
「激突!キング・オブ・カンフー」
霍元甲
Legend of a Fighter
1982
●袁和平(ユエン・ウーピン)作品の中でも五本の指に入る傑作である。
霍元甲は『ドラゴン怒りの鉄拳』で李小龍の師匠だった人であり、最近も李連杰主演で『SPIRIT』が製作されたばかりの実在の人物だ。本作では青年時代と成長後をそれぞれ袁日初(サイモン・ユエンJr)と梁家仁(リャン・カーヤン)が演じ分けており、倉田さんがとても印象深い役柄で登場している。おまけに製作が『酔拳』の呉思遠&武術指導が袁和平率いる袁家班とあって、全体の完成度もお墨付きの素晴らしいものだ。
しかし袁和平の作品には、しばし理不尽なキャラクターがいる。例えば『酔拳』で登場したジャッキーのパパは王将をボコボコにしたジャッキーを理由も聞かずに殴り飛ばしていたりと(ジャッキーがあそこまでボコボコにしたのは確かに過剰だったかも知れないが)ちょっと好きになれないキャラだった。そして、本作で袁日初の父親として登場する高飛(コー・フェイ)の仕打ちもあきらかに頑固というレベルを通り越していた。
古い掟に縛られ、病弱な息子にはやさしい言葉の1つもかけずに叱咤だけ。さらにその息子がケンカ(正しくは一方的に虐められただけ)したとなると顔色を変えて立腹している。原因は武術を習わせていない自分にあるというのに…。
高飛の愚考はこれだけではない。ただ覗き見していただけの袁日初が成長して兄をも越える腕前になっていた…つまり袁日初は(倉田さんの助力があったとしても)才能があり、それを見出せずに蔑んでいた高飛の行動は間違っていたということだ。梁家仁が初めて闘うまで彼の実力を見抜けていなかった事も考えて(これは単に武術が出来ない貧弱者として高飛の眼中に無かっただけ?)、私は高飛のキャラクターを好きになれなかったです。
さらに問題は高飛だけではない。袁日初を虐める将軍の息子もやりすぎなキャラクターで、いくら傲慢な性格だからといって、中盤に於いて袁日初を殺そうとしたのは行き過ぎであると思わざるを得ない。こんな袋小路の状況に置かれたら普通はひねくれるものですよ…。
この鬱な状況に光明を射したのが倉田さんの存在だ。前半は袁日初にとって最高の師として登場し、後半は正体を明かし、敵として立ちはだかるという構図は見事である。ただの抗日映画にありがちな日本人像ではない(特にラストバトルの決着時)魅力的な人物像を演じきった倉田さんの演技力は注目すべきだ。加えて梁家仁の演技も着目されたし。父親に認められた瞬間の、あの驚きと喜びと感動が入り混じった表情は特に印象的だった。
功夫アクションは先述したとおりの高クオリティなものであり、ロシア人のボクサーとの闘いや李家鼎(リー・ガーデン)との対決も工夫に富み、まるで無理矢理挿入されたような(笑)袁祥仁(ユエン・チャンヤン)Vs馮克安のおちゃらけバトルもユニークだ。ところで『妖怪道士2』とかでも使っていたけど、袁祥仁が巨大キセルを使い始めたのはいつの作品からなのだろうか?
高飛のキャラ設定に難色があったが、全体的には製作年度を見ても飛び出た出来。『SPIRIT』も見たらこちらもどうぞ。