既に来年からの新司法試験は、大大問廃止、分割時間割、短答最終日で確定しましたが、その決定に至る過程で、試験委員に対するヒアリングが実施されていました。いずれも法務省ホームページから。
第65回会議(平成22年4月28日)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi01800009.html
新司法試験考査委員(民事系科目(民法・民事訴訟法))に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052926.pdf
新司法試験考査委員(公法系科目・刑事系科目)に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052927.pdf
新司法試験考査委員(民事系科目(商法))に対するヒアリング
http://www.moj.go.jp/content/000052928.pdf
分割時間割に対しては全ての科目の試験委員が賛成の方向でしたが、大大問廃止については、可能性を残すべきとする民法側と、廃止すべきとする民訴・商法で意見が分かれていました。受験生からすれば、可能性が残るというのは不安定であり、思い切って廃止した方がはっきりしてよいでしょう。
なお、民法の考査委員のコメントは、分離時間割になったとしても、常に完全分離になるわけではないですよ、ということ暗に示しています。以下引用します。
「我々としては,大大問による出題の余地を残すべきだという意見に変わりはないが,仮に大大問による出題の余地を無くすとした場合には,本年の民法の考査委員からの希望があるので,お伝えしておきたい。それは,大大問による出題の余地を無くす場合には,大問3問を民法,商法,民事訴訟法と固定せずに,民事系第1問,民事系第2問,民事系第3問という位置付けにしていただきたいということである。そのような位置付けであっても,恐らく,1問は民法の考査委員が中心となって,1問は商法の考査委員が中心となって,1問は民事訴訟法の考査委員が中心となって,作問し,採点することになると思うが,その意味は,次の点にある。例えば,民法で担保物権の問題を出題する際に,民事執行法上の問題がどうしてもかかわることがある。民事執行法上の問題にかかわらないように問題を作成することもできるが,そうすると出題の幅が制約されてくる。このときに,民事執行法の分野の問題にもかかわる出題ができる方が,受験者の実力を適切に測ることができるのではないかと考える。担保物権だけでなく,例えば,債権者代位権なども,実体法と密接に関連した問題だが,訴訟法的な側面も持っているので,これに及ぶ出題も可能となる余地を残していただきたいと思う。これらは例に過ぎず,このような問題はたくさんあるのだろうと思う。もし,大大問の出題の余地を残さないという御判断になったら,重複あるいは隣接する法律分野にも及ぶ出題ができるという余地を是非残していただきたいと考える」
新司法試験では担保など金融取引分野の出題が増えている感があります(1年目の債権譲渡担保、4年目の所有権留保と即時取得、5年目の抵当権侵害など)。そうなると、執行・保全の基礎的な出題もあり得ることは、頭に入れておいた方がよいかもしれません。
完全分離でない場合に怖いのは、どの科目の問題かを受験生が試験のときに判断する必要が求められる場合もあり得ることです。例えば、事例を読んだら単なる売買契約だから、民法の問題だな、と思っていたら、実はよく読むと、当事者が会社であり、商行為法の規律が関係する可能性もあります。旧試験は科目が明示されていましたが、新試験では分割時間割後も、「民事系第1問」と科目が示されていないので、こういう出題は排除されていません。
何が言いたいかというと、大大問を廃止+時間割は分離したからといって、旧試験のように完全分離ではない、ということです。民事系科目については事実を丹念に読み込み、どの問題かを明確に見極める力が必要だと思います。
と言うわけで、新司法試験は今後科目別の色彩が強くなっていますが、民事系に限っては、民法で主張立証の必要性を問うたり、事実の訴訟法上的意味を問うなど、民法と民事訴訟法が事実上融合している感があります。民訴を無視した民法、民法を無視した民訴の学び方は、少なくとも新司法試験的には誤り、ということになります。その意味では、民法・民訴の基礎理論を正しく踏まえた上での要件事実論は、やはり新司法試験的に大きいということが言えるのではないでしょうか。
これに対して、公法系、刑事系では融合問題の作問が極めて難しいとの反応が示されています。ヒアリングを読む限り、刑事系では、1つの大問の中で刑法と刑訴の2つを聞くことは、今後まずないと言い切って良いと思われます。