沈威だが、その背後に大ナタを手にした劉徳華が近付きつつあった…。
功夫俳優から映画監督となった王龍威(ワン・ロンウェイ)が、『香港極道・復讐の狼』に続いて再び不法移民の苦しみを取り上げた作品です。ただし『香港極道』の時よりもダークさは増し、より救いようの無い物語が展開されていました。
物語は引き裂かれた兄弟を中心に進み、弟は何度か成功に手をかけつつも報われず、兄は香港の裏街道で生きる事を余儀なくされ、最終的にはどちらも破滅に向かって突き進んでいきます。さしずめ本作は、兄弟というキャラクターを加えた『香港極道』のバージョンアップ版といったところでしょうか。
このシリアスかつ骨太なストーリーに対し、出演者たちも演技に熱が入ってます。とりわけ陳惠敏は、前半と後半で境遇の異なる役柄をさらりと演じ分けていて、単なる往年の功夫スターに止まらない芸達者ぶりを見せていました。
アクションにおいては、動作片によくあるマーシャルアーツ的な動きではなく、荒々しいバイオレンスさを強調。刃傷沙汰の殺し合いが何度となく繰り広げられ、生々しい迫力に満ちた立ち回りを見ることが出来ます。
ストーリーは重苦しいけど見応えはあるし、功夫アクションもそれなりにあるので、王龍威作品としてもイチオシの一本。なお、一部サイトでは「アンディ・ラウとトニー・レオンが競演を果たし…」などと書かれていますが、梁朝偉(トニー・レオン)の出演は確認できませんでした。

「ビリー・チョン/カンフー風林火山」
原題:虎鷹/風林火山/過路客
英題:A FIST FULL OF TALONS
製作:1982年
▼これまで私は色々な功夫片に出会ってきたが、全ての点において突出した作品というものは(当たり前だが)そうそう出てこないものだ。
功夫片にとって大切なのは功夫アクションの質だが、それ以外にもストーリーの精巧さ・悪役の強大さなどが重要となってくる。有名なタイトルはこれらの基準をクリアしているものが多いが、私はあえてマイナーな作品に手を出し続けている。無名の作品の中から傑物を発見できた時の喜びはひとしおであり、かなりの手応えがあった時は特に嬉しい。それ故に有名すぎる作品は逆に拒否反応が出ちゃったりするのである(とはいえ、琴線が触れた作品ならメジャータイトルで紹介してしまいますが…って、どっちやねん・笑)。
この『カンフー風林火山』はマイナータイトルではないが、一般的な知名度はゼロに等しい作品だ。しかし、恒生電影で製作された本作は莊泉利(ビリー・チョン)の代表作ともいうべき傑作であり、良作揃いな莊泉利作品の中でも引けをとらない一本である。前述した功夫アクションの質・ストーリーの精巧さ・悪役の強大さが全てクリアされているのが特徴で、これまで特にこれといった強敵を相手にしていなかった莊泉利にとって、黄仁植(ウォン・インシック)という猛者はまさに最高の適合者であったといえよう。
■清朝が倒れ、新たな政府が発足した動乱期の中国。清朝再興を掲げる黄仁植ら一派は暗躍を続けていたが、その一員たる白鷹(パイ・イン)が突如として離反し、重要書類を持ったまま逃走した。その白鷹、田豊(ティエン・ファン)が経営する宿屋に宿泊しているところを一派に狙われ、田豊の1人息子である莊泉利は白鷹の活躍ぶりに大きな感銘を受けた。翌日、田豊の宿屋に白鷹を追う黄仁植らが姿を見せ、その傲慢ぶりに憤る莊泉利。そこで白鷹の力になろうと、父親に内緒でこっそりと出奔した。
白鷹を探す道中、莊泉利はマヌケな保安隊長・李昆とその娘・劉皓怡に出会い、何故か強引に結婚を迫られた。強気なタイプの劉皓怡はお気に召さなかったのか、彼女の元から去った莊泉利は馬泥棒の鄭康業(『少林寺VS忍者』で劉家輝の書生を演じる)と遭遇。鄭康業が売っていた馬が白鷹のものであったことから、莊泉利は彼が戦闘中の白鷹から馬を盗んだことを知り、これを取り返した。その後、再び現れた劉皓怡から逃げ出した際、莊泉利は古寺に身を潜めていた白鷹の元にようやく辿り着くことができた。
しかし白鷹は莊泉利を拒み、口の減らない彼をつるし上げてしまう。それでも頑なに白鷹の元に留まると言い続ける莊泉利に対し、とうとう折れた白鷹は彼を迎え入れた。白鷹は莊泉利に風林火山の奥義(元々は「風林火陰山雷」と呼ばれていたので、本編中では「6つの戦法」と語られる)を叩き込んでいく。そこへ莊泉利を追って劉皓怡と鄭康業も現れ、この3人に白鷹は黄仁植一派の陰謀を国府に伝えようとしていることを明かした。
翌日、白鷹の受けた傷を治す薬を持って、黄仁植一派の攻撃を受けた鄭康業が血だるまになって転がり込んできた。彼の尊い犠牲を受け、奮い立つ白鷹。莊泉利と劉皓怡も徹底抗戦の構えを取るが、白鷹は犠牲を増やしたくないと譲らない。そうこうしているうちに、白鷹の居場所を知った黄仁植一派は幹部総出で攻撃を仕掛けてきた。これに対し、白鷹たちは敵を分散させて討つ作戦を展開する。
莊泉利たちは馬金谷らを倒し、白鷹は江島と黄仁植の2人を相手取った。駆けつけた莊泉利も加わり、遂に最後の決戦が始まる。江島はすぐに片付けた(トドメの刺され方が『一笑一拳』のときと同じ・笑)が、黄仁植はやはり強い。白鷹のアドバイスを受けつつ、死闘を続ける莊泉利だが…?
▲既に前フリで結論を言ってしまったが、やはり良い作品だ。中華民国の設立という時代背景を巧みに取り入れ、莊泉利のはじける魅力を余すことなく映し、最後はダイナミックな功夫アクションで〆!ツボを押さえたストーリー構成は一片の余分もなく、全てが簡潔に描かれている。本作の監督はショウブラで傑作武侠片を多く手掛けた孫仲だが、今回も良い仕事っぷりだ。
独立プロ作品でありながら、オープンセットを多用したシチュエーションも本作に独自の雰囲気を与えており、とりわけ印象的だったのが黄仁植だ。李小龍(ブルース・リー)と肩を並べ、茅瑛と蹴り合いを競った男も10年の時が経ち、技のキレ自体はいささか衰えている。だが持ち前のパワフルさは健在で、莊泉利や白鷹とのバトルでは重い蹴りをこれでもか!と叩き込んでいた。
そのラストバトルでは、地の利を駆使して勝負を有利に進めるという劉家良チックな展開を見せ、最後は意外な加勢によって勝負は決する。協利電影や倉田保昭の旧作がDVD化されている昨今、既に日本発売を果たしていながら日陰に隠れてしまった感の強い本作だが、こういった作品こそ再注目されるべき時なのではないだろうか。

「ラスト・バトル/HONG KONG 1997」
原題:Hong Kong 97
製作:1994年
▼1997年、英国領であった香港は中国へと返還され、新たなる時代へ踏み出そうとしていた。
しかし香港返還に対し、最も不安と緊張を感じていたのは他ならぬ香港の人々であった。映画の世界でもその思いは反映され、サモハンは主演作『恋はいつも嘘から始まる』で移民問題に着目し、ジャッキーも『ポリス・ストーリー3』で触れている(アクション映画以外でも『メイド・イン・ホンコン』などといった作品が出てくるのだが、残念ながら私は門外漢なのであんまり語れません)。
当然、香港返還という歴史的イベントは世界の注目するところであり、海外でもそれに同調した作品が作られていた。そして返還前にこの動きを察知した男が、『ターミネーター2』でブレイクしたばかりのロバート・パトリックを担ぎ出し、流れに乗ろうと動き出していた。…そう、アルバート・ピュンである(爆
この物語は香港返還を目前に控えた香港を舞台とし、裏社会のヒットマンとして暗躍していたロバートが陰謀に立ち向かう様子を描いた、クライムアクション大(失敗)作だ。
■返還が目前に迫る大都市・香港。そこで政府高官を暗殺したロバートだったが、彼を擁する会社社長のブライオン・ジェームズは「そんな命令出してないぞ?」といぶかしむ。しかもロバートは謎の刺客に襲われ、昔馴染みのミンナ・ウェンの元へ身を寄せることに。混乱が香港を支配する中、ミンナは祖父(演じるは李名煬…『キング・オブ・キックボクサー ファイナル』で少林寺館長を演じる)と共に国外へと脱出しようとするが、一方でブライオンは自身の会社の中に裏切り者がいることを知る。
そうこうしているうちに、いつの間にかロバートとブライオンは賞金首として指名手配されていた。金目当てに次々と襲い来る刺客によって李名煬が負傷し、ロバートの元カノである邱秋月(セレナ・コー…詳しくはクソ映画『トゥー・スナイパー』にて)も殺害された。ロバートは謎の黒幕を倒すべく、ブライオンやミンナと共に会社へと乗り込むのだが…。
▲本作でピュンが目指したのは、香港ノワールの再現であった。漆黒のコートを着て二丁拳銃で闘うロバートの姿や、しきりに使用されるスローモーション効果は明らかに呉宇森(ジョン・ウー)作品を真似ている。そうなると本作は派手な銃撃戦や、男の友情といった熱い要素が必要不可欠となってくるのだが、ピュン作品なのでそんな要素はビタ一文ありません(涙
銃撃戦はただ撃っているだけだし、スロー効果もダルいこと極まりない。特に邱秋月が死ぬシーンでは、海中に没した彼女をひと目見て「ありゃもうダメだ、死んでる」と見捨てる(!)など、相変わらず酷いシーンが多いのだ。呉宇森+香港返還といえば、極太ノワール『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』が存在するが、こんな作品の比較対照にしてしまうのは呉宇森に失礼だろう。
個人的には、ピュン作品ということで格闘シーンもあるのかと思っていた(期待はしていません)が、香港ロケをしたわりに素手のファイトはラストでしか行われないという体たらく。ちなみに香港側の武術指導として、なんと成家班の張午郎(チャン・ウーロン)が本作に参加している。しかし、本作の出来を見ると「本当に参加していたの?」と疑いたくなるほど、見るも無惨な結果に終わっているのだ。
香港返還という事柄に対し、その返答が単なる香港ノワールの劣化版とは………ピュン恐るべし、としか言いようがありませんね(萎

「新書ワル 復活篇」
製作:1993年
●『ワル外伝』に引き続き、再び「ワル」系列作品の登場です。原作となった劇画作品「ワル」については『ワル外伝』の項で触れていますが、本作はVシネの『ワル』系列としては最初の作品に当たり、その後は第5作まで作られた(現時点で)最長のシリーズタイトルとなっています。
主演の氷室を演じるのはベテランVシネ俳優の白竜ですが、氷室のアウトローなキャラと彼の演技が見事に合致していて、まさにハマリ役!『外伝』の本宮泰風とはまた違った、凄味のある氷室洋二に扮していました。
本作は『ワル外伝』に通じる内容で、『外伝』で真樹日佐夫が扮した警察署長(演者は別人)も登場します。物語は白竜が様々な争いに身を投じていく(というか自ら首を突っ込んでいく)というもので、刑事の飯島直子に乱暴を働いて惚れさせるわ、警察署長の片腕をぶった斬るわ、学生ヤクザ(なんじゃそりゃ!)の松田優にまで挑まれるわと、『外伝』以上の破天荒っぷりを見せています。
このように本作は次々とイベントを発生させる形で進行していくのですが、各エピソードが微妙に噛み合っていないため、ストーリーにあまり一貫性が感じられません。中盤は松田VS白竜の対決となり、徒手空拳の戦いに敗れた白竜は真樹日佐夫の道場(たぶん本物の真樹道場)で修行に打ち込んでいきます。しかし、二度目の雪辱戦でも白竜は勝てずじまいで、松田は切腹して呆気なく死亡してしまうのです。
ラストは松田を雇っていた大日本新宿同盟なる暴力団組織との決戦を迎えますが、こいつらは本編で断片的にその存在が語られていただけで、最後の敵としてはあまりにもインパクト不足。白竜とタイマンで立ち会えるような実力者もほとんどおらず、一方的に主役サイドが勝利を収めるという淡泊な終わり方になっていました。
格闘シーンの質はそれほど悪くなく、白竜の立ち回りも思ったより俊敏に仕上がっています。ですが、松田優は白竜に合わせて殺陣の派手さは抑え気味ですし、飯島直子も激しい殺陣には馴染めていない様子。結局、全体的に盛り上がりに欠ける出来となっています。『外伝』よりはマシだけど、話の本筋となるものが見えてこない困った一本。第2作以降も見ていくつもりですが、自分のモチベーションが続いてくれるか心配です(爆

「カンフーシェフ」
原題:功夫廚神/功夫厨神
英題:Kung Fu Chef
製作:2009年
●『カンフー無敵』のスタッフが再び結集して製作した動作片で、日本では加護亜衣の復帰作として知られる作品だ。ただし加護亜衣は主演ではなく、日本の宣伝で脇に追いやられた呉建豪(ヴァネス・ウー)とサモハンが真の主役である。
料理人のサモハンは、別離した兄(梁小龍!)から最高の料理人の名を譲り受けて活躍していたが、助手の洪天明(ティミー・ハン)によって陥れられ、その称号を剥奪されてしまう。洪天明を利用し、サモハンを貶めたのは梁小龍の息子である樊少皇(ルイス・ファン)であった。彼はサモハンが梁小龍を殺したのだと誤解し、サモハンに並々ならぬ恨みを抱いているが…。
時は流れ、サモハンは恩師の店(ここの恩師の娘が加護亜衣)で料理人を目指す功夫の達人・呉建豪と出会い、後進指導の傍らで料理人として再始動する。だが樊少皇はサモハン復帰を知るや、様々な妨害工作(彼の手下で『カンフーハッスル』の行宇が登場)でサモハン潰しを画策。一方、巷では料理コンテストが開催される事になり、呉建豪は参加できないサモハンに代わって出場する。目下の強敵は樊少皇が擁する最高の料理人、林子聰だ。
サモハンと呉建豪…2人の料理人はそれぞれの敵を相手取り、最後の戦いへ向かう!
本作は久々のサモハンコメディということで期待した人も多かっただろうが、その作りは非常にヌルい。『カンフー無敵』の時も似た感じだったが、本作は更に輪をかけてヌルいのだ。
料理を主題にした香港映画と言えば、『金玉満堂』や『食神』といった抱腹絶倒のタイトルを思い浮かべる人が多いはず。しかし本作にインパクトの強い料理はあまり出てこないし、料理の描写もリアルにしたいのか誇張したいのかどっちつかず。この優柔不断な演出は作品全体にも影響しており、結果的に中途半端な物を生み出している。
コメディ・料理・恋愛描写といった要素が描ききれない中、功夫アクションだけは流石に面白い。特に『香港超人』以来34年ぶりとなる接触を果たしたサモハンVS梁小龍や、ラストバトルのサモハンVS樊少皇はなかなか燃える。当然、呉建豪や加護亜衣も功夫アクションで頑張っているのだが、やはりサモハン様の前では印象が薄くなってしまうのも仕方が無いか(笑
この他にも、序盤の宴会ではショウブラ出身の名優・谷峰(クー・フェン)が登場し、同じく宴会の場面でサモハンを裁く男に李海生(リー・ハイサン)がゲスト出演。功夫映画ファンに配慮したキャスティングなのは、プロデューサーである楊[目分][目分](パメラ・ヤン)の粋な心遣いといったところだろうか。けど、そういう所を頑張ってくれるなら作品自体のクオリティにも気を使って欲しかったなぁ…と、私はちょびっと思います。