2008年9月28日に三回目の骨盤おこし東京セミナーを開催した。
今回は主催者であるわたしの都合で、一日の午前、午後での二回という愛知県に住む講師のTakahiroさんには強行スケジュールになってしまった。
次回(四回目)も10月26日(日)1日で2回の、同様の日程なので申し訳ない思いである。
また参加する人にとっても、土曜日の夕方にあるとうれしいという声も多かった。
反対に一日であったために、二回通しで出られて良かったという人もいた。
今
回は、雑誌に載ったTakahiroさんの記事を参考に骨盤おこしを実践している人が、直接の指導を受けたいとわざわざ香川県から参加された。娘さんが東
京在住であるために、そういう決断もされたのだろうが、股関節に故障を抱えていたので、一日で二回のセミナーが都合がよかったようだ。
参加者の状況は様々なので、一概にどういう方法が良いか言えないようである。
しかしそれでもTakahiroさんにとっては一泊した方が楽だろうし、時間的に余裕ができるために、わたしもいろいろ話しを伺える。今回はほとんどお話する時間が取れなかった。
日曜の9時30分に築地市場あたりまで出てくるのも大変だなあ、と思ったが、一回目でも20名近く、午後も定員を少しオーバーする27名の参加があった。
半数近くがリピーターであった。
●及第点を取る(?)
セミナーはまず、はじめての人に骨盤をおこした状態を体験してもらうことから始まった。
「股
関節はどこか」という質問には、いつも通り「そけい部」や「お尻の横」という答えが多かった。なかなか「ヒップジョイント」で、お尻に力を入れて立つとで
きる「お尻のエクボ」、つまり後ろ側にあることを知っている人は少ない。かく言うわたしも、横にあると思っていた口であるから、笑えない。
次に各自正座で、自分が思う骨盤をおこした(立てた)状態にしてもらう。するとまず例外なくお尻と背中がまっすぐ、みたいな姿勢になる。
一回目はここで突然の(わたしにとっての)ハプニング。Takahiroさんがわたしに、その人たちの骨盤をおこしてみて、と振ってきたのだ。いわば師匠の前でのテストである。
わたしも自分の稽古会などで、Takahiroさんの目のないことを幸いに、偉そうに「ここまで行かないと骨盤はおきないですよ」とかやっているから、なんだかそれがお見通しだったのかな、などと思ってしまった。
なんとかわたしの感覚で及第点をいただけて、ホッとした。
し
かしこの及第点も、わたしが「骨盤おこし」を生業にしているわけではないためだろう。Takahiroさんはセミナー経験者が、いろいろ工夫して「こんな
風にしているんですけど」と見せると、もちろん見当ハズレでない限りだが、「おお、いいじゃないですか!」などと誉めるのである。
これは指導時も同様で、トレーニングの方向性が合ってくると、「そうです、いいですねえ」とすごく誉める。すかさず「まだまだこの先があるんですよ」と言うのを忘れないが。
●プロ、アマ、一般人
Takahiroさんは専門家に対しては、その専門の動きに関係するトレーニングの場合、けっこう厳しいダメ出しをする。
今回はプロのダンサーが参加していたが、相手が男性であるせいかもしれないが、大変厳しい指導だった。
マ
イミクmariさんが、歩きや姿勢の工夫を見せると「いいじゃないですか、それ」と言っていたが、マイミクあーさんが専門のコントラバスの演奏姿勢につい
てはけっこう厳しかった。もっともこれは男女の差ではなく、mariさんもフルートの演奏姿勢そのものであったら、厳しかったかもしれない。
そう言えば今回、卓球の人が数名参加されていて、素振りのフォームでは熱が入っていた。それでもダンサーの方への指導は一段と凄みがあったのは、彼らがプロダンサーだと知っていたからかもしれない。
プロに要求されるもの、アマに要求されるもの、一般の生活に要求されるもの質に違いがあるからだろう。
前回のセミナーのとき、「だんだんマニア好みの体型になってきました」と下腹(丹田)をグッと膨らませてみせたが、「みなさんはこうなる前で止めていいんですよ。そうすれば格好良い腹でいられますから」と言っていた。
「マニア好み」というのは、肥田式とか呼吸法とか、当然武術などに見られるようなドンと張り出した下っ腹のことだ。そうした「超・健康マニア」というのか、ま、そのテのマニアのことである(笑)。
で、普通に健康に暮らして行くだけなら「程」というものがあるということだろう。
●「腹圧をかける」
「腹」ということで、話はまたちょっと脱線するが、「骨盤おこし」では「腹圧をかける」ということが大事になる。
ベルトをキュッと締めて、そのベルトを腹を膨らませてパチンと弾いて切ってしまうつもりで押す。武道で帯を締めているなら、そこに腹をグッと当てるように腹を膨らませる。腹圧は呼吸とは関係なく、吐いても吸っても止めても膨らませておく。
し
かしこの「腹圧をかける」ということができない人が増えているらしい。特に女性で苦手な人が多いらしいが、今回は「腹に力の入らない若者代表」みたいな男
性が参加していたので、多いに盛りあがった。まあ、マイミクで武術の稽古もしているんだけど、どうもへナへナとしていると思ってはいたが、腹を膨らませる
ことができないとは思わなかった。
それでもセミナーが終わる頃には、少し力を入れることができるようになっていた。
参加した
セラピストの女性は、さすがに腹圧をかけるのは上手くて、ポコッと出るが、それがとてもいやなのだと言う。セミナーが終わってから行った店で、「女性に
とっては問題ですよ、これは」とか言っては腹をポンポンとたたくので、叩くのは止めなさいとたしなめたのだが、つまり叩きたくなるほどポコッと出るのであ
る。
しかしそこで面白いことに気付いた。その女性は腹を見ながら、つまり下を見ながらイスに寄りかかっていたので、ミゾオチから下がポンと飛び出していた。これは骨盤が後傾していて腹部が折れている「よくない」姿勢だったわけだ。
そ
の人はセミナー中は、骨盤もある程度おこした姿勢ができていたので、骨盤をおこして立ってみてもらうと、そのぽっこりしたお中のままで、すごくキレイな立
ち姿になったのである。もちろんその腹は、贅肉が付いて出ているのではなく、内側から圧をかけて張った腹であるからなのだと思うが、からだの前面がふわっ
として実に女性らしいやさしいラインなのであった。
骨盤をおこすだけでスタイルの印象がここまで違ってくるのを目の当たりにして、スタイルは骨格のポジションなのだというTakahiroさんのことばが納得できた。
「腹筋するより骨盤おこせ」なのである。
●「胸椎を伸ばして行く」
今回、正座で骨盤をおこしながら前傾して行き、そこから顔と胸を前に押し出してゆくという、いつものトレーニングでいくつかヒントを得た。
以前は「胸を前に」と強調していたTakahiroさんが、今回は背骨を前に伸ばして行くという言い方をしていたのだ。「身長をさらに高くするつもりで」と。
この感覚は大事で、元々腰痛のある人は胸椎が動きにくいので、「胸を前に」というと腰で反ってしまいがちだ。すると腰が痛くなってしまう。
腰痛がなくても、胸椎が動きにくい人は多いので、同じく腰に負担をかけてしまう可能性が高い。腰痛持ちはそれをすぐ痛みで知ることができるが、ヘタに健康だと知らずに無理を重ねることになる。
「痛みがあるということは、からだが動き方を教えてくれているのだから、ラッキーなことだ」とTakahiroさんはよく言うが、ほんとうにそうかもしれない。
で、胸椎だが、股関節から骨盤と胴体を前傾させ、さらに背骨を前斜め上にずうーっと伸ばして行く。背骨が伸びたところでさらに、首の下の皮を伸ばすように顎を前斜め上に突き出して行く。それによって胸の皮を伸ばしていくような感じで、胸を前に張り出して行く。
腰が痛いという人にこの手順を教えたら、腰が痛まずに胸を出せるようになった。
胸を出すのが上手くできた人の背のカーブは、離陸する飛行機の描く軌跡のようである。胸椎がよく動く人だと、そこのカーブが宇宙へ飛び出して行くように上を向いている。
Takahiroさんは「頭を胸の上に乗せるポジションを目指せ」という。
もちろん無理は禁物。ともかく股関節を畳んで骨盤と上体を前傾させ、さらに背骨をずうーっと前方斜め上へ伸ばして行くことから始めよう。
●前面の皮膚を伸ばす・背の皮膚を縮める
胸椎を前に押し出して、胸をグウッと張ってみると胸の皮膚が引っ張られて広がるのがわかる。胸椎が動き出すと肋骨を広げることもできるので、そこの皮膚も広がろうとする。
これに前に話題にした「腹圧をかける」を合わせると、胴体の前面、下腹から喉までの皮膚全体が引っ張られて広がるのがわかる。
Takahiroさんは骨盤おこしをやっていると、前面が伸びてきて、背中が縮まってくるのが感じられるようになると言うが、わかる気がする。
背中が縮まり、肩甲骨より胸椎が前に出るようになると、肩甲骨の間に「背の谷間」ができてくる。それを古来芸事で「背を割る」と言うのではないかと思う。
「背を割る」と肩甲骨が開放され動きの自由度が増す。肩甲骨は下がり、肩も下がってくる。そうなると当然腕の動きも自由になるということである。
こうしたからだの構造だけでも技は変わってくる。というか、こうしたからだ(姿勢)があった上での技であるということだろう。
(つづく)