『CIA殺しの報酬』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「CIA殺しの報酬」
原題:THE RETRIEVERS
製作:1981年

●これまでに本ブログでは、いくつか古いマーシャルアーツ映画を紹介してきた。
この「古いマーシャルアーツ映画」というのは、まだマーシャルアーツ映画がジャンルとして成熟される以前の、80年代初頭ぐらいの時期に作られた作品の事を指している(注釈・これは私独自の観点による見解です)。日本では70年代に空手映画が登場し、韓国でも黄正利らが闘っているが、それらに比べるとマーシャルアーツ映画というジャンルは、限りなく若いジャンルであると言えるのだ。
この80年代初頭に作られたマーシャルアーツ映画というと、チャック・ノリス作品では『チャック・ノリスの地獄の復讐』『フォース・オブ・ワン』を、その他には『Weapons of Death』『Death Machines』『復讐の掟』などをこれまでにレビューしている。それらを顧みると、各々で完成度には大きくバラつきがあり、当時のマーシャルアーツ映画がいかに発展途上だったかということがよく解る。
そんな中でマーシャルアーツ映画としては古い部類に入る本作は、前評判では「面白い」「ガッカリだった」と意見が両極端で、実際に見てみるまではどんなものか気になっていた一本だった。実際に見てみるとストーリーは暴露本を巡って右往左往という、なんともしょぼくれた物語でしかない。物語面ではあんまり評価の出来ない作品となっている。
だが、打って変わってアクション面になると、これがかなり面白いのである。出演者は(そのほとんどが知らない顔ばっかりなのだが)動ける連中が揃っており、全編に渡ってなかなかのファイトが展開されているのだ。
特に驚いたのがマーシャルアーツ映画にありがちな「闘っている際の妙な間」が、本作にほとんど無い点である。
この「闘っている際の妙な間」というのは、殴り合ってる最中にフラフラしたりする、ああいう「間」の事だ。この「間」は現在の作品でも見られるが、はっきり言って見るに耐えない上に、アクションシーン自体のテンポが乱されるため、できるならやってほしくない動作の1つだった。その点、本作は香港映画のような丁々発止のバトルに頑張って挑んでおり、年代の割には見られるアクションとして仕上がっているのだ。
本作の武術指導は3人ほど控えているのだが、その中にマスター・タイガーヤンという人がいる。もしかしてこのマスター・タイガーヤンとは、『死亡の塔』のあの楊成五だろうか?楊成五が武術指導をやったなんて話は聞いたことが無いが、本場の人間が振り付けをしているというのなら、本作の出来にも納得だ。
一言で言うなら「早すぎたアイザック・フロレンティーン作品」とも言えるこの映画。かつて玉石混交だったマーシャルアーツ映画は、今やそれなりに立派なジャンルとして成長している。それらの作品が今も存続していられるのも、ひとえに本作のような佳作の存在あってこそのものだったのだろう。