
「セブンス・カース」
「セブンス・カース 七番目の呪い」
原題:原振侠與衛斯理
英題:The Seventh Curse
製作:1986年
●錢小豪(チン・シウホウ)は医師であり武術にも優れた好青年。今日も人質事件を見事に解決するが、突然押し入ってきた狄威(ディック・ウェイ)から「3日後にタイにいる俺の元へ来い」と告げられ、その直後に謎の奇病を発症してしまう。
彼は先輩の周潤發(チョウ・ユンファ)に相談し、1年前に体験したある事件を語った。それによると、かつて錢小豪はタイの奥地で魔術師・徐錦江の魔の手から崔秀麗を救い出すも、敵の逆襲によって仲間を皆殺しにされてしまったというのだ。
実は彼自身もその時に呪いを受けており、今までは崔秀麗の魔術によって進行が抑えられていたが、その効力も限界に近付いていたのである。すぐさまタイに飛んだ錢小豪は、記者の張曼玉(マギー・チャン)とともに狄威と合流。徐錦江に捕まっていた崔秀麗を救出するも、操られた張曼玉に襲われてしまう。
なんとか周潤發のおかげで事なきを得た錢小豪&狄威は、呪いを解くために必要な聖なる灰をゲットするクエストに挑んだ。紆余曲折の末、聖なる灰によって呪いから解放された錢小豪であったが、崔秀麗たちが捕まったため敵地へと潜入する。
だがそこで待ち受けていたのは、子供の生き血を飲んで復活した異形の怪物・小魔人だった。まんま『エイリアン』な姿の小魔人に苦戦する錢小豪&狄威だが、最後には思いもよらぬ結末が待っていた…!
今回は当ブログでは初登場となる、周潤發(?)の主演作の紹介です。ただし実質的な主役は錢小豪であり、肝心の周潤發は助演程度の出番しかありません。しかし製作サイドが彼のネームバリューを活用しようとしたらしく、ラストでとてつもなく強引な見せ場が用意されていますが、それは見てのお楽しみです(苦笑
この作品は脚本家の倪匡(イ・クオン)が執筆した冒険小説が元になっていて、作者自身も冒頭に登場しているのがミソ。長きにわたって香港映画界に貢献してきた彼を支えるべく、倉田保昭や汪禹(ワン・ユー)、惠英紅(ベティ・ウェイ)などの有名スターが揃ってカメオ出演しています。
ところが監督の藍乃才(ライ・ナイチョイ)の趣味なのか、本作は過剰なまでのグロテスクな描写で覆われているのです。奇怪な怪物が血肉をすすり、人間の内蔵が虫に食いつくされたりするので、ホラー映画が苦手な人は避けた方が無難でしょう。
アクション的には主演の錢小豪はもちろん、珍しく善役として活躍する狄威の活躍に目を惹かれる本作(特に寺院を舞台にした立ち回りが面白い!)。周潤發の扱いやグロ描写の数々を許容し、かつ錢小豪のファンなら楽しめるかもしれませんが…個人的にはあまり好きじゃないですね(苦笑

雌雄雙殺
英題:The Two Great Cavaliers/Deadly Duo/Blade of Fury
製作:1978年
●(殺の字は旧漢字体が正字です)
かねてより自分が海外から功夫映画のDVDを仕入れている事は、このサイトのいくつものレビューを見てもらえば分かると思いますが、その中に色々な功夫映画の予告編をしこたま詰め込んだものもあったりします。その中には手を伸ばせる範囲の通販では入手できないものもあったりしまして、非常に歯痒い思いをしていた事がありました。それも今回購入した『Martial Arts 50 Movie Pack』で一部解決したのでひと段落ですが、今回紹介するこの映画も、これまで予告編だけ見るだけで中々手に入れることはできなかった気になる作品でありました。
本作は劉忠良(ジョン・リュウ)&茅瑛(アンジェラ・マオ)主演作で、トレーラーに於いてこの2人が陳星(チェン・シン)を相手取ってボコズコと豪快に蹴りをかますシーンで虜となり、今までずっと見たくてしょうがなかった一本でした。この他に梁家仁や聞江龍といったB級功夫映画おなじみの顔が飛び出す本作、果たして私が期待したような凄い作品だったのか否か…??
…で、肝心の物語ですが、なんとも複雑な武侠片でございました(笑
密書とその行方を知る男の行方を知る謎の老人を巡る物語(長っ!)で、英語吹替えではいまいち劉忠良と茅瑛らのグループの関係がよく分かりませんでした。しかも噴出する裏切りのドラマでストーリーは非常にややこしい作りになっていて、敢えて形容すると「難解な『蛇鶴八拳』」という感じです(密書を巡る物語も蛇鶴八歩の密書を巡る物語を連想させますし)。
「一匹狼な武芸者で婚約者を持つ劉忠良」「その劉忠良に好意を寄せていた茅瑛」「その仲間で兄弟を劉忠良に殺された(と思い込んでいる)男」「敵か味方か謎多き銀色の剣客・聞江龍」「病床に伏せる物語のキーマン、梁家仁」「密書を手にしようとする大ボス陳星」と、キャラクターの奥行きも『蛇鶴八拳』のようにバラエティに富み、ちょっと置いてきぼりを喰らうこともありはしますが、巧みな功夫アクションが手伝って何とか楽しむ事ができました。
劉忠良・茅瑛・陳星・聞江龍・梁家仁らが絡むアクションはもちろん見事な出来で、トランポリンを使った武侠片らしい動作と主演の劉忠良が披露する見事な足技は違和感無く馴染んでいて、とても見ごたえがあります。主演は若干劉忠良より茅瑛寄りなので、アクションの比重はどちらかというと茅瑛に集中している気がしますが、陳星一味との乱戦になるクライマックスからは終始毒でラリっていた梁家仁も復活し、劉忠良も相変わらず見事な脚技をビシバシ決めていました。
そしてそして、待っていました劉忠良&茅瑛Vs陳星!冒頭で主演とされながら出番がオープニングとラストだけという陳星(爆)、今回の彼は一撃で相手を瀕死にさせる毒の手が武器。劉忠良と茅瑛もそれぞれ一撃ずつ喰らってしまい、一時は追い詰められます。が、梁家仁を匿っていた老人が死を賭して陳星の動きを抑え、そこを劉忠良と茅瑛と梁家仁が3人がかりでトドメを…あれ?予告編にあったあの怒涛のダブルマシンガンキックのシーンが無い?まさかDVD収録の際にカットされたのか!?そういえばラストの一騎打ちがやけに短い気がしたけど…そ、そんなぁ!!
すいません、凄いラストバトルを期待していただけあって期待外れでした…。兎にも角にも、後日ちゃんとしたカットが少ないバージョンでも入手できましたら、レビューをし直そうかと思います…。

「ガッツ・フィスト魔宮拳」
Fist and Guts
一胆二力三功夫/一膽二力三功夫/真功
1978(1980?)
●闇を!俺は!情熱! 夢を!夢を!いつも、願うだけさ
真実を捨て去れば 人は、彷徨うから 駆け上がれ!伝説の!熱風ボルテージ
静けさを乱したら 俺は、許さないぜ 限界!伝説の、熱風ボルテージ
…という劉家輝(リュウ・チャーフィ)の歌声もまろやかな(笑)彼の『少林寺三十六房』に次ぐ日本公開作。といってもショウブラではなく、劉氏兄弟の会社の作品である。
内容は僧の劉家輝が劉家榮(リュウ・チャーヨン)と李海生(リー・ホイサン)の2人に「儲け話がある」と持ちかけて仏典探しに利用しまくり、疑わしい人物を片っ端から調べていって、最後はラマ僧の羅烈(ロー・リェ)と戦うといったもの。ストーリーは好きじゃないけど、アクションは天下の劉氏兄弟だから高クオリティは保証されたも同然である。
ショウブラ作品が解禁されなかった公開当時としては、ビデオで劉家輝の主演作が見れる数少ない作品としても重宝されたと思われる(あとの劉家輝ビデオ化作品は『少林寺武者房』『少林寺の復讐』ぐらい)が、作品としてはラストの劉家輝VS羅烈意外にこれといったバトルは無い。
功夫アクションが少ない功夫片といえばこれまで『鐵[月孛]子李勇』などを紹介したが、それらはアクション以外にストーリーも良かったので功夫映画のメインディッシュであるアクションが少なくとも、それなりに見ることができた。だが本作の根本たるコメディ部分は微妙であり、特に隔離された病人の島に行く場面はシャレにならないし、日本版ビデオでは思いっきりカットされていた。
作品全体を見るとあまり良い出来ではないが、劉家輝の日本で劇場公開された数少ない作品として、記憶に止めておきたい一本である。ところで本作のビデオパッケージ…あの濃い絵は一体?(笑

「押忍!!空手部」
製作:1990年
●本作は『ビーバップ・ハイスクール』『ろくでなしブルース』等と同じ、不良漫画を原作とした実写版映画の1本です。
この手の不良映画は、派手な喧嘩アクションに重点を置くか・甘酸っぱい青春ストーリーに尺を割くか・どちらも両立してしまうか…という3つの選択肢が存在します。そんな中で本作は喧嘩アクションをメインとし、主演を『覇拳/振り向けば修羅』『BEST GUY』の松田勝(現・松田優)に任せることで、異様な迫力を持つアクション・ムービーに仕上げていました。
空手部主将・松田は誰からも慕われる熱血漢。かつては大阪の不良を束ねるリーダー候補に推された過去を持ち、現在は「ケンカは売らずに買うだけ」という主義を貫いていた。しかし他校のツッパリ連中から、かつて少年院入りしたボスの宇梶剛士が帰ってくるという噂を耳にする。宇梶はその昔、松田と大阪の覇権を賭けて争った宿敵だったのだ。
しかし松田はトラウマを抱え込んでおり、なかなか闘おうとしない。松田を兄の敵と思っているテコンドー使い・我王銀二も巻きこんだ戦いは、敵味方の全面対決という形で架橋へとなだれ込む…。
本作の技斗を担当したのは、倉田保昭の『闘え!ドラゴン』や数々のドラマでアクション指導を担当した高倉英二。そのため格闘アクションはとても見ごたえがあり、各々の役者たちの動きもパワフルなものとなっています(我王の足技もなかなか鋭いです)。異様な風貌で一際目を引く松田も、荒削りながら破天荒なキャラクターを堂々と演じており、かなりの迫力がありました。
ラストの松田VS宇梶は後半からグダグダっぽくなってしまいますが、作品そのものは非常にエネルギッシュだったと思います。ところでこの作品には、グルメレポーターとして一世を風靡した彦麻呂が脇役で出演しています。現在も方々で活躍している彦麻呂ですが、まさかこんな作品で彼と出会うとはビックリしてしましまいました(笑

「激突!キング・オブ・カンフー」
霍元甲
Legend of a Fighter
1982
●袁和平(ユエン・ウーピン)作品の中でも五本の指に入る傑作である。
霍元甲は『ドラゴン怒りの鉄拳』で李小龍の師匠だった人であり、最近も李連杰主演で『SPIRIT』が製作されたばかりの実在の人物だ。本作では青年時代と成長後をそれぞれ袁日初(サイモン・ユエンJr)と梁家仁(リャン・カーヤン)が演じ分けており、倉田さんがとても印象深い役柄で登場している。おまけに製作が『酔拳』の呉思遠&武術指導が袁和平率いる袁家班とあって、全体の完成度もお墨付きの素晴らしいものだ。
しかし袁和平の作品には、しばし理不尽なキャラクターがいる。例えば『酔拳』で登場したジャッキーのパパは王将をボコボコにしたジャッキーを理由も聞かずに殴り飛ばしていたりと(ジャッキーがあそこまでボコボコにしたのは確かに過剰だったかも知れないが)ちょっと好きになれないキャラだった。そして、本作で袁日初の父親として登場する高飛(コー・フェイ)の仕打ちもあきらかに頑固というレベルを通り越していた。
古い掟に縛られ、病弱な息子にはやさしい言葉の1つもかけずに叱咤だけ。さらにその息子がケンカ(正しくは一方的に虐められただけ)したとなると顔色を変えて立腹している。原因は武術を習わせていない自分にあるというのに…。
高飛の愚考はこれだけではない。ただ覗き見していただけの袁日初が成長して兄をも越える腕前になっていた…つまり袁日初は(倉田さんの助力があったとしても)才能があり、それを見出せずに蔑んでいた高飛の行動は間違っていたということだ。梁家仁が初めて闘うまで彼の実力を見抜けていなかった事も考えて(これは単に武術が出来ない貧弱者として高飛の眼中に無かっただけ?)、私は高飛のキャラクターを好きになれなかったです。
さらに問題は高飛だけではない。袁日初を虐める将軍の息子もやりすぎなキャラクターで、いくら傲慢な性格だからといって、中盤に於いて袁日初を殺そうとしたのは行き過ぎであると思わざるを得ない。こんな袋小路の状況に置かれたら普通はひねくれるものですよ…。
この鬱な状況に光明を射したのが倉田さんの存在だ。前半は袁日初にとって最高の師として登場し、後半は正体を明かし、敵として立ちはだかるという構図は見事である。ただの抗日映画にありがちな日本人像ではない(特にラストバトルの決着時)魅力的な人物像を演じきった倉田さんの演技力は注目すべきだ。加えて梁家仁の演技も着目されたし。父親に認められた瞬間の、あの驚きと喜びと感動が入り混じった表情は特に印象的だった。
功夫アクションは先述したとおりの高クオリティなものであり、ロシア人のボクサーとの闘いや李家鼎(リー・ガーデン)との対決も工夫に富み、まるで無理矢理挿入されたような(笑)袁祥仁(ユエン・チャンヤン)Vs馮克安のおちゃらけバトルもユニークだ。ところで『妖怪道士2』とかでも使っていたけど、袁祥仁が巨大キセルを使い始めたのはいつの作品からなのだろうか?
高飛のキャラ設定に難色があったが、全体的には製作年度を見ても飛び出た出来。『SPIRIT』も見たらこちらもどうぞ。