前回の記事
‐シリーズ 日韓会談反対闘争の展開とその歴史的役割 その7(韓国軍事クーデター後の北東アジア)‐
・『合意』に向け動き出す日韓
過去5次にわたって行われた日韓会談であったが、事態の成り行きは、今度こそ関係各国とも真剣に妥結を前提として取り組もうとしていると判断させるには十分な内容でした。
このような時勢の中、韓国軍事政権の李駐日「韓国代表部代表」は日本政府に『日韓会談の再開』を正式に申し入れました。
日本側は人選に難航したものの、NHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」に登場する三田村会長(橋爪功)のモデルとなった、関西財界の有力者である杉道助(すぎ・みちすけ/日本貿易振興会々長)を、韓国側は、米国市民権をもつ裵義煥(ペ・ウィファン)をそれぞれ代表に任命し、会談は1961年10月20日、東京で始まった。
そして、本シリーズのパワーワードである『日韓対連』について。
‐シリーズ 日韓会談反対闘争の展開とその歴史的役割 その3(遅れすぎた朝鮮との接触)‐
‐シリーズ 日韓会談反対闘争の展開とその歴史的役割 その6(「朝鮮半島有事」に関する介入論)‐
同連に参加した共産党、社会党、総評、日朝協会、日朝貿易会などの各代表は、同年10月20日午前10時から、日韓会談の日本側主席代表の杉道助、大平官房長官、小坂外相、自民党前尾幹事長などを訪問し、「日韓会談即時中止」の要請をおこないました。
‐シリーズ 日韓会談反対闘争の展開とその歴史的役割 その4(日米安保闘争と日韓会談の関係)‐
・日韓会談という事実上の「三国会談」
新安保体制下(60年安保)で設けられた、『日米貿易経済合同委員会の第一回会議(いわゆる箱根会談)』が開催された。
[昭和36年11月] 中日ニュース 408 2「アジアの中の日本 ―箱根会談をめぐって―」
映画社中日
https://www.youtube.com/watch?v=xIpQfTgocdI
名称にいう貿易・経済問題とは裏腹に、実際は日韓会談を中心にして1961年11月2日~4日まで開かれ、この会談の前後には、ラスク米国務長官、金鍾泌(キム・ジョンピル)中央情報部長<KCIA部長>、朴正熙「韓国」軍事政権最高会議議長、池田首相らの綿密な連絡がありました。
時系列にするとこうです。
・1961年10月24日 『金・池田会談』、『金・小坂会議』
・同年10月26日 『裵・ライシャワー会談』
・同年11月2日 『ラスク・池田会談』
・同年同日 『杉道助 訪韓』
・同年11月5日 『ラスク・朴会談』
・同年11月12日 『朴・池田会談』
・同年11月14日 『ケネディ・朴会談』
これらの動きを集積した結果、つまるところの『日韓会談』が、事実上の米日韓三国会談であることを露骨に証明した。
・「韓国」をめぐる日米の思惑
特に、『ラスク・池田会談』における次のような言葉が、「アメリカの意図」を物語っている。
『ディーン・ラスク』 (Wikiより)
韓国問題はアメリカのアジア政策の中心課題だ。南ベトナムが非常に危険な状態にある折から、さらに韓国につまづくことはアメリカの威信にも関係する。東アジアの情勢を改善することは米日の共同の目標だから、日本は早く韓国と国交を正常化して、韓国の政治的・経済的安定に協力してほしい。
『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房 170頁より
これについて、同会談における池田首相の次の発言は、いかに彼が「第二の安保闘争」の再現を恐れているのが、まざまざと示していた。
『池田勇人』 (同)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E5%8B%87%E4%BA%BA
韓国問題を重要視する点ではまったく同意見だ。日本も韓国が早く立ち直るよう努力しよう。しかし、日本としては二つの問題がある。一つは朴政権が安定しているかどうか、ということ。もう一つは、財産請求権にたいし、大きなカネを支出することにたいして、民社党をふくめて野党は強く反対している。韓国は軍事政権だから決意すれば、それでなんでもきまってしまう。しかし、日本では国会を通じてすべての問題は処理されているのであって、韓国のように簡単にきめてしまうわけにはいかない。したがって、日韓協定の国会審議は非常にむつかしい。安保騒動の二の舞を演ずる危険性がある。自分としては、そのようなことが起らないよう苦慮している。しかし、韓国安定化への熱意は米国と少しも変わらない。
『同』 同ページより
1961年11月9日、自民党松村謙三は、池田首相に、日韓交渉では慎重な態度を取るよう申し入れたが、同じ日、吉田・岸元首相は、池田首相と会談し、日韓交渉で池田首相が決断を下すように要求した。
同年11月12日の『池田・朴会談』では、ラスク長官の筋書き通り、『日韓会談』の早期妥結につき合意をみた。
まとめに入ります。
・「米国安保支配」のもと、日韓両政府は再び会談再開へとこぎつける
・事実上、『日韓会談』は日米韓会談と化す
・日本国内では、右派民社党や様々な立場含め、「韓国支援反対」の動きもあったが、米国エスタブリッシュメント層と深い関係がある岸元首相らの「働きかけ」により、『日韓会談』は早期妥結と合意へ向かう
<参考資料>
・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房
・Youtube動画 映画社中日 『[昭和36年11月] 中日ニュース 408 2「アジアの中の日本 ―箱根会談をめぐって―」』
https://www.youtube.com/watch?v=xIpQfTgocdI
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