続・功夫電影専科 -53ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


海女
英題:Bruce Against Snake in the Eagle's Shadow
製作:1979年

●(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
 さて、本作は80年代のショウ・ブラザーズで活躍した功夫俳優・龍天翔が、ショウブラ入りする前に主演していた作品です。当時の彼は李小龍のバッタもんを演じることが多く、かの悪名高い『決鬥死亡塔』に出演したのもこの頃でした。
しかし本作は、バッタもんという一言では片付けられない異様な一面を持っています。というのも、この作品のタイトルは「海女」。今まで様々な功夫片を見てきた私ですが、ここまで奇妙な題名の作品は見た事がありません。果たしてどんな内容か気になりますが…もうそのまんまバッタもん李小龍が海女さんの為に戦うという話でした(爆

 地元でトラブルを起こし、数年後に帰って来た龍天翔(役名はなんとタン・ロン!)。帰郷後、彼は町の産業である海女の補佐をする仕事に就くが、産業を潰そうとする?悪党たち(もしかしたら目的が違うかも)が現れる。龍天翔は恋人と愛を育みつつ、この巨悪に立ち向かっていくのだった。
…という話なんですが、どうして海女と李小龍を組み合わせようとしたのか、製作サイドの狙いがまったくもって解りません(笑)。この手の作品にしては珍しく、爽やかなラブストーリーが本筋のひとつになっている点は評価できなくもないでのすが、残念ながら異常すぎるコラボに全てを持ってかれています。

 これでギャグ映画ならカルトムービーとして注目されたかもしれませんが、本作は低予算のバッタもん映画です。ストーリー展開はゆるいし、龍天翔のモノマネは徹底していないし(怪鳥音はたまにしか発しない)、アクションは野暮ったいなど、もっさりした部分ばかりが目に付きます。
キャストも無名俳優だらけで、有名どころといえば中ボスの龍飛(ロン・フェイ)、珍しく善役の馬金谷、組織の用心棒として登場する蔡弘しかいないという有様。彼らと龍天翔が絡むシーンはそこそこ見ていられるものの、元々のアクションレベルが低いので大した事はありませんでした。
撮り方しだいでは『李三脚威震地獄門』のようなバカ映画になれたかもしれない奇怪な作品。ちなみに英題に「Bruce Against Snake in the Eagle's Shadow」とありますが、蛇拳はもちろん猫爪くずしも出てこないので御注意を。


「デイ・オブ・ザ・ディシジョン3」
原題:THE VAUIT
製作:2005年

●古くから格闘映画では、格闘技のチャンピオンを起用するケースが相次いできました。これまでも何度か触れてきましたが、この起用による一番の利点はネームバリューの大きさと本物の迫力にあります。「リング上で戦ってきた闘士たちが、どのような暴れっぷりを見せてくれるのか?」…観客の期待はその一点に注がれるのです。
しかし、映画と実戦では勝手が違います。抜群の素材を周囲が生かし切れず、ヘボくなった作品は大量に存在します。現在も格闘家を主演にした映画は世界各地で作られていますが、その出来は一様に安定していないのが実情です。
 さて、本作はパンクラスに在籍していた総合格闘家のバス・ルッテンをピックアップしています。彼は映画出演を積極的にこなしており、『シャドー・フューリー』では同じパンクラス出身の船木誠勝と戦い、『バトル・サバイバー』では主演を担当しています。
彼の見せるアクションはスピーディーかつ力強く、単なるパワーファイターではないのがポイント。今年公開されるコメディ映画『Here Comes the Boom』(さえない大学教師がなんと総合格闘技に挑むというお話)にも出演していて、今後の活躍を期待せずにはいられません。

 そんな彼が強盗団のリーダーに扮し、配下にダイアナ・リー・イノサント(ダン・イノサントの娘)を従えて出演したのが本作です。タイトルに「3」とありますが、これは日本で勝手にナンバリングされただけのもので、何かの続編というわけではありません。
ストーリーは不仲の父娘が美術館で強盗団に遭遇し、金庫室に閉じ込められた娘を父親が救うという、いわゆる亜流『ダイ・ハード』。一応、金庫室の空気が無くなっていく(同時に強盗団が金庫室を爆破しようとしている)という時間制限を設けるなど、そこそこ工夫が凝らされていました。

 しかし本作は演出も脚本もグダグダで、タイムリミットが刻一刻と迫ろうとも緊迫感は皆無!また、唐突な裏切り・優柔不断な主人公・安いラブストーリー・事件の黒幕が逮捕されるシーンに一切説明が無い・計画破綻しまくりの強盗団などなど…杜撰すぎる描写がそこかしこで見られます。
アクションについても壊滅的で、動ける面子(主人公のラシー氏も実際にナイフの名手)を揃えておきながら、それらが全く作品に生かせていないのです。そもそも全編出ずっぱりのバスに格闘戦をほとんどやらせないという点からして大間違い。肝心のラストバトルも迫力に欠けていて、寒々しさすら感じます。
親父直伝のスティック捌きを見せておきながら情けない最期を迎えるイノサント嬢といい、素材の使い方を間違いすぎている本作。ちなみに『デイ・オブ・ザ・ディシジョン2』には格闘俳優のオリビエ・グラナーが出演してますが、予告編を見る限りでは本作を上回る凄まじい作品のようなので、見るのはだいぶ先になりそうです(爆


「ザ・サンクチュアリ」
「ザ・サンクチュアリ/聖域での決戦」
原題:SANCTUARY
製作:2009年

▼皆さん、どうもご無沙汰です。8月の中頃から夏バテ気味になってしまい、しばらく休養していました。これから再び通常通りの更新に戻るので、どうぞ宜しくお願い致します。さて、今回は心機一転して新カテゴリ「東南アジア映画」を作ってみました。この枠はムエタイ映画のような、香港・台湾・韓国系ではないアジア地域の作品を扱っていく予定です。
そして本日はカテゴリ新設を記念して、タイの格闘映画を紹介します。本作はアクションスターのマイク・Bという人が主演した作品で、ハリウッドから王盛(ラッセル・ウォン)も参加。タイの格闘映画といえば『マッハ!』が有名ですが、本作にも何人か『マッハ!』の関係者が絡んでいるようです。

■1897年、アメリカとタイの両政府が持ち寄っていた秘宝が、凶悪な盗賊団によって奪い去られた。タイ王国の軍勢は盗賊団を退治するも、秘宝は行方不明となってしまう。そして現在、失われた秘宝はタイマフィアの手によって回収されようとしていた。
マフィアはアメリカから呼び寄せた王盛たちに回収を任せるが、彼らは密かに別の取引相手と通じており、用心棒トリオと共に暗躍を開始していく。一方、秘宝の一部が埋まっていた寺院に住んでいたマイク・Bは、叔父が秘宝盗掘に関わっていたため、この一件に関わっていく事になった。
マイクは考古学者のインティラー・チャルンプラと共に調査を進めるが、敵との実力差は歴然としている。そんな中、彼の持っていたペンダント(実は秘宝の1つ)から光が放たれ…。

▲本作は『マッハ!』と同じく秘宝をめぐる戦いを描いていますが、あちらの何倍も淡白な代物に仕上がっています。全体的に話の進み方は遅く、ドラマ性はかなり希薄。後半から王盛たちを追う展開になりますが、マイクの行動動機の1つであった「兄の仇討ち」が完全に忘れ去られており、肝心の仇敵との対決も全然盛り上がっていませんでした(苦笑
その他にも、豪勢な爆破シーンがあるわりにロケ地が地味だったり、ムエタイの奥義を一夜漬けに近い形で習得したりと、ぼやけた部分の多い本作。しかし、格闘アクションはそれなりに体を張ったスタントが多く、意外と迫力があります。
 序盤はマイクが弱いので見せ場が少ないのですが、先述の王盛たちを追跡するシークエンスからは本領を発揮し始めます。一番面白かったのは次々と相手が入れ替わる用心棒トリオとのバトルですが、ラストの水飛沫が舞い散るマイクVS王盛もなかなか派手に撮れていました。
『マッハ!』のような人命軽視の肉弾バトルを想像すると肩透かしを食らいますが、アクションの出来は悪くありません。マイクの主演作は他にも『ブレイブ・ファイターズ』という作品が発売されているので、こちらも近い内に見てみたいと思います。ところで、予告にあった「マイクがジャンプして双剣をキャッチするシーン」が本編に無かったのは何故?


「奪還2.0」
原題:HALF PAST DEAD 2
製作:2007年

●かつて、スティーブン・セガールが刑務所で戦う『奪還 DAKKAN アルカトラズ』という映画がありました。従来の監獄アクションの枠を超えようとした意欲作であり、香港から熊欣欣(チョン・シンシン)が武術指導として参加したことで知られていますが、本作はその正式な続編です。
この手の格闘映画の続編は前作を無視するパターンが多く、時には大幅な劣化を伴う場合もあります。『キックボクサー2』しかり、『タイム・コップ2』しかり、『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』しかり…。しかし、本作はそれなりに前作との繋がりを尊重した作りとなっていました。
 まず主演の1人は前作で脇役だったクルプトですし、序盤には前作の舞台となった新アルカトラズが出てきます(例の鬼所長なども特別出演)。所々で回想シーンが流れたり、前作でキーポイントとなった大金塊が再登場するなど、前作と密接な関係が構築されているのです。
ただ、主役が『~ザ・リターン』でマイケル・ジェイ・ホワイトの見せ場を奪ったビル・ゴールドバーグ、そして監督が『リアル・ファイト 最強の鉄拳伝説』を監督したアート・カマチョなので、見る前は非常に嫌な予感がしていました…(爆

 ストーリーは前作と同様に、監獄アクションの定番をヒネったものとなっています。通常、監獄アクションは「無実の主人公(あるいは潜入捜査官)が収監される→悪徳所長や牢名主と敵対する→同室の仲間が殺される→色々あって暴動が発生→悪が倒れて大団円」という流れが一般的です。
前作では「刑務所外から第三者が介入する」という新機軸を用意しましたが、本作は「早い段階で暴動が発生して刑務所が無法地帯になる」という手でパターンを崩していました。
ですが、あまりに早く暴動を発生させてしまったためか、ストーリーはかなり大雑把。話があっちこっちにブレまくるため、前作以上の大失敗を引き起こしています。まぁ、『リアル・ファイト』や『DRAGON BATTLE EVOLUTION』と比べたら随分マシではあるんですが…。

 また、本作には熊欣欣がいないので格闘アクションは典型的なパワー押しのファイトばかり。プロレス技を取り入れたりと工夫は見られるものの、変わり映えしないザコ敵との闘いが延々と続きます(ちなみにアクション指導もやっぱりアート・カマチョ…)。
正直言って前作も大した映画ではなかったのですが(爆)、それでもセガールの存在感やキャラクター描写で随分と救われていました。しかし本作は状況設定などに凝ってみたはいいものの、アクションやストーリーを惰性で描ききってしまい、このような結果に陥ってしまったのです。
終幕のタイミングを決めかねて蛇足だらけになったラストといい、まさに失敗した続編映画の見本のような本作。やはりカマチョの監督としての腕前は油断ならざるものがあるようです(汗


「スー・チー in トラブル・セブン」
原題:我愛777
英題:My Loving Trouble 7
製作:1999年

▼3年前、私はアイドル女優の舒淇(スー・チー)が主演した『スー・チー in ミスター・パーフェクト』という作品を紹介しました。この作品、DVDのパッケージや解説では本格的なスパイ映画っぽく紹介されていすが、実際は南国を舞台にした典型的なコメディ活劇でした。
本作もそんな「看板に偽りアリ」な一本で、パッケージこそシリアス系のデザインでありながら、その正体は完全なコメディ映画という困った作品です(笑)。ただし『ミスター・パーフェクト』とは違い、本作での舒淇はちゃんとスパイらしいクールな姿を見せています。

■国際的なスパイである舒淇は、今回の任務を最後に引退しようと考えていた。ところが、同僚の王合喜(ケン・ウォン)から新しい任務を言い渡され、オマケに能天気な新人スパイ・天心(ティン・サム)の世話を押し付けられてしまう。
足手まといの相棒とのミッションに頭を抱える舒淇。…だが、そんな彼女に熱い眼差しを向ける1人の男がいた。CMディレクターの譚耀文(パトリック・タム)は、仕事中に偶然見かけた舒淇に一目惚れし、なんとか彼女に接近しようと試みていたのである。
舒淇の住所を突き止め、監視カメラと盗聴器で様子を探ろうとする譚耀文であったが、どこからどう見ても犯罪行為なのは明白だ(爆)。そうとは知らない舒淇は天心を鍛え、任務である大企業の重要機密を手に入れようとするが、この一件には大きな秘密が隠されていた…。

▲前述の通り、この作品は『ミスター・パーフェクト』と同じコメディ映画ですが、コメディとしての完成度は本作の方が上。作中のギャグは下ネタが多く、アイドル相手でも遠慮しない香港映画らしい笑いが溢れています。
なにしろ製作に『古惑仔』シリーズの文雋(マンフレッド・ウォン)が関与しているのですから、ある程度の質は保証されていると言っていいでしょう。また、譚耀文とのラブストーリーやスパイ組織との対決など、コメディ以外にも様々な要素が盛りだくさんとなっていました。
 ただし功夫アクションについては非常に少なく、舒淇が譚耀文の目を盗んで暴漢を退治するシーンと、中盤での脱出時におけるバトルしか見せ場はありません。確かに潜入工作が専門のスパイなら無駄な戦闘は極力避けるべきでしょう。でも、だからといってクライマックスがただ単に敵の目をごまかしただけというのは流石にショボすぎます。
王合喜を筆頭に、舒淇の元同僚に呉君如(サンドラ・ウン)、スパイ組織のボスに樓學賢(ジャクソン・ルー)が扮しているので、彼らが暴れてくれればなお面白かったのですが…。そんなわけで、アクションなら『ミスター・パーフェクト』、コメディと舒淇目当てなら本作がオススメです!