
一代猛龍/詠春兄弟
英題:Bruce Lee A Dragon Story/The Dragon Dies Hard
製作:1974年(80年?)
▼今回は何宗道(ホー・チョンドー)お得意の李小龍伝記映画であるが、製作年度が74年となっている事がまず気になった。
何宗道がバッタもん李小龍への道を歩み出したのは、かの怪作『新死亡遊戯』が最初…と聞いているが、その『新死亡遊戯』は75年の作品だ。加えて、何宗道が初めて挑んだ李小龍の伝記映画『ブルース・リー物語』は76年製作。本作の製作年度が本当だとすれば、台湾でくすぶっていた何宗道が突然担ぎ出され、初主演作で初バッタもん李小龍の初李小龍伝記を演じたことになる。
確かに何宗道の顔が若い感じに見えるのだが、どうにも74年製作というのは釈然としない。この作品、本当は76年ぐらいの作品なのではなかろうか?
■物語の方は『詠春興截拳』のように変なオリジナル要素を加えるような事もせず、いたってオードソックスな伝記作品として仕上げている。
シアトル在住の何宗道は恋にケンカに明け暮れ、ロングビーチトーナメント(仮)で優勝して日本人空手家を倒し(これがターキー木村か?)、映画会社にスカウトされて『グリーンホーネット』に出演した。リンダと結婚してブランドンとシャノンが生まれた頃、彼は香港へ行くことを決意する。一度は夢破れてアメリカに戻るも、ハーベストと契約した何宗道は『ドラゴン危機一発』にて初主演を遂げた。
クランクアップした『危機一発』は大ヒットを記録。しかしスターになったせいで浮ついたのか、何宗道は女に手を出すようになる。丁珮(ティン・ペイ…勿論本人ではない)と浮気して女性問題が持ち上がる何宗道。いつもの何宗道作品ならここいらで龍飛か山茅あたりが出てきそうなものだが、いたってマジメなこの作品に彼らの付け入る隙は無い。一応その代わり、シアトルあたりから空手家や剣士をけしかけてくる連中がいるのだが、あんまり本筋と関係は無いようだ。
浮気に映画にと活躍を続ける何宗道だったが、彼の身体には病魔の影が迫りつつあった。その後も何宗道は丁珮との付き合いを継続していくものの、シアトルに残していたリンダが香港に来たことから、2人の仲は更にこじれていってしまう。次第にすさんでいく丁珮を慰める何宗道。しかし7月20日の運命の日、その瞬間は無常にも訪れ…。
▲う~ん…これはつまらない。
本作が焦点を当てたのは李小龍と丁珮の関係だ。ただし丁珮本人が関わった『実録・ブルース・リーの死』とは違い、あくまで何宗道と丁珮の複雑な恋を描いている点は評価できるだろう(『実録~』はほとんど三級片モノのベッドシーンが盛り沢山だったのに対し、本作ではそういった場面はほとんど無いのだ)。
しかし、だからといってアクションを疎かにしてしまったのは本末転倒と言うほか無い。なにしろこれは李小龍の伝記映画。功夫アクションが無くて何が李小龍の伝記と言えるだろうか。ところが本作はドラマ仕立てにしすぎたためなのか、ほとんど功夫アクションが無い(!)という問題を抱えている。
とりあえず鄭富雄などは出てくるが、インパクトのあるアクションはこれといって無し。ではストーリーはどうなのかと言うと、確かに前述した丁珮との物語はそれなりに良かった。が、それ以外は女関係で痴話ゲンカが起きたりと、はっきり言って見るに値しないやりとりが繰り返されるばかり。アクションがボリューム不足で物語もスカスカとは…流石にこれは見るのが辛かったです。

「CIA殺しの報酬」
原題:THE RETRIEVERS
製作:1981年
●これまでに本ブログでは、いくつか古いマーシャルアーツ映画を紹介してきた。
この「古いマーシャルアーツ映画」というのは、まだマーシャルアーツ映画がジャンルとして成熟される以前の、80年代初頭ぐらいの時期に作られた作品の事を指している(注釈・これは私独自の観点による見解です)。日本では70年代に空手映画が登場し、韓国でも黄正利らが闘っているが、それらに比べるとマーシャルアーツ映画というジャンルは、限りなく若いジャンルであると言えるのだ。
この80年代初頭に作られたマーシャルアーツ映画というと、チャック・ノリス作品では『チャック・ノリスの地獄の復讐』『フォース・オブ・ワン』を、その他には『Weapons of Death』『Death Machines』『復讐の掟』などをこれまでにレビューしている。それらを顧みると、各々で完成度には大きくバラつきがあり、当時のマーシャルアーツ映画がいかに発展途上だったかということがよく解る。
そんな中でマーシャルアーツ映画としては古い部類に入る本作は、前評判では「面白い」「ガッカリだった」と意見が両極端で、実際に見てみるまではどんなものか気になっていた一本だった。実際に見てみるとストーリーは暴露本を巡って右往左往という、なんともしょぼくれた物語でしかない。物語面ではあんまり評価の出来ない作品となっている。
だが、打って変わってアクション面になると、これがかなり面白いのである。出演者は(そのほとんどが知らない顔ばっかりなのだが)動ける連中が揃っており、全編に渡ってなかなかのファイトが展開されているのだ。
特に驚いたのがマーシャルアーツ映画にありがちな「闘っている際の妙な間」が、本作にほとんど無い点である。
この「闘っている際の妙な間」というのは、殴り合ってる最中にフラフラしたりする、ああいう「間」の事だ。この「間」は現在の作品でも見られるが、はっきり言って見るに耐えない上に、アクションシーン自体のテンポが乱されるため、できるならやってほしくない動作の1つだった。その点、本作は香港映画のような丁々発止のバトルに頑張って挑んでおり、年代の割には見られるアクションとして仕上がっているのだ。
本作の武術指導は3人ほど控えているのだが、その中にマスター・タイガーヤンという人がいる。もしかしてこのマスター・タイガーヤンとは、『死亡の塔』のあの楊成五だろうか?楊成五が武術指導をやったなんて話は聞いたことが無いが、本場の人間が振り付けをしているというのなら、本作の出来にも納得だ。
一言で言うなら「早すぎたアイザック・フロレンティーン作品」とも言えるこの映画。かつて玉石混交だったマーシャルアーツ映画は、今やそれなりに立派なジャンルとして成長している。それらの作品が今も存続していられるのも、ひとえに本作のような佳作の存在あってこそのものだったのだろう。

蛇女慾潮/蛇珠/猛龍鬥蛇魔
英題:Bruce Li in New Guinea/Bruce Lee in New Guinea
製作:1978年
▼香港や台湾映画には"怪作"とされる映画が多い。ブッ飛んでる映画、単につまんない映画、パクリだらけの映画、ニコイチ映画…もちろんこのブログでも、これまで怪作と呼ばれる映画をいくつも紹介してきた。それらに関してはカテゴリの珍作や駄作のコーナーを見て欲しいが、今回取り上げる作品も今までの怪作とは染色の無い…いや、それどころかとんでもないブッ飛び作品だったのである!(爆
■何宗道(ブルース・リィ)と李錦坤(ラリー・リー)は冒険家コンビ。今日はニューギニアの奥地へと探検に出かけていた。2人は蛇を祭っている部族を求め、ガイドの魚頭雲らに連れられてジャングルを進んでいく。途中で張力(チャン・リー)が仲間に加わるが、彼は何宗道たちの実力を確かめようと(?)何度も闘いを繰り広げた。しかし張力は部族の主である陳星(チン・セイ)に倒されてしまい、何宗道たちも部族の襲撃を受けて散り散りになってしまう。
戦いの最中、部族を追った何宗道はそのまま行方不明に。李錦坤は1人で帰国の途に着くこととなったのだが、しばらくして何宗道が帰ってきた。しかし何宗道の様子がおかしい…一方そのころ、蛇の部族のところでも妙な事が起こっていた。陳星が「丹娜(ダナ)を連れて来い!」と怒り心頭。丹娜はゴリラがボディガードをしている小屋にいるが、そんな彼女に陳星の息子である山怪は言う。「あの中国人の男の事が気になるんだろう?」と。
何宗道は李錦坤に失踪した時の事を語りだした。何宗道はあのあと死に際の張力と出会い、陳星が毒蛇拳の使い手であることを知った。その直後に陳星の襲撃を受けた何宗道は、毒蛇拳の攻撃を受けて瀕死の重傷を負ってしまう。息も絶え絶えな何宗道…そんな彼を助けたのが蛇の部族のプリンセス・丹娜だったのだ。
九死に一生を得た何宗道は丹娜といい感じになるのだが、彼女の義父である陳星(ということは丹娜は山怪の嫁か?)が手下を引き連れて襲ってきた。やられそうになった何宗道だが、丹娜の必死の懇願で事なきを得るも、もうこれ以上ここに留まる事はできなくなっていた。別れの際、2人は自分たちの大切なものを交換し、ニューギニアの地を後にしたという(陳星が怒っていたのは、丹娜が何宗道にあげた物が関係している様子)。
このままでは引き下がれない!何宗道は李錦坤の協力の下、毒蛇拳の3つの秘術を破るための猛特訓を開始し、再びニューギニアの地へと足を運ぶ。果たして何宗道は、陳星の毒蛇拳を破る事が出来るのか!?
▲「トチ狂っている」…まさしくそうとしか言えない作品である(爆
蛇の部族という突拍子も無い設定、無茶苦茶な格好をさせられた有名スター達、黒塗りメイクだけで部族だと言い張る強引さ、どう見てもニューギニアには見えないロケ地、ジャングルの奥地なのに背景に見える電線、そしてゴリラ…前述したとおり香港や台湾の映画にはとんでもないものが多いが、本作ほど混沌とした作品もそうそう無いだろう。
このように凄まじい作品だが、出演者はわりかし豪華である。特に部族の顔ぶれは陳星、山怪、楊斯、大細眼、李海生という渋い面子が揃っている。このメンバーなら功夫アクションの出来も期待できそうだが、正直言っていまひとつ物足りない感じだ。李海生なんか完全にザコその1みたいな扱いだし、いつもの筋肉パフォーマンスをやっていない楊斯も迫力不足。陳星なんかは終始もっさり気味で、ボスキャラなのに強そうに見えなかったほどである。
ただしストーリーは上記の通り、それなりに普通だ。しかしその普通さがカオス度の上昇に一役買ってしまっているのも事実。どうしてこんな企画が通ったのかさえ不思議だが、本作と似たスタッフで作られた『威震天南』(何宗道や陳星がゴリラと戦う珍作)という作品も存在するので、それなりの志を持って作られた事だけは確かだろう。ちなみに本作の監督である楊吉爻は『威震天南』でも脚本を担当している。もしかして楊吉爻、ゴリラ好きなのか?

「レディ・ソルジャー/エリツィン暗殺指令」
「BLACK CAT 2 黒猫2」
原題:猫II 刺殺葉利欽
英題:BLACK CAT II/BLACK CAT 2: THE ASSASSINATION OF PRESIDENT YELTSIN
製作:1992年
▼最悪だった『黒い女豹』の続編だが、これがD&B最後の作品という事になるのかな?
物語はタイトルそのまんまの話で、強化手術を受けた梁[王爭](ジェイド・リョン)がエリツィン大統領(当時)の暗殺を企てるヒットマンを追う話である。前作と同様に無名の外人ばっかりのキャスティングだが、本作ではあの仇雲波(ロビン・ショウ)が出演している。仇雲波は『タイガー・コネクション』や『地下兵工廠』などのD&B作品に参加しているが、今回の出演もその流れから起用されたのだろう。だが、梁[王爭]以外に知っている顔はおらず(前作で登場した任達華(サイモン・ヤム)でさえ登場していない)、D&Bがどれぐらい切羽詰っていたかが伺える。
■前作の後、梁[王爭]は新たに再手術を受けてパワーアップを果たした…と、劇中では描かれているが、実際は視界がサイボーグのようになったり、ターゲットではない人間を撃ち殺したりと欠陥ばかり。前作でも十分おかしなキャラだった梁[王爭]が、更に感情移入のしにくいキャラへと退化してしまっているのは大問題だ。
で、パワーアップ(仮)した梁[王爭]は、荒っぽい捜査官の仇雲波と共にエリツィン大統領の命を狙う暗殺者を追い求めていく。敵を追って雪山からロシアへと舞台は移るが、訪米したエリツィンがバレエ鑑賞に行ったところ、肩を撃たれてしまう。完全に息の根を止めようと狙撃する暗殺者だが、梁[王爭]がこれを阻止。飛行機で逃げようとする暗殺者と、梁[王爭]の死闘が幕を開けるのだった。
▲本作は前作のように基盤となるストーリーが無いので、今回は完全にオリジナルの物語となっている(当たり前の話だが)。梁[王爭]と仇雲波は見事な功夫アクションを何度も披露しており、前作の二の舞には陥っていない。特にラストの梁[王爭]VS暗殺者の死闘はなかなかのもので、潘健君(トニー・プーン)の手腕が光る名勝負となっている。
だが、やはり前作同様に今回もバッドエンド風のラストで息苦しく、悪が倒れたというのに爽快感は全く得られない。せめてあの冷徹な上官を仇雲波が殴り飛ばしてくれたならなお良かっただろうが、結局は前作と同じく暗い締めで終わってしまった。思い起こせば、D&Bの最初の作品である『レディ・ハード/香港大捜査線』のラストも、悪は倒れたのに凄まじく後味の悪いラストだった。
最後の最後まで徹底してこの暗めの路線を貫き続けたD&B…一体、なぜここまでしてD&Bは暗い路線を歩んだのだろうか?D&Bが消えた今、その理由を知る術は残されていない。

「BLACK CAT/黒い女豹」
「BLACK CAT 黒猫」
原題:猫/黒猫
英題:BLACK CAT
製作:1991年
●『皇家師姐』系列を生み出したD&B(徳寶電影公司)は、本作とその続編をもって映画制作の幕を下ろした。最後の最後まで女闘美系列に力を入れ続けたところはD&Bらしく、最後の花火だけあって大々的にニューヨークや日本でロケーションを行っている。
ニューヨークのしょぼいドライブインで働いていた梁[王爭](ジェイド・リョン)は、あるいさかいからトラック運転手と店のマスター、そして駆けつけた警察官を殺害して逮捕される。裁判所で脱走した梁[王爭]はCIAによって捕獲され、冷酷な暗殺者として訓練を受けることに…というわけで、本作はまんま『ニキータ』(or『アサシン』)まんまの物語である。このあとの展開も暗殺者となって男と愛し合うところまで、大体一緒である(とはいえ、私が見たことがあるのは『アサシン』だけで、『ニキータ』の方は見たことが無いのですが・恥)。
はっきり言ってパクリと言い切っていいぐらいの作品で、オリジナルな部分など無きに等しいぐらいだ。だが、「香港映画でパクリなんて日常茶飯事なのでは?」と思う向きもあるかも知れない。確かにそうだが、パクリならパクリなりにその作品ならではというオリジナル要素が求められてくるものだ。
『天山回廊』という作品がある。これは明らかに『インディ・ジョーンズ』の影響をモロに受けた作品だが、本家に勝るとも劣らないデンジャラスなスタントを展開。強い印象を残している。
『シューティング・サンダー』という作品がある。これは明らかに『ボディガード』をパクった作品だが、悪党のマシアス・ヒューズに猟奇殺人者という役柄を持たせる事で、差別化を図っている。
このように作品の質にかかわらず、パクリやそれに近い映画はみんなオリジナル要素を持たせようと工夫している。だがこの作品には、オリジナル要素といえるような部分がほとんど見られない。あるのはD&Bお得意の陰惨な展開だけ…いくらパクリが蔓延している香港映画とはいえ、これは流石に工夫が無さすぎるのではないだろうか。
しかも主演の梁[王爭]にはアンヌ・パリローやブリジット・フォンダにあったような魅力は皆無で、むしろどこか頭がおかしいのでは?と思うような奇行ばかりが目立っている(序盤の彼女の行動など、明らかに常軌を逸している)。ところが、こんな作品で梁[王爭]は賞を獲得し、作品自体もヒットし、D&Bが消えた後も『BLACK CAT』の名を冠した作品に出演し続けているとか(香港ではこれが受けたのか…?)。
そして本作で1番の問題点は、パクリすぎたせいか功夫アクションがほとんど無いという点だ。香港版『ニキータ』ときて、製作が『皇家師姐』系列のD&B…ここまでのお膳立てが揃っておきながら、それらしいアクションが少ないとは本末転倒以前の問題。続編ではどうにか盛り上げているが、せめて本作でもこれくらいやってくれればと言わざるを得ない。
一体、この体たらくはどうしたことだろうか?やはりあのD&Bも、会社が傾きかけてくるとおかしな方向へがむしゃらに突っ走ってしまったという事なのだろうか。おかげでワールドワイドなロケーションも効果はほとんど無し。同時期の『地下兵工廠』や『海狼』も出来はあまり良くなかったが、最後の作品ぐらいきちっと作って欲しかったです。