真実のノート -50ページ目

3話『開いてゆく心』

それから、クリスマスイブ迄の あたしの夜は

まさに…『最前線で 戦う
兵士』

(大げさ!?)

まぁ~ とにかく、そんな感じだった。

授業中も 編み込みの シュミレーションを してみる…

時々、誠が 不思議そうな顔をして 覗き込み

「どうした?お前 指揮者にでもなるんか?」

そんな、失礼な事を言ったけど…

「まぁ~ そんなとこ!!」
あたしは、めげず 笑顔で答えた。

後、イブ迄…10日…

あたしの気合いも最高頂だ






そして… イブ当日…

「よぉ~!!」

と 手をあげ いつもの掲示板の前で 待っててくれた誠に… あたしは…

「おはよ…」
小声で…呟いた。

「何だよ…佐奈 元気ねぇなぁ~」

誠が そんなあたしを、覗き込む…

あたしは… 手に持った
紙袋を 慌てて 後ろに隠した。

昨日…仕上がった
誠に…プレゼントするはずの セーターは とても 酷いもので… 一応…持っては 来たものの…
「はい!」と 言って 笑顔で 渡せる物では無かった

(自分の不器用さに 腹がたつ!!)

「変なの…」

誠が そう言って、あたしの手を握った








放課後…

終了のチャイムが 鳴る頃

誠が 「帰るぞ!!」

そう 背後から 声をかけて
きたので…

あたしは…「うっ うん」
と 頷きながら…セーターの入った 紙袋を カバンの中に押し込んだ。



いつもの 帰り道

土手沿いの道で…

なんか…涙が 出そうになって あたしは うつ向いた
その時!?

誠が あたしのカバンを
無理矢理、奪った!!

「何すんだよ!!」

慌てて カバンを取り返そうとしたあたしを見て

「お前…朝から、何か俺に隠してんだろ!!」

そう言って誠は あたしのカバンを開け 紙袋を取り出した。

「やだぁ~見ちゃダメ!!」
そんなあたしを無視し
誠は 紙袋を開けた!!

(もう…終わりだ!!)
あたしは 両手で、顔を覆った。

そして…恐る恐る 指の隙間から 誠の姿を 追って見る…

そこには…ボロボロのモスグリーン色のセーターを広げ マジマジと 見詰めている誠がいた。

「これ…俺に?」

誠の問いかけに あたしは… 恥ずかくて うつ向いたまま…「なんか…ごめ…」
(そんな…みっともない セーターで ごめん…)

そう 謝りたくて 途中まで言いかけたけど…
後は 涙で 言葉にならなかった。

3話『開いてゆく心』

商店街の一角に有る

『来来軒』と言う ちょっと 古びた店で ラーメンを注文した私達は…

さっきのキスが 妙に恥ずかしくて…

向かい合い… 下を向いたまま… 無言で ラーメンを待った。

何だか…誠に対する 自分の気持ちを 実感し始めたせいなのか!?

わたしは、目の前の誠を もう、普通に見る事すら 出来なかった。


いつもなら…何だかんだと話しかけてくる誠も
今日は やたらと(キョロキョロ)して…

「おっさん!ラーメンまだぁ~!?」

と この店の店主を、急かしている。

「はい!お待ちどうさま!!」

店主は 慌てて 湯気のたつラーメンを テーブルの上に、置くと…

「ごゆっくりね~」

そう 声をかけて 厨房に 消えて行った。


「あっ!!」
(しまったっ!!)

あたしは、ラーメンを見るなり、戸惑った。

「ん?どーした!?」

誠が そう聞きながら 割り箸を (パンッ)と割って 私に渡す。

「あのぅ~ ネギ抜きにするの忘れてた…」

(そうなんです…あたしは ネギが 大嫌いなんです…)
そう あたしが、小声で
呟くと

誠は… 「しょうがねーなぁ~」

と、呆れた顔で 自分の分の割り箸を割ると、あたしのラーメンのネギを、取り始めた。
そして
「好き嫌いは ダメだぞ!」
そう言って 笑った…

また、胸が (キュン)となる。


その後の…ラーメンの味は
良く…覚えてない


ただ… (ズズズ~)と 麺をすする音と、 チラミした誠が 美味しそうに 食べてる姿が、 なんか…可愛くて、嬉しかった。


そして… その後

あたし達は 赤外線で

初めて メルアドと携帯の番号(携番)を 交換した。





好きな男が出来ると…

今まで バカにしてた

クリスマスイブとかも

なんか…凄い 大切な

イベントに思えてくる


(あたしも…普通の女の子見たい…)


壁のカレンダーを見詰め
イブ迄…後 何日かな!? 日数を
数えると…

「まだ 開いてるかな?」

あたしは、商店街の手芸店
に、走った。

(あいつには 何色が 似合うんだろう?)

まだ かろうじて開いていた、手芸店で そんな事を思いながら、毛糸を選ぶ
(モスグリーン! そう あいつには…この色が似合う!!)


あたしは、モスグリーン色の毛糸を 購入すると

(似合うかなぁ~!?)

あいつが 仕上がったセーターを 着ている所を想像しながら、帰宅を急いだ。

(ムフフ…)

自然と 顔が ニヤケてくる
「あっ!?」

あたしは、肝心な事に気が付いて、慌てて 立ち止まった。

そして…Uターンをして また
引き返す。

もう…締まりかけた手芸店の 半空きの、シャッタ-をくぐりあたしは、店主に 声を大にして、叫んだ!!

(ハアハア…)
「すいません!!編みかたの本 下さい!!!!」

と…

(情けないけど…あたし
手編みなんて やった事ないんだ!!)

(ナハハ…)

あたしは、恥ずかしくて 思わず、店主の前で 下を向いた。

3話『開いてゆく心』

いつもの、土手沿いの帰り道で

「なぁ~ ラーメンでも 食ってかねぇ~?」

ふいに…誠が、あたしに聞いた。

「えっ?」


あたしは、思わず誠を見た
だって、いつもこの辺りで
誠は 腕時計で 時間を確認
して 足早に去って行くから…

ちょっと びっくりした

「何…びっくり顔してるん?」

誠が 上から、あたしを覗き込む


「だって、いいのかよ?」

「何が?」

戸惑いながら…聞いたあたしの問いに 誠は きょとんとした顔で そう聞き返してきた。

「だから…いつも 時間、気にしてるから、なんか…用事有るんじゃないの?」
しどろもどろに、あたしが再び、そう聞き返すと


「なんか…その言い方 意味深…」

そう言って 誠が 上を向く

「だから!!他の女と 約束でも、有るんじゃねーのかよ?って 聞いてるんだよ!!」

思わず、(カッ)っとして
出た言葉(本音)だった。
だけど、言った直後に

(しまった!!)と思い あたしは、思わず誠に(クルリ)と背を向けた。

「おい!そっぽ向くなよ…」

その瞬間!

そう言って、誠が あたしを 後ろから抱き締めた。

「何だよ…それ…」

耳元で そんな誠のかすれ声の…囁きが 聞こえる。
「だっ だって…」

言い訳を考えて 振り向いたあたしの頬を 誠の両手が包んだ

そして、強引に重ねられた唇…


(誠…)

突然で… 目を開いたまま

誠のキスを受け入れた

あたしは、 ゆっくりと

瞼を閉じた。


胸が… 壊れそうな程

どきどきしてる…

こんな気持ちは 今までに
経験した事が無くて…

自分じゃ、良く分からないけど

この ちょっと切ない様な
嬉しい様な 誠にしか 感じない

この感情が もしも 恋なら
あたしは、確かに こいつ
が、 (好きなのかも知れない… )

そう 思った。