続・功夫電影専科 -48ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「実録ヒットマン 北海の虎.望郷」
製作:2003年

●これまで当ブログでは多数のヤクザ系Vシネマを紹介してきましたが、本作は仁侠映画の老舗・東映の劇場公開作品です。製作には全日本プロレスが絡んでいて、あの武藤敬司と小島聡が重要な役どころで出演しているのがミソ。『新・ピィナッツ』や『血染めの代紋』のように、プロレスラーの無駄遣いでは終わっていません。
主演は本作が映画初主演となる誠直也で(あれ?『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン』は?)、その妻に夏樹陽子、彼を慕う若頭に石原良純が出演。ロケーションなども凝っており、それなりに予算が掛かっている様子がうかがえます。

 物語は「引退した侠客が昔の敵に目を付けられ、身内に危害が及んだことで遂に立ち上がる」というド直球なものですが、本作が優れているのは細かな描写の積み重ねにあります。誠がムショから出所し、10年ぶりに家族と食卓を囲み、漁師に再就職して…といった具合に、各登場人物の動きを丹念に描いているのです。
たとえ直球なストーリーであっても、ディテールに凝ることで作品に深みを持たせることが出来ます。本作はそれに成功しており、後半にかけて押し寄せる悲惨な展開をより引き立たせていました。話にあまり捻りがなく、石原の死に様が投げやりだったりと粗もありますが、全体的なクオリティは高いと言えるでしょう。

 さて注目の武藤と小島ですが、彼らのアクションはラストバトルだけに限定されています。武藤は誠の友人役で、敵対する白竜の組とつるんでいたロシアンマフィアと対決。素手でドスに立ち向かい、銃弾を5~6発くらい喰らっても平気で闘うという化け物っぷりを見せていました(笑
しかし彼にはこれといったタイマン勝負がありません。その代わり、ロシアンマフィアの用心棒に扮する小島が誠と激突し、白熱の勝負を繰り広げます。最後に白竜と相対し、身を削るような戦いっぷりを見せる誠の勇姿も含め、この最終決戦はとても熱いものに仕上がっています。
この他にも、娘の恋人の父親役で宮内洋アオレンジャー!)がひょっこり登場したりと、とてもバラエティに富んだ内容になっている本作。ただしR15指定(流血シーンが多め)の作品なので、これから視聴しようと思っている方はご注意を。


「ブラックマスク 武神黒侠」
原題:武神侠/侠傳説
英題:Shadow Mask/Black Mask 3
製作:2000年(2001年説あり)

●かつて李連杰(リー・リンチェイ)主演で製作された『ブラック・マスク』という作品がありました。漆黒に身を包んだヒーローが活躍するアクション映画で、のちに安志杰(アンディ・オン)が二代目を務めた『ブラックマスク2』も作られています。
この2本は徐克(ツイ・ハーク)が手掛けたものですが、彼が関わっていない亜流作品もいくつか存在しました。本作はその中の1つで、第3のブラックマスクを樊少皇(ルイス・ファン)が襲名。プロデューサーも兼ねている高飛(コー・フェイ)、『グリーン・デスティニー』の鄭佩佩(チャン・ペイペイ)が共演している点にも目を惹かれます。

 ストーリーは新たなブラックマスクとなった資産家の青年・樊少皇が、恋や友情に悩みながらヒーローとしての意識に目覚め、鄭佩佩とその手下(日本版ビデオの解説にある「2大凶悪犯罪組織」は間違い)を相手に戦う!というもの。こう要約すると面白そうですが、全体的に作りが雑なのでいまいち盛り上がりません。
物語のテンポも悪く、登場人物の行動目的もやたらとブレまくっています。特に酷いのが樊少皇を鍛えている執事・西川孝和で、なんとストーリー後半に樊少皇と恋仲になっていた長井律子を騙し、無理矢理別れるよう迫るのです。
戦いに彼女を巻き込むまいとする西川の言い分も解りますが、これは流石にやりすぎ。のちに彼こそが先代ブラックマスクであると発覚するものの、非常にあっけない最期を遂げています。せめて、因縁の相手である鄭佩佩と対峙するシーンなどがあったら良かったのですが…。

 このパッとしない雰囲気は格闘シーンにも影響していて、悪くはないけどインパクトに欠ける印象を受けます。注目の樊少皇VS高飛や樊少皇VS鄭佩佩でも、これといって「凄い!」と思えるようなアクションは無く、ありきたりな動作片レベルに甘んじている気がしました。
さすがに『ブラックマスク2』ほど悲惨ではありませんが、テンションの低い作品であることは明々白々。やはり便乗作品は便乗作品でしかない…ということなのでしょうか。


「ワル 序章」
「ワル 序章 Vol.01 無頼篇」
製作:2004年

●劇作家の梶原一騎を兄に持ち、空手指導・道場の設立・創作活動など、多方面で活躍してきた故・真樹日佐夫氏。彼が手掛けた作品は頻繁に実写化されており、そのなかでも特に息の長いシリーズだったのが、当ブログで何度となく紹介してきた『ワル』シリーズです。
『ワル』とは、木刀の達人である孤高の男・氷室洋二が主人公の劇画で、これまでに多くの実写版が作られてきました。裏社会の戦いを描いた白竜主演の『新書ワル』、様々なトラブルに直面する本宮泰風主演の『ワル外伝』、香港マフィアと壮絶な死闘を演じる清水宏次朗主演の『ワル正伝』などなど…。

 そして本作は、まだ氷室洋二が高校生だった原作初期をもとに映像化したものです。ストーリーは、有名な進学校に赴任してきた3人の研修生(嘉門洋子・船木誠勝・荻野崇)が、学校内のワルを集めた特別クラスの担任の座を賭け、ワルのリーダー格である氷室と対立する様を描いています。
ちなみに今回氷室を演じるのは、あの高橋祐也(ママの三田佳子もちゃっかり登場)。残念ながら過去に氷室を演じた役者たちと比べて迫力では劣っていますが、船木にガチで投げられまくったり(!)と、なかなか体当たりのアクションを見せていました。

 ただ、物語は高橋と研修生たちのどちらを主軸にしたいのか解らず、かなり中途半端な印象を受けます。ストップモーションやスローなどの演出も使いどころが悪く、特にスロー処理は格闘シーンの出だしに必ず挿入されるため、戦闘時のスピード感が思いっきり削がれています(涙
アクションも高橋が一方的に勝つケースが多く、あまり面白みはありません。彼の前では船木すらザコ扱いで、まともに相手になれたのは師匠役の真樹センセイと、最後に戦う空手家だけ。その空手家との一戦も、飛び蹴りを放ったところで唐突に終わるため、どう決着がついたか解らないという始末です(この欠点は『ワル外伝』と同じ)。
本作には続編が存在するのですが、果たしてどのような結末が待ち受けているのか…。個人的には『新ピィナッツ』みたいに、なんとか次で持ち直してくれることを期待しています。


張保仔/怒海侠盜
英題:King of the Sea
製作:1994年

●かつて『龍の忍者』で銀幕デビューを飾り、『タイガー・オン・ザ・ビート』では周潤發(チョウ・ユンファ)を喰うほどの活躍を見せた李元覇(コナン・リー)。しかし彼はチャンスをモノにすることができず、トップスターの仲間入りを果たせずにいました。本作はそんな苦闘の時代を送っていた李元覇が、実在した大海賊・張保仔に扮している作品です。
張保仔は義賊であり、民衆に慕われていたと伝えられています。彼を扱った映画も多く、本作では同じく実在の海賊である郭婆帯や、清国総督の林則徐も登場します。物語は張保仔の半生を基に、アヘン戦争を始めとした歴史的事件をプラス。海賊に拾われた彼が成長して船長になり、仲間との衝突や挫折を経て成長していく姿を描いています。
 アクションはそこそこレベルですが、李元覇の仲間である郭婆帯(演じるは慮恵光(ケン・ロー)!)が途中で離反するため、ジャッキーのフォロワーVSジャッキーの右腕という興味深い対決が実現しています。終盤はアヘン戦争が勃発し、本物の帆船やジャンク船、さらにはドラゴンボートを使った大規模な海戦が展開!ここはなかなかの迫力でした。
ただ、主人公であるはずの李元覇が個性に乏しく、敵となる英国人の勢力の描写が醜悪すぎる点はどうにかして欲しかったですね。最後の李元覇&慮恵光VSマーク・キング&マーク・ホートンも実に中途半端で、この面子ならもっと凄いバトルが演じられたはず。そういった面では不満の残る作品となってしまいました。
当時の少林英雄ブームに乗ろうとした作品ですが、正直言って微妙な出来です。ほぼすべての部分が並以下で、見せ場と言えそうなのは先述の海戦シーンのみ。無理して見るほどのものでは無いと思います。


「少林寺十八銅人」
原題:古惑奇兵之兵行險著/銅馬鐵燕傳奇/少林寺十八銅人/少林寺十八小銅人
英題:18 Shaolin Golden Boys
製作:1996年

●アメリカで暮らしていた季天笙(ウェイ・テンサン)は、師匠の遺言で中国の少林寺へ行くことになった。目的は師匠の兄弟弟子である館長から”大事なある物”を受け取り、少林寺に入門することだ。少林寺には18人のチビッコからなる十八童陣という集団がいて、季天笙は最初の試験で彼らに負けてしまうが、お情けで入門を許された。
だがその矢先、于榮光(ユー・ロングァン)率いる盗賊団が少林寺の秘宝・飛翔馬を狙い、攻め入ってきたからさぁ大変!彼らに命を狙われているシスターの陳少霞(シェリー・チャン)を巻き込みながら、少林寺と盗賊団の対決が始まる!

 う~ん、これは酷い(爆)。本作は香港のメジャー俳優が多数出演した少林寺映画ですが、これがまた凄まじい作品でした。主演の季天笙はルックスも良く、それなりにアクションも出来る俳優なんですが、『レジェンド・オブ・フォース 激闘飛龍/方世玉・外伝』でデビューして以降はパッとせず、異様なほど作品に恵まれていないのです。
シリーズ3作目とは名ばかりの『酔拳3』、子供向けの便乗作『少林キッズ』など、出演する映画は微妙なものばかり…。本作も子供向け作品ですが、共演には于榮光や周比利(ビリー・チョウ)、武術指導には『ヤング・マスター』の馮克安(フォン・ハックオン)が参加しているため、パッと見では『少林キッズ』よりマシに思えます。
 しかし、その中身は『少林キッズ』をも凌駕する惨状となっていました。セットや特殊効果は90年代の作品とは思えないほどショボく、ストーリーの流れもかなり適当。盗賊団に狙われて身を隠しているはずの陳少霞がノコノコと街に帰って捕まる(!)場面や、笑うに笑えないギャグの数々には絶句するしかありません。
香港の子供向け映画らしく下ネタが多い一方、人が死にまくったりする場面も多く、ターゲットが不明瞭なのも大減点です。登場人物にしても、カエルを陳少霞の目の前でブチ殺す十八童陣、重傷を負った弟子に対して「こいつら修行不足だから放っとけ(意訳)」と言う館長など、悪い意味でツッコミどころ満載となっていました。

 また、功夫アクションの動作自体はわりと良いんですが、カットごとの繋ぎや演出が適当なため、ぜんぜん面白くないのです。なし崩し的に始まるラストバトルでは、原理不明の防弾ベストを着た十八童陣が空を飛び交い、四方八方で爆発が起きたりともう滅茶苦茶!于榮光の最期にいたっては気の毒すぎます(涙
ちなみにこのラストバトル、周比利が何の説明もなく姿を消してしまうんですが、実は彼が倒されるシーン自体は存在します。どうやら日本版のビデオは一部の場面がカットされたバージョンのようで、他にも最後のオチ(季天笙が陳少霞に想いを伝えるシーン)などが削られているようです。
クレイジーな内容と粗悪な仕様の相乗効果で、見る者を混迷の渦に叩き込む怪作中の怪作。子役のアクションは大したことがないので、そちらを期待している方はスルーしてもOKかと思います。ところで、JVDビデオの解説で季天笙は「張國榮(レスリー・チャン)の再来」なんて呼ばれてますが、流石にそれは無理矢理すぎる気が…(苦笑