UFC カルヴィン・ケイターVSギガ・チカゼ「鉄火場の経験」 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟UFCフェザー級ワンマッチ(2022年1月 UFC FIGHT NIGHT)🏟

⚪️🇺🇸カルヴィン・ケイターVSギガ・チカゼ🇬🇪⚫️(5R判定勝利)

 

 

2022年もUFCの隆盛を確信させるような、胸を熱くさせるド派手なベストバウトが繰り広げられたメインイベントで今年最初のUFC興行がスタートした。

 

 

UFCフェザー級でランキング5位と8位にそれぞれ位置する、カルヴィン・ケイターVSギガ・チカゼというマッチアップとなった2022年初のUFC FIGHT NIGHTのメインイベント。

カルヴィン・ケイターは、ロングリーチから繰り出される伸びのある右ストレートと、相手を懐に誘い込んでの右アッパー、エルボーを武器にUFCの舞台で華やかなKO勝ちを納めてきたストライカーだが、昨年1月に行われたマックス・ホロウェイ戦ではタフファイトを繰り広げるも合計445発もの打撃を貰い、歴史的な大敗を喫している。

 

 

 

 

一方のギガ・チカゼは、GLORYで活躍していた元トップキックボクサーであり、剛柔流空手の黒帯を持っているMMAファイターだ。

UFCの舞台でも、キックボクシングと空手で培った打撃をMMAにアジャストさせていった事でスキルを遺憾なく発揮し、UFCデビュー戦から7連勝の快進撃でランキングを8位まで上げてきた。

 

 

 

 

ここまで上り調子で、この試合での勝利を手土産にタイトルショットを手に入れたいチカゼに対し、タイトル戦線に踏み止まるためには絶対に負けられない試合に挑む事となったケイター。

両者が激しく打ち合い、死力を尽くした試合は50-45が2者、50-44が1者を付けるフルマークの判定でカルヴィン・ケイターが完勝。強敵チカゼを相手に復活をアピールする勝利を納めた。

今回はケイターの勝利のポイントとなった場面を上げていきたい。

 

 

まずは、1R中盤でケイターがテイクダウンを奪ったシーンだ。

初回から前に出て積極的にプレッシャーを掛け、チカゼのパンチをブロッキングで防いでいくケイターだが、チカゼがサウスポースタイルから得意の左ミドル、左ボディストレート、続けて左ミドルをヒットさせる。

チカゼの左ミドル(三日月蹴り)はカブ・スワンソンを一撃で悶絶させ、GLORYのリングでもKOで相手を葬っている技だけに、このミドルを起点に畳み掛けたいところ。

その勢いでチカゼは再び左ミドルを打っていくが、空振りでバランスを崩してしまい転倒してしまう。

そこを見逃さないケイターは素早く接近し、チカゼの立ち上がり際にバックに回って胴クラッチを取り、リフトから投げてテイクダウンに成功した。

ストライカーというイメージが強いケイターだが、高校時代にはレスリングをやっており、デヴィジョン1で5位の成績を上げている。

この投げはグレコローマンレスリング式のものであるが、相手のワンミスを見逃さずに攻勢へと繋げ、トップキープとスクランブルの展開で有利に立てた事は、後々のラウンドでの打撃戦においてケイターのレベルチェンジを大きく意識付けさせる事に成功していた。

 

2つ目は、レベルチェンジを織り交ぜた打撃でチカゼの顔面ガードへの意識を分散させていた事だろう。

チカゼはフットワークとスイッチを駆使した打撃で相手を撹乱していくタイプの選手で、これまでの相手はチカゼのスピードに追い切れずにローやミドルで削られていって打撃を散らされて負けるパターンが殆どだった。

だがケイターはこれまでの相手と違い、グイグイと前に出て打撃を打ち、蹴りやスイッチする距離をも潰してくる。

2R、下がりながらも左ジャブ、スイッチからの左右のストレートを顔面にヒットさせるチカゼではあったが、喰らっても前に出続けていったケイターは、ヘッドムーブで攻撃をかわすチカゼに膝蹴り、左ストレート、エルボーをヒットさせ、チカゼのワンツーをスウェイバックとブロックでかわした後に、強烈な回転肘をヒットさせる。

ケイターのプレッシャーと強烈な打撃を効かされた事により、下がらされているチカゼは攻撃のキレが徐々に失われてゆく。

時折、打ち合いの流れからケイターがレベルチェンジで胴タックルに行ったり、蹴り足をキャッチしてこかしに行く場面も見られたが、チカゼは抜群のテイクダウンディフェンスで防ぐ。だが、1RにTDを奪われ組みを意識させられた事で、顔面ガードへの意識が分散され、組みの対処でガードが下がり気味になっていった事で、ケイターの攻撃がチカゼの顔面を捉える場面が多くなっていた。

ケイターが距離を詰める時に時折構えをスイッチした事で、より攻撃の出所と距離感を惑わせる効果を発揮していた点も見逃せない。

純粋なキックボクシングの攻防で勝負すれば、チカゼのほうが恐らくは上だろう。

だが、組み技の要素も加わったMMAにおける打撃の攻防においては、要所でレベルチェンジに移行する戦術を取って行ったケイターのほうが一枚上手だったというわけである。

 

ラウンド後半、ケイターの強烈なエルボーによって両目が負傷し、フォームが崩れて前のめりにパンチを打ちながらも、最後までがむしゃらに果敢に攻めていったチカゼは、バックボーンである空手の精神が生きていたシーンだったと言えるが、反対に顔面へのガードが疎かになってしまっていたのも、空手をバックボーンとする選手ならではの弱点を露呈してしまったとも言える。

キックボクシング時代のチカゼは接近戦があまり得意ではない選手ではあったが、キックではプロ44戦をこなしていただけに、ディフェンスは決してザルというわけでは無かったはずだ。

だが、組みを意識させられるMMAの打撃の攻防においては勝手が違っていた。

MMAで初めて経験したであろう地金が剥がされる試合において、タフネスとひたむきさは見られたものの、今回においては冷静さに欠いていたように思う。

 

反対に、チカゼの攻撃をしっかりとガードの位置を動かしながらディフェンスし、冷静に左フックや右アッパー、エルボーのカウンターをヒットさせていたケイターは、前回の試合でホロウェイ相手に鉄火場の試合を経験し、5Rフルに渡ってボコられた経験が決して無駄では無かったと言える。

やはり、あの敗戦があったからこそ、今回の試合では絶対に負けられないという想いが、ファイトスタイルにも如実に現れていた。

 

 

デイナ・ホワイトも試合後に絶賛し、ファイターからの反応も多く見られたカルヴィン・ケイターとギガ・チカゼの戦い。

両選手の今後の躍進に期待したい。