珠世様への最後の報告のために墓参りをした。
残った薬を墓の前に埋めると、寂しさがこみあげてきた。
兪史郎「珠世様、お言葉通り剣士達の治療は終わりました。
これから、私はどうすればいいのかわかりません。
どうすればいいのか?教えてください、珠世様、、、。」
兪史郎は完全に生きる目的を無くしてしまった。
この世に未練など微塵も残っていなかった。
兪史郎「もう限界です。お言葉に逆らって珠世様のもとに行くことをお許しください。」
用意した短刀で自らの首を切り自決を図った。
鬼とはいえ、心の底から死にたいと願い、生への執着を失ってしまえば死に近づくことになる。
このまま、朝を迎えれば日の光に焼かれて塵となってしまう。
目の前の景色が遠のき、意識が朦朧とするなか珠世が現れた。
珠世「なぜ死のうとするの?生きてという私の願いをかなえてくれないの?」
兪史郎「珠世様のいない世界なんてなんの未練もありません。死んで珠世様の元に行きたいのです。」
珠世「兪史郎、貴方は死んでも私と逢うことはできません。人を殺した私は地獄、貴方は天国に行くからです。
だから、死ねば二人は二度と逢えなくなるのです。」
兪史郎「えっ!!そ、そんなこと、、、」
珠世「貴方さえ生き続けてくれれば、また逢える日が来るかもしれない。」
兪史郎は珠世の二度と逢えなくなるという言葉に動転し、逢える日が来るかもという言葉は耳に入りませんでした。
兪史郎「二度と逢えなくなるくらいなら、それなら、、、」
珠世「地獄に来るために、人を殺してから死のうとするのはダメ、絶対にダメ!!
そんなことをしたら、私は絶対に貴方を許しません。
お願い、わかって、生き続けてほしい。」
珠世様は、その言葉を残して闇に消えていきました。
兪史郎の死への憧れは薄れ、意識がはっきりしてくると、茶々丸が首の傷口を舐めていました。
血は止まり傷も殆ど治りかけていました。
「にゃ~」と心配そうにすり寄る茶々丸を抱きしめ、
「ごめんよぉ~、僕が死んだら、お前はひとりで化け猫として生きてゆかねばならない。
自分勝手な僕を許してくれ、一緒に生きていこう。」
涙がとめどなく流れる兪史郎でした。
__________________________
《補足事項》
無惨との最終決戦で多くの犠牲者が出たが、無惨に鬼にされたときに自分の子供を殺して食べている珠世様は他の犠牲となった者達が談笑しながら天国へ向かうのに対して、一人だけ踵を返して反対の地獄に向かって旅立った。
人を殺めた者は天国には行けずに地獄に落ちることになる。
______________________________________
次回へつづく