17世紀フランスの思想家ブレーズ・パスカル

 

裕福な官職だった父親から幼少期より英才教育を受け

 

39歳で早逝するまでにその才能は多方面に発揮された

 

毎日耳にする「ヘクトパスカル」の「パスカル」とは

 

彼の名を冠した圧力(応力)の単位だし

 

わずかな握力だけでオートバイを止められる油圧ブレーキシステムは

 

彼のパスカルの定理によって説明できる技術だったりする

 

著書「パンセ」の有名な「人は、考える葦である」の記述からは

 

パスカルさんのヒューマンな人柄や態度が想像されるが

 

その実は、人のどうしようもない性を嘆く冷笑化の面もあったようだ

 

曰く「人間の不幸はすべてただひとつのこと、すなわち、部屋の中に静かにとどまっていられないことに由来する」云々

 

四六時中身を粉にして働かなくても日々の糧を得られるようになると

 

やがて時間を持て余すようになり

 

じっとしておれば良いのにその暇に耐えられず

 

戦地へまで自ら乗り込み身を危険に晒す人がいると云うのだ

 

部屋に一人でいることが退屈で堪らなくなり

 

運命的にわざわざ不幸を招きに出かけて行く

 

そしてタチが悪いことにそこには幸福があると信じている

 

 

釣りが趣味だという人はサカナが欲しい訳ではない

 

と云えばなんとなくわかるだろう

 

釣り船に乗る前の釣り人へ、釣りから帰ってきた釣り人が

 

「50cm越えの真鯛がたくさん釣れたから欲しいだけあげますよ」

 

と声をかけたところで誰も喜ばないだろう

 

パスカルさんの言葉を鑑みれば

 

釣りが趣味という人の目的は「サカナ」ではないのだ

 

枯れ葉のように翻弄され続ける小舟の上で

 

日がな一日、夏なら灼熱の太陽に焙られ、冬なら雪交じりの寒風に晒され

 

ただただ一心に竿を投げ指先に伝わる引きの感触を待つ

 

これくらいの心理的肉体的負荷がなければ

 

たかが釣りごときに熱中できない

 

サカナを手に入れたい食べたいというなら魚屋に行けば事足りる世の中

 

持て余す暇に耐えきれずサカナ釣りという試練に熱中しているに過ぎない

 

そうしてようやく釣り上げたそこそこの真鯛の釣果を

 

それこそ「尾鰭」を付けて自慢することで幸福を手に出来たと信じている

 

こんな「みじめ」(いやいやこれはパスカルさん自身の言葉だ)な運命を持つ

 

暇人たちのなんと多いことか

 

結果的に暇を持て余す人は不幸を求めるような行動しかできない

 

パスカルさんはそう云うのだ

 

 

オートバイに乗ることも釣りと同じで一般的には「趣味」と云われる

 

なぜオートバイに乗るのかという問いは

 

なぜ「趣味」に興じるのかという問いに等しい

 

暇を潰すためだけに苦痛にも近い負荷に身を投じ

 

その実本当に求めているものが何なのか本人にも良く分からない

 

にもかかわらず熱中してお金も時間も惜しみなく注ぎ込んでしまう

 

そんな状況を外から見れば確かに「みじめ」な人たちと映るかもしれない

 

パスカルさんの云うとおりこれは単なる人の悲しい一面なのか

 

実はこんな状況から逃れる唯一の方法をパスカルさんは明快に示している

 

「神への信仰」

 

まあ確かにそうなのかもしれない、という思いと

 

それを云っちゃあおしまいよ、という思い半々といったところか

 

 

私事を云わせてもらえば

 

今までに人生が暇で仕方がないと感じたことはなかったと思う

 

暇潰しに何かしたいと考えたことだってないし

 

もちろんオートバイに乗っていて暇がつぶれていいな、なんて思ったこともない

 

毎日やりたいことが一杯あって時間が足りないくらいだ

 

いつも書くことだけど

 

こんなにも長い年月数えきれないくらいオートバイに乗ってきたが

 

今でも乗るたびにいつも楽しいし

 

その楽しさの大きさにも変化はないと断言できる

 

パスカルさんにはそんな楽しみの経験がなかったのかな

 

そもそも17世紀にはオートバイはまだ発明されていなかったね

 

でもそのオートバイだって最初から「趣味」の乗り物だった訳じゃない

 

知ってのとおり移動や運搬の道具として生まれ

 

その後より高い次元で移動や運搬が可能なクルマにその役目はシフトしたが

 

発展途上国では未だにオートバイは本来の目的で使われている

 

一方先進国では大型化・大出力化することで

 

オートバイは趣味の乗り物へと変化していった

 

哲学的な分析は知らないけど

 

ボクがオートバイに乗りたいと思ったのは

 

単に「かっこいいな」と感じたからだ

 

それは主観的な意味より客観的な意味でそう思った

 

オートバイは完全にカッコよかった

 

そして実際に原付の免許を取って

 

親戚のおばさんに借りたロードパルで走り出した瞬間

 

オートバイはボクの運命になった

 

 

「出川哲郎の充電させてもらえませんか」にゲストで来るタレントが

 

あんなにもショボイ電動バイクなのに(失敬YAMAHAさん)

 

走り出した瞬間ほぼ100%の確率で

 

皆一様に「気持ちいい~」と口にするのを見ていると

 

やっぱり2輪車にはこの「気持ち良さ」があるのだと確信する

 

けれどそんな気持ち良さを忘れたのかな

 

と思うような状況がオートバイの周囲に蔓延していることが気になる

 

どこで喰っても大差ないラーメンが食いたいと山奥へ出かけたり

 

さほどのチャレンジでもない夕日ツーリングラリーのゴールを目指したり

 

大して興味もない神社へ刻印求めて集まったりするためにオートバイが使われている

 

これではオートバイに乗ることがただの手段と化してしまっている

 

次から次へと与えられる記号を消費し続けているだけで

 

これでは「楽しみ」とは云えず

 

単に消費社会に巣くう趣味産業の歯車に成り下がっているにすぎない

 

ただし別に悪いことではないよ、とあえて云っておく

 

自分のカネなのだ

 

いくらでも遠慮せずに好きに使えば良い

 

スマホホルダーやUSBソケットでは飽き足らず

 

スマートモニターまで付けてラーメンを喰いに出かける

 

万が一に備えてドライブレコーダーで危害を加えてくる輩に備え

 

Uターンが苦手、と臆面もなく云いふらしては

 

出っ張ったところにガードやスライダーを付けまくる

 

ああそうそうハンドルにつけるタッチペンなんてモノまであるな

 

本当に何でもかんでも好きにやって欲しい

 

消費に振り回されて求めた「楽しみ」なんて本当に暇潰しでしかない

 

「ここへ行ってあれを喰え」

 

「これを付けて快適になれ」

 

「君の求める楽しいオートバイライフはここにあるのだ」

 

これが本当にオートバイに乗りたいという思いの正体なのか

 

次から次へと稼いだカネを注ぎ込んで自己顕示欲は満たされても

 

求める楽しさ「満足」はいつまでたっても手に入らない

 

そんなモノより

 

心なのか脳ミソなのか身体なのかは知らんけど

 

この出何処すら判然としない魂の叫び

 

「気持ちいい~」の方が断然信じられるしこっちでありたい

 

 

けれどパスカルさんの言葉に立ち返ると

 

やっぱり「楽しい」だけではないのかもしれないとも感じる

 

そもそも感動することが「目的」ではない

 

オートバイに乗ると「自然に何か満足にも似た感情になってしまう」というだけで

 

「楽しくなりたい」「満足したい」からオートバイに乗っている訳ではない

 

オートバイに乗ってあの山奥の蕎麦を喰えば満足できるはず、よりはマシか

 

確かに趣味の目的が「楽しい」だとすれば

 

その行為のために日常的に人が死んでいっている事実は重い

 

1年間で登山では300人、オートバイ(原付も含む)では508人もの人が死ぬ

 

これではパスカルさんが云う

 

不幸な運命をも感じさせる気晴らしと云った方がピッタリだ

 

戦場へ赴き身を危険に晒すような狂気とも云える熱狂

 

馬を走らせて財産を賭けてみたり

 

朝早くから小舟で海原に漕ぎ出し延々とサカナを待ったり

 

そういうことだ

 

圧倒されるような山塊を前にして心がざわめくことや

 

頂上からの非日常風景の感動が目的ではなく

 

重い荷物を担いで自らの足で険しい登山道を辿り

 

その上天候の急変や自身の不注意で岩肌から滑落して

 

命を落としかねない状況に身をさらしてまで山に登ること

 

その身体的精神的負荷こそが人を熱中させる

 

その熱中のために人は命をも引き換えにするというのか

 

 

自分はどうだ

 

なーんの用事もないのに昨日もオートバイに乗って山へ行っていた

 

おまけに激しい通り雨に何度も打たれびしょ濡れになった

 

オートバイニ乗リタイ、デスカ?

 

ソレハ、ドウシテデスカ?

 

日常生活に満たされたボクは掴みどころのない退屈に焦燥し

 

結果的に不幸を招くとしてもオートバイに乗ることに熱中し

 

そこにこそ「満足」があると信じているのか

 

確かに思い当たるフシがある

 

ボクは知っているのだ

 

オートバイに乗ることを本心では「こわい」と感じていることを

 

オートバイに乗ることは死に直結する行為だ

 

いつ事故を起こして命を落とすのか分からず

 

しかもそれはいつも一瞬の出来事だ

 

明日遠出しようと考えているボクの心はなぜだかソワソワしているし

 

家を出る時誰にともなく「気を付けていってくるよ」と告げたりしている

 

ボクはオートバイに乗る時に感じるこの危うさを求めていると云うのか

 

衣食住に満たされた人類は無意識下になんらかの不安を抱えて生きている

 

それは一向に答えの得られない「生きる糧、目的、意味」

 

云いかえれば生存が満たされてしまった人間は

 

本当は何をすれば正解なのかを自問しはじめ結果泥沼に落ちる

 

それは実に空しくて愚かな考えだ

 

目的のない生を抱えて右往左往するばかりで

 

その実、毎日が途方もなく空虚で退屈だと感じている

 

そしてこの途方もない退屈は人間を不幸へと駆り立てる

 

なぜなら真の満足はその先にしかないはずだと考えてしまうから

 

もちろんそんなところに幸福などあるはずはない

 

ただしオートバイへの熱中は享受できるだろう

 

どんなにオートバイを乗り換えても

 

どんなにパーツをとっかえひっかえしても

 

ぜんぜん満足できず幸福にはたどり着けないが

 

自然からの容赦ない洗礼を受けつつ

 

死を隣に感じるこの乗り物で走ることで退屈を紛らわせる

 

人間とはなんと「みじめ」な存在なのだろう

 

 

それでも今日もボクはオートバイに乗る

 

パスカルさんがなんと云おうと

 

とにかく楽しいもんねー

 

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今年の北海道ツーリングにはクロ介で行った

 

いまさら説明不要かもしれないが

 

「クロ介」と云うのはボクの所有するオートバイで

 

真っ黒なネコやカラスのことではない

 

ドイツのBMWが1990年に製造したオートバイで

 

フレームには「made in W.GERMANY」と

 

歴史を感じさせる刻印がある

 

4年前にRS(BMW R100RS)への断ち難い思いから

 

たまたま出会った「R100トラッド」を購入したわけだが

 

 

その時もうひとつの思いとして

 

もう一度ロングウェイツーリングに出たいな、というものがあった

 

そしてそれはできれば北海道がいいなと

 

けれど購入してから実際に北海道へ連れていくまでに4年もかかってしまった

 

それは乗り手であるボク自身の問題と

 

クロ介のある事情によるものだったのだが

 

ではその全てがクリアできたのかと云えばそうでもない

 

結局最後は「エイ、ヤー!」的な勢いが必要なのだ

 

 

これも何度も書いてきたことだが

 

このクロ介はオートバイ屋の店先で20年以上店番させられていた機体で

 

走行距離こそ12000kmと少なかったのだけれど

 

動かしていなかったことによる劣化の状況が不明で

 

出てきたらその都度そこを潰していくという方法でしか

 

現実的に対処が出来ないモノだった

 

実際にいわゆる「定番」箇所からの劣化によるオイル漏れが順番に出た

 

前後のサスペンションのオイルシールやシフトレバーのシャフト

 

オイルプレッシャースイッチ、ニュートラルスイッチ

 

プッシュロッドチューブのシール等々

 

まあ実際これくらいで済んでいてメカ的な故障はいまのところ出てない

 

2、3年はかかるかなと当初考えていたので実際そのとおりだった

 

かと云っていつ走行が難しくなるようなトラブルが

 

起こってもおかしくないことにいまも変わりはなく

 

現に去年の年末ごろに電気系統のトラブルが出て焦った

 

オルタネーターのローターコイルが断線したことと

 

イグニッションコントローラーがパンクしたこと

 

どちらも出先が遠ければレッカーになるような故障だ

 

電気系は故障が突然出ることが多く走行不能になりやすい

 

正直このまま北海道へ連れて行って大丈夫なモノなのか

 

そんな不安はどこまで行っても払拭できないだろう

 

 

一方ボク自身の問題だ

 

それは加齢

 

そこまで老いているわけではないが

 

50代に入るころ明らかに反射神経が衰えていると自覚した

 

それは無意識に車間距離が伸びていることで気付いた

 

その時、このままオートバイに乗り続けることへの不安を感じたのだ

 

それで一度大型オートバイから離れることにした

 

もちろん鈍くなったと云っても長年鍛えてきた感覚は

 

オートバイ乗りでない人たちよりはレベルが上だという自負はある

 

けれど

 

この問題に対する解決方法は実に簡単だ

 

走行スピードを1割か2割落とせばよいのだ

 

そもそも法規にそったスピードで走るなら

 

どんなに老いていても正常なら(ボケていなければ)

 

反射神経の問題で事故を起こすことなどありえないだろう

 

だからクロ介に乗り始めた時から意識を変える努力をした

 

絶対に熱くならない

 

イライラしたり先へ先へと焦らない

 

法規を遵守する(当たり前か)

 

こんなくらいかな

 

スピードレンジを落とせたことで逆に運転が楽しくなったようにも感じている

 

 

けれど結果的に去年北海道へSR400で行ったのは

 

いちばんの理由はフェリーの航送運賃の問題だ

 

太平洋フェリーの運賃は

 

400ccと750ccそしてそれ以上という3段階の設定で

 

SR400とR100の運賃には9000円もの差がある

 

これはホテル1泊分に相当する金額

 

実際には往復なのでなかなか判断に迷う要素だった

 

 

しかし実際にSR400での北海道ツーリングを終えてみると

 

逆にクロ介で北海道を走りたいという思いがますます強くなったのだ

 

長い時間、長い距離を走ってもまったく問題なかった

 

雨や寒さへも対応できるメンタルも変わっていなかった

 

だから

 

予期せぬ故障を心配し過ぎるのはもう止めようと

 

どこまで整備を繰り返しても

 

壊れない時は壊れないし

 

壊れる時は壊れるのだ

 

(この云い回し実は千鳥の大悟のボケなんだけど、妙に納得してしまって以来気に入っている、でもホントなんでもそうだよ、分かる時は分かるし分からない時は分からない、起こる時は起こるし起こらない時は起こらない、全部それだ)

 

だから今年はクロ介で行くことにまったく迷いがなかった

 

そしてそれは間違っていなかったし、思いが叶ったという充実感に満たされた

 

クロ介で走る北海道の道は本当に最高だった

 

その理由はそりゃあもうたくさん有るけど

 

エンジンのトルク感とかストロークの長いサスペンションとか

 

フラットツインの低重心とかね

 

BMW空冷OHVボクサーのメリットを褒めることはいくらでもできる

 

でも本当の理由はクロ介が持つ「官能性能」だとしか云いようがない

 

いちばん嫌いな抽象的な表現で申し訳ないが

 

それは単に数値で表されるスペックではなく

 

作り手の哲学と確信をもって開発された性能とも云えるかもしれない

 

企業の利益という手段とは完全に別次元で

 

彼らがこの機械に込める存在理由(レゾンデトール)

 

そしてそれが「刺さる」人との間に生まれる価値を「官能性能」と呼ぶ

 

だからそれはむしろ乗り手側に委ねられる性能かもしれない

 

難しく書いたけど実際はもっとシンプルだ

 

走らせているとうっとりする、とか

 

気付けば唇の端に笑みが浮かんでいる、とかそんな感じ

 

クロ介はただただずっとずっとボクに刺さりまくってくるのだ

 

走りながら語り掛け、何度も会話を繰り返す

 

まさに「相棒」と呼べるオートバイだ

 

 

そんなクロ介くん

 

北海道3日目の朝

 

岩内から小樽をパスするために乗った高速道路を走行中にトラブルが起きた

 

視界の端に入っていたETCのインジケーターが点滅(起動チェック)していた

 

すぐにスタンバイの緑になったがおそらく瞬間的に電源が落ちたのだ

 

その時は「うん?」という感じだったが

 

間もなくもう一度ETCは再起動した

 

電圧計の針も一瞬引っかかったように降下しすぐに元に戻った

 

もうこうなると冷や汗もんだが

 

出口のETCゲートでなんの問題もなく

 

その日はそれ以降一度も同じ症状が出なかった

 

とりあえずETCカードの抜き差しとケーブルの取り回しを確認してみたが

 

まったく何も変わりはなかったので気にしないことにした

 

 

翌日、早朝宿を出て路地から国道へ出るときに減速したらストールした

 

エンジンがまだ冷えているのかなと思ったが

 

電圧計の針が起点に戻っていたような気がした

 

がすぐに再始動

 

でももう頭の中では「コイル」かな、交換したばかりの「イグナイター」かなと

 

悪いことばかりが浮かんでいた

 

電気系統のトラブルなら部品交換が必要になるがもちろん手持ちなどない

 

正直いまの状況でボクに対応できる感じはしなかった

 

救いは北海道に出発する直前に

 

ズットライドクラブの距離無制限ロードサービスに入ってきたこと

 

ZuttoRide Club(ずっとライド クラブ)| バイク盗難保険・ロードサービス

 

宗谷岬を後にして(よりによって日本の最北にいるわけね)

 

宗谷丘陵を駆け上る長い坂の途中でまたエンジンがストールした

 

クラッチを切ってそのままセルを回すと再始動

 

「これはもう認めなければいけない」レベルのトラブルだ

 

祈るような気持ちでとにかく走れるところまでは走ろうと

 

「クロ介、頼む」と何度も声をかける

 

ところがその後しばらく症状は出ない

 

 

そして忘れた頃にもう一回

 

国道の接続が悪い比布の町を高速道路でパスしようと

 

旭川紋別道に入った後だった

 

トンネルに向かう長い急坂を上っている時

 

エンジンがストールし電圧計が落ちた

 

今度はもうセルも回らない

 

と思った次の刹那電源が回復

 

路側帯に入りながらクラッチを切ってセルを回すと今度も再始動に成功した

 

その時はもうただただパニックだった

 

なぜなら目前のトンネルは対面通行で狭く長いトンネルだったからだ

 

層雲峡のコンビニで休憩しながら探ってみるがよく分からない

 

冷静にこれを書いている今ならなんとなくピンと来るけど

 

この先は北海道の中でもかなりやばいエリア

 

原生林を越えて士幌へ抜けなくてはいけない

 

ただ救いは何度止めても始動にてこずる様なことは一切なかったことか

 

結果的には然別湖を経由して士幌の町までたどり着くことが来た

 

が、宿に向かう前にオイルの補給をしておこうと道の駅に向かっていた時

 

今度も少し急な上り坂でエンジンが止まり

 

惰力も尽きてついに路肩に停止してしまった

 

メインスイッチを何度かグリグリし

 

キルスイッチもカリカリと何度か動かしているうちに電源が入った

 

エンジンも何事もなく始動(たすかった!)

 

道の駅からテックモーターサイクルに電話して気を紛らわせる

 

何となく想像していたとおりイグニッションスイッチかその配線

 

あとヒューズかその配線あたりの接続や捩れをチェックしてみたらと

 

アドバイスを頂いた

 

けどね

 

こういうのって不思議だけど「確信」をもって触ると当たるね

 

ビンゴ!だよ

 

イグニッションの4本ある端子の内ひとつがぐらぐらしてた

 

北海道って知ってるかもしれないけどものすごく道路が悪いのね

 

もうそこら中でオートバイがガタガタ揺すられまくる

 

多分それで緩んだんだろうね

 

端子をグイっと挿して応急的にテープを巻いておいた

 

 

 

今回の全走行距離は約2000km

 

燃費も随分良くて22km/ℓも走ってくれた

 

オイル消費はそれなりで2リットル持っていたけど

 

帰りのフェリーに乗る前までに1リットル強補充したかな

 

「とにかく1回はクロ介で北海道を」という思いだったけど

 

「北海道はやっぱクロ介」だなと今は考えている

 

来年もう一回行けるかな

 

行きたいねー

 

 

 

 

 

 

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知ってのとおり北海道は相当に広大な面積を持つ島だ

 

すぐ北にある樺太と比べてもひと回りは大きいし

 

アイルランド島とはほぼ同じ大きさで

 

世界20位と21位でランキングに並んでいる

 

何となく似た雰囲気のニュージーランド北島と比べても

 

それ程遜色のない面積なのだ

 

具体的に云うと83,424平方キロメートル

 

周囲を3つの大海に囲まれ

 

中心には雄大な大雪、日高山脈を張り上げる

 

北緯40度以上という緯度の高さも相まって

 

日本においては特別な雰囲気を醸し出している

 

 

北海道をオートバイで走っていて感じる気持ちの良さは

 

日本の他の地域ではけっして味わえないレベルのもので

 

その理由は

 

比べ物にならない規模の豊かな自然の存在が大きいのだろう

 

と先回書いた

 

それと少しかぶるけれど

 

ここが農業大国であることが

 

もうひとつの理由かもしれないと思うのだ

 

北海道の農地は現在114万haあり

 

その内訳として田んぼが22万ha、畑が42万ha

 

そして酪農地(牧草地)が50万haもある

 

つまり北海道の景色は一方で桁外れて牧歌的であるという訳だ

 

あんな寒いところに22万haも田んぼがある事に少し驚いてしまうのは

 

ボクのアタマが古いからなのだろう

 

それは米が夏の寒さに弱いというむかしの常識にまだ縛られているに過ぎない

 

けれど実際にコメ所として有名な新潟県の田んぼ面積は15万haというから

 

北海道にはその1.5倍もの田んぼがある事になる

 

以前見た新潟の田んぼの風景はそれはそれは印象的だった

 

見渡す限りの水田の中を新幹線と高速道路が一直線に伸びているのだ

 

「ああ、日本のコメはここで作られているんだな」

 

と妙に納得させられる景色だったが

 

なんのことはないそれより遥かに北海道の方が田んぼは広いのだ

 

 

収穫量でみても1位の新潟県(59万トン)についで全国2位の54万トン

 

云われてみれば「ゆめぴりか」「ななつぼし」「きらら397」など

 

北海道産の銘柄米はもう相当なじみ深い存在になっている

 

品種改良などの技術進歩なのか

 

はたまた昨今流行りの地球の温暖化なのか

 

日本人のコメ作に対する執念が垣間見えるような気がする

 

そもそも土地があるのだからコメ作りしたいというのは

 

農家から見れば当たり前のことでしかないのかもしれない

 

 

一方22万haの田んぼに対して42万haもある畑だ

 

じゃがいも、かぼちゃ、小豆、タマネギなど

 

全国シェアの高い作物が多くある

 

意外な作物としては

 

道外の人間には馴染みが薄い「甜菜(ビート)」がある

 

甜菜は国内では北海道だけで育てられる野菜で

 

5万haを越える作付面積があるのだ(ちなみに東京ドーム10,694個分)

 

テンサイは砂糖の原料で、北海道には大きな製糖工場もある

 

国内自給率の低い砂糖だけど国内産の8割を北海道で生産しているようだ

 

そして、やはり北海道と云えば「じゃがいも」だ

 

作付面積はテンサイと同規模の5万ha(収穫量全国シェア8割)

 

有名な小豆(全国シェア9割)は2万ha

 

全国シェア60%を越えるタマネギも1万5千haと

 

さすがの生産力だ

 

 

酪農は云うに及ばずだろう

 

2010年度から北海道産の生乳の国内シェアは50%を越え

 

いまも毎年そのシェアを伸ばし続けている現状だ

 

どこまでも広がる空と同じ規模で広がる緑の牧草地に

 

白い牛が点々と散らばる景色はまさに北海道を代表する風景ではないだろうか

 

 

そして忘れてはならないことは

 

これら見渡す限り広がるその畑や牧場が

 

明治以降ひとつずつ人の手によって切り開かれたということだ

 

無数に生える木々を1本ずつ切り倒し、根を掘り起こし

 

水を引き、柵を巡らし

 

厳しい冬をじっとやり過ごしてきた

 

そんな先人たちの想像を超えた辛苦を思う時

 

この北海道の景色はまた違った深みと重みを感じさせてくれる

 

 

こんなにも豊かな自然の中にあって

 

多くの場所で人の営みがちらちらと垣間見えるのだ

 

今は真っ平らに見える町もかつては深い森だったはずだ

 

強い意志とたゆまぬ努力がこの景色を形作っている

 

そういう目で改めて北海道を眺めてみると

 

偉そうなことばかり云う自分が

 

いままでこの社会のために何をしてきたのだろうかと

 

そんな自戒の念も湧いてくる

 

 

そしてそんな豊かな大地を生み出すために欠かせないのは

 

この広い大地を幾筋にも分かれて潤す川の存在だろう

 

それは北海道の中央に聳える大雪山の峰々に

 

たっぷりと蓄えられた大量の雪どけ水を源としている

 

その水は谷筋にジワリと染み出して

 

ひと雫、ひと雫と集めながら麓へ下るのだ

 

深い原生林を養い

 

平地へ向かい田畑を実らせ町を作らせる

 

日本の河川で100kmを越えるものは68本あるが

 

そのうち北海道の川は14本

 

どの川も想像を超えるスケールで

 

あらためて地図で確認して驚いてしまうようなレベルだ

 

 

例えば十勝から原生林へ分け入って三国峠を越えて進むと

 

大きなダム湖「大雪湖」を渡る

 

あのダム湖の水が層雲峡を経て旭川を辿りやがて空知の町々を潤しながら

 

札幌をかすめて日本海まで注いでいるのだ

 

これは鮭の遡上で有名な「石狩川」で延長268km

 

信濃川、利根川に次ぐ日本第3位の長さだ

 

層雲峡を穿つあの川が石狩川だと容易には結び付かない

 

単純な河川の長さだけでなく流域面積の広さで見ても

 

「石狩川」「十勝川」「天塩川」と3本の川がトップ10に入っている

 

去年滝川から芦別を抜けて十勝へ向かう折

 

たまたま石狩川の大きな支流である「空知川」をたどるルートを走ったが

 

山深い国道に沿って流れる空知川の豊かさにはかなり驚かされた

 

とても支流という規模ではないのだ

 

出来ればもう一度ゆっくり空知川をたどって走りたいな

 

と思っている程強い印象が残っている

 

 

足寄から池田へ向けて国道をたどると「利別川」の流れに沿う

 

利別川は十勝川の支流で池田で十勝川本流と合流している

 

池田の町で右折して行く国道を無視してそのまま直進すると道道882号線に入るが

 

西の十勝川と東の旧利別川に挟まれた広大な平地には延々と畑が続いている

 

おそらくは十勝川と利別川が何度も氾濫してできた沖積平野なのだろう

 

その痕跡なのか畑の中に妙な形の沼がいくつも散らばっているのが見える

 

さらに進んでいくと道道は豊頃の町へ出て十勝川を渡る

 

 

茂岩橋は1961年に竣工した古い橋だが

 

橋長が946mもある立派なトラス橋だ

 

水色のトラスが印象的だったので後で調べてみたら

 

はたして土木学会の土木遺産に指定されていた

 

なんでもあのカッコいいトラスが「変断面下路式ゲルバートトラス」という構造で

 

その構造の橋梁の中では最長ということだった

 

良く分からないが確かに土木建築のレガシー感は漂っている

 

橋から眺める十勝川はとても頼もしく穏やかな流れ

 

もう河口が近いのだ

 

時間があったので河口の集落「大津」へ行ってみた

 

ひっそりと静まり返った小さな漁村の集落を抜けると路地は高い堤防にぶつかった

 

脇にある細い小径を駆け上ると十勝川はまさにそこで海に注いでいた

 

 

十勝岳から集めた小さな雫が

 

こんなにも大きな流れとなって

 

いまボクの目の前で海に流れ込んでいる

 

太平洋から河口へ押し寄せる波は止めどなく

 

その砕ける音が断続的に響くだけで

 

川は静かに穏やかにその長い旅を終えていた

 

ふと喜納昌吉の「花」の歌詞が頭をよぎった

 

川は流れてどこどこ行くの……

 

人も流れてどこどこ行くの……

 

そこに花が咲いていると信じられるような風景だったよ

 

 

 

 

 

 

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北海道の広さはおよそ83400㎢

 

世界の島ランキングでも21位にランクされる大きな島だ

 

(ちなみに本州は第7位)

 

見渡す限りに広がるような気がする森林も

 

割合で云うと他の都府県と大差ない7割程度なのだが

 

実際の面積はやはり途方もなく大きなもので

 

それは関東8都県全体の面積に比べて約1.5倍にも達している

 

北海道のどこを走っても感じることだが

 

スケールの違う自然の豊かさにずーっと包まれて圧倒されて

 

それだけで何とも云えない不思議な幸福感に満たされてしまうのだ

 

自由に広がる深い森

 

ほんとうに何もないただの原野

 

青空のもと広大に広がった牧草地

 

そして延々と続く海岸線

 

荒涼とした寂寥感すら時に感じさせるが

 

それよりも自然の営みの豊かさの方がやはり勝っている

 

道路脇をびっしりと埋め尽くしている野草たちや

 

どこまでも覆いつくす森や林の深さ

 

雪解けの水を集めてとうとうと流れるたくさんの大きな川たち

 

ふとオートバイを停めエンジンを切ると

 

いまの季節だとハルゼミのちょっと低い鳴き声に全身が包まれる

 

都市に感じる違和感から解放されて

 

魂は生まれて初めて真に自然と一体になれたように感じるのだ

 

 

長い旅程の中

 

町も集落もないような原野を走り抜けることも多い北海道

 

日本国内でもなかなかお目にかかれない景色だ

 

世界にはもっと規模の大きな手つかずの自然があるのだろうが

 

町育ちのボクには十分な驚きで

 

それだけでどこか異世界を走っているような気すらしてくる

 

ただ淡々とオートバイを走らせながら

 

たった一人自由への逃走を続けている気分だ

 

 

僅かな慰めはそこら中でグルングルン回る発電用風車たちかな

 

でもなんだかデカすぎてちっとも風景に溶け込まない

 

ドン・キホーテがあいつに突進していった気持ちもちょっとわかる

 

あれはまさに凶暴な巨人

 

でもこの光景は道内のいたるところで見られ

 

すでにありふれたものになりつつあるのも事実だ

 

日本海側がやはり多いかな

 

今回は追分ソーランラインとオロロンラインを繋げて走ったが

 

日本海に面した海岸沿いにはずーッと風車の景色が続いていた

 

 

あのオトンルイの発電所も今ではワンオブゼン(そのうちのひとつ)

 

最近では10000kwhを越えるような風力発電所が

 

日本海側を中心に30カ所以上稼働しているようだ

 

(オトンルイももっと大きな風車5基に置き換わるらしい)

 

風車の景色は自然風景ではもちろんないが

 

自然エネルギーを利用するという点では

 

自然の一部とも云えないだろうか

 

ここにも豊かな北海道の姿が垣間見えている訳だ

 

 

もう一つの慰めは

 

道路が続く限りその路肩を埋め尽くす野草の群生だろう

 

北の大地とは云え多種多様な植物が自生するが

 

道路際に目立つのは「イタドリ」「笹」そして「フキ」だ

 

これらはバラバラに混在して生えているのではなく

 

それぞれはある程度の群れを成している

 

イタドリの列が数十メートル続くと

 

ある所からそれが笹の群生に変わり

 

そしてまたイタドリが続いたかと思うと

 

今度は気付かぬうちに大きな葉のフキの群れが続いている

 

道路の左右でもそれは異なっていて

 

左側はフキでも右側はイタドリだったりするのだ

 

 

この季節特に目立つのはイタドリとフキだ

 

イタドリは葉の大きなオオイタドリがほとんど

 

成長力が強くて放っておくと人の背丈を越える高さまで伸びる

 

本州でもイタドリはよく見かけるけど

 

真夏のイタドリってすごい大きさに成長している

 

フキの葉っぱも驚くほど大きくて

 

太い茎をズーンと伸ばして傘みたいにデカくなっている

 

残念ながらおそらく厄介者だ

 

すっかり雪が解けた今の北海道では

 

待ってました、とばかりに草木が一気に成長をはじめるが

 

ちょうど今頃に除草作業が盛んに行われるみたいだ

 

放っておくとすぐに手が付けられなくなるんだろうね

 

道内のいたるところで十数人規模の作業員が刈払い機のエンジンを唸らせていた

 

これくらいの時に刈っておかないと処分に困るよ、あれは

 

 

一方森林はと云えば

 

最初にも少し触れたけど

 

558万ha(約55800㎢)の面積を有する

 

これは北海道の7割近くが森林におおわれていることになる数字だ

 

天然林(人の手が入っていない森林)はそのうち357万haもあるらしい

 

これがどれほどの規模なのか全くイメージできないが

 

良く例えられる「東京ドーム」で無理矢理例えるとなんと76万個分だ

 

東京ドームじゃあ分らないか?

 

じゃあ最初にも例えた関東全体の面積を

 

東京ドームに換算してみると78万5千個分だ

 

関東に東京ドーム78万5千個建てると全部埋まるんだねって

 

ああ、もうどうでもいいか

 

(つまりは関東8都県と同じ広さの規模で天然林が北海道には広がっている)

 

 

三国峠の展望所から南の方を見やると

 

眼下には果てしなく原生林が広がっている

 

エゾ松、トドマツなど大型の針葉樹と

 

シラカバ、ダケカンバ、ミズナラなどの広葉樹が混じる

 

全体としては広葉樹の林が多くないかな

 

案外深い山の中を走っていても

 

この時期なら木漏れ日に溢れていて

 

清々しくとても気持ちがいいイメージがある

 

少し高度を上げるとダケカンバが増えるね

 

ダケカンバはこの季節ようやく芽吹きが始まったばかりで

 

トドマツの林の中で淡い緑の若葉が森にコントラストを付けている

 

 

この原生林にはモバイルの電波も無ければ(スターリンクは大丈夫か)

 

ガソリンスタンドももちろんコンビニもない

 

十勝三股に山荘があるがいつも開いている訳ではないだろうし

 

幌加には除雪ステーションがあるけど人が常駐しているのかしら

 

人より獣の方が確実に多い地域だ

 

こんな場所でクロ介が急に止まったりしたらどうなるんだろう

 

夜中だったら遭難するかもしれない

 

21世紀の日本にまだこんなエリアがあって

 

リアルに冒険気分を味わえる

 

それが北海道だ

 

 

それにしても5月末の北海道は生命力にあふれていた

 

木々は芽吹き茂り

 

草はずんずんその背丈を延ばす

 

まだちょっと空気はひんやりしてるけど

 

始まったばかりの初夏のこの時期

 

北海道は本当に気持ちがよかったね

 

 

 

 

 

 

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このブログを始めた頃のボクは相当な「雨男」だった

 

雨にまつわる悲惨な体験は数多い

 

東北地方へ3泊4日で出かけた時には毎日雨に降られた

 

行きは深夜の高速道路だった

 

深夜の雨の高速ってどんなにポジティブにかまえても消化試合にしか思えない

 

果てしなく強弱を繰り返す雨に30分も気力は持たず

 

牧之原SAですでに途方に暮れていた

 

東京に着いても雨

 

その後福島あたりで一瞬止んだだけで

 

その日の宿をとった岩手の田老までずーっと雨に降られた

 

翌日は八甲田から十和田湖に向かって雨と霧

 

竜飛岬では豪雨の中カッパを着たまま「津軽海峡冬景色」を熱唱してやった

 

(歌碑の赤いボタンを押すと大音量でかの名曲が流れる仕組みになっている)

 

 

帰りは日本海側を一気に南下したが

 

新潟から高速に乗ると西から台風が迫ってきた

 

聖高原を越える辺りで豪雨と霧

 

どうにかしてるぜ、と自身の定めを呪いながら

 

恵那山トンネルを抜けると台風も突っ切っていて雨は上がり星空が広がった

 

極めつけは帰り着いた翌日が洗車日和の良い天気だったことだ

 

 

オートバイ乗りにとって「雨男」である事実はあまり喜べた話ではない

 

ただ自然相手の楽しみである以上

 

照るか曇るか、はたまた降られるかは

 

想定こそできても絶対に何ともならないものだともいえる

 

何ともならないことはそもそも考えても仕方がない

 

出来ることはそれに備えることだけ

 

予備の上着を持って行ったり

 

カイロやネックウォーマーをパニアに忍ばせたり

 

もちろんカッパ様はいつもシートカウルの中に入れっぱなしだ

 

ツーリングに出るときは防水仕様のブーツを履くし

 

ヘルメットもできるだけピンロックシートを取り付けるようにはしている

 

それでも久しぶりのロングツーリングだった去年の北海道では雨に嵌まった

 

雨を試したことのなかった防水ブーツは30分で浸水ズブズブ

 

新調したレイングローブはゴミのような製品だった

 

おまけに気温が10℃以下

 

その時の指のしびれがそのあと半月位取れなかった

 

軽い凍傷だったのかもしれない

 

雨や気温の変化はツーリングにつきものだから

 

本当にあまり気にしたことはない

 

雨の中でも結構楽しく走れる自信はある

 

ただどうもこのロートルの身体は確実に劣化しているみたいで

 

外界に適応する能力が相当落ちている節がある

 

考えても仕方がないのでこれにも少し備えが必要だろう

 

 

天気予報と云えば今は数値予報のためにスパコンまで導入されている

 

時間的地域的な精密さは確かに上がっているよう見えるが

 

肝心な正確性はそれほど変わっていないように感じる

 

もちろんボクは気象の専門家ではない

 

けれど物心がついてこの世界で繰り広げられるアレコレに興味を持ち始めた時

 

いちばん最初にボクが興味を持ったのは「天気予報」だった

 

見よう見まねで書いた日本列島の地図の上にグルグルと渦巻きを書き

 

「高」とか「低」とかいったマークを張り付け

 

(ちなみに低いという字は幼稚園児には理解不明だった)

 

明日は晴れるだの雨が降るだの印をつけていくのだ

 

小学2年生の頃にはすでに「前線」の意味を理解していたくらいだから

 

天気予報に一家言持つのは当たり前だ

 

そんなボクの印象だからあながち間違いとも云えないと思う

 

天気予報の精度はさほど上がっていない(断言!)

 

 

では天候の変化にどう備えるか

 

まあ、晴れて暑くなるのならさして問題はないのだ

 

上着を脱いで水分補給していれば良い

 

やっぱり雨とか雪とか異常な低温が問題だ

 

去年の北海道での経験はきっとこの時期の最悪のシナリオだった訳だから

 

あれをなんとか乗り切れれば良いということだ

 

ということで

 

今年は使い捨てカイロを一束用意

 

ウルトラライトダウンのジャケット(コンパクトにたたむことが出来る)

 

ダウンのベストにネックウォーマーを準備した

 

レイングローブはもう究極の形態をということで

 

裏起毛の防水ゴム手袋「テムレス」を2足

 

ヘルメットも普段のふざけたジェットではなく

 

アライのVZ-RAMにピンロックシートを取り付けた

 

今年は結果的にはダウンもカイロも一切使わなかったが

 

それはそれで何よりだった

 

 

けれど今回の日程を決める時に本当に天気なんかどうでもいいと

 

そんな風に考えていた訳ではない

 

フェリーの予約の都合(2か月前だと3割引き設定がある)で

 

2か月前に日程を決めなくてはいけなかったが

 

去年のこともあったのでなるべく雨の少ない時期を選びたかった

 

 

真偽のほどは定かではないけれど

 

「晴れの特異日」というのがあるらしい

 

なぜか晴れてしまう日だとさ

 

以前の体育の日「10月10日」がその特異日だとよく知られている

 

1964年の東京オリンピック開会式の日

 

前日までの激しい雨がウソのように上がり

 

開会式の時にはスタジアムの上空に快晴の空が広がった

 

その紺碧の空を5機のブルーインパルスが五輪を描いて飛んだのだ

 

あれほど「晴れの特異日」を印象付け納得させるエピソードはないだろう

 

実は10月の特異日の1番は15日だったらしいが

 

それが木曜日であったため日曜日だった2番目の10日が選ばれた

 

が、10月はそもそも雨の少ない時期なので本来はそれを特異日とは云わないそうだ

 

とは云えあのブルーインパルスの強い印象が

 

この「晴れの特異日」の逸話を語り継がせているのだろう

 

 

北海道の「晴れ」の日を検索してみたら

 

天気出現率 - 30年間の気象データを基にした全国各地の天気統計【みんなの知識 ちょっと便利帳】

 

というページがヒットした

 

道内14都市の天気出現率を個別に集計してある

 

データは過去30年の統計ということでかなり興味深い

 

あくまで天気なので0%とか100%なんて云うことはほぼないだろうし

 

統計期間が長くなればなるほどデータは平滑化するような気もする

 

そこはまあ統計数値ということで参考程度ではある

 

ざっと眺めてみると北海道はやはり5月が降雨率が低いみたいだ

 

予想に反して結構バイアスがある

 

そもそも日本全体の降雨日の確率は約34%(365日中124日)

 

北海道は全国7位で144日(約40%)

 

でもこの数字は北海道の面積の広さだったり

 

日本海、オホーツク海、太平洋と条件の異なる海に

 

ぐるりと囲まれている地理的な条件だったりと

 

他の都府県と単純に比べられないだろうが

 

雨の日の確率が40%を超える日は雨になる可能性が高いと考えてもいいだろう

 

各地点の細かい数字はご自分で確認いただくことにして

 

今回の行程に沿った各地域の天気出現率と実際の天候を照らし合わせて検証してみる

 

             天気出現率           2025年当日の天気

5月26日 胆振地方 晴43.3% 曇30.0% 雨26.7%     曇り 一瞬小雨

      渡島地方 晴63.3% 曇13.3% 雨23.3%     晴れ

 

5月27日 渡島地方 晴60.0% 曇13.3% 雨33.3%     曇り

      檜山地方 晴36.7% 曇23.3% 雨40.0%     晴れ時々曇

      後志地方 晴50.0% 曇20.0% 雨30.0%     晴れ

 

5月28日 後志地方 晴66.7% 曇13.3% 雨20.0%     晴れ

      石狩地方 晴66.7% 曇13.3% 雨20.0%     晴れ

      留萌地方 晴63.3% 曇10.0% 雨26.7%     晴れ

      宗谷地方 晴43.3% 曇30.0% 雨26.7%     晴れ

 

5月29日 宗谷地方 晴43.3% 曇26.7% 雨26.7% 雪3.3    曇り

      上川地方 晴60.0% 曇30.0% 雨10.0%     晴れ

      十勝地方 晴56.7% 曇26.7% 雨16.7%     晴れ

 

5月30日 十勝地方 晴50.0% 曇26.7% 雨23.3%               晴れ

      日高地方 晴60.0% 曇13.3% 雨26.7%     晴れ

      胆振地方 晴53.3% 曇26.7% 雨20.0%     晴れ

 

結果だけ見れば相当な精度にも見えるが

 

たまたまの偶然なのかな、という見方が妥当と感じる

 

けれどやっぱり晴れに勝るものはないよね

 

これは本音

 

雨には雨の良さがあるとはいえ

 

晴れていると何とも気持ちがいいもんだ

 

三国峠はいままで景色を見られたことがなかったけど

 

今回は原生林に浮かぶ「松見大橋」を望めたし

 

(この写真だれがとってもこう写るね)

 

前回雨だったオロロンラインからは

 

霞んではいたけど利尻富士を眺められて溜息が漏れた

 

何度か走ったことのあるルートでもやはり晴れていると

 

すべてが輝いていて最高だ

 

だから「曇り上等」と呪文のように唱えていたボクだが

 

最後には「やっぱ晴じゃなくちゃね」とニヤニヤしていたよ

 

 

追記

 

因みに天気出現率の元のデータは過去30年ということでしたけど

 

1971年から2000年までの30年のようです とほほ……

 

参考までに

 

 

 

 

 

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