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‐朝鮮民主主義人民共和国憲法を読む その4(1972年 第四章 49条~72条)‐

 

 

関係記事

 

‐近くて遠い国 朝鮮 本編13(韓国と北朝鮮の成立)‐

 

‐近くて遠い国 朝鮮 本編17(朝鮮戦争後の北朝鮮)‐

 

 

 

『朝鮮民主主義人民共和国国旗』

 

http://freesozai.jp/itemList.php?category=nation_flag&page=ntf_128&type=sozai

 

 

第五章 最高人民会議

 

第七三条 最高人民会議は朝鮮民主主義人民共和国の最高主権機関である。立法権は最高人民会議のみが公使する。

 

第七四条 最高人民会議は一般的、平等的、直接的選挙の原則によって秘密投票で選出した代議員で構成する。

 

第七五条 最高人民会議の任期は四年とする。最高人民会議の新たな選挙は最高人民会議の終了する前、最高人民会議常設会議決定に従って行なう。不可避の事情で選挙を行えないときは選挙を行なうときまでその任期を延長する。

 

第七六条 最高人民会議はつぎのような権限を有する。

一、憲法および法令を採択または修正する。

二、国家の対内外政策の基本原則を樹立する。

三、朝鮮民主主義人民共和国主席を選挙する。

四、朝鮮民主主義人民共和国主席の提議により朝鮮民主主義人民共和国副主席、中央人民委員会書記長、委員を選挙および召還する。

五、最高人民会議常設会議議員を選挙および召還する。

六、朝鮮民主主義人民共和国主席の提議により政務院総理を選挙および召還する。

七、朝鮮民主主義人民共和国主席の提議により国防委員会副委員長を選挙および召還する。

八、中央裁判所所長を選挙および召還し、中央検察所所長を任命および解任する。

九、国家の人民経済発展計画を承認する。

十、国家予算を承認する。

十一、戦争と平和に関する問題を決定する。

 

第七七条 最高人民会議は定期会議と臨時会議をもつ。定期会議は一年に一~二回、最高人民会議常設会議が召集する。臨時会議は最高人民会議常設会議が必要であると認めるばあい、または全代議員の三分の一以上の要請があるばあいに召集する。

 

第七八条 最高人民会議は全代議員の半数以上が参席すれば成立する。

 

第七九条 最高人民会議は議長と副議長を選挙する。議長は会議を執行する。

 

第八〇条 最高人民会議で討議する議案は朝鮮民主主義人民共和国主席、中央人民委員会、最高人民会議常設会議および政務院が提出する。代議員も議案を提出することができる。

 

第八一条 最高人民会議第一回会議は代議員資格審査委員会を選挙し、その委員会が提出した報告にもとづいて代議員資格を確認する決定を採択する。

 

第八二条 最高人民会議法令、決定は挙手可決の方法で、その会議に参席した代議員の半数以上が賛成すれば採択される。憲法は最高人民会議の代議員の三分の二以上が賛成すれば採択または修正される。

 

第八三条 最高人民会議は予算審議委員会、法案審議委員会など必要な委員会を組織することができる。最高人民会議各委員会は最高人民会議の活動を助ける。

 

第八四条 最高人民会議代議員は代議員としての不可侵権を保障される。最高人民会議代議員は最高人民会議、その休会中は最高人民会議常設会議の承認なしに逮捕することができない。

 

第八五条 最高人民会議常設会議は最高人民会議の常務機関である。

 

第八六条 最高人民会議常設会議は議長、副議長、事務長、議員で構成する。最高人民会議常設会議の議長、副議長はそれぞれ最高人民会議の議長、副議長が兼任する。

 

第八七条 最高人民会議常設会議はつぎのような任務と権限を有する。

一、最高人民会議休会中に提議された法案を審議決定し、次回の最高人民会議の承認を受ける。

二、最高人民会議休会中に現行法令を修正し、次回の最高人民会議の承認を受ける。

三、現行法令を解釈する。

四、最高人民会議を召集する。

五、最高人民会議代議員選挙事業を実施する。

六、最高人民会議代議員との活動を行なう。

七、最高人民会議休会中に最高人民会議委員会との活動を行なう。

八、地方人民会議代議員選挙事業を組織する。

九、中央裁判所判事、人民参審員を選挙および召還する。

 

第八八条 最高人民会議常設会議は決定を採択する。

 

時事通信社 『朝鮮要覧1973』現代朝鮮研究会 283~285頁より

 

 

・日本の「国会(立法府)」に当たる最高人民会議

 

北朝鮮の政治機構に触れる中で、同書を参考に、歴史的な成立過程を振り返ってみましょう。

 

朝鮮民主主義人民共和国は、日本の植民地支配からの解放後、ソ連軍進駐下に北朝鮮で形成された人民権力を基礎にして、1948年8月9日に樹立されました。これより先、解放直後の北朝鮮では、まず個々の地域ごと朝鮮人の自治的な権力機構として人民委員会がつくられ、1945年11月、これらの機能を調整する仮の中央機関として北朝鮮行政局が発足、ついで1946年2月臨時政府に相当する北朝鮮臨時人民委員会(委員長金日成)が設立された。

 

‐近くて遠い国 朝鮮 本編11(南北分断の「戦犯」アメリカ)‐

 

臨時人民委員会は、日本の支配の残滓と封建遺制の一掃をめざす民主改革を矢継ぎ早に推し進めた。その主なものは、1946年3月の土地改革同年6月の労働法施行、つづく7月の男女同権法公布、さらに8月の重要産業国有化などです。

 

1946年末から1947年はじめにかけて北朝鮮各地で各級の地方選挙がおこなわれ、この選挙で選ばれた道・市・郡人民委員会の代表者によって1947年2月国会に相当する北朝鮮人民会議がつくられた。同人民会議は執行機関として北朝鮮人民委員会(委員長金日成)を設けた。

 

北朝鮮人民委員会は、米ソの対立で南北朝鮮の分裂が深まりつつある情勢に対応して「主権国家の建設」を急ぐことになり、1948年8月最高人民会議の代議員(議員)選挙を全国で実施した。

 

(この選挙には、北朝鮮の有権者の九九・九七パーセントが参加したばかりでなく、南朝鮮の有権者の七七・五二パーセントも非公然の回状方式によって投票に参加したとされている)。

 

時事通信社 『朝鮮要覧1973』現代朝鮮研究会 164頁より

 

 

『故・金日成主席』 (写真は在日コリアンの友人提供)

 

1948年9月ピョンヤンで開かれた最高人民会議の第一回会議は、憲法を採択して朝鮮民主主義人民共和国の樹立を宣言。共和国政府(首相金日成)を発足させた。同年12月にはソ連軍が北朝鮮全域から撤退した。1950年6月から1953年7月にわたった朝鮮戦争は、北朝鮮に甚大な被害をもたらした。

 

‐近くて遠い国 朝鮮 本編14(朝鮮戦争が遂に勃発す)‐

 

「アメリカは、朝鮮戦争中、第二次世界大戦中に太平洋戦場全てに投下したより多くの爆弾を朝鮮民主主義人民共和国に投下した。32,000トンのナパームを含むこの絨毯爆撃は、軍事目標と同様、しばしば意図的に民間も目標を定め、戦争に勝つために必要だったものを遥かに越え、朝鮮に壊滅的打撃を与えた。何千人もの無辜の文民が死亡し、都市全体が破壊され、更に遥かに多数の人々の家を失い、飢えさせられた。この戦争の支持者で、後の国務長官ディーン・ラスクは、アメリカが「朝鮮民主主義人民共和国で、動くもの全て、積み上がっている全てのれんが」を爆破したと言った。爆弾の破片に殺され、焼き殺され、煙で窒息した平壌住民は数え切れない」(「アメリカ人は朝鮮民主主義人民共和国にしたことを忘れ去ったた」、Vox World

 

マスコミに載らない海外記事 

『タカ派をなだめるため北朝鮮とのサミットを駄目にしたトランプ』

 

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-48c7.html

 

主要都市が壊滅、国土が焦土と化し、無辜の民衆が多く犠牲となりましたが、共和国政府は、ソ連、中国、東欧諸国などから援助を得て復旧に努力し、その過程で農業と私的商工業の社会主義的改造(協同化)を進め、いずれも成功した。ひきつづき1957年以降経済建設の取り組みが進められ、驚異的な躍進がはじまりました。

 

工業化の基礎作りの段階(1957~1960年)から工業化完成の段階(1961~1970年)を経て、1970年11月朝鮮労働党第五回大会は、朝鮮民主主義人民共和国がそれまでの社会主義工業・農業国から社会主義工業国への転化を達成したむねを内外に宣言した。

 

1972年12月北朝鮮全土で最高人民会議代議員選挙(五回目)がおこなわれた。同月招集された最高人民会議「新しい憲法」━共和国社会主義憲法を採択し、これにもとづいて国家機構の大幅な改革を実施した。新憲法の特徴は、この国独特の社会主義制度を法的に確定し、社会主義社会における政治、経済、文化など各分野の諸原則を規定し、いわゆる「プロレタリア独裁」の一層の強化をはかる新しい国家機構の体系を打ち立てたことなどの点にみられる。

 

‐朝鮮民主主義人民共和国憲法を読む その1(1972年 第一章 1条~17条)‐

 

「それ以前」における従来の憲法では、「共和国の首都はソウルである」とされていましたが、新憲法「共和国の首都はピョンヤン(平壌)である」と改めました。

 

 

<参考資料>

 

・時事通信社 『朝鮮要覧1973』現代朝鮮研究会

 

 

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