山に青葉が燃え出して
清々しい青空に風が吹き抜ける
春から初夏へ
衣替えも進んで
ストーブにも火の入らないこの頃
タンクの灯油を抜いて芯を掃除すれば
もう納戸の扇風機と入れ替わりだ
北海道へ旅立つ日がゆっくり近づいている
ルートの目星を付けたり良さそうな宿を探ったり
いちばん楽しい時期かもしれない
それと同時に今年はロートルのクロ介と行くので
オイルを換えたりフィルターを換えたり
いろいろ不安なところはあるのだけれど
どんなに用意してもすべてはなるようにしかならない
何も起きない時は何も起きないし
何か起きるときは何か起きるのだ
いつも自分に云い聞かせている
曰く「人間万事塞翁が馬」
幸運に歓喜し、不運を楽しめ
クロ介
BMWバイク R100TRAD 1990年西ドイツ製
BMWのフラットツイン商品群は一度生産を中止したあと
車体(主にリアサス)をアップデートし
ラインナップを大幅に縮小したうえで市場に帰ってきた
その後の展開はおそらく当初BMWが考えていたものとは大きく異なり
ボクサーツインは予想外の「再ブレイク」とも云える堅調な推移だ
ボクがBMWのオートバイに乗ったのは
その後に開発された新世代のフラットツインエンジンが最初だが
4バルブヘッドの新生ボクサーはOHV2バルブに比べるまでもなく
とてもスムースでパワフルでそしてワイルドなフィーリングだった
というのも
BMWと云えばクルマの6気筒エンジンが一般には有名で
「シルキー6」と呼ばれるほどの繊細で優雅なイメージを勝手に持っていたのだが
空油冷の4バルブボクサーに初めて乗った時
その意外な程のワイルドさに一瞬で虜になったことを覚えている
思い返せばクルマやオートバイのエンジンフィーリングの違いを
おもしろいと感じたのはそれが初めてで
そしてその興味が後にそれ以前のOHVボクサーに向いていくのだけれども
それはその時に運命づけられていたのだと今は感じている
4バルブボクサーエンジンはとても洗練されていたが
ワザとなのか、と感じるくらいブッキラボウで粗野なフィーリングだった
それは単に雑なエンジンという意味では全くなくて
それこそがBMWのフィロソフィーなのだと感じさせる
どんなに進化しても魂は決して変わらないという信念のようだ
逆に云えばキャラがやや弱い国内4メーカーのオートバイに
良くも悪くも日本人のどこか鬱屈した島国根性が透けて見えているという点で
どこか似ているのかもしれない
そんな国産オートバイたちとの大きな違いは
「間合い」
ではないかとボクは思う
クラッチを繋ぐ
スロットルを開ける
シフトペダルを蹴り上げる
そのすべての間合いが本当に微妙に異なっている
それを「上質」と云うのは簡単だが
その感覚はOHV時代のオートバイにも共通してあったものなのだ
今ではさすがに小排気量の車種もラインナップするが
BMWはプレミアムオートバイのメーカーだ
だからプライスゾーンが国産車と違うというのは理解できる
だがボクとしては価格が高いというだけではなく
他では得られぬ価値がそこにあると思っている
発進するためにローギアへペダルを踏みこんだ時
このオートバイの異質な「間合い」に心を鷲掴みにされるのだ
R75から始まる新生OHVボクサーは
多くのラインナップを揃えながら長い期間生産されたので
似たようでありながら実に多くの仕様変更がされている
クロ介に及んではその出自が独特でネット検索しても
1000ccにもかかわらず「R80」として出てくる異形車種
車検証の型式欄には「R80-100」と不思議な表記だ
実はこのR100TRADという車種は正式なものではなく
BMWジャパンがディーラーからの要望で特注された特装車だった
エジプト警察用の特装車と同じ出自という話で
R80用やR100用の(共通)フレームに(つまり適当に抜き取って)
R100用の1000ccエンジンを積んでいる
当時1000ccのラインナップはRSとRTしかなく
ノンカウルのスタンダード車はR80しか設定されていなかった
つまり1000cc版のノンカウルが欲しい層があると考えたのだろう
日本人用に河名シートにローダウンシートが特注され装着されている
ボクの車両は前のオーナーがカフェレーサーへの改造目的で購入したらしく
購入してすぐに大規模な改造がされた
それをボクが購入する時にほぼノーマルに戻してもらっているが
その間に30年くらいの時間が流れていて
何をどう改造したのかが正直詳しく分かっていない
救いはこの改造をしたメカニックと同じ人に見てもらっているということだろう
そもそも仕様変更で本当に細かい部分での部品の入れ替わりがあったり
その上で改造のために現物合わせされたり、とっぱわられたりと
それはもうやりたい放題やられたい放題
購入して4年経つ今メンテするたびにその苦労を痛感しているところだ
たとえばフロントブレーキのランプ用のスイッチが死んだ時だ
パーツリストを頼りに取り寄せたスイッチの径が10φだった
なのになぜかスイッチボックスが前世代のものに変わっていて
それ用のスイッチはなんと径が8φ
こんなのはまだ序の口でサイドカバーの取り付けステーが無くなってるとか
ブレーキラインの取り回しが異なっているとか
まあ、支障なく走っているのだから万事OKだろうが…
でも無くなってしまっているものとか
代替処理されている箇所は本当は何が正解なのかがわかりづらいのは確か
「R」シリーズってロッドによって部品がいくつも変わったりしてるので
そうそう、もちろん生産終了、在庫終了も多い
そこはリプロ品やヤフオクがある今かなり助かっているが
効率の悪さはそれなりにあって
さっきのブレーキスイッチみたいに自己責任が伴う出費や
パーツリスト確認間違い
単なるそそっかしさから来る凡ミス
いやこの凡ミスが多いかもしれない
ボクは特にね
クロ介のバッテリーが5年目に突入していて
この冬にエンジンの始動不良なんかもあってバッテリーが弱っていたし
セルモーターの動きも少し怪しいので北海道へ行く前に交換した
ついでにバッテリーを固定する金具やベルトも無くなっているので
この際にしっかりとレストアする
そのために取り寄せたのが上の図面の「15,18,19,20」の部品
バッテリーは付いていたものはひと回り小さいものだったが
冬の始動にやや不安があったので規定通りのモノを買った
固定もベルトが1本
これ実は2本ついていたけどどこかで落とした
後でわかったけど下部でベルトを止める引っかかりが相当浅い
因みについていた小さなバッテリーは4バルブボクサーでは標準
バッテリーケースの大きさを見ると実はこっちの方がしっくりくる大きさ
既定のバッテリーはかなりでかくてすごく重い
底がだいぶはみ出してしまう
バッテリーを入れ替え固定にかかるが
今回揃えたパーツで正直どう固定するのが正解なのかよくわかっていない
そもそも留め金具を止めるスポークが斜めに突き出る意味が不明
成り行きどおりバッテリーの角を留めてみる
これネットで画像を探すがあまり出てこない
出てきてもそれこそ細かい仕様の違いで様々だ
「BMWバイクス アーカイブvol.3」のフルメンテ記事の中に
バッテリーの角に金具をかけた写真があったので良しとしておいた
が、せっかく買ったベルトが掛からない
そもそもケース下部にベルトをひっかける取り回しが無理っぽい
小さなバッテリーならベルトを真上に引けるので掛けられるが
ケースから大きくはみ出す標準バッテリーではベルトが止まってくれないのだ
このベルト、デッドストック入りになりそうだ
そしてここからのお話が今回のメイン
バッテリーの留め金具を固定する「ネジ」
部品番号は「6213 1459 257」
コレ、廃番
固定金具やスポーク、固定ベルトを購入したネットサイトに
スポークにはご丁寧に「要6213 1459 257」とあったが
M4ネジなら何でも良かろうと無視して発注した
しかし帰ってきた見積もりにはしっかりとネジが記載されていたため
まあいいや、とそのまま発注した
けれどよく考えたら「廃番」なのにどうして発注できるのだ
その時は良くも考えず云われるまま流されたが
送られてきたのはコレだった
調べてみたら「6121 1233 457」の2本サス時代用のナットだった
え?と思って納品書見たらそのとおりで
見積書を見返してみたらその部品番号が記載されていた
このネジ多分「M5」
必要なのは「M4」
返品しようかとも思ったけど見積りの時ちょっとした行き違いがあって
ごたごた(そこまでではないけど)したので泣くことにして
近くのホームセンターへネジを物色に行った
買ってきたのはコレ
「貫通化粧ナットM4」
手回しできる化粧ナット、M4
頭の中はこれで一杯
実は「脚」がないと金具に埋まって最後まで回せないのだ
取り付けのためカウルを外しカバーを外し
ネジを袋から取り出してようやく気付く
「脚がないじゃん、これ」
トホホ、とまだ笑いが出る
部屋の戻ってネットからネジを物色
「脚付きM4ナット」と云い聞かせ慎重に探す
ステンレス製で5個入り510円をすぐに見つける
が「送料」が200円もかかる
せっかくのAMAZONプライム会員が無駄になるので
もう少し探してみると
ステンレス製で4個入り699円を見つけた
正直さっきのモノと総額で11円しか変わらない
いやここはあくまで送料無料で、とこちらを発注
来たのがコレ
今度もカウルをひん剥いて仮止めのネジを外してばらしてから
おもむろにネジを取り出して気付いた
「アタマ貫通してないやん」
貫通してないと留め金具に届かない
死ねや、クソがーーーと自分をののしる
そして泣きの4回目がコレ
ようやく金具は留まりましたとさ
めでたしめでたし
![]()
にほんブログ村 クリックで応援お願いします!











