今日は午後から10月巡業公演『獨道中五十三驛』の私のお役、
弥次郎兵衛の かつら合わせがございまして かつら屋さんの会社 
浜町まで参りました。

朝はのんびり致しましたが、ここの処 一週間ほどあいにくのお天気
返す返すも東北の旅 曇り空ではありましたが 雨に降られなくて 
よかったな~と 実感いたしました。(笑)

それにしても、9月はお天気が悪いですね。
でも北海道が、まずはこれから晴れてくれるのは何よりです。(笑)


今日のかつら合わせ 私くらいの経歴になりますと ある程度のかつらは 
こちらで保存して下さって居ります。

と 云いましても、かつらの土台そのものを保管して下さっている訳ではありません

かつらの土台は銅板ですので ひと月ふた月舞台で使うと 汗で緑青と云う
毒の成分が出て参り これは繁殖すると目にも入り 失明の恐れもございます。

ですから、劇場では床山さんが毎日拭き掃除や、手直しなどをして下さって
居ります。

で、ひと月終わりましたかつらは 髪の毛の部分を取り外し 土台だけを
基盤として かつらやさんで保存してくださいます。

髪を結う床山さんと、土台制作のかつらやさんは 基本的に別の会社で
作業も別となります。

今日のかつら合わせは あらかじめ前に使ったかつらの大きさを元に、
土台をある程度こさえて下さっており、そこから少し手直しするくらいの
合わせ方ですむのです。
 

若い頃は頭の大きさの一から 土台をこさえて下さるのに 毎回かなり
時間がかかりました。


大阪に居ります時には 名題下でしたのと、取り扱っております会社が違います。
会社の仕組み自体が違いました。

そのため、誰かの使われたかつらを 一時しのぎに使う事が多く 
ストックもなく ほとんど毎回 間に合わせとしてつかっておりました。

自分の頭に合わせて作っておりませんので、一見 あっているような感じでも
長時間かぶっておりますのは 非常につらく きついものでございました。

今の関西ではどうなっているのでしょうね・・・


東京在籍になりまして おもだかや一門となりましてはからは、
いちいち かつら合わせをして下さり 関西とシステムが違う事に
おおいに驚いたものでした。


今日は、来月の私の弥次郎兵衛のかつら合わせでしたが 
そのかつら 8月の歌舞伎座の筋書 染五郎さんの弥次郎兵衛のあたまを
参考にご覧頂くと よくお分かりかと思うのですが・・・。


本来は町人ですので 町人髷をのせる為に 「羽二重」と云う生地を頭に貼り 
その中に「青帯」と申す中剃り(真ん中を剃っているので 青く塗った状態のもの)
を 表現しておりますが 

三枚目の弥次、喜多はあえて 『すっぽり』いうかつらをかぶります。

あたまの甲羅の部分を 「羽二重」ではなく あえて銅の土台を青くつぶし
「青帯」として表現するのです。


これは、時代物でも3枚目を強調したかつらなのです。 

例えば『吉野山』の逸見の藤太や『落人』の鷺坂伴内などに
見られますかつらです。

町人でも三枚目の強調と云う意味合いですね(笑)

つまり 本来は生えていない所から髪の毛を 植える事で
自然ではない頭を表現しております。


8月の筋書をお持ちの方は もう一度 染五郎さん 猿之助さんの
弥次喜多を見て下さい。 

他の町人とは違うかつらでしょ?(笑)

今日の写真は、浜町にあるかつらやさんの一室 

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舞台のない時は 毎回ここへ来てかつら合わせを致しております。

そして そのかつらの土台を毎回、作って下さる職人さんは 大塚さん

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ひとりひとりの頭の大きさに かつらを合わせて下さるのは
かなりの熟練が必要です。

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古典などで、過去にあるかつらの土台を作って下さる事は もちろんですが、
『新・三国志』の馬良や『新・水滸伝』の宋江 
『ワンピース』のクロコダイルなど、も受け持って下さっております。

私自身、古典であり、歌舞伎の新作であり、スーパー歌舞伎でありましても、
それぞれの 与えられましたお役に対しては ある程度の知識や希望、
要望などを 伝えながら よりよい状態の 頭になりますように、
常にいろいろな意見を出させて頂きます。

「ここを1ミリ」削って・・・「ここをほんの少し」出して・・・。(笑)

意見を出しながら 作り直していただき、それを確認する作業を
毎回させて頂いております。

大塚さん、もう付き合いもずいぶんになりますが 無理難題のかつらの注文も
すべて受け止めて下さる すご腕のかつらやさんです。