2005/01/18 定期借地権一時金の前払地代通達、発遣!
ご紹介済みの定期借地権の前払地代方式通達が公表され、契約書式や要件が明らかになりました。平成16年12月16日付の国土交通省の照会に対して、国税庁が平成17年1月7日付で、一般論という限定付きながら、照会通りで差し支えない旨を回答したものです。
■一時金の前払地代方式の税務-借主は前払費用を分割経費、貸主は前受収益を分割収益
照会文書では、前払地代方式の契約書を掲げ、定期借地権設定契約で授受される一時金のうち、全期間又は最初の一定期間、前払い地代と明示した部分の税務について次の3点を確認しました。
1.借地権者(法人・個人)は、一時金を前払費用に計上し、期間対応分を損金・経費に。
2.地主(法人・個人)は、前受収益として資産計上し、期間対応分を益金・収入計上。
3.一時金は消費税非課税の土地貸付対価の前受として、地主は期間対応分を課税売上割合に加味。
■前払賃料について定めた定期借地権設定契約書式のポイント■
1.一時金は前払賃料であり、契約期間にわたって賃料の一部に均等に充当することを明示する。
2.契約満了時に一時金を根拠とする金銭の授受を行わず、保証金と区別する。
3.中途解約の場合は、前払賃料の未経過分は借地権者に日割計算で返還し、権 利金と区別する。
(中途解約時に未経過分を返還しない契約は、契約時一時金は前払ではなく権利金とされる。)
4.中途解約時に、違約金の定めは可能だが、未経過分賃料で充当できず。違約金条項は別途に。
5.前払賃料方式と権利金方式・保証金方式は、併用して契約可能。
6.一時金による前払賃料と、賃料の残額月払い契約も可能。
契約賃料=前払賃料÷契約月数+賃料の残額月払い ※前払賃料の月額換算額
月額賃料は固定資産税や物価スライドなどにより変更は可能。
地主の負担軽減に。
ただし、前払賃料の月額換算額>契約賃料
7.当初期間のみ前払賃料、後続期間は残額月払い契約も、併用期間と額の明示などにより可能。
8.借地権者が中途で定期借地権を譲渡する場合の未経過分地代債権を新借地権者への承継
(1)新借地権者は前払費用として資産計上し、金銭債権譲渡として消費税処理。
(2)未経過分返還債権ごと借地権譲渡対価とする場合も前払部分を除いて取得
原価・譲渡対価に。
9.地主が中途で底地を譲渡する場合の前受地代の返還債務の承継。
10.前払賃料の額が他の方式の賃料水準を逸脱して、租税回避などにならないこと。
11.契約書を契約期間にわたって保管、取引実態は契約に沿うこと。
■定期借地権税務の先には-貸し主さんは嬉しい、借り主さんはもっと嬉しい
照会回答は期限を区切っていませんから、仮に過去契約でも照会通りの契約ならば今から適用されるでしょう。また相続税の取扱は触れていませんが、理論上の考え方ができそうです。
1.地主さんの前受地代は相続時には、上記9によれば理論上は全額債務控除となるでしょうか。
2.一般定期借地権の底地は6割評価(住宅地域)、一時金で土地を資金化して分割低税率、債務控除も、となれば、地主さんの相続税は良いことずくめ。国税さんの見解がいずれだされるでしょう。
3.前払地代は土地の対価ではないため、借地権者が定期借地権で自宅を建てたり買ったりしても、住宅ローン控除や住宅取得資金贈与特例は使えません。
4.借主は税引後の6割を分割払で土地利用。土地の償却ができれば企業収益は明解、減損リスクは吸収されます。値上がり期待でない限り、事業土地利用は定借一色になっても不思議はありません。