兪史郎が残していった画を見ながら
炭治郎「それにしても、兪史郎さんにこんな凄い才能があったなんて、ヒノカミ神楽の画は全部で240枚もあるよ。
一つの型につき20枚のコマ送りみたいだ。」
カナヲ「私にはいつも赤い流れにしか見えなかったけれど、こんな動きをしてたのね。」
炭治郎「東京にいる息子の炭之介に頼んで動画にしてもらおうか?」
カナヲ「炭之介はもうすぐ還暦よ、孫の炭則に頼みましょう。なんかアニメーションの仕事をしてるらしいから。」
炭治郎「そうかぁ~、俺も年をとるはずだ。直ぐに炭則に連絡とってくれないか。」
翌日、孫の炭則が訪れた。
炭則「おじいちゃん、これ誰が描いたの?えっ?フリーハンドの画だって?信じられない。こうやって透かして見てもズレの無いセル画と同じだなんて。」
炭治郎「昔の知り合いに書いてもらったんだけど、おじいちゃんもこんな画が書ける人だとは思わなかったし、本人も驚いていたよ。」
炭則「これ、このままコマ送りしたらアニメーションになるよ。描いた人に逢ってみたいなぁ。」
炭治郎「それは無理だよ。それより、おじいちゃんが死んだ後もしっかり残るように作っておくれ。」
炭則「また、縁起でもないことを言わないでよおじいちゃん。」
炭治郎「これから、その画に説明書きをつけなきゃならないので忙しいから後はよろしく頼んだよ。」
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場面は変わって。
カナヲ「私もこんな若い頃があったのよね♬」
炭治郎「二人とも若いね、俺もすっかり忘れてたよ(笑)」
カナヲ「もう、失礼しちゃうわねほほほ」
炭治郎「それにしても、みんなが揃った画は凄すぎだよね。」
カナヲ「そうそう、ネズ子もアオイも若いよね。
まさか、あの二人が伊之助や善逸と一緒になるとはねぇ~♬」
炭治郎「ネズ子は本当は実弥さんが好きだったみたいだね。でもあれから行方知れずだし」
カナヲ「そうそう、しょうがないから、しつこい善逸で我慢したみたいね(笑)」
炭治郎「伊之助が小豆相場で財を成すとは思わなかったなぁ。」
カナヲ「やっぱり野生の勘がすぐれてたからね。」
炭治郎「イケイケで上げ相場はみんな勝っちゃったからすごかった。」
カナヲ「アオイの危機管理能力もすごかったよ。伊之助のつまみ食いも直ぐに見つけたし、とにかく危険を察知して逃げるのが神で負け知らずだから。」
炭治郎「あの二人は最強の夫婦だったね、プライベートジェットが墜落しなきゃ二人とも元気だったのに。」
カナヲ「もうあれから10年か、でも息子たちが財団をしっかり継いでるから二人ともあの世で安心してるでしょう。」
炭治郎「善逸も売れない作家なんかしてよくネズ子もこぼしてたなぁ。
そういえば善逸伝」は笑えるよね。噓は無いんだけどいちいち大げさすぎて、善逸が前に出過ぎだよ、いつも後ろで騒いでいることが多かったのに。」
カナヲ「そうね、でも善逸らしいといえば、らしかった。その二人も2年前に亡くなったし、つぎはそろそろ私たちね。」
炭治郎「そうだなぁ、お迎えが来る前に、「日の呼吸の奥義」の仕上げにかかるか、これが出来ればもう思い残すことはない。」
とつぶやいて、炭治郎は机に向かった。
次の朝、カナヲが机の前の炭治郎に声をかけたときには、「日の呼吸の奥義」は完成し、炭治郎は息絶え、天国に旅立った後であった。