裸のラリーズ - 金城学院大学ロック・コンサート1976年10月30日 (Live, 1976) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

裸のラリーズ - 金城学院大学ロック・コンサート1976年10月30日 (Live, 1976)

裸のラリーズ - 金城学院大学ロック・コンサート1976年10月30日 (Live, 1976) incomplete :  

Released by Ignuitas CDAR-23, May 26, 2006 (Unofficial)
Also Released by Ignuitas YOUTH-160, 『裸ラリーズ10枚組限定CD+DVDボックス』Disc 1, February 29, 2012 (Unofficial)
全作詞作曲・水谷孝
(Setlist: incomplete)
1. 夜、暗殺者の夜 Night of The Assassins - 12:39
2. Improvisation - 1:23
3. 夜より深く Deeper Than The Night - 13:05
4. 白い目覚め White Awakening - 6:39
5. 氷の炎 Flames of Ice - 8:45
6. The Last One (incomplete) - 17:02
Total Time: 59:31 (incomplete)
[ 裸のラリーズ Les Rallizes Dénudés ]
水谷孝 - lead guitar, vocals
中村武志 - rhythm guitar
楢崎裕史 - bass guitar
三巻俊郎 - drums

 前回ご紹介した裸のラリーズの発掘ライヴ『明治学院大学ヘボン館地下・1974年7月13日』ライヴのメンバー、水谷孝(vo, g)、中村武志(g)、長田幹生(b)、正田俊一郎(ds)は1972年秋頃から1975年前半まで足かけ三年間続いたラインナップでしたが、1975年春~夏には正田、長田が相次いで脱退、8月の『第三回夕焼け祭り』からドラムスに高橋シメ(元ロスト・アラーフ、ラリーズが懇意にしていた渋谷アダン・ミュージック・スタジオのオーナー)、ベースに楢崎裕史(元だててんりゅう、頭脳警察)が加入します。1972年~1974年ラインナップ時すでにソリッドなサウンド・スタイルに向かっていたラリーズは、楢崎裕史の加入で一気にヘヴィーなサウンド傾向を確立します。楢崎裕史は日本のアンダーグラウンド・ロック・シーンのレミー(サム・ゴパール~ホークウィンド~モーターヘッド)とも言える豪腕ベーシスト&ヴォーカリストで、京都の伝説的なキーボード・トリオ、だててんりゅうのオリジナル・メンバーにして、頭脳警察加入時には頭脳警察史上パンタ以外で唯一自作曲を提供し、ライヴでもパンタ以外に唯一リード・ヴォーカル曲を与えられたメンバーでした。高橋シメの在籍期間は1975年8月~10月の三か月程度と短く、1975年末にはラリーズが常連出演者で1973年に閉店した吉祥寺のライヴハウス、OZのスタッフだった三巻俊郎が脱退した高橋に代わって加入、1977年3月録音の公式アルバムの代表作『'77 Live』のラインナップが揃います。水谷、中村、楢崎、三巻の四人編成は1975年末~1977年8月13日の『第四回夕焼け祭り』(先にご紹介しました)まで続き、ラリーズ史上もっとも強力なアンサンブルが聴ける時期として、このメンバーでの発掘ライヴは高い人気を誇ることになりました。

 本作は水谷、中村、楢崎、三巻のラインナップになって1年8か月、公式アルバム『'77 Live』の約半年前と、『'77 Live』に先立って同メンバーでの演奏が聴ける発掘ライヴで、名古屋の金城学院大学のイヴェント「ロック・コンサート」出演時のライヴの、おそらく後半部分を収録したものです。「白い目覚め」以外の4曲は『'77 Live』(全7曲収録)でも聴け、ラリーズのライヴは「The Last One」で終わるのが常套ですが「夜、暗殺者の夜」はたいていコンサート中盤に演奏される曲ですので、この金城学院大学での発掘ライヴでは聴けない『'77 Live』収録曲でこの時期のライヴ定番曲「Enter The Mirror」「記憶は遠い」「夜の収穫者たち」あたりがコンサート前半で演奏されるも、ライヴ・テープには未収録になったものと思われます。この、ちょうど46年前の大学イヴェント「ロック・コンサート」では、他にオレンジ・カウンティ・ブラザーズを筆頭に数バンド(不明)が出演したという記録しかなく、1976年10月30日は土曜日であることから、30日・土曜日晩~31日・日曜日早朝のオールナイト・コンサートだったと推定されます。当時のライヴ資料によるとイヴェント出演ではラリーズがトリを勤めることが多く、ライヴハウスOZの閉店記念に制作されたオムニバスの自主制作盤『OZ Days』(1973年8月)の参加曲4曲しかレコード音源のリリースがなかったラリーズがイヴェントのトリとは異例ですが、おそらくラリーズ自身が明け方からの出演を希望したのと、あまりに轟音で演奏するため他のバンドがラリーズの後で演奏するのを嫌がったとも推定されます。オールナイト・コンサートの明け方のトリで出演したとしたら正確には31日が正しい日付になりますが、イヴェント自体は30日開催のためこの発掘ライヴも30日付になったのでしょう。

 本作収録の「夜、暗殺者の夜」「夜より深く」「氷の炎」「The Last One」は『'77 Live』でも演奏されている曲で、1991年リリースの公式アルバム3作『'67-'69 STUDIO et LIVE』(1967年~1969年録音)、『MIZUTANI -Les Rallizes Denudes-』(1970年~1973年録音)、『'77 Live』(1977年録音)のいずれにも未収録ながら代表曲の一つ「白い目覚め」ともどもラリーズのライヴのベスト選曲と言えるものになっており、全編全7曲98分にもおよぶ2CD『'77 Live』のコンパクトな先駆型と言える発掘ライヴです。ラリーズのライヴで必ず最終曲として演奏される「The Last One」は『'77 Live』では28分近いロング・ヴァージョンですが、本作でも17分(演奏途中でテープが切れているため、実際にはあと5分前後は続いたと思われますが)とほどほどの長さで演奏されており、どの曲もアレンジはほぼ半年後の1977年3月12日・立川社会教育会館の単独コンサートを収録した『'77 Live』で聴ける演奏に固まっています。ややピッチが高く感じられもしますが、轟音フィードバック・ノイズのラリーズのライヴとしては音質も良好です。メンバー、選曲、アレンジともに『'77 Live』を聴いていれば本作は後回しでもいいアルバムとも言えますが、CD2枚組の『'77 Live』より一気に聴ける点では(「The Last One」の不完全収録によるカットアウトのエンディングは残念ですが)、この金城大学でのライヴもテンションの高い絶好調のラリーズをとらえており、くり返し楽しめる、聴きやすさと聴きごたえの両方を満たした発掘ライヴです。

 公式アルバム『'77 Live』とともに本作でも聴ける「夜、暗殺者の夜」「夜より深く」「氷の炎」「The Last One」は、『'77 Live』には収録されるも本作には未収録の「Enter The Mirror」「記憶は遠い」「夜の収穫者たち」とともに1975年末~1977年夏の水谷、中村、楢崎、三巻の四人編成時の裸のラリーズのライヴ定番曲で、この時期には本作収録の「白い目覚め」以外にも「造花の原野」「黒い悲しみのロマンセ」「お前を知った(踏みつぶされた悲しみ)」「天使」「心の内側」「鳥の声」「夢」などが1972年~1975年ラインナップ以来のライヴ・レパートリーとなっています。また1974年の明治学院大学のライヴと較べて、ヴォーカルに深いリヴァーブ(テープ式エコー)がかけられるようになったのも確認できます。ラリーズのライヴは1曲が長いために、1時間半~2時間におよぶフル・セットの場合でも演奏曲は多くても8曲程度なので、本作も短いインプロヴィゼーションのインターミッションを除けば約1時間で実質全5曲(しかも最終曲「The Last One」は17分でテープ切れの不完全収録)と、おそらくラリーズの持ち時間は1時間半前後で、冒頭2、3曲が演奏された後「夜、暗殺者の夜」からこの録音が収録されたと思われます。1972年~1975年前半ラインナップではまだアシッド・フォーク的なアレンジで演奏されていた「夜より深く」やポップな「白い目覚め」がフィードバック・ギターが鳴り続けるヘヴィー・サイケなアレンジになったのも楢崎裕史加入後なら、中期以降の代表曲になりライヴ活動休止の1996年まで必ず演奏される人気曲「夜、暗殺者の夜」が成立したのもこの時期と、上り坂のラリーズのライヴが聴ける音源として、また代表作『'77 Live』の同メンバー、同アレンジ、同一曲のライヴが聴けるプロトタイプ的なアルバムとして、本作はライヴ全編の半分か2/3の不完全収録ながら、1975年末~1977年8月の最強メンバー時のラリーズの演奏が堪能できる発掘ライヴです。本作収録の5曲はいずれも裸のラリーズの代表曲中の代表曲ばかりなので、『明治学院大学ヘボン館地下・1974年7月13日』や『第四回夕焼け祭り・1977年8月13日』と並んで発掘ライヴ中の名演にして代表的音源と言えるアルバムです。特にご自分でもエレクトリック・ギターをお弾きになる方には、この時期のラリーズの発掘ライヴは究極のギター・アルバムとして必聴です。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)