前回の『‐「アメリカの極右≠日本の極右」という図式 その2‐』(https://ameblo.jp/epikutetosu/entry-12302748111.html )に引き、



http://edition.cnn.com/2017/07/31/opinions/why-trump-won-zakaria/index.html



トランプ氏を「差別主義者」だとする誤解は、日本で揺るぎがないほど確立しています。


それが、いかほどの間違いを生んでいるかは、私たちが想像する以上に深刻であり、アメリカのナショナリズム日本のナショナリズム「同質なものではない」ことを、ここで詳しく述べていきたいと思います。


たしかに彼の支持層に差別主義者はいます。


これは確実です。



しかし同様に、オバマ・クリントン支持者たちに、差別主義者がまったくいないとか、差別意識がまったくないというふうには、思わないわけで、特定の政党に多種多様な支持者が集まることは、現実的にみて必然なことであり、殊に民主・共和党のような大政党の場合だと、なおさらです。


そして、結果的に今までの政治を眺めていくと、イスラム教徒を盛大に殺し、彼らの家を壊して、難民を大発生させていたのは、白人と黒人のハーフであるオバマ氏に行き着くのです。


私たちは、彼が「核兵器削減」の平和演説をしてみたり、銃規制の問題を語ってみたり、広島に訪問することだけに目を奪われるあまり、彼の行っている「本質的政策」に気付いていない現実があります。


さらに、日本人の頭上ならば、オスプレイのような危険なヘリコプターを飛ばしてもいいと思ったのも、オバマ前大統領です。


そして、アメリカ人の差別意識というのは、複雑なものであり、重層的で、日本の差別主義者のような、全員が揃って「アジア人を見下し、白人をありがたがる」という、簡単なものではありません。



そもそもアメリカには、もっとたくさんの人種や民族、宗教が混在しているから、それでは済まないのです。


アメリカ人は、白人同士の中でも、差別があります。


イングランドからの移民が一番威張っていて、逆に、アイリッシュとか、ポーリッシュは見下されている。


また、「有色人種」同士でもあります。


さらに、アメリカの有色人種が、ほかの人種・民族を、見下しているということもあり、アメリカの黒人なり、ヒスパニックは、日本に来れば、威張っていたりと、「日本の差別主義者の心性=アメリカの差別主義者の心性」というふうに、簡単にひとまとめにするということは、実際のアメリカの社会的構造から言うと、無理ですし、適当ではありません。



そうしたアメリカの民族的背景をもって、殊に白人同士の「分裂」というものについては、日本の関ヶ原の戦いの遺恨とよろしく、アメリカの場合だと、「南北戦争の遺恨」を、未だに引きずっている現実があります。


これは私のブログ仲間であるMichikoさんが、4年くらい前に、アメリカの交流サイトで知り合ったある南部出身のアメリカ人とのコンタクトで、彼自身「先祖が南軍側で戦って戦死した」アメリカ白人であり、その人は、今でも、先祖の遺骨を探しているんだとおっしゃられていました。


また、彼自身は、奴隷制は支持しないけれども、地域のために戦って死んだ先祖のことを、尊敬していると述べられ、ほかの南軍の子孫たちというのも、大体がそういう態度でした。


奴隷制はよくないけれども、戦った先祖のことは、称えたいんだ、と。

さらに、北軍のやりかたに、悪い思い出が色々あるとか、南北戦争後に、かえって黒人の生活待遇が悪化してしまったとか、そういうこともあったりと、私たちが想像もしなかった事実が、「そういう遺恨」のもとで、南北戦争の傷はアメリカに根強く残っているのであり、今回のシャーロッツビルの銅像の件なんかも、バージニア州だけではないのですが、まさにそうした背景があって起こった結果でした。



上述の背景をもってして、果たして我々はどのように「情報」に接していかなくてはならないのか。


これはリベラルや保守とわず、すべての日本人が「向き合う問題」であり、まかり間違えば、そのどちらも反知性に陥ってしまう危険性があります。


今回のシャーロッツビル事件で、みな相当ショックを受けているのはたしかであり、私自身もそうです。


しかしながら、感傷に流されるあまり、「本当にトランプはネトウヨで差別主義者だ」という認識がさらなる加速をし、物事を感情的にとらえてしまい、トランプ氏がなぜ「デモ隊とアンチデモの両方に非がある」と発言したのも、単なる『どっちもどっち論』ではなく、先のロバーツ氏が指摘したような、議会で彼がおかれている「立場」や、ホワイトハウスを含んだ、政府内で完全に孤立しきっているトランプ氏が、「気の毒な人たち」(ヒラリー氏指摘)の支持層まで蔑ろにしてしまったら、もはや彼は弾劾され、大統領職も追われ、ロシアとの講和や中東での戦争終結もすべてパーになってしまいます。


トランプ氏が選挙で唱えた『アメリカファースト』然り、それが素朴なアメリカ一般大衆の利益であること、対して、オバマ氏が世界に対する演説で述べた『アメリカファースト』は、アメリカだけが特別で、アメリカ人だけが使い捨て出来ない人々だということ。


この事実を指摘したポール・クレイグ・ロバーツ氏についても、彼が一般ピープルではなく、かつてレーガン政権時代の財務長官の補佐まで務めた文字通りの「エスタブリッシュメント」であり、単なる無鉄砲な陰謀論ではないことです。



私たち日本人は、リベラルや保守含め、世界の物事に関して「自分たちの理解できる回路」に落とし込む傾向が強く、そうした「一定の物語」として消化してしまうなら、とんだ愚かな行為としか言えないでしょう。


世界に対して、現地言語を用いたフィールドワークが出来ないがゆえに、大メディアの情報ばかりを集めて分析したり、それが今では「時代遅れ」甚だしいことであり、アメリカの問題問わず、北朝鮮の話にせよ、とあるリベラルサイトの掲示板では「嫌韓主義を煽るネトウヨの背後に北朝鮮がいるのではないか」という意味不明な解釈を大真面目で議論したり、同じ朝鮮人に対するヘイトであることを抜きにした、お粗末な陰謀論でしかなく、これも憎朝感情に基づく大メディアの認識を受け入れた結果なのでしょうが、もうそうしたレベルから日本人は卒業すべき時期にあると思います。



その最中、今回のシリーズのタネ記事となったMichikoさんのブログで、ある興味深い実験が行われました。



緊急アンケート:アメリカ人に聞いてみた「トランプは差別主義者なのか?」その1


『アメリカ人は、トランプをどう見ているか』



この中で、Michikoさんはアメリカの政治サイトの「アンケート機能」を利用した、アメリカ人の「トランプ氏に対する意識調査」をおこない、ランダムで選ばれたアメリカ人を対象に、実に100件以上のコメント回答調査で、「トランプ氏が差別主義者なのか」という質問をぶつけました。


https://disqus.com/home/channel/politicalrhetoricbusters/discussion/channel-politicalrhetoricbusters/need_your_cooperation_for_trumps_reputation_in_japan/


質問内容もかなり緻密で、



①あなたは、どうしてトランプに投票したのですか。


②あなたは、今でもトランプを支持していますか。


③あなたは、トランプが差別主義者だと思いますか、思いませんか、そして、理由は。


④あなたは、シャーロッツビルの事件が、トランプのせいだと思いますか、思いませんか、その理由は。


⑤ほかに、トランプについて、日本の大衆に伝えたいことは、何かありますか。



という五項目で、その回答者のほとんどが「トランプは差別主義者ではない」としたことです。


これは多くの日本人に衝撃を与える結果であり、いかに私たちが「隔絶した空間」でトランプ氏を認識していたのか、コメントをしたアメリカ人の中には、当然のごとく「北朝鮮を敵視」したり、「日本に対する親和性」を持つコメントも多数見受けられました。


そうしたリアルな事実を鑑みた上で、



「メディアが伝えることは、全部信じてはいけない」


「メディアには、アジェンダ(行動計画)があるんだ、アメリカでもそうだし、日本でも」


「(日本の大衆は)アメリカの大メディア以外のほかの情報源を調べたほうがいいと思うよ」



というコメントがあって、私たちがネトウヨのコメントを、日本の政治状況と重ねて参考にするのと同じく、アメリカの場合でも例外ではなく、直視しなければならない「アメリカ人の認識」だということです。



<参考資料・ご見識>


・Michikoさんのブログ『Cluttered talk blab blab blab』「"Exceptionalism" and "America first" 」記事


・同記事におけるMichikoさんのコメントより


・Michikoさんのブログ『同』「緊急アンケート:アメリカ人に聞いてみた「トランプは差別主義者なのか?」その1 」記事