代役公演2日目が終わりました。

主役が4人のうち3人替わろうと、もう公演があると決定しますと、
私たちはとにかく必死に勤めるしかありません
見に来て下さるお客様のために、そして私たちが表舞台に立つために、
尽力して下さるスタッフのためにも、頑張るしかありません


昨日のブログで少し書かせて頂きました所、妙に反響を頂きました
かつらと衣裳のお話。

衣裳に関しましては、古典であろうと新作であろうと、基本的には
衣裳さんの用意したものを着用いたします。

古典のものはもちろん決まりがあります。
『義経千本桜』の「すし屋」のお里の衣裳が、東西での違いがあったり、
「吉野山」の衣裳がお家によって違ったり、紋をあしらっていたり。
そういう違いがある事はあります。

ですが、私たちはお稽古期間中などに「ああ今回はこの色なんだ」とか
「こんな衣裳なんや」とそこで初めて知ることが多いです。

全体の色の並びなどを考慮して割り当てられております。
ちなみに、四天王などのお役の時は、着物は衣裳さんですが、
よろいの部分は小道具さんの担当になります。


スーパー歌舞伎などでは、逆にデザイナーさんがおられたりしますので、
もっと厳密になります。
デザイナーさんのデザインを、衣裳さんが私たちの寸法に合わせて
作って下さる事になります。

私たちの着丈などの情報は、常に衣裳さんサイドにありまして、
それに合わせて作られる事になります。


反対にかつらは、こちらのブログでも何度書かせて頂いておりますが、
毎月、翌月のお役が決定いたしますと、かつら屋さんに行きまして、
土台を作成して頂く事になります。

いわゆる「かつら合わせ」です。




(こちらの写真は、2010年のかつら合わせの写真になります)


以前の内容と微妙に重複いたしますが・・・

かつら屋さんと云うのは、土台の部分を作る部門です。
土台は、薄く伸ばした銅板をたたいて頭の形に合わせて行きます。

完全にその人ごとのオーダーメイドです。
例えば、私は人と比べますと額がないので、羽二重の場所とのバランスに
調整が必要です。
また、猿弥さんは後頭部がない(笑)ので、かつらのサイズが極端に小さいんです。
と云った風に、その人の頭の大きさだけではなく、特徴を考慮して
作って頂く事になります。

そして、その土台に毛を貼るまでがかつら屋さんの仕事、
そのかつらを結髪までしますのは、今度は床山さんの仕事です。


かつら屋さんは本当にその人の頭の形、そして好みをも考えてくれます。
実は、痩せた太ったの変化を一番敏感に気づいてくれるのは、
かつら屋さんだと思います(笑)

ちょっと太ったかなあ・・・でも誰も気づかないからそうでもないか・・・
と思っていても、かつら屋さんに行きますと「ちょっと太りました?」と
すぐにばれてしまいます(笑)
頭なんてそんなに変わらない気がするんですが・・・すぐばれます(笑)


また、それなりのリクエストも聞いてくれます。
私は比較的こだわるほうですが、「ここのくりを1ミリ出して、ここを短く」
などのミリ単位の調整もしてくださるわけです。


と、こういう風に作って頂いた土台ですからこそ、2時間3時間被っていても
大丈夫な訳です。


・・・自分のものは・・・


問題は、人のかつらを被らなければならない場面です。

例えば、猿翁旦那の時代、旦那が演出に回られている時の明かり合わせなどの時、

もしくは衣裳パレードの時、旦那の衣裳かつらをつけて立つのは 

私に回って来る事が多かったです。

その際には、旦那のかつらをつけるのですが、これが痛い事痛い事。
頭の大きさ自体はそんなに変わらないと思うのですが、でこぼこの部分が
違っているのでしょうか。

入るのですが、時間が経ちますとどんどん締まってくるように感じます。
孫悟空になった気分になります。


また、以前に猿弥さんの代役を勤めさせて頂いた時も、開演まで2時間弱。
台本片手に真っ青になっている私の元に 一番に飛んでこられたのが
こちらも真っ青な床山さん(笑)

猿弥さんのかつらを被れる人は多くないので、まず作り直しだ・・・と
飛んできたのだと思います。

何とか無理やり被りました。かぶれたのかな?ちょっと記憶にありませんが
少し後ろを切るか何かで調整してもらったのかも知れません


駄目だった場合は、おそらくありあわせの土台を調整して、作って・・・
2時間で間に合ったでしょうか???


この時は、さすがに代役の台詞に必死でしたので、頭の痛みを
感じた覚えはありませんね。


竹三郎さんの代役の時も、亀蔵さんの代役の時も、確か私の昔のかつらを
用意してくれ、それを結いなおしてくれたんだったと思います。
多分・・・
代役の時って、いっぱいいっぱいで覚えていない事が多いのですが・・・(笑)



今回の代役、大変だったと思います。
ご観劇の際には、代役を勤めました役者にはもちろんですが、
衣裳さん、床山さん、かつら屋さん、その他の全てのスタッフ、
そして代役の役者について先導などをしている本役の方のお弟子さんたち
全てに大きな拍手をお願いいたします。

何とか千穐楽まで・・・皆で心と力合わせて頑張ります。