裸のラリーズ -「花まつりコンサート」御殿場・日本妙法寺1975年 (Live, 1975) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

裸のラリーズ -「花まつりコンサート」御殿場・日本妙法寺1975年4月20日 (Live, 1975)
裸のラリーズ -「花まつりコンサート」御殿場・日本妙法寺1975年4月20日 (Live, 1975)

Correctly Track 1 recorded in 1975 at an unknown studio.
Tracks 2 and 3 recorded on April 20th, 1975 at Gotemba during the Milky Way Caravan '75 AKA Flower Festival.
Tracks 4, 5 and 6 recorded on October 1st, 1975 at Adan Studio.
Track 7 recorded in 1975 at an unknown studio.
Released by Ignuitas CDAR-33, 2006 (misscredited 1975-4-8) (Unofficial)
Also Released by Ignuitas YOUTH-160, 『裸ラリーズ10枚組限定CD+DVDボックス』Disc 6, February 29, 2012 (Unofficial)
全作詞作曲・水谷孝
(Tracklist)
1. 夜よりも深く - 10:10
2. Enter The Mirror - 9:44
3. The Last One - 7:57
4. 造花の原野 - 6:47
5. 白い目覚め - 5:56
6. 記憶は遠い - 9:01
7. 造花の原野 - 13:28
Total Time: 1:02:51
[ 裸のラリーズ Les Rallizes Dénudés ]
水谷孝 - vocals, lead guitar (all tracks)
中村武志 - rhythm guitar (1, 4, 5, 6, 7)
石井勝彦 - rhythm guitar (2, 3)
長田幹生 - bass guitar (1)
楢崎裕史 - bass guitar (4, 5, 6, 7)
正田俊一郎 - drums (1, 2, 3)
高橋シメ - drums (4, 5, 6)
三巻俊郎 - drums (7) 

花まつり (Documentary, 監督=藤枝静樹, 16mm, 62min, 1975) :  

 本作は1975年の裸のラリーズの音源として1975年4月に静岡県御殿場・妙法寺で行われたロック・フェスティヴァル「ミルキーウェイ・キャラバン75・花まつりコンサート」を収録した名盤と定評のあるものでしたが、CDおよび試聴リンクにある4月8日という日付は実際は4月20日に開催されたのがのちに確認され、また全6曲・7テイク中「花まつりコンサート」のライヴ音源は2「Enter The Mirror」と3「The Last One」の2曲のみ(この2曲のみレギュラー・メンバーの中村武志に代わって石井勝彦がリズム・ギターの代役参加)であり、1「夜よりも深く」と7「造花の原野」は日付・場所不明のスタジオ音源(おそらく1は1975年前半、7は1975年の年末)、4「造花の原野」、5「白い目覚め」、6「記憶は遠い」は1975年10月1日の渋谷アダン・スタジオでの有観客スタジオ音源であることが判明しました。この1975年10月1日のスタジオ・ライヴ音源3曲は同日録音全6曲からの抜粋で、8月の「第2回夕焼け祭り」(石川県のバンド、めんたんぴん主催)から前任ドラマーの正田俊一郎に替わって初参加するも、11月には脱退し、三巻俊郎(元ライヴハウス「OZ」のスタッフ)に交代する、スタジオ・アダンのオーナーだった高橋シメ参加時の数少ない音源です。
Les Rallizes Dénudés - Adan Music Studio Session (1975) :  

 メンバー・クレジットの通り1975年のラリーズはメンバー・チェンジが多かった年で、ベーシストとドラマーは1970年末のトリオ編成時から1972年の中村武志(ギター)加入を経て足かけ6年在籍した長田幹生(ベース)、正田俊一郎(ドラムス)から8月の「第2回夕焼け祭り」以降は楢崎裕史(ベース、元だててんりゅう、頭脳警察)、高橋シメ(ドラムス)に代わり、さらに11月の高橋シメの脱退から三巻俊郎が参加し、1977年8月13日~14日の『第4回夕焼け祭り』まで、ラリーズ史上もっとも著名な1977年3月12日収録の公式アルバム『'77 Live』で知られる水谷孝、中村武志、楢崎裕史、三巻俊郎の最強ラインナップが揃います。このラインナップがいかに強力な一体感を誇ったバンドだったかは、これまでにご紹介した『第四回夕焼け祭り』や『金城学院大学ロック・コンサート1976年10月30日』で聴ける通りです。 

 しかし1972年~1975年前半までの水谷孝、中村武志、長田幹生、正田俊一郎の四人編成時代が1996年の最終ライヴまで続くラリーズの基本スタイルの確立期だったのも事実で、以前ご紹介した『明治学院大学ヘボン館地下・1974年7月13日』ライヴは裸のラリーズのライヴの、もっとも早い時期のフルセット収録の音源ですが、楢崎裕史参加以降ほどヘヴィーで粘着質なサウンドではありませんが、1973年前半までのアシッド・フォーク的なサウンド(オムニバス・アルバム『OZ Days』1973.8収録)から、フィードバックを駆使したディープな轟音サイケデリック・スペース・ロックへの転換が確かめられます。この時期にヘヴィー・スペース・ロックの「造花の原野」が新曲として加わり、「The Last One 70」または「踏みつぶされた悲しみ」と呼ばれた曲が「お前を知った」と改題・改作され、以降ラリーズのライヴ最終曲として1996年まで演奏される新曲「The Last One」が成立しています。通常20分前後、30分近い演奏になることも少なくなく、最長40分ものヴァージョンが残されている「The Last One」はこの1972年~1975年前半ラインナップ最後期の「花まつりコンサート」では約8分のコンパクトなヴァージョンですが、密度とテンションはすさまじく、楢崎裕史参加以降のヘヴィーさを予告する演奏です。本作はメンバー変動の多かった1975年のラリーズのスタジオ・テイク、ライヴ・テイクのオムニバス的内容ですが、2~3の「花まつりコンサート」、4~6の「渋谷アダン・スタジオ」、アルバムのオープニングとクロージングに配された「夜よりも深く」と「造花の原野」のスタジオ・テイクのいずれもハイライトと言える演奏を満載しており(2テイク収録の「造花の原野」はまったく異なるアレンジで演奏されています)、音質も良好(ラリーズの場合この割れたような音質もバンドの狙い通りです)で、4種類の異なるソース、メンバーの異動を感じさせない統一感があります。サウンドは前年の『明治学院大学ヘボン館地下・1974年7月13日』よりさらに過激なフィードバック・ギターとダウナーなヘヴィーさに向かっています。 

 また本作のタイトルになっている「花まつりコンサート」(実際は「ミルキーウェイ・キャラバン75・花まつりコンサート」)は静岡県御殿場・妙法寺で行われた日本のヒッピーの祭典的ロック・フェスティヴァルで、裸のラリーズ以外の出演バンドはアケト、アシッド・セブン・ファミリー・バンド、久保田真琴と夕焼け楽団、CCCCマントラ・バンド、ジュゴン、南正人グループなどでした。このフェスティヴァルの記録映画にはインディー映画で藤枝静樹監督作『花まつり』がYouTubeで観ることができ、ラリーズの出演部分は「The Last One」が2分半程度観られるだけですが、仏教とヒッピーイズムの合体したとんでもないイヴェントだったのがわかります。観ているうちに時空の歪むような感覚すら覚えるサイケデリックなドキュメンタリー映像で、ラリーズをその代表とした'70年代日本のアンダーグラウンドなヒッピー/サイケデリック文化をありありと捉えた貴重な映像資料です。会場にはステージ、楽屋、客席問わず、さぞかし紫の煙が渦巻いていただろうと気が遠くなります。また、時代色を抜きにして本作を聴いても、ラリーズの演奏が今なお生彩を放っているのには、驚嘆せずにはいられません。