
「ドランクマスター 酒仙拳」
酒仙十八跌
World of the Drunken Master/Drunken Dragon
1979
▼いきなり身も蓋もない言い方をするが、本作は『酔拳』の便乗作品だ。
内容は『酔拳』で袁小田(ユェン・シャオティエン…今回は冒頭演舞にて特別出演)が演じた蘇化子の若い頃の話である。蘇化子の若い頃を演じるのは李藝民(サイモン・リー)。そして蘇化子の友人の范大杰を演じるのが、本作の監督である郭南宏(ジョセフ・クオ)作品常連の龍世家(ジャック・ロン)である。2人とも日本ではマイナーなスターであるからして、他の出演者もマイナーどころが揃っている。
■ストーリーは30年ぶりに再開した蘇化子と范大杰の回想録という形で進行する。
若い頃の李藝民と龍世家は血気盛んな若者で、出来心から陳慧樓(チェン・ウェイロー)の葡萄園から葡萄を盗み出した。この陳慧樓は酔拳の達人で、龍飛(ロン・フェイ)一味とやりあって痛い目を見た李藝民と龍世家は、陳慧樓に弟子入りする。
腕を上げた李藝民と龍世家…しかし龍飛が黙っていなかった。邪魔な陳慧樓を消すべく、龍飛は自宅に誘き出して暗殺しようとするが失敗。更に皇帝の杯を失って怒り心頭となった龍飛は、陳慧樓を探すついでに町の人たちにまでも手にかけた。
なんとか脱出して洞窟に篭もった李藝民と龍世家たち。すると、そこにはなんと酔拳の奥義っぽいものがあるではないか!黙々と修業を続ける2人だが、そこに龍飛一味が迫る。応戦する陳慧樓も龍飛の前に倒れ、更にヒロインまでもが谷底へと真っ逆さま!ちなみにこの間2人は何をしていたかというと…黙々と修業に励んでいました(爆
結局、龍飛たちを撃破するがヒロインは帰ってこず…再び冒頭の場面へと戻る。ところが2人をここへ呼び出したのは、何を隠そうヒロインその人だった。谷底の下が河だったので助かったという無理矢理な説明を挟み、やっと再開した御三方は、陳慧樓を弔うのだった。
これでやっと一件落着かと思いきや、この後なぜか李藝民と龍世家が口論から対決する。完全に蛇足じゃないのかと思ったが、ビデオのメーター見るとまだ77分。なるほど、もしかしたらこれは時間稼ぎか?その証拠に、この後さらにグダグダな結末が牙をむいて待っていたのだった(笑)!
▲まさしくグダグダ!このラストシーンを見たら愕然とする事間違い無し!
ホント、なんでこんなラストにしちゃったんだろうか訳が解らないです(見てのお楽しみ)。が、もしかしたら尺が足りないので時間稼ぎやどんでん返しを繰り返した結果、完全に破綻してしまったのではないかと思われる…が、郭南宏だし何か余計な追加撮影でもした可能性も否定できない。
内容としては『酔拳』便乗作品以外の何物でもなく、アクションは袁祥仁(ユエン・チョンヤン)が担当しているが、所々編集が雑な場面があったり、決して良作とは言いづらい。後年の郭南宏作品には便乗作品が多いが、こちらはどちらかというと並みといったところか。

「ハード・ターゲット」
終極標[革巴]
HARD TARGET
1993
●ここのところ、あまり話題を聞かない呉宇森(ジョン・ウー)が心配だ。最近では何故か『エクスマキナ』というジャパニメーション作品をプロデュースしたりと、なんだか変な方向へ行ってる気がする。また呉宇森的な熱い男たちの物語を見たいのだが…。そんな彼がハリウッド進出した記念すべき第一作が本作である。主演にジャン=クロード・ヴァン・ダムを配し、制作にはサム・ライミが関わっている。
行方不明の父親を捜してホームレスが吹き溜まっているニューオリンズへやって来た弁護士のヤンシー・バトラー。だが、どうも父親はホームレスになっているらしく、警察は当てにならない。そこで偶然知り合った元警官のヴァンダムと共に父を捜すが、父は廃墟で焼死体となって発見される。
自殺として片付けられたこの一件に疑問を持ったヴァンダムが調べてみると、本当の死因は他殺だった。実はこの街の裏では殺人ゲームが行われ、ヴァンダムの友人の黒人も殺されてしまう。事実に近づいたヤンシーとヴァンダムは狙われるが、ヴァンダムの父の協力により廃工場で敵一同を迎え打つこととなる。
初進出だけあって呉宇森はかなり苦労したらしく、特にヴァンダムが「俺が目立たなくてどうする!」とヴァンダム節(爆)を炸裂させた為、呉宇森も四苦八苦したようだ。なお、敵に扮するランス・ヘンリクセン&アーノルド・ヴォスルーだが、前者は『エイリアン2』で真っ二つになってたアンドロイドで、後者は『ハムナプトラ』でイムホテップ役をやっていた、意外に有名な人だったりする(笑
本作を一言で形容するなら"呉宇森ファンが作ったような呉宇森作品"である。呉宇森作品のいつもの魅力が、悉く殺されてしまっている感が強いのだ。序盤からスローモーション連発し、鳩が舞い飛びラストは二丁拳銃と、完全に呉宇森的な要素をちりばめている。が、それらが全て呉宇森作品を「倣った」ようで、彼の作品特有の迫力が感じられないのである。
とは言っても、ハリウッド初顔見せということもあるので、いきなり『ワイルド・ブリッド』みたいな濃い内容を見せつけるよりも、可もなく不可もなしな作風にしたのは無難と言える。それにその後のハリウッドでの呉宇森作品を感じさせるシーンも少なからずあり、向かってくる車にバイクの上で立ってショットガンをぶっ放すとこは『M:I-2』を髣髴とさせる無茶なスタントだった。
ヴァンダム作品では呉宇森との作品がコレ一本というのが惜しい。とりあえずヴァンダム作品としてはあまり格闘シーンが控えめだが出来は並みといったところか。しかし呉宇森…ジャッキーみたいにまた香港に戻ってハメを外した作品でも作ってくれないかなぁ…?

「ファイナルファイター鉄拳英雄」
原題:中華英雄
英題:Born to Defence
製作:1988年
●私が香港映画へと脚を踏み入れたのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』との出会いがきっかけでした。たまたまTVでやっていたところを視聴した私は、あれよあれよという間に魅了されていき、今では体の芯までどっぷりと功夫映画に染まりきっています(笑
しかし、主演の李連杰(リー・リンチェイ)との接触はこれが初めてではありません。『天地大乱』の前日に放送された本作こそが、私と李連杰の初対面となりました。この『ファイナルファイター 鉄拳英雄』は李連杰の初監督作であり、彼にとっても特別な作品であったことが伺えますが、あまり面白い作品ではありませんでした。
第二次世界大戦が終結して故郷の中国に帰ってきた李連杰。そんな彼を待っていたのは、我が物顔で横暴を働くアメリカ人たちの姿だった……という内容の作品なんですが、要するに反日功夫片の敵をアメリカ人に置き換えただけという簡素な代物だったのです。
その後の展開も、肉親を殺されて激怒した李連杰がアメリカ人たちに復讐するお決まりのストーリーが展開されていきます。しかし、そんなありきたりの復讐劇よりも問題なのは、相手のアメリカ人が話にならないほど弱いという点です。
相手役には『ブラッド・スポーツ』でヴァンダムと共演したパウロ・トーチャ、空手家のカート・ローランド・ピーターゼン(2003年に死去)などの面子を揃えていますが、李連杰が一方的に強すぎるせいでまったく面白味がありません。
普通、功夫映画の主人公はある程度強いものですが、敵対する存在はそれ以上に強大でないと見栄えがしないものです。ですが、本作に登場する悪党たちはほとんど李連杰になすがままだったので、一方的にボコられるアメリカ人のほうが可哀想に見えてきてしまいました。
武術指導は『天山回廊』などの体当たりスタントで知られる徐小明(ツイ・シャオミン)…なんですが、彼の得意とするデンジャラススタントは前半の戦争シーンとラストバトルにちょろっとだけ。製作当時、周辺でかなりのゴタゴタがあったと聞きますが、この程度で終わってしまったのはとても残念です。
淡々と嫌がらせを受け続け、淡々と残虐な復讐を遂げていくだけの凡作。もしかすると『天地大乱』で私が大きな衝撃を受けたのは、この作品を見終わった後だからこそインパクトが強調されたのかもしれませんね(苦笑

一笑一拳
Golden Dragon, Silver Snake
1980
●他の巨龍(ドラゴン・リー)作品同様、これも"AN ASSO ASIA FILM"製作で、何誌強(ゴッドフリー・ホー)監督作品です。
たぶん『地獄十二關門』などと同じように韓国から買い付けたと思しき映画で、江島(チェン・タオ)意外に馴染みの顔は出演していません。新人コックの巨龍が友人の牧場の立ち退き事件に挑む擬似『ドラゴンへの道』話ですが、これはバッタもん李小龍以外にバッタもんジャッキー(王大偉)まで出てくるしょうもない作品でした。
バッタもんといえば、まず思い出されるのが巨龍らバッタもん李小龍らでしょう。ですが、ジャッキーのバッタもんは(存在する事は知っていますが)バッタもん李小龍と比べてあまり知られていません。
『必殺鉄指拳』『醒拳』にはニセジャッキーが出ていますが全面には登場せず、あくまでスタンドインとしての出演なのでこれは除外(『鉄指拳』のニセジャッキーは陳少龍らしい)。あとは『激突!魔拳塾』に羅鋭(アレクサンダー・ルー)と共に後半から登場するバッタもんジャッキー・程龍、『復活!死亡遊戯』の鄭志豪(英名はジャッキー・チュング!)ぐらいしか私は知らないが、少なくともバッタもん李小龍の市場より規模は小さかったと思われる。
本作では偽ジャッキーの王大偉(巨龍の友人として登場)が、現代劇にもかかわらず『酔拳』を参考にしたコテコテの功夫修行をしたり、ラストの決戦では『蛇拳』まんまの格好で闘い、用意周到に卵まで持って来てます。対する巨龍は赤ラインのトラックスーツを着て、プールの遊具や金属バットを駆使して闘うという、脱力必至のアクションを見せてました(苦笑
どちらかというとバカ映画にカテゴライズされるべき作品ですが、劇中もバカ映画にしようとしたのかマジな作品にしようとしたのか、どっちつかずの非常に変な映画になっています。これでは、やっぱりどこも同じだったのかと思わざるを得ませんね。個人的には、冒頭で本編と何の関係も無いムキムキ黒人がいい功夫アクションをしてたので、それが気になりました。凄くモッコリした巨龍の頭も同じく気になりますが…(あれって一体何が入ってるんでしょうか?)

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/鬼脚」
原題:黄飛鴻之鬼脚七/鬼脚七之無影脚
英題:Kick Boxer
製作:1993年
▼かつて私は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』という作品に大きな衝撃を受けました。『天地大乱』を見たことで功夫映画に心酔し、のちに数多くの作品と出会う切欠ともなり、そしてこのブログを開設することにもなった遠因にもなったのです。今もこうして功夫映画迷である私の原点は、『天地大乱』だといっても過言ではありません。
しかし、『天地大乱』を見た当時の私はすぐに功夫映画にハマったわけではなく、あくまでワイヤーアクション活劇である『ワンチャイ』シリーズしか目に入りませんでした。本作はその『ワンチャイ』というタイトルに釣られて見た亜流作品で、本家のようにワイヤーでピュンピュン飛び回るような作品ではなかったため、ずいぶんとガッカリした思い出があります(苦笑
実際、作品自体も中途半端に『ワンチャイ』シリーズを意識していて、あまり質の良いものとは言えません。しかし主演は七小福のユンピョウですから、単なる凡作になっていないのもまた事実。同じ京劇学校の同窓生である、元華(ユン・ワー)がラスボスに扮している点もポイントです。
■鬼脚七(ユンピョウ)は黄飛鴻に弟子入りをしようと寶芝林に訪れるが、悪友である太保(タイ・ポー)のせいで大麻密輸の片棒を担がされてしまう。一時は役人の任世官に捕まり、証拠不十分で釈放された後も町人からは色眼鏡で見られる始末。ふてくされるユンピョウだったが、そんな彼に任世官が救いの手を伸ばした。
実は太保のバックには大悪党・元華が潜んでおり、任世官はユンピョウに「元華の手下になるふりをして内部を探ってくれ」と依頼。正義のためにユンピョウはこれを快諾し、寶芝林から破門されてもなお敵に接近しようとした。そして任世官は仲間を引き連れて元華のアジトに突入するが、奮戦むなしく殺されてしまう。
元彪の元に残されたのは任世官の形見である鉄の靴だけ…ユンピョウは元華を倒して任世官の仇を討つべく、再びアジトへ乗り込む!
▲ストーリーはお約束な展開が続き、最後まであまりパッとしないままダラダラと続いてしまいますが、高度なアクションシーンでギリギリ佳作として成立している作品です。
まず本作で意外なのは、本家『ワンチャイ』シリーズで何度も悪役に扮してきた任世官が善役であるという点でしょう。『天地黎明』では移りゆく時の流れに翻弄される拳士を演じ、続く『外伝/アイアンモンキー』では甄子丹(ドニー・イェン)を相手に壮絶な立ち回りを演じた彼が、本作では正義の役人を演じるのだから驚きです(笑
そしてもう1人、羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画で名を馳せた台湾のテコンドー使い・常山の参戦も要注目です。本作ではユンピョウVS常山の足技合戦、任世官VS元華の悪役俳優対決というドリームマッチが2つも実現しており、これらの戦いが実現しただけでも本作には意義があったと思います。
でも、他の作品で何度も闘っているユンピョウVS元華がラストバトルというのは、さすがに食傷気味だったかなぁ…。