【親日国】トルコがんばれ! | 浪風谷本

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日本語で「かんしゃく」のことを、英語では"temper tantrum"と言うそうです。

"temper"を"tapering"(出口戦略)に変えたものが、"Taper tantrum"で「市場のかんしゃく」と解釈します。

2013年5月22日のいわゆるバーナンキショック時に作られた造語で、ドル引き締めに恐怖する新興国通貨の様相を伝える際に使われています。

 

【バーナンキ・ショックとは?】

第一波動

日本時間2013年5月22日23時からバーナンキFRB議長は米上下両院合同経済委員会で議会証言を行い、緩和姿勢を堅持するとのことから市場はドル安反応。

その後の質疑応答において「経済見通しに応じて資産購入ペース早めるか落とす用意ある」と証言。

この一言をキッカケに市場ではFRBによる出口戦略警戒が一気に広がり、ドル高が進行。

23日の日経平均先物ではサーキットブレーカーが発動するなど、東京市場は荒れました。

東京金は前日比55円安の4,501円でした。

第二波動

第一波動の翌月、6月18,19日のFOMCにおいて、金融政策の維持を決定。

その後の会見でバーナンキ議長は、「今年中に債券の購入金額を減額し、2014年半ばに完全に終了する可能性がある」と1ヵ月前よりもさらに踏み込んだ発言をし、新興国市場を中心に動揺が広がりました。

当日6月20日の東京金は26円高4,212円でしたが、翌日は125円安、翌1週間でさらに250円下落し、東京金はようやく底を打ちました(6月28日3,750円)。

 

現在FRBは25bp×7回の利上げに加えバランスシート縮小にも着手。

さらにトランプ政権による貿易摩擦やドルを使った経済制裁など、新興国市場は2013年の「テーパー・タントラム」以来最大の試練に直面しています。

2015年12月のFRBによる第一回利上げ以降、新興国はどのように動いたのでしょうか。

 

中国:2014年当時6.00%だった政策金利をこれまでに6回利下げし、現在は4.35%

インド:2015年末当時6.75%だった政策金利を3回利下げして6.00%まで引き下げたが、現在2会合連続で利上げ中(6.50%)

インドネシア:2015年末当時7.50%だった政策金利を今年4月にかけて4.25%まで下げたが、5月から再び利上げし始め、現在4回連続利上げ中(5.50%)

南ア:FRBの利上げに同調し2017年にかけて7.00%まで利上げしたが、現在は6.50%まで利下げ中

ブラジル:2015年末当時14.25%だった政策金利を12回連続で下げ、現在6.50%

メキシコ:2015年末当時3.25%だった政策金利は、現在7.75%まで引き上げ中

アルゼンチン:2015年末当時20%だった政策金利は、現在60%!

 

ドル金利上昇により、新興国財政の赤字拡大やインフレ加速、政情不安や資金流出、景気失速懸念など多岐にわたる弊害が懸念されています。

2015年末から始まったFRBによる利上げにともない、各新興国はそれぞれその国の事情に合った通貨防衛策強化に動いています。

 

そのなかでも昨晩のトルコ中銀による625bpの利上げに、市場は驚きました。

 

トルコ中央銀行は13日、政策金利である1週間物レポレートTRINT=ECIを17.75%から24.00%に6.25%ポイント引き上げた。中銀は声明で「必要なら一段の金融引き締めを行う」と表明。通貨リラが上昇したほか、市場ではエルドアン大統領の金融政策への影響を巡る懸念が緩和した。(ロイター)

 

300~400bp引き上げ予想が多かったなか、625bpの引き上げとなりました。

トルコ中銀は政治的圧力を跳ねのけ、中銀の独立性をアピールしました。

トルコの株価は2%を越える上昇となり(ご祝儀相場と言えば失礼か)、とりあえず利上げによる弊害は見られませんでした。

しかし昨日記事でトルコGDPをご紹介しましたが、「上げ過ぎ?」感も否めません。

 

トルコ統計庁が発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年比5.2%増加した。エルドアン政権下で高成長を続けてきたが、大統領の金融政策への介入を巡る懸念などで通貨リラは急落しており、年後半は成長鈍化が予想されている。(ロイター)


 中立金利はその国の潜在成長率に連動すると言われますが、現状トルコは米国との摩擦もあり、潜在成長率が低下しています。

トルコの政策金利は今年4月までは8.00%でしたが、2カ月で3回利上げし17.75%まで引き上げています。

それでもリラ安は止まらず、インフレも進行。

今回もトルコ中銀は政治的な圧力に屈さず、2桁インフレと闘う姿勢を打ち出しました。

潜在成長率に逆行する政策金利が、トルコ国民にのしかかろうとしています。

私のイメージですが、トルコの方々はまじめで働き者。

そして親日国としても有名です。

イラン・イラク戦争中の1985年3月、空港に取り残された216名の日本人をタイムリミットギリギリで助け出してくれたのがトルコで、日本人全員をイラン国外に退避させてくれました。

このときトルコ大使が言った一言が、「(エルトゥールル号遭難事件のときの)恩を返す時が来た」。

 

どうかこの国難を乗り切っていただきたいです。

 

エルトゥールル号遭難事件とは

1890年(明治23年)9月16日夜半、オスマン帝国(その一部は現在のトルコ)の軍艦エルトゥールルが、現在の和歌山県東牟婁郡串本町沖にある、紀伊大島の樫野埼東方海上で遭難し500名以上の犠牲者を出した事件。

 

 


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谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、農産物、オプション)、証券一種外務員