真実のノート -48ページ目

4話『突然の別れ』

♪ 蜃気楼の様な人だから

幻影の様に…消えてゆく

最初から…分かっていた

この恋は 終わる運命だと


もう… 何度目になるのか!?

♪ この空の下にいて…

ERiの 寂しげなバラードが
あたしの耳に 悲しく響く


誠… あたし達 終わりじゃないよね!?


明日になったら…


きっと…又 誠は 「よぉ!」って 笑って


あの掲示板の前で 待っててくれるよね…


それでさぁ…


(転校だって!? する訳ないじゃん! ってか 夢でも 見たんじゃねーの!?)

って あたしの頬をつねって…


笑ってくれるよね…





あたしは、真っ暗な部屋の中…


わずかな 望みを胸に秘め

(パタンッ)


携帯を、閉じた。



一睡も出来ず…


ベッドの上…


膝を 抱えながら、あたしは、朝を待つ・・・



誠から…クリスマスに貰った、シルバーリングは…


誠に…はめて貰った、あの日から…

いつも あたしの左の薬指に輝いていた…


あたしのあげた…


酷い、ボロボロの、モスグリーン色のセーターを着て…


微笑んでくれた…


あの日の誠に あたしは

心の中で そっと手を、伸ばした



(ま…こ…と…)


名前を 呟くだけで…


もう…どうしようもない、愛しさが 込み上げてくる…







やがて…



カーテンの隙間から

微かな光が 差し込み


あたしは…


顔を上げた…



(シャーッ)


カーテンを 開けて

上を、見上げると…


厚い雲が 空一面を覆っている


「…………」


あたしは…無言で 暫く

空を見上げていた。







そして…


駅の掲示板…


いつも 誠が あたしを待っててくれた場所で



あたしは…初めて、誠を待った。


(少し…早く、来すぎちゃったかな…!?)


そんな言葉を わずかな
笑みを浮かべ… 1人 呟いて見る…




どの位、待っただろうか!?


あたしは…カバンの中から
携帯を 取り出し…


(まこと…)



昨日…何度もかけた

携帯番号を リダイヤルした。

そして…


おそらく…直ぐに、流れるであろう…

ERiの 切ないバラードを
瞳を閉じながら、待った。


その時!?



「お客様の おかけになった電話番号は 現在使われて、おりません…」


何かの 聞き違いだろうか!?


あたしの耳に そんなガイドのアナウンスが、聞こえた!!

あたしは…通話を、一旦、切ると…

もう一度 リダイヤルを押した


「……現在、使われておりません…」


また、同じ アナウンス…


(嘘…でしょう!?)


あたしは…もう一度 かけ直す…



「お客様の……」


また、同じアナウンスが…



(いやだぁ!! いやだよ!!)



(あたしの携帯が おかしいんだよ!!)



あたしは…何度も 何度も
リダイヤルを、続けた。




(嫌だよ!!!! ……いや!!)


指先が ガクガクと震えだす





「まこと!!!!!!」


そう叫びながら…



あたしは、携帯を、握りしめ


路上に疼くまった。







あ…た…し…



き…ら…わ…れ…た…





す…て…ら…れ…た…










もう… 認めろよ…




さ…な…




頭の中で そんな声が 聞こえた。




認めたくない!!


認められない!!!!






だけど…





もう……………





そうとしか…





説明がつかなかった…

4話『突然の別れ』

冷たい、アスファルトの上に

次々と 落ちる水滴…


汗なのか!?

それとも

涙なのか!?


もう、ぐちゃぐちゃで

何が何だか わからない!!

(何でだよ… 何でなんだよ!?)


あたしは、拳を握りしめ
思いきり、アスファルトを叩いた

(誠が あたしに黙って
転校するはずがない!!)


再び…アスファルトを叩く


(そうだよな? 誠… )


アスファルトの上に 真っ赤な

鮮血が したたり落ちた!

(なぁ~ 誠…こんなの… こんな事、あり得ねーよ!!!!)

あたしは、何度も 何度も
アスファルトを 叩き続けた。


「答えてくれよぉ―!!!!」



あたしは、そう大きな声で叫ぶと!!


「わぁぁぁ~!!!!!!」


汗と涙と鮮血が 滲む
アスファルトに顔を押し付け
大声で泣いた!!!!








どの位 時間がたったのか!?


(そうだ!何か…きっと事情が 有るんだ!!)


あたしは、そう思い ヨロヨロと 立ち上がった。



そして…再び…教室に戻ると…



(誠に…聞かなきゃ…)



机の上の、携帯を手に取り
ディスプレイを、開いた。


(…♪)
再び…♪この空の下にいて…

ERiって奴の 大嫌いな曲が

流れる♪




流れ続ける曲…♪


(!?)

ふと、気が付くと!?


血だらけの あたしの拳を
涙を 浮かべながら、黙っ
て見詰める美紀が 目の前
にいた。





その夜も

あたしは、自分の部屋の
ベッドの上で

あの曲を聴いた。


(…♪)

けど…
いくら、呼んでも…


誠は 決して、あたしの呼び掛けに、答えてはくれなかった。



4話『突然の別れ』

ラブホの前に着くと…

誠が、立ち止まったので
「入ろう…」

そう言って、あたしは

誠の手を、引いた。


「…………」


けど…誠は その手を 無言で 自分の方へと、引き寄せる…


「どうしたの!?」

あたしが、聞くと!?

「辞めよう…」

誠は うつ向いて、そう言った。


そして…

「ごめん…佐奈…」


そう言って、あたしを、抱き締めた。


「何が…ごめんなの!?」

あたしは、誠の腕の中で
そう 聞いた。


「…………」


何も…答えてくれない誠にあたしは、もう一度 聞いた


「答えて!!何が ごめんなの!?」


あたしを抱き締める

誠の手が 震えているのが
全身に 伝わってくる…


そして…その手は

あたしを、一瞬 更に強く
(ギュッ)っと、抱き締めた後
(パッ)っと、放された。



(誠!?)


そして…誠は


「また…な」

そう 呟く様に 言うと

あたしに くるりと 背を
向けた。



「ちょっと!! まっ」


あたしが、そこまで言うのと、同時に 走りだす誠!!


「待ってよ 誠!!」


もう一度 叫んだ あたしの声は もう…誠には 届かなかった…






(何か…あったの!?)

それなら、ちゃんと 話して欲しい!


(あたしの事、嫌いになったの!?)


何が…ごめんなの!?




翌朝… あたしは、いつもの、掲示板の前に 誠の
姿が無い事を、確認すると

(…♪)

誠の携番にコールを入れた

誠が この間…(いい曲だ)
と 言っていた ERiって

人の 曲が 流れだす♪

あの時…あたしは せっかく、誠が プレゼントしてくれたCDを 誠に投げつけたけど…

やっぱり…誠の好きな曲は
あたしも、好きになりたい
そう思って 家に持ち帰り
何度も繰り返し、この曲を
聴いた。


だけど…

あの時… 誠が (もし、離れる時が 来たら…!?)

なんて…馬鹿な事を 言ったから

いい曲だとは 思ったけど
あたしは…


この歌詞が 好きには、なれなかった!


(…♪)


鳴りやまない曲…


あたしは…携帯を閉じた。

そして…再び ディスプレイを
開き…

誠に、メールを、打った。

『誠…話したい!連絡下さい!』


・・・・・送信


そして…あたしは、ガヤガヤと ざわつく教室で
誠からの返信を待った。


でも いくら待っても
誠からの返信は 無い…


「どーした!?佐奈?」

あたしの様子が 普通じゃないって事に 気が付いたのか!?

美紀が 心配そうに あたしに話しかけてきた。


「ううん…何でもないよ」

あたしは、そう言って 笑顔を 作ったけど…

(やっぱ…無理)

直ぐに、美紀の顔が 歪み始めた。


「佐奈!どーしたの!!」


美紀が あたしの両肩を
掴んだ!


「あのね…誠とさぁ~
連絡が 取れないんだよ…ってか 無視されてんかもあたし…」

あたしが、そう言うと

美紀は 「あっ そう言えば!!」

と 思い出した様に

「椎葉君…さっき お母さんかなぁ~!?と 職員室で水谷と 話してたよ!」


そう言った。


「えっ!?」

(誠が!?)


次の瞬間!! あたしは 持っていた 携帯を 机の上に 投げ捨て、職員室に向かって、駆け出した!!



そして!!


「ガラッ!!!!」


職員室のドアを 思いっきり、開けた!!


一斉に、先生達の視線が あたしに 注がれる


(誠!! 誠!!)

あたしは、心で そう叫びながら、誠の姿を 探した

その時!?


「どうした!?神林?」


水谷が コーヒーを片手に
キョトンとした顔で あたしに
話しかけて来た。


「誠は? ねぇ!誠は何処!?」

あたしは、水谷に聞いた!
「神林…」

そう言って、戸惑う様な
表情を見せる 水谷


「誠は 何処なの!!!!」


あたしは、水谷の胸ぐらを掴んだ!!


あたしの大声が 職員室中に 響きわたる!!


「急な話しなんだがな…」

水谷は そう言って、あたしの手を 静かに、外した

そして…


「椎葉はな…転校する事になったんだよ…さっき お母さんと ご挨拶に見えた」

そう言った。


(!!!!!!)


一瞬、視界が 真っ白になる!!


(そっ そんな!!)


「たった今さっき お帰りに、なったよ…」

「!?」


水谷の言葉に あたしは、考える間も無く、正門へと走った!!



(誠!! 誠!! 誠!!)


(お願い!! 間に合ってぇ!!)



心が 悲鳴をあげて 叫んでいる!!!!



そして!!あたしの視線が
正門を とらえた!!


綺麗な女性と タクシーに乗り込む 誠がいた!!!!



「待って!!!! 誠!!!!」

あたしは、力いっぱい叫び
走りながら、誠に手を伸ばした!!


だけど… その声は 誠には
届かず


タクシーは 無情にも

誠を乗せ、走りだす!!



「ハアハアハア…」


遅れて 正門にたどり着いたあたしは、呼吸を一旦整え、段々と 小さくなって行く タクシーを 追い掛け再び、走り出した!!


「お願い!! 待って!!!!」
あたしの叫びは届かない!!
タクシーは カーブを曲がると その姿を 消した。


(ま…こ…と…)


あたしは、一気に力尽き…

(バタンッ)


路上に倒れ込んだ…