TPPならびに自由貿易が日本にとってメリットがあるもう一つの理由 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

安価な製品の流入によって、多くの企業がどんどん海外に製造拠点を移して空洞化が進む。日本の雇用は失われるし、デフレは進むしロクなことはない。おまけにTPPとか言って・・・。自由貿易なんて意味がないんだ!国賊だ!


とか言う人たちは結構いる。


このブログでは、理屈では、関税をブロックしても貿易黒字は増えないとか貿易は勝ち負けじゃないとか比較優位だとかいろんなことを言って自由貿易のメリットを主張してきた。(参考過去記事→関税自主権ってなんだ?)


今日は産業の構造転換という観点から自由貿易推進のメリットを見てみたい。


当然ながら、安価な輸入品の流入は日本のような先進国にあるローテク産業を駆逐する。


しかし、日本も中国などに彼らが作ることができない先端技術を用いた素材や部品などを輸出することで恩恵を得ているというのはいろんな人が指摘している有名な話だ。


自由貿易の進展によるローテク産業の衰退は同時に高付加価値の産業に対する資源配分(労働も資本も)が自然な形でより行われることを促すわけだ。


高付加価値産業への構造転換が進めば、当然ながら、潜在性成長率が上がり経済の成長にもつながる。


すなわち、自由貿易協定の推進(ならびに新興国の発展による安価な輸入品の流入)は日本の潜在成長率の向上につながるのである。


しかもこのことは多くの労働者にとってもメリットがある。


当然ながら高付加価値で高い生産性を持つ産業に従事する労働者のほうが高い賃金を享受できるからだ。


誤解を招く表現かもしれないが、3Kの仕事は新興国にやらせておけばよいとも言えるかもしれない。


もちろん、ローテク産業の衰退は一時的には痛みを伴うものであろう。そのあおりを受ける人たちは多いはずだ。だから、失業者に対してしっかりとした職業訓練などの制度を設ける必要はあるかもしれない。(もちろん、ただ単なる失業給付の充実とか生活保護の充実とかには反対)


生産性の高い産業なんて雇用を増やさないじゃないか!という人もいるかもしれない。しかし、人間、職がないとなれば必死で職を探すわけだ。そういった必死な中からまた新たなビジネスや技術革新も生まれてくるだろう。1990年代以降のITと金融によるアメリカの発展はそれ以前の苦しい時代があったから生み出されたんだと思う。


こうやって、言うとそんな理屈はどうでもいいというよくわからない反論を返してくる人が居る。


だから、今日はWho’s afraid of the big bad dragon? How Chinese から実証的な研究がどうなのかを引用してみたい。


A startling finding is that around 15% of technical change in Europe can be attributed directly to competition from Chinese imports, an annual benefit of almost €10 billion to European countries. Firms have responded to the threat of Chinese imports by increasing their productivity through adopting better information technology, higher spending on R&D, and increased patenting. Unsurprisingly these lead to major increases in productivity.


EUでは安価な中国製品の輸入によって、企業が生産性を挙げるためにITやR&Dなどに投資を行った結果、年間約1兆1000億円程度の恩恵をヨーロッパ諸国のもたらした。


どうだろう?上記のような流れは実証的にも証明されるようだ。古臭い貿易差額主義を振り回している人は頭を冷やしたほうがいいんじゃないだろうか。


しかも、いかにがんばってローテクな産業を政府が保護しようともとも日本においてそのような産業が自律的に存在し続けることができないならば、早めに淘汰されたほうが、その産業に従事する労働者にとっても次の人生に早く進めるわけだからメリットは大きいはずだである。


新しい人生を歩むならば若いうちのほうがいいからだ。損切りは早いほど傷は少ないわけだ。


自由貿易を阻害しようと言う人達は日本の将来の成長を阻もうとしていると同時に、多くの若い労働者の将来を悲惨なものにしようとしていることに気づかねばなるまい。(参考記事→政府という名の麻薬の売人


今がよければそれでいいという考え方の自由貿易反対派は麻薬を売り歩いているに等しいといえると僕は思っている。


しかも、高付加価値分野こそ日本のブランドを行かせる分野だろう。まして、アジアでの日本の文化的地位は高いのだから。


そう考えれば、TPPもそこから続くであろうさらなる自由貿易協定も新興国の発展も恐れることはない。むしろ大きなプラスだ。そして、上記の論文にあるように実証的にも証明されているのは心強いことである。


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