
「ブラック・マスク」
原題:黒侠/侠
英題:Black Mask
製作:1996年
●「701部隊」…それは某国によって組織された改造人間だけの特殊部隊であった。しかし、政府はプロジェクトを中止して彼らの抹殺を決意。銃弾と砲火の中、メンバーの1人である李連杰(リー・リンチェイ)は辛くも脱出に成功する。
その後、彼は香港で図書館員の職に就き、静かな暮らしを送っていた。同僚の莫文蔚(カレン・モク)、友人で刑事の劉青雲(ラウ・チンワン)に囲まれ、平穏な日々を過ごす李連杰。だが、巷では麻薬組織を狙った連続虐殺事件が発生し、裏社会を騒然とさせていた。
これら一連の事件は、香港の麻薬市場を支配しようと企む701部隊の生き残りによる犯行だった。その動きを察知した李連杰は、彼らの暴挙を止めるために再び戦いへと飛び込んでいく。だが、部隊の中にはかつての教え子・葉芳華(フランソワーズ・イップ)の姿があった…。
李連杰の介入を知った部隊のボス・龍剛(50年代から活躍するベテラン俳優。本作でのアクションは殆ど吹替え)は、彼を仲間に引き込もうと画策する。だが、李連杰はこの誘いを断固として拒否したため、双方の衝突は決定的なものとなっていく。
この間、彼はたまたま居合わせた莫文蔚を自身の隠れ家にかくまったりしたが、戦いは激しさを増すばかりだ。李連杰と彼の正体を知った劉青雲は、地下道に作られた敵のアジトに向かうのだが…。
前回に続き、今回も李連杰の主演作を紹介します。この映画は『ワンチャイ』でコンビを解消した李連杰と徐克(ツイ・ハーク)が再び手を組んだ作品で、劉青雲や莫文蔚などの演技派スターと共演しているのがミソ。黄秋生(アンソニー・ウォン)は出番こそ少ないものの、いつもの狂った演技でハジケていました(笑
作品としてはかなりダークなヒーローアクションで、暗い色調を重視する李仁港(ダニエル・リー)監督の演出もマッチしています。しかし脚本家が4人(うち1人が徐克)もいることから解るとおり、ストーリーは少々まとまりに欠けている気がしました。
また、個人的には終盤の展開に疑問が残ります。李連杰としては敵を倒せて万々歳ですが、劉青雲としては始末書ではすまないレベルの騒ぎを起こしているので、最悪でもクビは免れません(しかも署長が分からず屋なので状況は最悪)。せめて何かしらのフォローが欲しかったのですが…。
アクションはワイヤーを使った激しいファイトが見もので、李連杰VS劉青雲という珍しい顔合わせも実現しています。しかしラストの李連杰VS龍剛では、使用する武器や場所がコロコロと変わってしまうため、凄い事をしているのにダラダラと戦っているような印象を受けてしまいました。
部分部分で良いものは残してはいるけど、残念ながら失敗作と言わざるを得ません。唯一の救いは本作で再結成した李連杰&徐克が、次回作であの『ワンチャイ/天地風雲』を作り上げたことでしょうか。それにしても、まさか徐克が直々に監督した『ブラックマスク2』がああなっちゃうとはなぁ…(汗

「ターゲット・ブルー」
原題:中南海保[金票]
英題:The Bodyguard from Beijing/The Defender
製作:1994年
●中国武術界の至宝と呼ばれ、今や世界のアクション俳優となった李連杰(ジェット・リー)。…しかし、そんな彼にも長い不遇の時代がありました。
デビュー当初は順風満帆でしたが、満を持して挑んだ監督作『ファイナルファイター/鉄拳英雄』が惨敗。その後もパッとしない作品が続き、ようやく『スウォーズマン』や『ワンチャイ』系列などの古装片でブレイクを果たします。
ですが、黄飛鴻という当たり役をゲットしたあとも、彼は似たような少林英雄を何度も演じるはめになってしまいます(方世玉・張三豊などなど)。古装片に救われた李連杰が、その古装片に役柄を縛り付けられてしまうことになるとは、なんとも皮肉な話です。
しばらくして彼は古装片から脱却し、再び現代アクションへ方向転換していきます。その中で作られたのがパロディ動作片の『ハイリスク』であり、潜入捜査アクションの『D&D/完全黙秘』でした。これらの作品はヒットに恵まれなかったものの、どれもある程度の質を維持しています。
本作もそうやって作られた物の1つで、いわば香港版『ボディガード』と言うべき作品です。内容に関しても、「ボディガードの主人公と警護対象が反発しつつも最終的には恋仲になる」という、本家に忠実な展開が繰り広げられていきます。
その反面、本作ならではの要素というものに乏しいのが欠点で、賑やかな登場人物とは裏腹にあまり面白い出来にはなっていません。確かに李連杰と相手役を務めた鍾麗[糸是](クリスティ・チョン)の恋愛描写はとてもロマンチックで、なかなか雰囲気は出ています。問題はそれ以外に「これは!」と思える箇所が無かったことです。
同じく『ボディガード』を元にした作品に、ドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンの『シューティング・サンダー』があります。こちらは新しい要素をあれこれ足したため、最終的にグダグダになっていました。本作はその逆で、あまり新しい要素を足さなかったことで物足りない結果に終わってしまったのです。
とはいえ、さすがにアクションシーンは『シューティング・サンダー』の数段上を行っていました。本作は銃撃戦が多く、李連杰が古装片とは違った現代的なアクションを心がけていた様子がうかがえます。もちろん功夫ファイトもあり、ラストの李連杰VS倪星(コリン・チョウ)では文字通りの息詰まるバトルが展開されています(笑
傑作にこそなれなかったものの、現代アクションに順応してみせた李連杰の実力が光る1本。彼の主演作としては数少ないラブストーリーがメインの作品なので(他に恋愛メインなのは『ワンチャイ』系列くらい?)、そういう意味では貴重な作品と言えるかもしれませんね。

「新・霊幻道士 風水捜査編」
原題:驅魔警察/驅魔探長
英題:Magic Cop/Mr Vampire 5
製作:1990年
●麻薬密売人の女が大勢の警官をなぎ倒した末に、トラックに衝突して死亡するという衝撃的な事件が発生する。刑事の林俊賢と苗僑偉(ミウ・キウワイ)は、このあまりにも現実離れした出来事に困惑していた。
そんな彼らの前に、先輩警官の林正英(ラム・チェンイン)が姿を現した。林正英は妖術を操る霊幻警官で、彼と旧知の仲である警察署長・午馬(ウー・マ)の命により、今回の捜査に協力することとなった。
林正英は姪の王美華と共に林俊賢の自宅へ押しかけるが、妖術を信じる苗僑偉はともかく、軽薄で現実主義者の林俊賢は面白くなさそうだ。その後、様々な妖術を駆使して調べた結果、この事件は日本人の妖術師・西脇美智子が裏で糸を引いていた事が判明する。
かくして、中国と日本の妖術が激しくぶつかりあうサイキック・バトルが始まった。西脇は林正英らを執拗に狙い、無謀にも本拠地に乗り込んできた林俊賢を妖術で氷漬けにしてしまう。林正英は奥の手である魔鏡をたずさえ、最後の戦いに挑むが…?
本作は『霊幻道士』シリーズの名を冠した作品ですが、おなじみのキョンシーは出てきません。確かに使役された死体が暴れまわったりしますが、手を伸ばしてピョンピョン飛び回るような仕草はせず、どちらかというと妖術バトルがメインとなっています。
また、日本版のパッケージには第1作の道士さまがデカデカと載っていますが、劇中で林正英がこんな格好をするシーンもありません。では、本作は名前だけのガッカリ作品なのかと思ってしまうところですが、これが意外にもなかなかの力作に仕上がっていました。
一番の見どころは、なんといっても奇想天外な妖術の数々です。光学合成こそ控えめですが、妖術の描写に関しては本家『霊幻道士』シリーズと比べても遜色は無く、ゾンビ化する西脇美智子も第1作のキョンシーを彷彿とさせます。
登場人物も賑やかで、厳格だけど『霊幻道士』よりも砕けた感じの林正英、言う事はきついけど林正英たちを信じている午馬がいい味を出していました。もちろん功夫アクションもあり、クライマックスでは林正英が周比利(ビリー・チョウ)と大立ち回りを見せています(惜しむらくは、林正英と西脇氏の肉弾戦が無かった事でしょうか)。
看板に偽りアリな作品ですが、キョンシーは出ないのにキョンシー映画のテイストを上手く残している点については、もっと評価されてもいいはず。もしかしたらプロデューサーも兼ねた林正英の意向によるものだった…かもしれませんね。決して悪くはない出来なので、キョンシー映画ファンならずとも充分楽しめるかと思います。

「デイ・オブ・ザ・ディシジョン2」
原題:SWAT: WARHEAD ONE
製作:2005年
●今回は、9月に紹介した底抜け格闘映画『デイ・オブ・ザ・ディシジョン3』の前作(ということになっている無関係の作品)を取り上げてみたいと思います。
かつて本作の予告編を見た際、私はクオリティに問題ありと判断して視聴を見送りましたが、このたび思い切って視聴に踏み切りました。「主演は『ネメシス』のオリビエ・グラナーなんだし、見どころの1つくらいはあるはず」と、見る前は思っていた訳ですが……。
8年前、軍の特殊部隊に属していたオリビエは、テロリストによる核兵器強奪を阻止できなかった責任を問われて除隊。現在はSWATに再就職し、チャイニーズマフィアが絡む偽札製造事件を追っていた。しかし、やたらと問題行動を起こすオリビエに対し、彼の上司はTVリポーターのメル・ノヴァックにお目付け役を任せてしまい…。
という感じの話なのですが、本作はそれ以前に大きな問題を抱えています。まず第1に、本作は全編に渡って他の映画から流用した映像と、ビデオ撮りと思しき風景のカット・実際の群集や警察の映像が混ぜこぜにされている…という点です。
この2つの映像とオリビエたちが登場する本編映像は明らかに画質が違い、見ていて違和感を感じずにはいられません。これらの映像を用いたのが何でもないシーンならいいんですが、マフィア同士の抗争という重要なシークエンスを、あろうことか本作は流用映像の垂れ流しで処理しているのです。
また、警官が爆弾で吹っ飛ぶシーンが終盤にあるのですが、なんと実際の警官の映像をムリヤリ合成して吹っ飛んだように見せるという、まるでMADムービーのようなカットがあって爆笑してしまいました(笑
そして第2に、劇中で何度も使われるCGが恐ろしくショボい点が挙げられます。特に酷いのがクライマックスに登場するヘリの映像で、まるで冗談のような描写と結末を迎えます。第3に、映像面での酷さのせいであまり気になりませんが、ストーリーもかなり無茶苦茶でした。
主人公の行動がその最たるもので、優柔不断・命令無視は当たり前。マフィアが病院に立てこもり、人質の命が危険に晒されている状況でも、「中にいる妻を助けたいから俺を行かせてくれ」などと個人的な主張を通そうとします。型破りなリーダーとして演出したかったのでしょうが、いくらなんでもこれは…。
本作の凄まじさはこれだけに止まりません。第4に、肝心の格闘シーンもイマイチなものとなっているのです。ファイト・コレオグラファーをオリビエ本人が、スタント・コーディネーターを敵に扮したジェラルド・オカムラとロン・ホールの両名が担当してますが、格闘描写は単なる平凡な殴り合いに止まっていました。
チャイニーズマフィアが敵なのでカンフー系のザコが出てきたりしますが、ボスのオカムラと腹心のロンはオリビエと拳を交えることはなく、呆気なく射殺されてしまいます(どっちも動ける人なのに…)。流用映像に登場していたジェームス・リューはいい動きをしていたんだけどなぁ…。
『3』はクオリティこそ低いものの、演出・撮影・脚本・アクションは一貫性がありました。しかし本作には一貫性どころか、普通の映画が持ちえるはずの物が多くの面で欠けているのです。冗談抜きでフィルマーク映画に匹敵する歪さ…いくらなんでもこの惨状は酷すぎる!!(血涙
なお、本作の監督と製作を兼任したデヴィッド・ヒューイは、この他にもあらゆる面でヤバい作品をいくつか手掛けており、あの超怪作『ダイナソー・ファイター カンフーVS巨大恐竜』も彼の仕事の1つなのだそうです。

神鷹飛燕蝴蝶掌
英題:Eagle's Claw and Butterfly Palm
製作:1978年
▼どうもお久し振りです。しばらく一身上の都合で長期間ブログから離れていましたが、今日から更新を再開するので、またこれからも宜しくお願いいたします(メールやコメントの返答は順次行う予定です)。
さて、復帰第一弾に取り上げるのは実に久々の紹介となる未公開の台湾功夫片です。監督は武術指導家として活躍していた游天龍で、羅烈(ロー・リェ)や戚冠軍(チー・クワンチュン)といった本格派のキャストにも目を惹かれるところですが……?
■時は明朝時代、暴君の金剛(カム・コン)は抵抗勢力の刺客・戚冠軍に襲撃を受け、刺客ともども命を落とした。金剛の臣下である羅烈は特務部隊を組織し、抵抗勢力に対する報復(?)として掃討作戦を行うが、その標的となったのは武當派を始めとした武術門派であった。
一方、こちらは蝴蝶掌という技の使い手を探している武當派の剣士・宗華(チョン・ホワ)。彼はひょんな事から特務部隊の中に蝴蝶掌の使い手がいることを知る。そして、薬売りの游天龍、乞食党の頭目・李昆を父に持つ劉藍渓と出会い、共に行動することとなった。
そのころ、梁家仁や馬金谷ら各派の代表は羅烈の元に招かれて歓待を受けていたが、もちろんこれは罠。特殊な薬を飲まされた彼らは、言われるがままに操られる傀儡と化してしまう。強力な手駒を手にし、ほくそえむ羅烈…。実は彼こそが蝴蝶掌の使い手であり、金剛の死に乗じて武術門派を蹂躙し、江湖の覇権を手にしようと企んでいたのである(←若干推測)。
羅烈は自分に接近しようとする宗華を抹殺すべく、傀儡たちを始末に向かわせる。その中には劉藍渓の父である李昆の姿もあったが、薬で操られている事を見抜いた宗華は、游天龍の薬を用いて彼を救い出すことができた。そして、ややあって宗華たちは羅烈の根城へと向かうが、驚くべき結末が彼らを待っていた…!
▲英語版で視聴したため、物語が把握しにくいところもありましたが、それなりに力の入ったサスペンス功夫片でした。残念ながら戚冠軍や金剛などの大物スターはゲスト出演止まりですが、武術指導家が監督というだけあって、功夫アクションはとてもキビキビとしています。
また、個性的なアイデアやキャラクターも魅力の1つであると言えます…が、本作は終盤に突入すると共に怒涛の超展開が勃発します。台湾製の功夫片(特に武侠片)では、ラストでどんでん返しが発生するパターンが多く、ジャッキーの『キラードラゴン・流星拳』はその最たるものと言えます。
本作もその例に漏れず、作品の根幹を揺るがす大どんでん返しが待ち受けていました。詳しく説明すると面白みがなくなってしまうので、これから見ようと思っている方は十分な覚悟の上での視聴を推奨します(笑