続・功夫電影専科 -122ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「レディ・ファイター/怒りのエンジェル」
英題:ANGEL OF FURY/TRIPLE CROSS
製作:1991年

●シンシア・ラスロック主演の本作はインドネシア映画である。
これまでフィリピン産の動作片を見たことはあるが(ユンピョウの『香港麻薬捜査官』やドニーの『ドラゴン電光石火'98』などはフィリピン系の作品)、インドネシアのアクション映画なんて初めてだ。『ブルー・リベンジ』の件もあるのでかなり不安だったが、これが意外にも面白い作品でした。
ストーリーは、主人公のシンシアが凄いコンピュータを巡って巻き起こる争奪戦で奮闘する物語である。とにかく本作は事あるごとにアクションが盛り込まれており、海で、デパートで、市街で、そして大空でシンシアが闘いを繰り広げている。そのスケールたるや凡百のB級作品にあらず、ヘリコプターを大量投入したりと、それなりに予算をかけている様子が伺える。
当然アクションは格闘・スタント共に充実。スタント面ではシンシアが『検事Mr.ハー』のユンピョウのようにヘリに捕まって宙を舞うなど頑張っており、格闘シーンでは香港式の素早いアクションを堪能することができる。絡み役の面々はインドネシアのスタントマンが参加しているようで、彼らも中々の動きで画面を盛り上げていた。ちょっと香港時代のシンシアを髣髴とさせるカットもあり、作品全体の雰囲気はプチ『皇家師姐』といった感じだ。
これらのアクションを指導したのは、なんと『ブラッド・ウォリアー』『ブルー・リベンジ』のタナカだ(またお前か!)。
ただしご覧のように、本作では前二作のような体たらくには陥っておらず、タナカ自身も悪の組織のナンバー3みたいな役で出演している。しかも台詞は多く、シンシアとは何度もバトルを展開し、アクションのキレもかなりのもの。もしかすると本作はタナカの仕事としてはベストではなかろうか。シンシア迷は勿論、タナカのファンも必見だ!(笑


「霊幻百鬼」
原題:人嚇鬼
英題:Hocus Pocus
製作:1984年

●それにしてもポニーキャニオンはどうしてこの作品を買ったんだろうか?
日本では「霊幻道士元祖シリーズ」という無理矢理なくくりでソフト化された本作だが、たぶん『霊幻道士』と一緒に抱き合わせで買わされたのだろうと思われる。ちなみに本作は「霊幻道士元祖シリーズ」の第三弾で、第一弾は『鬼打鬼』、第二弾は『霊幻師弟・人嚇人』となっている(この2本は既にレビュー済み)。
ストーリーは例の予告で語られた限りなのであまり書くことは無い(笑)。林正英(ラム・チェンイン)が座長を勤める京劇一座は、ある日の公演で奇怪な騒ぎに出くわす。実はこの騒ぎは成仏できない幽霊・錢月笙(チン・ユーサン)によって引き起こされたものだった。
団員の董[王韋](トン・ワイ)らと共に事情を知った林正英は、錢月笙のお骨を掘り出して弔う事に。ところが間違えて悪霊の鐘發(チュン・ファット)の骨を埋めてしまったからさぁ大変!林正英たち京劇一座と鐘發の死闘が始まるのだった…。
「霊幻道士元祖シリーズ」と謳っているだけあって、本作にも未完成な『霊幻道士』テイストが盛り込まれている。『鬼打鬼』ではキョンシーを、『人嚇人』ではクリーチャーを持ち出していたが、本作ではワイヤーを駆使したサイキックバトルを展開。悪霊に翻弄される人々が投げ飛ばされて痛いスタントをかましたりと、『霊幻道士』でのキョンシーとのバトルに繋がる要素が本作のラストバトルで見ることが出来る。
武術指導は洪家班で、『鬼打鬼』や『人嚇人』と同様に素晴らしいアクションを披露。シリーズの中で唯一サモハンが出演していない本作だが、その代わりにワイヤーを使った殺陣で盛り返しているのは流石だ。それ以外に関してはさして取り上げることの無い作品だが、『鬼打鬼』『人嚇人』と共に間違いなく『霊幻道士』の礎となった作品として、記憶に止めておきたい一本である。


「キックボクサー3」
原題:KICKBOXER 3: THE ART OF WAR/KICKBOXER 3
製作:1992年

●シンプルだがヴァンダムの魅力が弾けていた第1作、明後日の方向へ突っ走ってしまった第2作と続いてきた『キックボクサー』シリーズも、今回でとうとう第3作を向かえる。このあと更にもうひとつ『キックボクサー4』もあるのだが、残念ながら当方は『4』だけは未見。なので本シリーズのレビューは(今現在は)ここまでということになりますので悪しからず…。
今回はミッチェルとデニスが遠くブラジルの地で活躍する話だ。ブラジルでアルゼンチンのキックボクシング・チャンプであるミゲル・オニガと闘うことになったミッチェルだが、現地で出会った浮浪児のカップルと共に、汚い陰謀に巻き込まれてしまう…といった物語である。
流石にシリーズ第3作ともなるとマンネリ化が懸念されるところだが、本作はその打開策としてガンアクションを加えている。だがマーシャルアーツ映画で格闘シーンが減るような仕様にしてしまうなんて、いくらなんでも愚の骨頂としか言い様が無い。
最終的に悪党を蹴散らした主人公たちは何の罪に問われる事も無いまま幕を閉じるのだが、7人ほど射殺しているミッチェルたちをそのまま見逃していいものだろうか?(ボスを刺したガキに関しても、何のお咎めも無しというのは…う~ん)
また、本作はこれまで物語の根本として存在していたキックボクサーという要素が、幼女の捜索を本筋に置き換えてしまったが為に疎かになってしまっている。とりあえず格闘アクションのグレードは『2』から持ち直しているものの、クライマックスで繰り広げられるミッチェルVSオニガのバトルが、単なるオマケのような印象を受けてしまったのは頂けない。
今まで見たシリーズ(『4』を除く)の面白さを比較すると、『5』≧『1』>『3』>『2』といったところだろうか。未だ見ていない『4』が、ちゃんとキックボクサーらしい作品に立ち直っているかが気になります…って、『4』の監督はまたアルバート・ピュンかよ!なんかもう…見なくても結果が目に見えてくる気がします(萎


「キックボクサー2」
原題:KICKBOXER 2: THE ROAD BACK/KICKBOXER 2
製作:1991年

▼ああ、またアルバート・ピュンか…(溜息
本作はヴァンダム主演の格闘アクション、『キックボクサー』の続編となる作品です。主演はヴァンダムからサシャ・ミッチェルに交代し、前作からは師匠のデニス・チャンと宿敵ミシェル・クイシが続投しています。
しかし何をどう間違ったのか、本作は珍作や怪作を撮ることに定評のある“あの”アルバート・ピュンがメガホンを取っているのです。作品自体はピュンの監督作としてマシな方ではありますが、やはり問題点が多い作品になっていました(後述)。

■ミッチェルはかつてキックボクサーの選手だったが、今は貧乏ジムで子供にキックを教えていた。だが彼は、ひょんな事から強豪のマシアス・ヒューズと闘う羽目になってしまう。
死闘の末に相手を倒したミッチェルは、これ以上の戦いを避けようと即座に引退を表明する。だが、マシアスのオーナーに報復を受け、ジムと面倒を見ていた少年を失ってしまった。
ボロボロになったミッチェル…そんな彼の元に、かつて兄を指導していたデニスが現れ、肉体的にも精神的にも打ちのめされていたミッチェルを立ち直らせようと、過酷な修行を施していく。
一方そのころ、ミッチェルの下から独立していたヴィンズ・マードッコは大事な一戦を迎えつつあった。観戦に向かうミッチェルとデニスだが、彼らの前に現れたのは因縁の宿敵、トン・ポー(クイシ)だった!

▲ヒット作の続編を作る際、主役を演じた役者が続投できなければ、色々と設定をヒネってどうにかするものです。
だが、この作品では事もあろうに前作で活躍したヴァンダムとその兄、そしてヴァンダムと恋仲になっていたヒロインが死亡しているという酷い後付設定を加えています。話を繋げるにしても、もうちょっとマシな繋げ方は無かったのでしょうか?
また、前作では神秘的な存在だったデニスがトボけたオヤジと化し、禍々しかったミシェルもオカマみたいな顔になっていたりと、ギャップが激しいのも気にかかりました。前作からブランクがあるから仕方ないかもしれないけど…もうちょっと頑張ってよ、ピュン!
 一方、アクションのほうはそれなりに頑張っており、本作から主演を務めるミッチェルも無難にファイトをこなしています。ところが、クライマックスにおけるヴィンズVSミシェルと、ラストでのミッチェルVSミシェルの2大バトルで大問題が発生していました。
この対決は作中でも重要な場面なんですが、なんとファイトのほとんどがスローモーションで処理されています。要所要所で使うのなら兎も角、ファイトのほぼ全部がスローとあっては、いくらなんでも興奮のしようがありません(涙
 ちなみに本作のアクション指導は、キックの花形選手でもあったベニー・ユキーデ。ピュンとユキーデといえば『ブラッド・マッチ』の悪夢が蘇えりますが、本作を見ると監督のピュンがヘマをしたのか、それともユキーデにアクション指導のセンスが無かったのか、どうにも判断に困ってしまいます。
…まぁ、ピュンが監督に着任した時点で、作品がどうなるかは十中八九決まっていたと思いますが…。


「キックボクサー」
原題:KICKBOXER
製作:1989年

●ジャン=クロード・ヴァン・ダムの初期主演作の中でも、傑作と名高いマーシャルアーツ映画である。物語は至極シンプルなもので、再起不能にされたキックボクサーの兄の仇を取るべく、ヴァンダムがリングに上がって闘う話だ。
デニス・アレクシオはキックボクサーのチャンプで、弟のヴァンダムと共にキックの本場であるタイへ遠征に出立した。だがそこで待っていたのは桁外れの強さを誇る怪物、ミシェル・クイシだった。非道なミシェルはアレクシオの背を叩き折り、一生歩く事が出来ない身体にしてしまう。ヴァンダムは仇討ちを誓ってムエタイの達人であるデニス・チャンのもとに弟子入りする…。
本作はさながら香港映画のような「特訓&仇討ち」映画だ。質素な小屋で暮らす世捨て人のデニスは袁小田(ユェン・シャオティエン)を髣髴とさせ、ヴァンダムが挑む特訓の数々も『酔拳』『蛇拳』のそれを連想させる(こちらの方が多少リアルスティックであるが)。
ストーリーはヴァンダムが兄を倒されて特訓してミシェルを倒して終りという単純なものだが、ここらへんの薄っぺらさも香港映画っぽい。のちにヴァンダムは楊斯と死闘を演じる『ブラッド・スポーツ』に主演。更に徐克(ツイ・ハーク)や呉宇森(ジョン・ウー)ら香港映画のスタッフと仕事をしていくが、すでにこの頃から香港映画を意識していた様子が垣間見え、とても興味深いものを感じることができる。
アクションに関してはそこそこ。殺陣は蹴り一辺倒で代わり映えはしないものの、劇中ヴァンダムによって「これでもか!」と披露される華麗な回し蹴りの数々は素晴らしい。近年はこういったコテコテのマーシャルアーツ映画を撮らなくなったヴァンダムであるが、本作での活躍ぶりは目を見張るものがある。是非とも本作のようなテンションの高い作品をまた作ってくれないかなぁ…?
なお、本作の武術指導はなんと成家班の張午郎(チャン・ウーロン)がジョン・チャン名義で担当(どうりでデニスの替身などの見せ方が上手かった訳だ)。この他にもミシェルを飼っているボスの手下に李家鼎(リー・ガーデン)が参加している。
この李家鼎、かつて『闘え!ドラゴン』というドラマで倉田保昭を相手に鉄の爪で戦ったことがある。クライマックスのヴァンダムVSミシェル戦で切り傷を受けたヴァンダムを見た李家鼎は李小龍っぽく血を嘗める仕草をしたが、もしかしたら同じ様な傷を倉田に付けた自分の事を思い出していたのかもしれない…って、さすがにそれは無いですね(苦笑