
「ダークブレイド」
原題:THE PURIFIERS
製作:2004年
●「勿体無い!」…本作はまさにそうとしか言えない作品だ。
ストーリーは街を仕切っていた格闘クラブに集まるチンピラ集団が、全てを牛耳ろうとする悪の首領に狙われる話である。首領は「我が仲間になれ」みたいな事を数多の格闘クラブにのたまっていたが、主人公のゴードン・アレクサンダー率いるグループはこれに納得せず、会合の場を後にした。自らの意に背いたとして、首領は傘下となった他のグループにゴードンたちを追わせるが、裏切りや闇討ちがあったりなんかして…で、最後はゴードンと首領が闘って終幕となる。
粗筋の紹介がいつにも増して投げやりだが、そうなるのも仕方が無い。なにしろ本作は凝りまくった映像と奇妙な設定の入り組みまくった、訳のわからない作品なのだ。
本作はまず冒頭に世界観の説明が長々と挿入される…これはまだいい。だが、本編の画面効果はどれもカットがチャカチャカしており、全編に渡って繰り広げられるアートかぶれのカット割りが最悪なのである。画面分割などの奇妙な編集と、高揚感の無いBGMや効果音でテンションは下がる一方…これを途中で断念せずに、一気に視聴できた人がいたら尊敬したいほどだ(ちなみに私は開始20分でダウン)。
だがその一方で、本作の格闘アクションはかなり拳闘している。
なにしろ本作で登場するキャラクターは全員がマーシャルアーツの使い手!敵も味方も武術集団だし、首領もちゃんと腕が立つ。こんな連中が集まっているだけあって、本作は格闘シーンが満載なのだ。しかも全員が全員ともいい動きをしており、むしろトロい動きをしているような奴はほとんどいない。そんな本作で、最も特筆すべきはラストバトルでのゴードンVS首領の戦いだ。
マーシャルアーツ映画といえば、足技がバンバン出てくる見栄え重視のファイトが一般的だ。だがこのゴードンと首領の戦いは、なんと香港映画のように手技が中心!しかも"動作自体は"迫力満点なのだから恐れ入る。本作の武術指導はゴードン自身が担当しているのだが、実は彼は『アクシデンタル・スパイ』などの香港映画にも出演した実績を持っている。だからこそ、このような素晴らしいアクションが構築できたのだろう。
ところで上記に「"動作自体は"迫力満点」と書いたが…実はここまで褒め称えておいてアレなのだが、本作はその迫力満点なファイトを、事もあろうに盛り下げる演出ばかり取っているのだ。
打撃音はベチベチと弱々しく、歓声や気合もわざとボリュームが抑えられている。先述した画面分割でアクションがブツ切りにされるわ、某ポケモン騒動と同等のピカピカ表現が使われるわ、首領の側近とのバトルで完全に画面が真っ暗になるわと、その演出は格闘アクション目当てに見た視聴者をバカにしているかのようなものばかり。一体、本作の監督は何を考えてこんなクズ作品を仕上げたのだろうか?
普通に撮っていれば良質のマーシャルアーツ映画となったはずなのに、その可能性を自ら踏み潰す監督の手腕には唖然とするしかない。まだまだ言いたい事は沢山あるが、少なくともアルバート・ピュンやフィルマーク映画でさえもここまでは酷くなかったはず。いやはや、世界は広いもんですねぇ(怒

「仁義なき抗争」
原題:義胆雄心
英題:GANGLAND ODYSSEY
製作:1990年
▼かつては70年代の功夫片から活躍を続けてきた陳惠敏(チャーリー・チャン)…だが彼の監督作は、実質的にこの作品しか作られていないのである。似たタイプのスターであるジミー先生が大量に監督作を送り出したのと比べると、本作だけというのはちょっと意外だ。
監督業に乗り出したスターという存在はさほど珍しいものではない。監督作が少ない方から数えると、馮克安が4本、京柱・千葉真一・劉家輝が3本、狄龍・何宗道・黄正利・徐忠信・楊斯が2本、戚冠軍・リンチェイ・ユンピョウ・傅聲・王清・鹿村泰祥が1本の監督経験を積んでいる。だがこうして見てみると、1本だけしかメガホンを取っていない人に著名なスターが多い事に気付かされる。
その中で例えばリンチェイ唯一の監督作である『鉄拳英雄』や、戚冠軍の『大惡客』なんかは明らかな失敗作。劉家輝の『少林寺武者房』もイマイチだった事を考えると、スターの監督作であろうと必ずしも成功するとは限らないという事がよく解るだろう。
陳惠敏の監督作もこれ1本ということは「失敗作なのか?」と思われるかもしれないが、これが中々の力作で面白いから堪らない。逆に、どうしてこれ以降陳惠敏は監督作を作っていないのかと思ってしまうほどの出来なのだ。
■英国人資産家の息子が、日本のヤクザによって誘拐された。
カリフォルニアから来た元刑事の萬梓良(アレックス・マン)と資産家の養子である劉華(アンディ・ラウ)は、資産家から息子を助けて欲しいと依頼され、2人でヤクザたちのもとへ乗り込むと息子を助け出すことに成功した。だが、奪還の際にヤクザ側に死人が出たため、ヤクザは仲間を殺した萬梓良に狙いを定めた。このヤクザの親分を演じているのが、なんと鹿村泰祥だ。本作では鹿村さんが日本語で喋る場面もあるのだが、ここで鹿村さんの肉声(なのかな?)を聞くことができる。
この騒動を調査しに、鹿村さんの属する組から香港へと陳惠敏がやって来た。実は陳惠敏、本当は香港人であり(当たり前だ・笑)かつて鉄砲玉として人を殺し、日本へと国外逃亡した男だった。陳惠敏は今回の騒動の原因を探るべく、調査を開始するのだが…。一方、萬梓良はクラブの未亡人と、劉華は未亡人の娘である簡慧珍(レジーナ・ケント)といい雰囲気になっていた。陳惠敏も、かつての弟分だった成奎安やボスの方野(!)と再会していたが、もちろん方野がいい人な訳が無い。
そうこうしている間に萬梓良はカリフォルニアへ帰らなければならなくなったのだが、ヤクザの追求が迫り、遂には劉華と簡慧珍が犠牲となってしまう。未亡人が陳惠敏の妻だった事が判明する中、相棒と娘をそれぞれ失った萬梓良と陳惠敏は、結託した鹿村さんと方野のもとへ決死の覚悟で切り込むのだった…。
▲本作は劉華が主役という事になっているが、どちらかというと主役は萬梓良と陳惠敏の2人で、様々な関係が入り組む群像劇といった感じの作品になっている。
群像劇となれば人間関係などを描くのが難しいところだが、本作では全ての登場人物を簡潔に書ききっている。唯一、成奎安の行く末が書けていないが(終盤で陳惠敏を庇って死んだりすれば絵になったはず)、初監督作でここまできちっとした作品を仕上げているだけでも、陳惠敏の手腕は評価に値する。初監督であるがゆえに生じる迷いは本作には一切無いが、これは培ってきた長い映画人生の賜物であろう。
また、本作は功夫映画ファンに嬉しい顔合わせが多いのもポイントだ。特別出演の光榮(アラン・タン)とのツーショットは、かつて共に70年代の功夫片で闘った者同士が遭遇するという、感慨深い場面でもある。この他にも方野との邂逅なども面白いが、やはり1番のメインイベントはラストの陳惠敏VS鹿村さんの死闘だろう。日本刀で斬りあう陳惠敏と鹿村さん!このレアな顔合わせだけでも、本作は見る価値があるといってもいいはずだ。
かつての自分の主演作のようにドロドロしすぎておらず、かと言って軽い作品にも陥っていない陳惠敏の監督作。もっと見てみたい気がするが、どうして未だにこれ一本しか作られていないのか?もしかして、今回扱った設定(陳惠敏が日本のヤクザと繋がっている云々…)が尾を引いているのでは(以下検閲

「ファイティングモンキー昇龍拳」
「ファイティング・マスター」
原題:順天立地/頂天立地/北派功夫/決鬥東洋客
英題:Not Scared to Die/Eagle's Shadow Fist
製作:1973年
●最近はマイナー作品ばっかり紹介していたので、今回は久しぶりにジャッキー作品を紹介します。とはいえ、これまで私が当ブログで取り上げてきたジャッキー作品と同様、微妙な作品である事は間違いないのだが(爆
本作はジャッキーが始めて準主役を演じた作品として知られている抗日功夫片だが、ジャッキーファンからは一様に「酷い」作品であるとされている。ではここで当ブログで紹介済みの、同時期に作られた抗日功夫片を列挙してみよう。『猛獅』『七殺街』『蕩寇灘』『擂台』『大惡寇』『雙龍谷』『餓虎狂龍』…これらの作品に共通しているのは、主役やその周囲の人間がある程度生き残っている事や、決して陰惨なだけの物語ではないという事である(例外もあるが)。
本作は上演禁止だった演目を演じた京劇一派が、日本軍(殺されるリーダーに袁祥仁)を殺害してしまった事から起こる追跡劇を描いた物語である。その内容は極めて陰惨であり、ユーモアのある描写など全く無い。そればかりかストーリーが進むに連れて犠牲が増えていき、ジャッキーが、元秋(ユン・チウ)が、李文泰(リー・マンチン)が、そして最後には女子供までもが全て殺されてしまうのだ。
確かにこれは明らかにやりすぎな描写である。日本軍の悪質さを現す演出と考えても、主人公以外の善玉キャラクターを全て殺してしまうとは常軌を逸している。最終的に生き残るのもラスボスの永田晃を派遣した朱牧と、主役である王清(ワン・チン)だけという惨状だ。このあと朱牧と王清の2人は和平を結び、方世玉と洪熙官ら反清派の壊滅を誓って活動していく…訳は無いのでご安心を(笑
まぁ冗談はさておき、話の酷さとは打って変わって功夫アクションはそこそこ頑張っている。なにしろ武術指導は袁祥仁。準主役のジャッキーも奮闘しているし、永田晃のアクションもキレがいい。少なくとも上記に挙げた作品の中では、『猛獅』『大惡寇』『雙龍谷』よりも良かったと言える。ただ残念なのは、最後の王清VS永田が異様に長く、メリハリがついてないので見ていて辛かった点だろう。それ以外では絡み役での接触だが、ジャッキーVS袁日初なんていう顔合わせも見れたりするのも特筆かな?
しかし本作で1番の疑問といえば、何故王清を主役に添えたかという事だ。あの悪役面の王清が正義の味方を演じる事自体かなり違和感があったのだが、それでいて主役とは…これはかなり奇妙な取り合わせである。本作を製作した大地影業は極貧プロで、ジャッキーは給料さえ貰えなかったとは周知の事実。王清が主役に抜擢されたのも、主役に出来るようなスターを呼ぶ金が大地影業に無かったからだと考えると納得できる。
花の無い主役、迫力の無い悪役、魅力の無い脇役、面白く無い物語、あんまり無い予算…ないない尽くしの状況下で、あるのは唯一武術指導の手腕のみ。『プロデューサーズ』という映画は最悪のキャストで最高の舞台を演じていたが、現実は映画のように上手くいかなかったという事か。そう考えてみると、このネガティブな作品も何となく許せる気がしてくるから不思議である(苦笑

「サイボーグコップ3」
原題:CYBORG COP III/TERMINAL IMPACT
製作:1995年
▼『サイボーグコップ』シリーズもとうとう三作目に突入。驚くべきは三作目まで作られた事ではなく、これら三本の作品が全て日本で劇場公開を果たしているという事実だろう(笑)。当時劇場でこのシリーズを見た人は、一体どんな感想を抱いたのだろうか?
ところでこの『サイボーグコップ』シリーズ、常々思っていたがシリーズとしての関連性が希薄なのが気にかかる。シリーズ全体を見渡してみても、第1作と第2作のデビッド・ブラッドリーの役柄と、デビッドの兄の子供が出ている意外に共通点は見られない。それ以外には敵がサイボーグであることが一貫されているが、本作では主役がフランク・ザガリーノとブライアン・ジェネシスの2人に交代。肝心のサイボーグはほとんど脇役同然の地位へと降格されている。
■ザガリーノとブライアンは保安官(というか借金取り?)。ある日デルタ社の依頼によって、機密書類を奪って逃げたという美人キャスターのジェニファー・ミラーを追うことになった。だが彼女はデルタ社が殺人サイボーグを秘密裏に製造しているという事実を知っており、事を追っていくうちにザガリーノたちも真相を知ったことで、事件に巻き込まれてしまう。
その後、サイボーグによって襲撃を受けてジェニファーがデルタ社の連中に捕らえられた。ザガリーノたちは廃車置場で決戦を挑み、数々のトラップでサイボーグ軍団を追い詰めていくのだが、最後の最後で思いもよらぬ強敵が待ち構えていた…。
▲まず格闘シーンについてだが、数こそ少ないものの、それなりに素早い動きをしている。特に良かったのがブライアンで、クライマックスで隠れ家にやって来たサイボーグ相手に見せる技は結構迫力がありました(ちなみにザガリーノは…まぁボチボチというところか)。また、前作とは違ってサイボーグ相手にも肉弾戦を繰り広げており、アクションの見せ方という点では評価は上がっている。
しかしザガリーノたちの前に立ちはだかるサイボーグが、シリーズ中最もショボい出来になっているのは頂けない。今回のサイボーグは見た目が完全に人間で、メカっぽいところは手術中にチラッと見えた内部の機械と、肌からちょっとだけ露出したメタリックな部分だけしかない。しかも廃車に押し潰されたり爆発物を食らっただけでやられたりするなど、前作までのタフネスだったサイボーグよりも明らかに弱体化している。ラスボスとして登場するサイボーグがあの程度というのも「流石にこれは無いんじゃないの?」と思ったぐらいだ。
爆破シーンなどを見ると予算はあったようだが、これは監督が交代した事が大きく響いているのかもしれない。前作までの監督であるサム・ファーステンバーグは、『アメリカン忍者』の前期監督として知られるお人。第1作は酷い作品になったが、第2作ではかなり持ち直している。このままサムが続投すれば、ショボいけどそれなりにいい作品が作れたと思うのだが…。

「サイボーグコップ2」
原題:CYBORG COP II/CYBORG SOLDIER
製作:1994年
●この映画はデビッド・ブラッドリー主演『サイボーグコップ』の続編ということで、私は最初全く期待していなかった。なにしろ前作はヘボい展開、ヌルいSFX、ショボいターミネーターもどきの博覧会だっただけに、入手した当初はおいそれと見る気にはなれなかったのである。だが今回改めて見てみたのだが…これが面白い(笑)。いや、確かに前作同様ショボいところもあるが、前作の改善点をきちんと処理している点など、やや持ち直した内容になっているのは評価できる。
ストーリーはヴァンダムの『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』と全く同じ。要するに、政府が作っていたサイボーグが突然暴走して人類に反旗を翻して主人公に倒されるという、ごくごくシンプルな話である(ただし『ザ・リターン』は暴走した原因について言及していたが、本作では暴走した原因についての説明が一切無い・笑)。
本作で登場するサイボーグは、前作のハリボテターミネーターから一転し、見た目があんまり人間と変わらない『ユニバーサル・ソルジャー』タイプに変更されている。この措置に関しては正解であるといえるだろう。前作のサイボーグはショボいSFXのせいで見るも無残な結果に終わっていた。この反省を踏まえ、本作では予算が増えたのかメカ部分の描写がパワーアップしており、更にアタッチメント式の武器を装備させるなどして、サイボーグであるという説得力を持たせている。
また、デビッドの格闘シーンも前作より格段に向上しており、打点の高い蹴りを放つデビッドの姿は前作以上の迫力に満ちている。スタント面でも大きな規模の爆破シーンが随所に見られ、前作を越える作品にしようというスタッフの気迫が感じられるのだ。同じ続編でも、最悪な結果になった『キックボクサー2』とはえらい違いである。
しかし、だからといって本作が完璧な作品であると結論付けるにはまだ早い。いい点が増えたが、悪い点も増えているのだ。
例えばサイボーグたちの機能に関しても、疑問符の付くものが多々ある。例えば熱感知システムで標的を追うというシステムが、消火器と発炎筒ごときで撹乱できてしまうというのは、いくらなんでもいい加減すぎるのではないだろうか(爆)。仮にも政府が開発に関わったサイボーグなのに、ちょっと重武装した男女カップルに全滅させられるというのもおかしな話。特にツッコミどころ満載だったのが、ラストのデビッドVSモーガン・ハンターの対決シーンだ。
モーガンはデビッドの同僚を殺した死刑囚だが、政府によってサイボーグに改造される。しかし暴走して研究所を破壊すると、仲間のサイボーグを引き連れてサイボーグの量産に着手し、世界征服を企んだ。相棒の仇であるモーガンを追うデビッドは、次第にサイボーグを巡る死闘に遭遇。そこでサイボーグのボスとなったモーガンと闘う…ここまで盛り上がっていると、ラストバトルはデビッドとモーガンの一騎打ちが展開されるだろうと、誰もが予想するだろう。
ところがデビッドはモーガンとまともに戦おうとせず、モーガンの身体に爆弾を仕掛けたりと卑怯な手を使いまくり、挙句の果てにモーガンを高圧電流で仕留めている。そりゃあ正面からぶつかったら苦戦するのは目に見えているが、いくらなんでもこの戦いぶりはあんまりだ(苦笑)。ここを2人の一騎打ちで終わらせてくれれば一番良かったのだが…。