続・功夫電影専科 -54ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「スティーヴ・オースティン S.W.A.T.」
原題:TACTICAL FORCE
製作:2011年

スティーヴ・オースティン率いるロス市警のSWATチームは、超が付くほどの暴れん坊ぞろい。今日もコンビニ強盗と一緒に人質まで一網打尽にしてしまい、上司から大目玉を食らっていた。彼らは罰として廃屋での訓練を命ぜられ、渋々ながら目的地に向かうのだった。
だが、当の廃屋では隠された大事なブツを巡り、ロシアとイタリアのマフィアが火花を散らしていた。連中はスティーヴたちが突然現れたことで慌てるが、相手が訓練用の装備しか持っていないと知って反撃を開始する。
絶体絶命のスティーヴたちと、仲間の増減で優劣が二転三転する2組のマフィア…。果たして、三者の中で生き残るのは誰なのか!?

 今回はまたもや『エクスペンダブルズ』以降に続々と実現した、ドリームマッチを主題とした作品の登場です。これまで同系統の作品は『沈黙の復讐』『ゲーム・オブ・デス』『ザ・ハンティング』などを紹介してきましたが、本作はいささかボルテージの低いものとなっています。
内容は限定空間を舞台にした駆け引き重視のアクション映画…なのですが、作品の肝となる駆け引きの描写がちょっと甘い出来で、正直言ってかなり退屈でした(爆)。一応、後半からは攻守逆転が頻繁に起こってくるので割と楽しめるのですが、最後の種明かしは蛇足だったかな?
 しかし、本作のメインはあくまで猛者同士によるドリームマッチにあります。本作では後半でマイケル・ジェイ・ホワイト(『ブラッド&ボーン』)VSダレン・シャラヴィ(『葉門』)が、ラストではスティーヴVSキース・ジャーディン(シウバとも戦った総合格闘家)がそれぞれ拳を交えていました。
しかし、これらのバトルにおいて各々のファイトスタイルに変化が無く、個別化が図れていません。『ゲーム・オブ・デス』や『ザ・ハンティング』で夢の対決が行われた際は、きちんと敵味方で戦法が違いました。スタイルの違いは両者の個性を引き出し、アクションに更なる激しさを加味することができるのですが、本作はそれを怠ってしまったのです。
 その結果、全体的にアクションの出来は今一歩。殺陣と演出次第では素晴らしい勝負になれたはずなので、この程度に終わってしまったのは惜しい限りです(特にマイケルVSダレン)。今さら言っても仕方ないですが、このキャストでスティーヴVSマイケルが無いというのも残念でした。
充実した出演者とは裏腹に、凡庸な出来になってしまった佳作。従来のドリームマッチが軽んじられていた時代のことを思うと、今回のドリームマッチは実現しただけでも快挙と呼べる出来事なのですが…。


「燃えよ、マッハ拳!」
原題:蔡李彿/蔡李彿: 極限拳速
英題:Choy Lee Fut
製作:2011年

●ここ最近、日本に続々と上陸している洪金寶(サモ・ハン・キンポー)の出演作。この作品もそのうちの1つで、多くの功夫映画で取り上げられてきた実戦派の拳法・蔡李彿拳を主題に添えたものとなっています。
主演はサモハンJrの洪天照(サミー・ハン)とケイン・コスギで、かの劉家榮(リュー・チャーヨン)を父に持つ劉永健も出演。彼ら2世俳優軍団に加え、サモハンや元華(ユン・ワー)といったベテラン陣が脇を固めており、キャストを見る限りではかなりの期待が持てます。

 しかし、ストーリーは「功夫道場とそれを買収せんとする大企業との対立」というありがちな内容で、特に真新しいものではありません。これは古きよき功夫映画の再現…とも考えられますが、尺の大半を洪天照の安いラブストーリー(しかも相手の女は彼氏あり)が占めており、まったく燃えない出来になっているのです。
アクション描写も同様で、蔡李彿拳を題材にしているわりに修行シーンはとてもアッサリ。ケインが元華やゲスト出演の劉家榮と手合わせをするシーンも短く、せっかくの大物香港映画スターとのバトルも不発に終わっています(劉永健と劉家榮の親子対決は興味深いのですが…)。

 後半からは『ベスト・オブ・ザ・ベスト』風の格闘大会が始まりますが、ここでのファイトもスローモーションを多用するなどの雑な演出が見られました。唯一、ケインVSイアン・パワーズの闘いだけは激しかったものの、最後の洪天照VS黄嘉樂で再びラブストーリーに突入してしまいます(涙
次世代の若者たちが成長し、自分が進むべき道を見つけていく…。本作が伝えたかったことは、恐らく『拳師』と同じ「若者の旅立ち」だったはずです(だからこそ主演俳優も2世俳優を選んだのでしょう)。しかし、あくまで心身の成長を細かく描いていた『拳師』と違い、本作はそれらの描写をラブストーリーだけに押し付けてしまったのです。

 ドラマの配分ミス、あんまりな邦題、回想シーンにおけるチャチなCGなど、他にも問題が山積している本作。製作段階ではオダギリジョーの出演が予定されていたと聞きますが、この様子では出演が実現していても結果は変わらなかったと思われます。…しかし、オダギリ氏にどんな役柄が設定されていたのかは非常に気になりますね。
なお、本作を監督したのは武術指導も兼任している黄明昇(作中でも劉永健の対戦相手として出演)という人。彼はジャッキー率いる成家班の出身者で、『ポリス・ストーリー3』ではジャッキーが中国の武装警察隊を訪れた際、タイマン勝負の相手を務めた人物だったりします。


「血染めの代紋 喧嘩組」
製作:1997年

▼さてこの作品は、川本淳一の功夫アクションが印象深かった『男組』の監督、原田昌樹がメガホンを取ったVシネ映画です。主演は小沢仁志ですが、元JACの山口祥行やプロレスラーの高山善廣など、妙にガタイのいい人たちが脇を固めております(笑
それもそのはずで、本作の製作には新日本プロレスと今は亡きキングダムが参加しており、他にも佐々木健介・和田良寛・山本健一らが出演しているのです(後者2人に関しては詳しくないので言及できないのですが・苦笑)。
さらには倉田プロが協力、『ウルトラマンレオ』の二家元辰巳が殺陣を担当するなど、スタッフ&キャストともに力の入った本作。果たして、この充実した陣容はどのような物語を作り出しているのでしょうか?

■6年前に弟分の沖田浩之を傷つけた剣客を殺した、武闘派ヤクザの小沢兄貴。出所して古巣の三愛連合に帰って来た彼は、会長の薦めで小さな事務所を持つことになった。チンピラの山口と元レスラーの高山、そしてカタギになっていたが復帰を希望した沖田を仲間に加えた小沢は、会長の命令で関西から来た浦部組の撃退に勤しむ事となる。
だが、この抗争の裏では三愛連合幹部による手打ち(和平)の準備が進められていた。幹部は浦部組に手柄を与え、事をスムーズに運ぼうと企んでいたのである。その手柄とは、厄介者扱いされている小沢の首を差し出すこと!浦部組の木村栄は沖田の妹・かとうあつきを誘拐し、追ってきた沖田をも殺害した。
外道の限りを尽くす浦部組に対し、怒り心頭の小沢たちはどう動くのか?そして小沢を狙う剣客・加納竜との対決の行方は…?

▲充実した陣容…の本作ですが、その内容はかなりオーソドックス。カタギになった沖田の最期もありがちですし、これといって意外性やサプライズはありませんでした。とはいえ、作品そのものは悪い出来ではなく、アクションは「武闘派」という名前に恥じない喧嘩ファイトがメインになっています。
この手の「武闘派」という名を冠したVシネ作品は、素手の勝負ではなくチャカやポン刀を持ち出してくるパターンが多く、純粋な徒手格闘が行われない場合が多々あります。しかし今回の小沢兄貴は拳打を連続で叩き込み、時には飛び蹴りまで放つなど、気持ちのいい暴れっぷりを見せていました。
 ラストでも小沢兄貴は日本刀の使い手である加納(本作の彼は田俊(ジェームス・ティエン)そっくり!)と激闘を展開。こちらも緊張感のあるバトルに仕上がっていましたが、一方で山口や高山は勢い任せのアクションが多く、少々インパクトに欠けていた気がします。
また、本作には先述したようにレスラーが何人か出演しているのですが、佐々木健介を始めとして全員がチョイ役という有様…(涙)。本作には続編が存在し、こちらにはJACの春田純一が出演しているようなので、喧嘩組のさらなる大暴れを期待したいですね。


「少林寺 達磨大師」
原題:達摩祖師/達摩祖師傅/達磨祖師
英題:Master of Zen
製作:1994年

●本作は、袁家班の一角を担った袁振洋(ブランティ・ユエン)が監督・脚本・武術指導・製作・プロデュース、そして自身のプロダクションを立ち上げてまで作り上げた入魂の作品です。
袁家班といえば『酔拳』『蛇拳』を作り出したトップレベルの武術指導集団であり、袁振洋も数々の作品に関わってきました(監督作としては『チャンピオン鷹』が有名)。しかし彼は仏の道を選び、本作を最後に映画界から去ることを決意するのです。
 本作にはそんな袁振洋の仏門に対する思いが集約されていて、禅宗の祖である達磨大師の一生が丹念に描かれています。確かに少林寺が登場したり、いくつかアクションシーンもあったりするんですが、あくまでテーマは禅。作中の至る所で様々な問答が繰り返されていきます。
こう書くと難解な宗教映画のようですが、小難しくて解りにくいような描写はあまり見当たりません。むしろ伝記映画としての完成度は高く、多少は脚色されている部分もあるようですが、禅宗を知らない人でも楽しめる内容には仕上がっていました。

 ストーリーは爾冬陞(イー・トンシン)扮するインド王族の青年が僧侶となり、禅宗の教えを広めるため中国へと渡航。謁見した武帝から突っぱねられ、少林寺で9年の座禅を経た後に、片腕を切断してまで弟子入りを請う慧可(演じるのは樊少皇(ルイス・ファン)!)を迎え入れます。
…と、こんな感じで本作は達磨大師の生涯を辿っていきます。功夫アクションもそれなりに用意されていて、序盤の暗殺団との対決を皮切りに、悪夢の中で樊少皇が剣戟ファイトを繰り広げたり、終盤では盗賊団を相手に爾冬陞が激しい立ち回りを披露していました。
 ただ、この盗賊団との戦いはかなりハチャメチャな結末を迎え、宗教映画らしい超展開に至ります(このへんのエピソードも本当らしい)。また、最終的に達磨大師はあの少林拳を生み出しますが、そこに至るまでの経緯はえらく唐突なものだったりします。まぁ、作品的に禅宗>功夫という比率だから仕方ありませんが…。
純粋な功夫映画ではないので期待は禁物ですが、ためになる話が詰まった一品。ちなみに袁振洋ですが…なんと『功夫侠』という作品で映画界へ復帰を果たしたそうです。主演は袁家班出身の陳虎で、あのキアヌ・リーブスも関わっているとか。袁振洋は武術指導を担当したようで、今後の彼の動向が気になりますね。


「拳師 ~The Next Dragon~」
原題:武術/武術之少年行
英題:Wushu/WuShu The Young Generation
製作:2008年

●母を亡くし、祖母のもとに預けられていた2人の兄弟がいた。彼らは父・洪金寶(サモ・ハン・キンポー)に伴われて武術学校へと入学。3人の仲間と苦楽を共にしながら、武術の腕を磨いていった。
それから10年後、2人の兄弟は王文杰と汪亞朝に成長。兄の王文杰は友人の劉峰超・王菲と一緒に演舞を、弟の汪亞朝は同じく友人の劉泳辰と共に散打の道を選んだ。テコンドー娘の毛俊傑を仲間に加えた5人は、来るべき省代表を決める選抜大会に備え、鍛練を続けていた。
 時にライバルとの戦いに挑み、時に将来の進路に悩む6人の少年少女たち。だが、その平穏な時間は武術学校OBである鐵南によって乱されることとなる。鐵南は武術の道を捨て、子供の人身売買を行っている外道であった。彼は同じく学校OBの張晉(『テラコッタ・ソルジャー』にも出演)を利用し、武術学校の生徒を誘拐しようと企んだのだ。
一緒に誘拐された張晉は腕を折られ、劉峰超も鐵南の拳に敗北を喫した。異変を察知した王文杰と汪亞朝は、サモハンと共に人身売買組織の本拠地へと向かう。果たして彼らは無事に帰ってこれるのか、そして選抜大会の結果は…?

 本作はジャッキーがプロデュースし、サモハンが助演を務めたことで知られる青春スポ根映画です。サモハンと武術学校…とくれば『七小福』を思い出すところですが、本作では厳しい修行などの描写はほとんど無く、あくまで青春群像劇として描かれています。
コテコテの功夫アクションを期待していた人はガッカリしたかもしれませんが、主役となる6人は実際に武術の達人であり、演舞やスパーリングだけでもなかなか見応えのある動きをしていました。ドラマに関しても抜かりはなく、ちゃんと6人全員にきちんとスポットが当てられています。
 師匠として父として貫禄を見せるサモハンの姿など、その他の見どころも多い本作。しかし、後半の人身売買組織との対決は青春ドラマとのギャップが激しく、サモハンが目立ちまくる点も含めて往年のサモハン映画に近い雰囲気を醸しだしていました(笑
ここでのバトルは迫力満点で、サモハンVS鐵南&麥偉章(『ドラゴン危機一発97』でドニーと戦った人!)の一戦も見事でしたが、そのせいで後に控える選抜大会が蛇足に見えてしまうという逆転現象が発生しています。全体的に完成度の高い作品だっただけに、この一点だけは惜しい気がしました。
それにしても、本作の監督がまさか『キックボクサー』でヴァンダムを鍛えていた陳國新(デニス・チャン)なのにはビックリしました(監督はアンソニー・シトと共同)。彼は王菲がカメラテストを受けるシーンにカメオ出演しているので、こちらも要チェック…かもしれませんね。