平成22年新司法試験の結果について(法務省)

http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00010.html


総合

http://www.moj.go.jp/content/000053691.pdf


法科大学院別

http://www.moj.go.jp/content/000053692.pdf


昨年が2043人であり、今年が2074人。ほぼ現状維持と言うべき数字だと思います。


地方弁護士会が強く主張していた合格者の大幅削減は、実現しなかったということになります。

日弁連の宇都宮会長は「大幅削減派」の期待を受けて日弁連会長になったといえますから、大幅削減推進派の弁護士先生にとっては、不満の残る結果となったと思われます。そもそも、合格者数は弁護士会だけで決められるものではありませんから、もともと「大幅削減」の公約自体に無理があったといえるでしょう。


弁護士の藤本先生のblogより。

示唆に富む記事だと思いました。


[日本法] 弁護士事務所の採用(つれづれなるままに ~弁護士ぎーちの雑感~)

http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20100904/1283612114


その中で、藤本先生による採用、法曹養成の問題についての記事が紹介されています。

http://www.fujimotoichiro.com/law/100901opinion.pdf


採用の問題について。

採用する側に対するアンケートによると、人柄や雰囲気が重視しているという結果が出ています。

当たり前のことのように思うのですが、他方で、ここで言う「人柄」や「雰囲気」というのが具体的に何かは、よく分からないところです。

「人柄」や「雰囲気」が大切ですよ、と言われても司法修習生などはとまどいを感じるところだと思います。


また、新司法試験は、それこそ「人柄」や「雰囲気」などを問わない純粋なペーパー試験であり、そこでは、「人柄」や「雰囲気」がよい人物よりも、法的知識や法的思考力が優れている人物をとる、という政策判断がされているわけです。


ただし、新司法試験はあくまで司法研修所入所試験に過ぎません。その意味で、新司法試験が実務家登用試験である、というのは不正確であると思います。新司法試験に受からなければ実務家にはなれませんが、新司法試験に受かっても実務家になれるわけではありません。本当に実務家として登用するか認めるのは、司法研修所の2回試験です。


これまで新司法試験は、公法系・民事系・刑事系の系統別で点数が開示されていました。

しかし、分離時間割となった以上、もはや大問ごとに得点開示してよいと思いますが、このような意見に対して、司法試験委員会は消極的な態度を示しています。


司法試験委員会会議第65回会議(平成22年4月28日)(法務省ホームページ)
http://www.moj.go.jp/content/000053035.pdf

 

「○これは私の意見ではないが、受験生からは、問ごとの得点を教えて欲しいという要望が強いようである。不合格になった場合に、例えば、民法、商法、民事訴訟法のどの問題が駄目だったか分かれば、次に受験する際に役に立つということである。大大問から大問になり、試験時間を分割すると、なおさらそうなるのではないか。
○そのような要望を聞いているときりがないことになるのではないだろうか。
◎それを助長することになるだろう。問ごとに、更には小問ごとに成績を出せなどということになる。
○結局は模範答案を示せという話になりかねない。
◎法科大学院生も非常に点数を気にしているが、2点、3点の点数の差よりも、できたかできないかは、自分で分かるはずである。反省の材料が欲しいという気持ちは分かるが、2点、3点の差が分かることと反省とは直結していないと思う」
 

科目別の得点開示、不合格者に対する答案の返却までは認めて良いと思います。法科大学院の中には、答案の返却、答案に対する採点教員のコメント、試験講評の作成・公開が行われているらしいですが、それで大きな問題が起きているとは聞きません。そう考えると、司法試験委員会の態度はやや硬直的のように思います。


特に得点開示については、分離したにもかかわらず、どうしてわざわざ合算した点数の開示で留めようとするのか、疑問のあるところです。もちろん、まだ決まったわけではないので、来年からは問題別の点数が開示される可能性はありますが。


既に来年からの新司法試験は、大大問廃止、分割時間割、短答最終日で確定しましたが、その決定に至る過程で、試験委員に対するヒアリングが実施されていました。いずれも法務省ホームページから。


第65回会議(平成22年4月28日)

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi01800009.html


新司法試験考査委員(民事系科目(民法・民事訴訟法))に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052926.pdf
 
新司法試験考査委員(公法系科目・刑事系科目)に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052927.pdf
 
新司法試験考査委員(民事系科目(商法))に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052928.pdf


分割時間割に対しては全ての科目の試験委員が賛成の方向でしたが、大大問廃止については、可能性を残すべきとする民法側と、廃止すべきとする民訴・商法で意見が分かれていました。受験生からすれば、可能性が残るというのは不安定であり、思い切って廃止した方がはっきりしてよいでしょう。

なお、民法の考査委員のコメントは、分離時間割になったとしても、常に完全分離になるわけではないですよ、ということ暗に示しています。以下引用します。


「我々としては,大大問による出題の余地を残すべきだという意見に変わりはないが,仮に大大問による出題の余地を無くすとした場合には,本年の民法の考査委員からの希望があるので,お伝えしておきたい。それは,大大問による出題の余地を無くす場合には,大問3問を民法,商法,民事訴訟法と固定せずに,民事系第1問,民事系第2問,民事系第3問という位置付けにしていただきたいということである。そのような位置付けであっても,恐らく,1問は民法の考査委員が中心となって,1問は商法の考査委員が中心となって,1問は民事訴訟法の考査委員が中心となって,作問し,採点することになると思うが,その意味は,次の点にある。例えば,民法で担保物権の問題を出題する際に,民事執行法上の問題がどうしてもかかわることがある。民事執行法上の問題にかかわらないように問題を作成することもできるが,そうすると出題の幅が制約されてくる。このときに,民事執行法の分野の問題にもかかわる出題ができる方が,受験者の実力を適切に測ることができるのではないかと考える。担保物権だけでなく,例えば,債権者代位権なども,実体法と密接に関連した問題だが,訴訟法的な側面も持っているので,これに及ぶ出題も可能となる余地を残していただきたいと思う。これらは例に過ぎず,このような問題はたくさんあるのだろうと思う。もし,大大問の出題の余地を残さないという御判断になったら,重複あるいは隣接する法律分野にも及ぶ出題ができるという余地を是非残していただきたいと考える」


新司法試験では担保など金融取引分野の出題が増えている感があります(1年目の債権譲渡担保、4年目の所有権留保と即時取得、5年目の抵当権侵害など)。そうなると、執行・保全の基礎的な出題もあり得ることは、頭に入れておいた方がよいかもしれません。

完全分離でない場合に怖いのは、どの科目の問題かを受験生が試験のときに判断する必要が求められる場合もあり得ることです。例えば、事例を読んだら単なる売買契約だから、民法の問題だな、と思っていたら、実はよく読むと、当事者が会社であり、商行為法の規律が関係する可能性もあります。旧試験は科目が明示されていましたが、新試験では分割時間割後も、「民事系第1問」と科目が示されていないので、こういう出題は排除されていません。


何が言いたいかというと、大大問を廃止+時間割は分離したからといって、旧試験のように完全分離ではない、ということです。民事系科目については事実を丹念に読み込み、どの問題かを明確に見極める力が必要だと思います。


と言うわけで、新司法試験は今後科目別の色彩が強くなっていますが、民事系に限っては、民法で主張立証の必要性を問うたり、事実の訴訟法上的意味を問うなど、民法と民事訴訟法が事実上融合している感があります。民訴を無視した民法、民法を無視した民訴の学び方は、少なくとも新司法試験的には誤り、ということになります。その意味では、民法・民訴の基礎理論を正しく踏まえた上での要件事実論は、やはり新司法試験的に大きいということが言えるのではないでしょうか。


これに対して、公法系、刑事系では融合問題の作問が極めて難しいとの反応が示されています。ヒアリングを読む限り、刑事系では、1つの大問の中で刑法と刑訴の2つを聞くことは、今後まずないと言い切って良いと思われます。

平成22年度 法科大学院生を対象とした本府省業務説明会(人事院ホームページ)

http://www.jinji.go.jp/saiyo/houka-s.htm


防衛省も参加予定というのはなかなか興味深いです。よくよく考えてみれば、兵器等の購入、有事法制など法律が関係し、法科大学院出身者の活躍できる場面もあるのかもしれません。


なお、新司法試験合格者を対象とする国家公務員試験の試験内容、エントリー方法は以下のページ。

合格発表後から1週間程度で締め切られるので注意。


国家公務員の公募情報詳細

https://www.e2r.jp/eARTH/e2r/user/html/PageHtml?deliverID=32&pageID=22


ただし昨年度の実績によると、各府省で採用人数は1人となっています。


平成21年度経験者採用システム実施状況

http://www.jinji.go.jp/kisya/1007/keikensha1007-3.pdf


当然のことですが、とりあえず応募して、とりあえず試験を受ける程度では、まず受からない試験なのでしょう。


今年も刊行。


別冊法学セミナー『新司法試験の問題と解説2010』

新司法試験の問題と解説 2010 (別冊法学セミナー)/著者不明
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その年の新司法試験の論文・短答の問題と解説が1冊にまとまっており、便利な1冊であると思います。

ただ、出題趣旨等の発表前の刊行であり、解説が出題者が求めていた方向と一致するかは、まだまだ分かりません。やむを得ないところではありますが。


あと、冒頭の「法科大学院教育と新司法試験」という章では、著名な先生方によって、法科大学院制度や新司法試験についての一般的批評がされています。しかし、この本に収録する必要はなかったのではないか、という感もあります。というのも、主な読者である受験生相手に、法科大学院や新司法試験のあり方をあれこれ言っても、何ともならないわけですから(意地悪な言い方をすれば、この先生方に対する原稿料も、書籍代に跳ね返っているわけであり・・・)。他方で日本評論社には、単なる解説ではなく、法科大学院制度や新司法試験に対する提言も含めることで、予備校が出している解説書との差別化を図る趣旨もあるのかもしれません。


ただし、松本恒雄「法科大学院における学修成果と新司法試験の改善に向けて」同書8頁以下は、過去のデータから、修了直後の受験生が有利であること、法科大学院における成績と新司法試験の合格率の相関関係を示しており、「一般論として」法科大学院できちんと勉強し成果を出すことが、新司法試験の合格にも近付くこと、および、修了直後に合格することを第一の目標に設定することの重要性(時間をかければよいというものではないいこと)が改めて理解でき、受験生にとっても有益だと思います。もちろん、一般論ですから、法科大学院によっては成績との相関関係がないかもしれません。


また、短答の解説では、商法セクションにおいて、数問を藤本一郎弁護士が担当されていますが、出題から新司法試験委員の受験生に対するメッセージは何だったのか、この出題から、法科大学院生を含めた新司法試験受験生は、どのように勉強していけばよいのかを、限られた字数の中で丹念に分析した上で示しており、これこそが「新司法試験の解説」と強く感じました。


もちろん、受験生はこの解説を鵜呑みにするのではなく、合格発表後に出る出題趣旨、ちょっと時間が経ってから出る採点実感、ヒアリングを熟読する必要があります。



こちらも東京大学。


第8回 国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表 土井香苗氏 公演
「国際NGOで働くということ」

http://www.gls.j.u-tokyo.ac.jp/page_b.html#Doi


日時 2010年10月6日(水曜日)開場15:30 開演16:00 終了18:00
場所 東京大学本郷キャンパス 小柴ホール

講師 土井香苗 国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表、弁護士

司会 北岡伸一 東京大学大学院法学政治学研究科・法学部 教授

演題 「国際NGOで働くということ」

1部 土井香苗氏 講演「国際NGO代表となるまで、そして国際NGOのダイナミズム」
2部 トークセッション with 北岡伸一教授  - 国際NGO機関で働くことの役割と意義 -
3部 質疑応答

言語 日本語