続・功夫電影専科 -47ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


血洒天牢/血酒天牢
英題:The Rescue
製作:1971年

●というわけで、今月は「春のBOLO-YEUNG祭り」と題しまして、香港映画を愛する者なら誰もが知っている楊斯(ボロ・ヤンorヤン・スェ)にスポットを当てたいと思います!
楊斯は1946年に広東省で生まれ、重量挙げや功夫などを学んだといわれています。彼は60年代に中国から脱出しますが、泳いで香港に渡ったという逸話は皆さんもご存知のことでしょう。
 渡航後、楊斯は持ち前の肉体美を生かしてボディビルの王者となり、ある映画プロダクションから映画出演の誘いを受けます。そのプロダクションこそ、当時香港で最盛を誇っていたショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟有限公司)でした。
70年代初頭のショウブラは功夫片よりも剣戟映画を重視し、『片腕必殺剣』を始めとした多くの傑作・名作が作られていました。本作では施思(シー・ズー)と羅烈(ロー・リェ)という2人のスター俳優が主演を飾り、作品に大きな花を添えています。

 この『血洒天牢』は南宋末期に実在した軍人・文天祥を巡る物語です。文天祥は滅亡の危機に瀕していた南宋に最後まで仕えた忠臣で、元朝に対して抵抗活動を続けていましたが、1278年にとうとう捕えられてしまいました。
その実力の高さを買われ、元朝から仲間にならないかと勧誘されたものの、彼は刑死するまで南宋への忠義を貫き続けたと伝えられています。本作は獄中にあった文天祥を助けようと、南宋の残党たちが難攻不落の監獄に挑む!という物語なのです。
尺の大半は残党の女剣士・施思と、飄々とした侠客・羅烈の2人による監獄攻略戦に集中。わざと入獄したり、トンネルを掘ったりして文天祥(演ずるは房勉)を助けようとしますが、獄長である金珠(!)の策略の前に翻弄され、最終的には総力戦に発展します。

 まず作品自体の評価ですが、ストーリーはそれほど大したものではありません。脱獄を阻止されて失敗するパターンが3回も続くうえに、文天祥の死因や、今わの際に書かれた詩が「正気の歌」ではなく「過零丁洋」の方だったりと、いくつか史実との差異が見られます。
とはいえ、血まみれで戦う施思や羅烈の姿は儚くも美しく、ワイヤーワークを取り入れたアクションシーンも実に迫力がありました(武術指導は唐佳と袁祥仁!)。唯一の不満点は終盤にタイマン勝負がないこと。せめて金珠が動ける役だったらなぁ…。

 結局のところ、ひいき目に見ても佳作の域を出ない作品ではありますが、楊斯はなかなか目立っています。彼は敵のモンゴル系用心棒として登場し、前半で羅烈と対決。後半では施思に敗北を喫し、なりゆきで残党メンバーに協力するという美味しい役を演じていました。
しかし、俳優としていまいちビッグになりきれず、次第に楊斯はショウブラから離れてしまいます。そんな彼に救いの手を差し伸べたのが、プライベートでも親交のあった李小龍(ブルース・リー)でした。『燃えよドラゴン』…この稀代の傑作に出演した事で、楊斯の運命は大きく変わっていくのです。
(次回へ続く!)


武林十八女傑/猛龍大破脂龍陣
英題:The 18 Amazones/Bravado of a Lady Fight/Bruce Lee's Ways of Kung Fu
製作:1977年

▼数あるバッタもん李小龍の中でも、その異様なまでにビルドアップされた筋肉で異彩を放つ巨龍(ドラゴン・リー)。彼の主演作はバッタもん要素を含んだ作品が大多数を占めていますが、中には李小龍の影響を感じさせないものも混じっています。
本作は英題が「Bruce Lee's Ways of Kung Fu」となっていますが、李小龍とは無関係のアクション古装片です。この作品における巨龍は、いつものおかしな怪鳥音やプルプルした挙動を見せず、野性的な衣装のおかげなのか割と格好よく撮れています。
このほかに韓国人女優の林銀珠(パール・リン)、テコンドーファイターの張一道も登場し、全編に渡って蹴りまくりのパワフルなファイトを見せていました。

■(※…下記のあらすじは推測がかなり入っています)
 邪悪な拳法家の金珠は、18人の女拳士を始めとした圧倒的な武力で武林を席巻し、悪事の限りを尽くしていた。彼はもともと武林の盟主であったが、かつて祝宴の席で他の3人の盟主を毒殺し、今の力を手にしたのである。
そんな金珠を倒すべく、武林のお偉方たちは鄭真化(エルトン・チョン)を派遣するが、女拳士たちの手にかかって死亡。張一道が第二陣として出立する中、彼に先んじて巨龍が敵の根城に忍び込んだ。しかし逆に捕らえられ、絶体絶命の危機に陥ってしまう。
 ところが、彼を女拳士の1人である林銀珠が助け出した。彼女は裏切り者として糾弾されるが、何故そんなことをしたのか頑として口を割らない。一方、敵の追撃を受けた巨龍は漁師に助けられ、再び敵の根城に向かったところを棺桶職人に呼び止められた。
「無闇に突っ込んでも死ぬだけじゃ」と諭された巨龍は引き下がり、棺桶職人の厚意で林銀珠を逃がす事にも成功する。が、脱出した先で彼は敵の追っ手に襲われ、危ない所を世捨て人の達人?に救われた。のちに達人は女拳士たちに殺されるが、巨龍は遺された書物から金珠攻略の糸口を見つけていく。
 そして張一道や林銀珠と再会した巨龍は、自分たちが金珠に殺された盟主たちの遺児であったことを知るのだった。決意を新たにした3人は、仲間である鞠禎煥・金東浩が命懸けで切り開いた突破口から敵地に潜入する。
3人は様々な武器を操る女拳士やトラップを突破し、とうとう金珠と対決の時を迎える。果たして強大な敵を前に、強い絆で結ばれた戦士たちはどう闘うのだろうか?

▲運命に導かれるかのように集まった3人の戦士が、力を合わせて巨悪に立ち向かうというアドベンチャー風味の快作です。前半は巨龍と張一道のエピソードがあまり絡まず、最初はまるでニコイチ映画のような印象を受けました。
しかし、それまでバラバラに動いていた3人が集まってくる後半から面白くなり始め、様々なギミックが飛び交う怒涛のラストバトルへと突入。巨龍たちは戦力的に敵より少し劣っており、若干押され気味のバトルがさらなる迫力をかもし出しています。
その後の巨龍・林銀珠・張一道VS金珠もなかなかのファイトですが、双方ともこれといった必殺技や特技を持っていないため、アクションにあまり個性を感じられませんでした。ここさえ充実していれば、本作は『地獄十二關門』と同じくらい面白くなったと思うんだけどなぁ…。


「ASSASSIN -アサシン-」
原題:One in the chamber
製作:2012年(一部サイトなどで1992年製となっているが、これは誤り)

●『エクスペンダブルズ』がヒットして以降、それまで軽視されていた格闘スターたちの共演が盛んに行われるようになってきました。たとえ落ち目の俳優であっても、2人3人と集まれば価値を生むということに製作サイドが気付いてきたのです。
このことは当ブログでも何度か触れていますが、その流れに同調したのは製作サイドだけではありません。『エクス~』に出演した格闘スターたちも次々と行動を起こしており、中でもドルフ・ラングレンとスティーヴ・オースティンの2人は、ここのところ活発な動きを見せています。
スティーヴは『S.W.A.T.』『ザ・ハンティング』など、次々と「解っている」作品を連発。ドルフもヴァンダムやスコット・アドキンスと共演を重ねており、本作ではアカデミー俳優のキューバ・グッティングJrと拳を交えています。

 ストーリーは実に単純明快で、マフィア同士の抗争に2人の殺し屋が参加。やがて殺し屋たちによる代理戦争的な戦いに発展するが、そう簡単に物事は終わらず…というもの。主役はどちらかというとキューバの方で、ドルフは彼に対抗するマフィアが雇った伝説の殺し屋として登場します。
このドルフのキャラクター設定が最高で、あまりパッとしない本作の照明代わりになっていました。アロハシャツを着用し、つねに子犬を連れ回している奇妙な風体。それでいて仕事ぶりは慎重かつ確実という、クレイジーでクレバーな人物像はドルフ自身の雰囲気と見事に合致しています。

 一方、主人公のキューバはクールな暗殺者として登場しますが、ヒロインに対してストーカー行為に及んだりするので、あんまり魅力的なキャラには思えません。狂っているけど格好良いドルフと、格好いいつもりで狂っているキューバ…この対照的な2人は、後半に差し掛かったところで本格的な対決に挑みます。
関節技の応酬からナイフ合戦にまで発展するこのバトルは、一部で吹替えスタントこそ使ってはいるものの、なかなか白熱した激突となっています。格闘戦としての見せ場はこの部分ぐらいですが、その後もド派手な銃撃戦が続くので、アクション的には充実していたと言えるでしょう。
ぶっちゃけドルフ以外に魅力がない作品ですが、そのぶんドルフの個性が際立っていたのも事実。今後も様々なスターとの共演を控えているようなので、これからのドルフ(とスティーヴ)の動向からは目が離せませんね。


「暗殺指令シャター」
「シャッター」
原題: 奪命刺客
英題:Call Him Mr. Shatter/Shatter
製作:1974年(1972年説あり)

▼1973年、ゴールデンハーベスト(GH)が米国のワーナー・ブラザーズと合作した『燃えよドラゴン』は、全世界で未曾有のヒットを記録しました。これを横目で見ていたGHのライバル会社であるショウ・ブラザーズ(ショウブラ)は、GHに対抗して海外プロダクションとの合作に乗り出します。
ショウブラはただ合作するだけではなく、流行の題材に功夫を足すことで『燃えよ~』越えを狙ったのです。そうして作られたのが西部劇+功夫の『真・西部ドラゴン伝』、ホラー+功夫の『ドラゴンVS7人の吸血鬼』、アマゾネス+功夫の『アマゾネス対ドラゴン/世紀の激突』でした。
本作もそうした流れで作られた作品で、『007』のようなスパイものに功夫をドッキングしています。主演はベテラン俳優のスチュアート・ホイットマンで、香港からは張徹作品の看板スター・狄龍(ティ・ロン)が参戦!このほかにもショウブラ映画の脇役たちが出演し、画面を彩っています。

■殺し屋のスチュアートはアフリカ某国の独裁者を暗殺し、香港で報酬を受け取ろうとしていた。しかし銀行家のアントン・ディフリングは「そんな依頼など知らん」と支払いを拒否。それどころか謎の刺客に襲われ、英国保安局のピーター・カッシングからは「香港から出ないと殺す」と脅されてしまう。
そんな孤立無援のスチュアートを救ったのは、バーテンで功夫道場の先生である狄龍と、マッサージ嬢の李麗麗(リリー・リー)であった。狄龍にボディガードを頼んだスチュアートは再びピーターと接触し、一連の事件には麻薬組織による国家的陰謀が隠されていることを聞かされた。
その後、スチュアートたちは組織の首領であったアントンに対し、強奪した麻薬工場の名簿を餌に接近を試みたが、逆襲を受けて李麗麗が殺されてしまった。すべての始末をつけるべく、2人の男は敵の本拠地であるマカオのカジノへと向かうが…。

▲なかなかスケールの大きいストーリーですが、抑揚のない演出のせいで盛り上がりに欠ける作品です。主役のスチュアートにも華がなく、アクションのほとんどを狄龍に任せっきりにしているため、まったくと言っていいほど印象に残りません。
そんな訳でスパイ・アクションとしては不発の本作ですが、功夫アクションとなると途端に生き生きしはじめます。狄龍の見せる力強いファイトは迫力満点で、恐らくはこのパートだけ香港のスタッフが撮影したのではないかと思われます。
 まず功夫道場で弟子役の徐蝦(『酔拳』の棒のおっさん)や馮克安らとの乱取りを見せ、クラブでの異種格闘技戦では李海生(リー・ハイサン)が見守る中、強漢・馬占士・高雄(エディじゃない方)と立て続けに対決。ラストは黄培基&劉家榮の武師コンビと雌雄を決します。
どのファイトも見ごたえ十分で、やはりショウブラ随一の功夫スターの実力は伊達じゃない!…と言いたいところですが、相対的に物語の薄さが浮き彫りになっています。結局、本作を始めとしたショウブラ合作映画は『燃えよ~』越えを果たせませんでしたが、その敗因は「安易なジャンルの合成によって生じる歪さ」にあったと思われます。
ショウブラには李小龍に匹敵する人材は少なからず居たし、海外との合作でそれを生かせる方法もあったはず。しかし彼らは、この千載一遇の機会をものにすることが出来ず、ジャッキー獲得失敗などによってGHに追いつかれていくことになるのですが…それはまた別のお話です。


「ワル 序章2」
「ワル 序章 Vol.02 無情剣血笑篇」
製作:2004年

▼さて、本作は先月紹介した『ワル 序章』の続編であり、完結編でもある作品です。修羅の道をゆく木剣使いの高校生・氷室洋二の戦いを描いたシリーズで、これまでにも多くの実写版が作られました(前作の内容や「ワル」シリーズの詳細はこちらの記事を参照下さい)。
主演は引き続き高橋祐也が、対する3人の教師を嘉門洋子・船木誠勝・荻野崇らが演じています。本作では敵の用心棒役に士道館の空手家・村上竜司がカメオ出演し、さらなる盛り上がりを見せるのかと思われましたが…。

■前作で荻野は不良を集めた特別クラスの担任に任命され、船木も教師として着任。一方、指導方法に問題ありと判断された嘉門は教職を辞し、新たな生活を送っていた。そして裏社会を牛耳ろうとする武闘家トリオ(うち1人は前作で戦った空手家)もまた、怪しげな行動を開始していた。
しかしある日、1人の女子生徒が投身自殺するというショッキングな事件が発生する。彼女は高橋に抱かれて子供を孕み、苦悩の末に自らの命を絶ったのだ。これにはさすがの高橋も驚愕し、驚きのあまり女子生徒の葬式に乗り込んで遺影を燃やすという奇行に走っていく(爆
さらに高橋は嘉門を襲い、彼女の内に秘められた思いを暴き出してしまう。それを知った船木は彼にふたたび挑むが敗北し、剣道を学んで対抗しようとした荻野もその命を散らした。そして警察に逮捕された高橋の前に、校長の職を退いた伊吹剛が現れ、意外な事実を告げるのだが…。

▲予想はしていましたが、本作は前作とほぼ同じ欠点で染まっていました。高橋と教師たちのどっちをメインにしたいのか解らない物語、やたらと長いダイアモンド・ユカイのライブシーン、そして行動が突飛すぎて感情移入が出来ない主人公のキャラもそのまま引き継がれています。
特に気になったのが主人公の人物像です。本作の氷室は素手の勝負に挑んでおきながら、不利になると木刀を持ち出したりと方々でヘボい姿を見せています。まだ若く、のちの実写版の氷室たちと比べて未熟であるとはいえ、いくらなんでもこれは…。
 アクションも相変わらず高橋が強すぎるので爽快感はゼロ。船木と荻野は大した見せ場もないまま倒され、ラスボスである格闘家トリオの1人・吉川銀二との最終決戦は一撃で勝負が決してしまいます。劇中、吉川は強敵として何度も名前が出てくるのに、まさかそれを瞬殺で終わらせるとは驚くしかありません。
この戦いと平行して真樹センセイと村上の戦いも始まりますが、こちらもセンセイが最初の一撃を放ったところで静止画となり、ズバズバと効果音が流れるだけで終わります。まさかここまでショボいラストバトルになるとは…中盤のVSキックボクサー戦が面白かっただけに、この結果は残念すぎます。
終盤はのちの『新書ワル』などに繋がる展開を見せますが、全体の出来としては恐ろしく微妙な本作。これで現時点でまだ私が手を付けていない『ワル』系列は、未ソフト化の『非情学園ワル』3部作を除けば哀川翔の『WARU ワル』だけとなりましたが、こっちは大丈夫かなぁ…(汗