平成16年分所得税・贈与税高額納税者の公示-期間限定になったが
新聞・テレビで有名人の長者番付論議が賑わうのがこの5月16日からの所得税高額納税者公示です。各税務署で平成16年分の所得税額1千万円超の高額納税者の閲覧が始まったからです。
一方、平成16年分贈与税の高額者の公示が始まっている税務署もあります。
■平成16年日本の納税者NO.1はサラリーマンさんの推定年俸105億円。■
所得税納税者NO.1は投資顧問会社の運用部長さん。平成16年に番付入り後、さらに成績アップ、初のサラリーマン長者トップを獲得しました。納税額37億円といえば、最高所得税率37%で割り戻せば、課税所得は99.8億円、給与所得控除5%を考慮して逆算すると推定年俸は105億円。住民税と合わせて50億円位を納税、日本に貢献してくれたのです。
所得税額1千万円超を超えるのは、課税所得ベースで3,376万円。サラリーマンなら年俸3,800万円以上クラスですが、給与所得者以外は税額が高くなくても、収入が低かったとは限りません。給与所得以外の場合は、節税ができてしまう場合もあるからです。
■稼ぎ頭が住むのは、港区・世田谷区・渋谷区 ■
上位10人のうち5人、上位100人のうち54人が東京在住。一極集中です。
なかでも、納税1千万円超の公示対象者が一番多いのは、港区(麻布署+芝署=2,882人)、世田谷区(玉川署+北沢署+世田谷署=2,812人)、渋谷区(渋谷署1,843人)の、城南お金持ち3区です。
■公示制度は、所得税・法人税・相続税・贈与税にも。同時期公示は所得税と贈与税■
公示対象者 公示内容 公示期間 公示対象申告
所得税 所得税額1千 住所・氏名・税額 翌年5月16日~末日 3月末日迄申告分
万円超の人
贈与税 課税価格4千 納税地・氏名 申告書提出日から4 すべての申告書
万円超の受贈 課税価格 ヶ月以内に1ヶ月間
者
相続税 遺産総額5億円超 同上 同上 同上
→相続人等全員
1人で2億円超
→その相続人等
法人税 課税所得4千 名称・納税地・代表者 申告書提出日から すべての申告書
万円超 ・所得金額等 3ヶ月以内に1ヶ月間
相続時精算課税制度の導入で高額贈与が激増。課税価格4千万円超という公示の基準は変わりませんから贈与税公示対象者は増加の一途です。税務署により開示時期が異なるためご注意を。
法人税も相続税も、税務調査で修正申告に応じて修正後の金額が基準以上になると公示されます。
高所得法人や高額相続の公示は誇りでしょうが、修正申告公示は避けたいものです。
修正申告に応じて不名誉極まりない事態にならないように、税理士さんにがんばっていただきましょう。
■個人情報保護法対応で、公示期間以外は開示せずとなったが-情報開示の不公平の是正を■
この4月から個人情報保護法が施行されたため、平成17年以降は、公示期間以外は開示請求できないことになりました。
しかしこの期間中は「開示請求書兼決定通知書」を提出し500円を払えば誰にでも、その場でリストコピーを渡してくれます。期間限定しても情報保護にはなりません。
一方、ご本人が自分の過去の申告書や届出書を確認したい、ご先代の所得税申告書を相続人さんが見たい、という場合、本人確認や全相続人の捺印書類を添えて請求しても、コピーをもらうことも、写真撮影も不可、許されるのは書き写すことだけです。
納税者本人の権利はないがしろにされています。
■高額納税者公示制度の撤廃を求めます。
税制調査会は、平成14年度改正答申で公示制度の問題に触れたものの、議論は片隅に追われました。国家によるプライバシー侵害法である公示制度を、せめて個人関連だけでも撤廃を求めます。
個人情報保護体制の確立で、事業整備を
消費者であるお客様の個人情報、賃貸事業ならテナント様の情報、企業の社員情報など、情報取得と保護について、取扱事業者としての措置が義務づけられたのです。
エクスプレスは、税理士法の守秘義務条項に則り従前から対策していましたが、改めて完璧を期して保護法対応しましたので、そのご報告を合わせて、いっしょにチェックしてみましょう。
■個人情報データ5000超の事業者は、個人情報保護法適用義務者に
個人情報保護法は、国・地方公共団体と個人情報取扱事業者に個人情報の保護を義務づけています。個人とは生存個人をいい、個人情報データベースは、住所録等、容易に検索でき体系的に構成したものです。
50音名刺入れも立派な情報データベースです。そして個人情報取扱事業者とは、個人情報データベースの特定の個人数の合計が過去6ヶ月以内の各日で5000超の事業者です。
うちは5000も顧客情報がないから、取扱事業者ではないね、という場合でも、万一情報流出したらどうでしょう。保護法違反にはならずとも、社会的、事業上のダメージは必至でしょう。
◎個人情報保護のための4つの安全措置・1-組織的安全管理措置
以下、ガイドラインでの措置です。
個人情報保護組織体制の整備と個人情報保護管理者設置
エクスプレスでは、管理者を選任し、全社管理を集中しました。社内研修により社員全員でガイドラインについて習得しました。自社の個人情報保護についてもぜひお尋ねください。
◎個人情報保護のための4つの安全措置・2-人的安全管理措置
雇用契約時・委託契約時の非開示契約の締結、
違反の罰則の制定、
従業者の教育訓練実施確認
エクスプレスの仕事はお客様の秘密を守りあらゆる場面で防衛することです。当初より税理士法に基づき、入社時と退社時に社員の永久的な守秘誓約書・身元保証人契約を取得しています。社内研修での徹底は、上記の通りです。
◎個人情報保護のための4つの安全措置・3-物的安全管理措置
個人データを取り扱う業務上の事務室や管理室、工場への入退館管理
社員離席時の個人データ書類・媒体・サブノートパソコンの机上等への放置の禁止
端末パソコンのパスワード施錠、個人データ媒体(CD・USBメモリ等)の施錠保管
住所氏名メールアドレス等データとそれ以外の個人データの分離保管
機器装置の安全上の脅威からの物理的保護、サブノートPCの持ち歩きの禁止
エクスプレスは従来から構造上外部者はお客様といえど執務室へ入室不可、ご相談室防音隔離、監視カメラとドア施錠を完備、ビルはカード総合管理、夜20時~朝8:30は入館不可でした。
今回エクスプレス社員は社員証携帯、通用口はインタフォンでの入室を義務づけました。
◎個人情報保護のための4つの安全措置・4-技術的安全管理措置
個人データアクセスする担当者の認証と他者のアクセス制限
ウィルス対策ソフトウェアの導入
個人データ送信時の暗号化
エクスプレスでは、従来よりソフォス社監視下のウィルス駆除契約を取得、サーバーゲート段階で隔離駆除しています。今回、データについて暗号化とセキュアシステムを取り入れることとしました。
■エクスプレスからのお願い-「機密保持契約書」・「個人情報保護取扱確認書」について
エクスプレスでは、さらに情報保護の確度を高めるために、顧問先様・ご依頼者様には機密保持契約書の締結、取扱確認書のお渡しをしています。よろしくご理解のほど、お願いします。
個人寄付金控除上限は、平成17年から増額-子会社等支援の支援損は、損金算入も
■個人の寄付金控除は、1万円又は10万円足切り、平成17年より年所得の3割が上限
個人が寄付をした場合、「特定寄付金-1万円(住民税は10万円)」(所得の30%を限度、平成16年分までは所得の25%)を所得から差し引くことができます。所得1,800万円の方が20万円寄付すれば、8万3千円の所得税住民税が軽減されます。
特定寄付金は、国や地方公共団体への寄付金、②指定寄付金、③学校法人、社会福祉法人など公益法人や日赤など特定公益増進法人への寄付金、④認定NPO法人への寄付金、⑤特定公益信託への寄付、⑥一定の政治献金などです。被災義捐金は、日赤や新聞社を通じての自治体に対する寄付です。
■法人の公共への寄付金は、全額損金算入。特定公益増進法人への寄付は限度計算
法人税では、上記の①・②への寄付は、会社が損金経理した場合は、全額損金とできます。個人の寄付は足切りあり、頭打ちありですが、法人にはその制限がありません。
■会社からの対価性のない支出=贈与は、寄付金課税
得意先・仕入先など事業関係者への反対給付を期待する支出は交際費課税対象です。役員に対する経済的利益や金銭の贈与は損金不算入、給与課税の往復ビンタ。寄付金と区別されます。
寄付金は、金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与。事業に関係ない者に対する反対給付のない支出をいいますから、公益事業以外に対する外部への対価性のない支出はすべて寄付金と扱われ、原則としては損金不算入、資金はなくてもあるものとして課税されます。
ただし、一定額までは損金算入できるため、自社の限度額は把握しておきたいものです。
一般の寄付金・特定公益増進法人等への寄付金の損金不算入額=支出寄付金の額-(※損金算入限度額+一般の寄付金の損金算入限度額と特定公益増進法人等への寄付金の少ない金額)
※損金算入限度額=(期末資本金等の金額×月数/12×2.5/1000+所得金額×2.5/100)×1/2
■子会社等に対する債権支援は、「支援損」として損金算入も-国税も事前相談で対応
事業関係者のうち、子会社等に対して金銭の贈与や債務の免除といった経済的利益の供与について、次のような特別な事情がある場合は寄付金とはせず、損金として処理することができます。
1.子会社等を整理する場合の損失負担等
2.子会社等を再建する場合の無利息貸付等
再建支援等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかな場合や、子会社等の倒産を回避するためにやむを得ず行うもので合理的な再建計画に基づく場合など、再建支援等に相当な理由があると認められる場合があたります。該当する場合は事前相談しましょう。
判定基準は、
①損失負担等を受ける者は、子会社等=資本関係者や、取引関係、人的関係、資金関係等で事業関連性のある者に該当、
②子会社等は経営危機に陥っている(倒産の危機にある)。
③支援者にとって損失負担等を行うことは相当、
④損失負担等の額(支援額)は合理的である(過剰支援でない)、
⑤整理・再建管理がなされている(その後の子会社等の立直り状況に応じ支援額を見直す)、
⑥支援者の範囲は相当(特定の債権者等が意図的に加わっていないなど恣意性がない)、
⑦特定債権者だけが不当に負担を重くし又は免れていない)、など。
ポイントは決算時の処理です。
国税局も事前相談に対応しています。
相続税がかかったら-相続から3年10ヶ月以内なら、資産の無税売却可能
エクスプレスも自社株贈与や大型贈与、譲渡の買換え・収用・交換特例、組織再編、不動産所得申告・・・とおおわらわ。
特に多いのが「相続税の取得費加算の特例」ですが、エクスプレスが計算すると「まだ『使い残し』がありますね」。
期限内に満額使うのがお得です。
■相続税の取得費加算特例相続税を払って相続資産を売却したら、相続資産の無税売却に挑戦
財産相続して相続税を払い、それを売却するときは譲渡税を払い、というのが税制。
そこで、相続税の申告期限から3年後、相続から3年10ヶ月以内に、相続財産を売却した場合は、その財産に係った相続税を売却の原価としてみていいよ、というのが相続税の取得費加算特例です。
取得費に加算する相続税の額は次の算式で計算します。計算は相続人ごと別々です。
①土地以外の相続財産を売却 相続税×(その財産の課税価格÷相続財産の課税価格)
相続財産10億円、相続税3億円、売却自社株(株式会社)1億円、原価500万円なら、
加算取得費3億円×1/10=3千万円 {1億円-(500万円+3千万円)×20%=1,300万円
取得費加算がない場合に比べ600万円税額が下がります。
(注:有限会社出資では使えません。)
②土地等を売却 相続税×(土地全部の課税価格÷相続土地の課税価格)
土地は大優遇です。売却土地は一部でも土地全部の相続税を引くことができます。
相続財産10億円、相続財産全部土地、相続税3億円、売却土地1億円なら、
譲渡所得 1億円-(500万円+加算取得費3億円×10/10+仲介手数料)=0
譲渡税はゼロです。
■取得費加算の限界売却額を計算してみよう
上のケースで、相続財産は全部が先祖伝来の土地10億円、相続税3億円、仲介手数料まで加味して最大取得費加算適用売却額をXとすると、
{X-(X×5%+3億円×10/10+X×3%)}×20%=0
これを逆算すると、X=3.26億円。これが無税外部売却ラインです。
取得財産別・相続人別に算定します。
■相続自社株譲渡は、株式会社に限って取得費加算の対象に
平成16年改正で相続自社株の発行会社への売却は、みなし配当課税から除外。
譲渡とみなして20%税率、取得費加算も可能です。
しかし、対象になるのは株式会社の株式のみ。有限会社の出資口の売却はみなし配当に該当し最高50%税率、取得費加算の対象にもなりません。
■取得費加算は、農地の相続税の納税猶予制度適用前税額で計算
効果絶大なのは、農地の売却。
農地相続で農地の納税猶予制度を受け、一部土地を売却。
この売却の取得費加算の相続税額は、納税猶予調整前の税額で計算します。
相続税負担が軽いのに、払ったこととして猶予前の相続税を売却の取得費にできますから、まさに「いいとこどり」です。
■遺産分割にも気をつけて 売却予定資産は、配偶者にはほんの少し、残りを後継者に
売却予定地を配偶者は、配偶者の税額軽減で税金負担しないケースが多いでしょう。
売却しても取得費加算が使えません。遺産分割では、売却資産はは配偶者以外の人が相続しましょう。
小規模宅地の評価減も使うなら、配偶者はほんの少し、残りは居住の子が相続するなんてのもアリです。
■3年10ヶ月以内に売却予定がない場合-同族法人に移転して、資産の簿価上げ、二次相続対策
今から3年10ヶ月以前、つまり平成13年5月2日に相続があった方は、今日で取得費加算の期限切れを迎えます。それ以降の方は、徐々に期限が迫ってきます。
当面外部に売る予定はないという場合は、いったん相続財産を同族法人などに売却。
登記費用などはかかりますが、現在時価で無税で売却しておけば、取得原価を引き上げて、次に売却するときの課税は、これからの値上がり分だけです。
収益資産なら同族法人への収益移転になります。
二次相続対策にもなります。
血で贖った特例を有意義に使い切りたいものです。
2005/02/16 相続贈与財産の名義変更費用も譲渡原価に-平成11年分譲渡まで還付OK!
ところが平成17年2月1日、最高裁判決で、父から贈与を受けたゴルフ会員権の名義書換費用を、その後の売却の際に取得原価として所得から差し引けるかが争われ、納税者が勝訴。
国税庁は、一転、名義変更等の付随費用を取得原価(取得費)に算入すべきという方針転換をしました。
譲渡所得=譲渡代金-(取得費※+譲渡費用) ※取得費=取得原価+取得費用
この取得費に、相続や贈与の名義変更料が該当する、という判断になったのです。
折りしも平成16年譲渡の確定申告が始まります。国税庁は急遽、取扱の変更文書を出しました。
http://www.nta.go.jp/category/shinkoku/data/h17/3007/01.pdf
■取得費にできる付随費用とは、取得のために直接要する費用
相続・贈与で取得した資産の取得費にできる費用は、次のものがあります。
① 会員権等の名義書換料
② 不動産の登録免許税・不動産登記費用・不動産取得税
(売却資産以外の資産の費用は按分)
③ 株式の名義書換手数料
④ 特許権の登録費用
⑤ その他、売却資産を取得したときに直接かかった費用
※相続での代償分割の際の代償金は、認められません。
■概算取得費を使う場合は、取得時付随費用は取得費にできない-どちらが有利か計算を
相続で取得した財産を売却する場合、取得原価が不明だったり僅少なときは、売却代金の5%を概算取得費とする特例があります。
この特例を使う場合は、取得費用もこの5%に含んでいるとみることから、上記の名義変更費用は差し引けません。
そこで次の計算をして有利な方を採用しましょう。
↓不動産の場合
(売却代金+固定資産税相当額精算金)×5%< 取得原価+取得時付随費用 ∴算入
■過去の譲渡で、付随費用算入していない場合は、還付請求!
「おいおい、そんなこと知らないから、過去の譲渡では、付随費用を入れていないよ、入れていれば、もっと譲渡税が下がったのに!」というかたは、今から還付請求です。
そのとき概算取得費を使っていればアウトですが、原則計算していればOKです。
法律の原則からは、今から更正の請求で還付を受けることができるのは、申告期限から1年間ですから、平成15年分譲渡までです。
それ以前の譲渡は税務上の5年の時効にかかるまでは、職権更正を請願(嘆願)する方法によります。
最大さかのぼって、平成11年譲渡分についてまで平成17年3月15日までに請願すれば、国税さんは最優先で対応するのだそうです。
例えば1億円の固定資産税評価の土地相続には20万円登録免許税がかかりました。当時の譲渡税率で5万円の還付です。
過去譲渡の申告書を見直して、がんばってみましょう。
2005/02/01 贈与税申告開始-自社株の類似株価は、平成16年で急上昇
2月1日、平成16年中に行った贈与の贈与税申告の受付がスタートしました。
平成15年の相続時精算贈与課税制度での贈与額合計は、1兆2千億円でした。
中でも自社株の贈与は一人当たり3,882万円。待ってましたとばかりに、日本の資産が70~80代の親世代から50~60代の子世代へ、子世代から20~30代の孫世代へと、移転が始まっています。
■平成16年分の自社株評価基準発表-平成16年類似価額は上昇率激増、自社株価も激増
この1月に発表された平成16年中の12月までの類似業種比準価額の株価。実は、平成 15年中の株価に比べ、軒並み数十%ずつ上昇しています。不動産賃貸業は4割増、取 引業は7割増です。
上場株価の回復をストレートに反映しています。
終値年平均額 分類 14年 上昇率 15年 上昇率 16年
製鉄製鋼業 42 121 104% 126 162% 206
卸売業 79 243 91% 221 126% 279
小売業 87 386 100% 386 129% 499
不動産業 98 418 100% 416 153% 638
不動産賃貸業 99 583 103% 603 139% 836
不動産取引業 100 240 107% 256 171% 439
■非上場自社株価は、上場同業類似業種の株価に連動-株価が上がれば税金も上がる
非上場会社の自社株式を贈与や相続する場合の財産評価は、会社の規模や業種によって、①と②の要素によって算定します。
①会社の財産債務の個別評価にもとづいて純資産価値を算定する純資産価額方式、
②利益や配当・純資産実績を上場の同業他社比較で計算する類似業種比準価額方式、です。
このうち②の類似業種比準価額の計算は、次のように計算します。
上場類似業種の株価
×{(配当比準値+利益比利準値×3+純資産比準値)÷5}×斟酌率
斟酌率=小会社50%・中会社60%・大会社70%
ここで、上場類似業種の株価とは、
①贈与日の月の平均株価、
②贈与日の前月の平均株価、
③贈与日の前々月の平均株価、
④贈与年の前年平均株価
のうち、低い価格で決まります。
平成16年中の贈与なら、少なくとも平成15年平均株価を使うことができるのです。
■平成16年末までの贈与は、平成15年中の低い株価が使える
平成16年忙しい年末に父上から自社株の贈与を受けたA様。
会社は3月決算ですから、直前期末は平成15年3月。そのため、会社の実績回復前の平成15年3月期と前月、前々月、平成15年株価をベースに自社株計算できました。
さらに、低かった平成15年平均株価を採用できます。
もし平成17年に贈与を受けたなら?
平成16年3月期の申告数字を元に、激増した平成16年平均株価を適用。会社実績が同業者水準なら、株価は激増、贈与税も激増です。
資産を後継者に贈与する、移転するなら、上がる前、低いうち、が鉄則です。
平成16年中贈与を確定しようと、A様は意気揚々と贈与税申告に捺印なさいました。
2005/01/18 定期借地権一時金の前払地代通達、発遣!
ご紹介済みの定期借地権の前払地代方式通達が公表され、契約書式や要件が明らかになりました。平成16年12月16日付の国土交通省の照会に対して、国税庁が平成17年1月7日付で、一般論という限定付きながら、照会通りで差し支えない旨を回答したものです。
■一時金の前払地代方式の税務-借主は前払費用を分割経費、貸主は前受収益を分割収益
照会文書では、前払地代方式の契約書を掲げ、定期借地権設定契約で授受される一時金のうち、全期間又は最初の一定期間、前払い地代と明示した部分の税務について次の3点を確認しました。
1.借地権者(法人・個人)は、一時金を前払費用に計上し、期間対応分を損金・経費に。
2.地主(法人・個人)は、前受収益として資産計上し、期間対応分を益金・収入計上。
3.一時金は消費税非課税の土地貸付対価の前受として、地主は期間対応分を課税売上割合に加味。
■前払賃料について定めた定期借地権設定契約書式のポイント■
1.一時金は前払賃料であり、契約期間にわたって賃料の一部に均等に充当することを明示する。
2.契約満了時に一時金を根拠とする金銭の授受を行わず、保証金と区別する。
3.中途解約の場合は、前払賃料の未経過分は借地権者に日割計算で返還し、権 利金と区別する。
(中途解約時に未経過分を返還しない契約は、契約時一時金は前払ではなく権利金とされる。)
4.中途解約時に、違約金の定めは可能だが、未経過分賃料で充当できず。違約金条項は別途に。
5.前払賃料方式と権利金方式・保証金方式は、併用して契約可能。
6.一時金による前払賃料と、賃料の残額月払い契約も可能。
契約賃料=前払賃料÷契約月数+賃料の残額月払い ※前払賃料の月額換算額
月額賃料は固定資産税や物価スライドなどにより変更は可能。
地主の負担軽減に。
ただし、前払賃料の月額換算額>契約賃料
7.当初期間のみ前払賃料、後続期間は残額月払い契約も、併用期間と額の明示などにより可能。
8.借地権者が中途で定期借地権を譲渡する場合の未経過分地代債権を新借地権者への承継
(1)新借地権者は前払費用として資産計上し、金銭債権譲渡として消費税処理。
(2)未経過分返還債権ごと借地権譲渡対価とする場合も前払部分を除いて取得
原価・譲渡対価に。
9.地主が中途で底地を譲渡する場合の前受地代の返還債務の承継。
10.前払賃料の額が他の方式の賃料水準を逸脱して、租税回避などにならないこと。
11.契約書を契約期間にわたって保管、取引実態は契約に沿うこと。
■定期借地権税務の先には-貸し主さんは嬉しい、借り主さんはもっと嬉しい
照会回答は期限を区切っていませんから、仮に過去契約でも照会通りの契約ならば今から適用されるでしょう。また相続税の取扱は触れていませんが、理論上の考え方ができそうです。
1.地主さんの前受地代は相続時には、上記9によれば理論上は全額債務控除となるでしょうか。
2.一般定期借地権の底地は6割評価(住宅地域)、一時金で土地を資金化して分割低税率、債務控除も、となれば、地主さんの相続税は良いことずくめ。国税さんの見解がいずれだされるでしょう。
3.前払地代は土地の対価ではないため、借地権者が定期借地権で自宅を建てたり買ったりしても、住宅ローン控除や住宅取得資金贈与特例は使えません。
4.借主は税引後の6割を分割払で土地利用。土地の償却ができれば企業収益は明解、減損リスクは吸収されます。値上がり期待でない限り、事業土地利用は定借一色になっても不思議はありません。